ので、(同日一時十分)に部分的にちょっと修正しました。
話の筋に変更は、ありません。
前回のおさらい。
本来なら英理さんと蘭ちゃんの課題だったお使いは、おばあちゃんが難無くクリア。
小五郎さんが警察を辞める原因、人質発砲事件が消失しました。
うん。警察を辞める理由が無いんだな。
私はどちらかと言えば、有希子さんが苦手だ。それでも私が工藤さん宅に通う訳。
当たり前だけど、ピアノ目当てですよ。
でも新居となる新しいマンションが近く完成するので、間もなく引っ越しとなる。
名残惜しいけど、そろそろこちらのピアノも弾き納めだ。
鍵盤をタッチすると響く音に、溜め息が出た。やっぱり、グランドピアノは良い。
私が毎日弾いてるピアノはアップライトだから、私がグランドピアノを弾けるのは、ピアノ教室とここだけだ。
それがこの前、私が有希子さんのピアノを、夢中になって弾いている姿を見ていたおばあちゃんが。どうせ引っ越すなら、ピアノの買い替えをしないかと言い出した。
つまりアップライトから、グランドへと。
………いやいや。そんな気軽に、買い替えを考えるような物じゃないでしょ。ピアノだよ?
よく知らないけど、車が買えるくらいの値段はするよね?
下取りしてもらったとはいえ、新築タワーマンションも買っちゃったばかりでしょう?
それに合わせて、家具も選んでたよね?
なのに、更にピアノを買う?
と、私が戸惑っている間に、おばあちゃんは御世話になっているピアノの先生に相談してしまった。
つまり私のために、グランドピアノを買いたいのだと。
……親バカならぬ、婆バカだ。おばあちゃん、どれだけ私が可愛いの?
ねえ。目に入れても痛くないって言うけど、流石に目に入れたら痛いと思うよ。
でも本当に先生が真っ当な指導者で良かった。
教室や学校関係者には、業者と仲が良くて、特に必要も無くても、ピアノを買い替えさせる人もいるらしいから。
まあ普通に考えてピアノは高い買い物だから、一度買えば長く使おうと思うだろうし、実際に簡単に車の様に買い替えたりはしない。
なかなか回転率は悪かろうね。メーカーや販売店が思うようには、ピアノが売れるはずもない。
機会があれば、売りたいだろうね。そんな都合、知ったことじゃないけど。
でも先生は、私がどうなりたいかによって、ピアノを変えるのか決めれば良いと教えてくれた。
飽くまでも趣味の範囲で続けたいなら、おばあちゃんのピアノを使い続ければいい。でも上を目指すならグランドピアノを薦めると。
そして私戸惑う私に、どうなりたいかによって、買うピアノは変わるとも教えてくれた。どんなピアノを選ぶかは、各々の希望や方針によると。
先生は、ピアノ奏者はピアノを持ち歩けない。必要なのはどんなピアノでも弾きこなせる応用力だ。というのが、持論の人だった。
地力をしっかり付ければ、素晴らしい作品を生み出せる。弘法は筆を選ばずよ。と教えててくれた。
だから私は、子供なりにも考えて、グランドピアノが欲しいとおばあちゃんにお願いしました。
ピアノを買い替えるとお父さんとお母さんに言った時は、凄く高価な物なので、中途で投げ出すなんて以ての外だ。しっかり励めと言われた。
「おふくろの期待を裏切り続けた俺に、言えることじゃないがな…」
お父さんが自嘲するように呟いていたのは、聞かない振りをした。
でも、もっともだと思ったけど。大丈夫だとも思ったんだ。
だってピアノは私の支えだから、弾かなくなるなんて有り得ない。
それこそ、指が無くなりでもしない限り。
そうしてピアノを決めて来たんだけど、おばあちゃんが勧めるピアノを新居に設置するのは、けっこう大変なことだと分かった。
主に重さと音の問題だった。
グランドピアノの重さで、床が抜けるのは論外だけど、一番気になるのは音かなあ。
近隣住民との騒音トラブルで事件が!! とかありがちだし。
実際のところ、ピアノの音って迷惑だと思うんだよね。
私もピアノの練習中は延々と同じ曲を弾き続けるもん。2時間3時間とかざらに。
言っておくけど、それも通しじゃないよ。
上手く弾けない一小節を。ひたすら集中力の続く限り。延々と延々と延々と…、ただひたすら満足がいくまで弾き続けるから。
そんなのを数時間も聞かされ続けたら、誰だって殺意も湧くんじゃなかろうか。
よくおばあちゃんが耐えてくれてると、常々思っている。発狂する前に、耳栓しても良いんだよ?
とにかくそんな環境では、音の聴こえる範囲にいる人に、私の殺害計画でも立てられ兼ねないんじゃなかろうかと思うんですよ。
だから前のマンションでは防音対策をした上で、時間を決めて弾いていたんだけどね。今の仮住まいでは、ほぼ弾き放題だったりする。
だって凄く条件が良いのだ。二重窓等のある程度の防音対策はしてあるが、ビルの両隣も鉄筋コンクリートの建物で防音に優れ、すぐ下の2階部分は空き物件でその下のポアロにまで音は届かない。
今の仮住まいでは、ほぼ弾き放題だったりする。
あれ? 別に引っ越す必要性無くないかな?
グランドピアノはここへ運んでもらって、ずっと居ようかな…。
無理だよね。分かってる。
ともあれどんなにお金と時間が掛かろうと、音対策は大事ということです。ということ。
防音室の工事費とか、考えると本当に恐ろしいんだけどね。
おばあちゃんが業者の人と、窓を二重にとか、扉も防音とか、床の補強のこととかも話しているのが聞こえてましたよ。
置いてあった見積書の金額とか、私はまだ桁数の読み方を習ってなかったから覚えてないけど、100万くらいじゃ済まなかった気がする…。
今さらだけど、私ってなんてお金の掛かる子供だったんだろうか。
とにかくそれだけ愛もお金も掛けられたんだから。返さないと、夢を叶えないと申し訳なさ過ぎる。
与えられるものを、当たり前だと思いたくない。別におかしくはないでしょう?
それで補強工事の都合上、引っ越しは少し遅れるようだ。
私の新しいピアノとも、それまで会えない。今のうちに工藤さんのお宅にお邪魔しておこう。
有希子さんのピアノは凄く良い物だから、可能な限り弾かせてもらおう。
ピアノ←本命
バレエ←趣味
着実に健康的なインドア派の道を進んでいる…。