風少女 〜蝶の羽ばたき〜   作:小方

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原作本が手元に無いので記憶を頼りに書いていますが、全然足りません。圧倒的に情報不足。

つじつま合わせに適当に調べて、後はとにかく妄想で補完してみました。

困ったときの合い言葉、これは二次。




▽1 薄氷の幸せ

私のお父さんは警察官で、お母さんは弁護士だ。二人は早くに別居してしまい、時間を置いて離婚して、別々の道を生きることを選んだ。

 

□■□■□■□■□■□

 

 

小さかった私には、別居の元となる二人の不和の原因は分からない。

 

弁護士に成り立てで忙しいお母さんが、イライラしてお父さんを責めたせいかもしれないし、家事と育児と仕事を必死にこなそうと忙しいお母さんに、リラックスして欲しいお父さんが、気楽に行こうと脳天気に言ったことが癇に触ったのかもしれない。

 

それとも警察官という仕事柄、不在がちで家事も育児も投げっぱなしのお父さんに、お母さんが不満を溜め込んだせいかもしれないし、料理が上手いとは言えないお母さんの腕前を、うっかりお父さんが揶揄したせいかもしれない。

 

 

 

仕事を持っている二人が留守のたびに、お父さんのお母さん。おばあちゃんが私を預かってくれていた。

 

保育園へ送り届けてくれるのは、出勤前のお母さんかたまにお父さん。でもお迎えは大体がおばあちゃんだった。

 

最初に入っていた保育園は、迎えに来てくれるおばあちゃんの家から遠くて大変だと、お父さんが変えてしまい、それもまた喧嘩の元になった。

 

 

「せっかく入れた保育園を勝手に変えるなんて、どういうことなの」

 

「確かに教育方針はご立派で先進的だが、迎えの時間に融通がきかねえし、お前もそれは文句言ってたろ。あそこは送るにも通り道だし、おふくろん家からも近い」

 

 

 

 

 

最先端の設備に教育方針が人気のその保育園は、教育熱心なお母さんが、是非にと望んだ保育園だった。きっと入るのも大変だったのだと思う。

 

 

「あそこは古いが、園長の住職は昔から知ってる。あの人は名士で人格者だし、安心だ。なにより送迎の時間の融通がきくから、俺たちにはありがたいじゃねえか」

 

 

自分もお世話になった保育園ということで、絶対的な信頼感を抱いているお父さんが、強引に決めてしまったのだ。

 

 

「でも、せっかく入れたのに…。お義母さんには申し訳ないけど、幼児期って大切なのよ。蘭にはあの保育園で自分を伸ばして欲しかったのに…」

 

「あそこは昔ながらの保育園だが、伸び伸び過ごせる。何も蘭の歳から、勉強を詰め込む必要はねえだろう」

 

「詰め込み教育じゃないわ。遊びから学ばせるのよ」

 

私が眠ってから、夜遅くに最初は小さかった二人の声は、だんだんと興奮して大きくなっていき、自然と目は覚める。聞きたくなくて、耳を押さえた。

 

お父さんとお母さんの声で目が覚める頻度は、段々と増えていく。私は何気なく、おばあちゃんに二人の不仲をこぼした。

 

 

「またお母さんがお父さんに怒ってた。ご飯いるなら電話してって、冷たいの食べないでって」

 

 

疲れて帰って来たのに、冷たいご飯なんて胃に悪いわ。起こしてよ。お風呂だって沸かしたのに、シャワーじゃ疲れは取れないわ。

 

 

「疲れてるなら、編み物なんてするなってお父さんがお母さんに言ってた。お母さん、お父さんにマフラーぶつけてた」

 

 

お前も疲れてるんだから、俺を待つ必要はない。先に寝てろ。マフラーなんて無くても、家族を思えば暖かい。大丈夫だ。気にするな。

寒がりの貴方が風邪をひくのが心配なの。だから拒否しないで。

 

 

「あらあら、仕方ない子たちねぇ」

 

 

言外を読み取ったおばあちゃんは困ったように、でも私を安心させるように優しく笑いながら慰めてくれた。おばあちゃんの温かい膝に抱っこされると優しい香水の香りが匂った。

 

おばあちゃんは早くにお父さんを生んだ。お父さんも早くお父さんになったから、おばあちゃんはとても若くて綺麗だ。

私がおばあちゃん似ということもあって、よく親子に間違われる。まず祖母と孫には見えないのだろう。

 

「二人ともお互いが大切で一生懸命なのね。蘭ちゃん、喧嘩しても許してあげてね」

 

 

柔らかく抱きしめてくれたおばあちゃんは、綺麗な眉根を困ったように寄せていた。ああ、困らせたくないな。と思って頷いた。

 

 

「うん。蘭ね。お父さんもお母さんも大好き」

 

 

それは本当。

でも、二人が喧嘩をするのを見るのが苦しい。

 

お母さんがお父さんのシャツを抱きしめて、あの馬鹿と言ったり、お父さんがソファで寝てしまったお母さんをベッドに運んで髪を撫でているのを見ると胸がキュウってなる。

 

私はだんだん家に居ても安心出来なくなっていった。おばあちゃんの家だとよく眠れるし、ご飯も食べられるのに、家だとお腹が空かないし、夜眠れない。

 

だって夜になると、お父さんとお母さんが喧嘩する声が聞こえてくる。

 

だから眠りたくなかった。

 

 

 

 

夜に眠れない弊害は昼にきた。保育園で私は、友達とも遊ばず先生に声をかけられても気付かず、ぼんやりと過ごすようになっていった。

 

私の様子を心配したお母さんが、仕事を休んで病院に連れて行ってくれた。

 

忙しいのに休むからか、仕事場へ電話の時に向こうの人に何度もペコペコ頭を下げていた。申し訳ありません。ご迷惑をお掛け致します、すみませんと繰り返し言うのが聞こえた。

 

お母さん、お仕事大丈夫? と聞くと、あなたの方が大事だからいいのよ。と言う。

 

お母さんが心配してくれるのは嬉しいけど、困らせているのが悲しかった。

 

 

「あまり小さい子どもさんに薬は処方しないんですが…。」

 

 

眠れない寝たくないと言う私に、お医者様は困ったように言った。

 

眠り薬は習慣になると効きにくくなるし、だんだん強くしていくと体に負担になる。特に私はまだ幼児だったから、余計に薬を使いたくなかったらしい。

お母さんもそれを聞くと心配になったようだった。

 

出来るだけ薬の使用は避けて、自然な入眠を助ける方法をお医者様は考えてくれた。お母さんは、ボディマッサージやリラックス効果のある食材や調理法、アロマを使うなどの指導を受けた。

 

お母さんは一生懸命メモに取って。これで大丈夫よ。お母さん頑張るからねと、私を元気づけてくれた。

 

 

お父さんも心配して、仕事の合間に電話をしてきてくれた。お母さんが電話を代わってくれると、お父さんも眠れる方法を考えるからなと言ってくれた。

 

お父さんとお母さんは私が大切で、私も二人とも大好きなのだ。でもやっぱり恐い。

いつ喧嘩をする声が聞こえてくるのか怖くて苦しくて、無理やり寝ようとしても眠れない。

 

お母さんが温かいミルクを飲ませてくれたり、優しく話してくれながらマッサージをしてくれると眠れるけど、今度は自分の知らないうちに二人が喧嘩をしているんじゃないかと、怖くて眠れなくなった。

そうして私の生気はますます薄れていき、知らずに表情が乏しくなっていったようだった。

 

この頃のことはあまり記憶に無い。

お母さんの弁護士としての仕事が増えて、私を預かることが増えたおばあちゃんが、たぶん最初に気が付いたんだと思う。

私の異常に。

 

 

 

おばあちゃんに指摘されて気が付いたお父さんとお母さんは、更にお互いを責め立てて、昼間でも喧嘩をするようになった。

おばあちゃんに指摘されて気が付いたお父さんとお母さんは、更にお互いを責め立てて、昼間でも喧嘩をするようになった。

 

ある日、お父さんとお母さんは私の前で喧嘩を始めた。きっかけなんて大したこともない、いつものちょっとした口喧嘩だった。

 

 

でもそれはいつの間にか、いつもの軽い口論どころじゃない酷い言い争いとなってしまった。

 

お父さんとお母さんが互いをひたすら罵る姿に、私は唖然とした。

 

二人の目に私は入っておらず、ただお互いを憎々しげに睨みつけ、罵声を浴びせるばかりだった。

 

 

激昂してテーブルを叩く乱暴なお父さんと、こんな馬鹿は見たことがないとばかりにお父さんを見下すお母さんの姿に、私は恐怖を覚えて泣いた。

 

いつもの静かに涙を流す泣きかたではなく、火がついたような泣きかたで。

 

私のいつもと違う異常さに、正気に戻ってお父さんとお母さんはあやそうとした。

 

しかし私は二人を尻目に、ひたすら声が()れるまで泣き続けた。優しい二人の言葉には耳を貸さず、ただおばあちゃんを呼び続けた。

 

泣いて泣いて、過呼吸からの呼吸困難になって意識が朦朧とするまで泣き続けた。

 

気がついたら病院の処置室で、私を見てお父さんとお母さんは項垂れていた。

 

 

「ごめんなさい」

 

 

お母さんが処置室のベッドに横たわったままの私の手を握って、ずっと泣き続けている。

お父さんの目元も赤かった。きっと泣いたんだ。

 

 

お父さんが連絡をして、夜遅くなのにおばあちゃんが慌ててやって来た。よほど急いだのか、いつも綺麗にしているお化粧も無く、部屋着に上着を羽織っただけといった格好だった。

 

お父さんとお母さんはお話しのために廊下に出た。

 

そうして私は、おばあちゃんの家にずっと預けられることになったのだった。

 

 

 

 

お父さんとお母さんが意図せず壊して。私が止めを差し。家族はバラバラになってしまった。

 

もう戻らない。

 




映画の公開間近。

コナン熱がたぎった挙げ句の果てに、妄想を文字に起こしてみた。結果は筆が滑りすぎてシリアスになり過ぎた。
自分が一番ビックリした。

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