風少女 〜蝶の羽ばたき〜   作:小方

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△14 お料理はじめました

最近、おばあちゃんに習って料理を始めた。

切っ掛けは新しいマンションのピカピカのキッチンを、私も使いたくなったからだった。

 

仮住まいの時も、階下のポアロでマスターがカウンターの中で料理するのを楽しく見てたりしたが、おばあちゃんが楽しそうにキッチンを動き回るのを見ていたら、私もやりたくて堪らなくなってしまったのだ。

 

私が料理を覚えたいと言うと、おばあちゃんは凄く嬉しそうに歓迎してくれた。

 

今日は日曜日で、学校も習い事もないから、お料理のお勉強中だ。

 

今までのおさらいで、今日は私だけでおやつを作る。

おばあちゃんが出していいのは、口だけね。

 

「ボールに卵の殻が入っても気にしないで。すぐに取ればすむからね」

 

「うん。あ、黄身が潰れちゃった…」

 

「かき混ぜてしまうから大丈夫よ」

 

「うん。混ぜるね」

 

「混ざったら、溶かしバターとお砂糖を入れましょうね」

 

「うん。あ、甘いのがいいな」

 

「じゃあ、もう少しお砂糖を入れる? お砂糖の代わりにハチミツとかシロップもいいわねえ」

 

 

まだ危ないからと火は使わせてはもらえず、ほぼ切ったり、乗せたり、挟んだりとかだけど。電子レンジと冷蔵庫は自由に使わせてもらえるから、結構作れる物は多い。

今はレンジ加熱で作れるマグカップケーキを作成中だ。

 

薄力粉ではなくホットケーキミックスを使うので、手順さえ覚えてしまえば私だけでも出来るという理由で、おばあちゃんが教えてくれている。

 

ホットケーキミックスには、すでにふくらし粉も砂糖も入っているから、あとは卵と油と味の調節に砂糖を足すくらいで良いらしい。

 

材料を全部混ぜて、前に作った時はプレーンだったが、今日はレーズンを入れてみる。出来たら、お玉で口が大きめのマグカップに生地を注いで。

 

 

「あ」

 

 

今日は少し生地が緩かったみたいで、ちょっとこぼしちゃった。拭かないと。

後片付けも料理のうちなんだって。

 

生地を注いだマグカップは、ラップをしないでレンジで加熱。えーと、一分半?

 

 

「そうよ。もし加熱が足りなかったら、またチンしたら良いからね」

 

「うん。焦げたら戻らないから、まだ生の方がマシなんだよね?」

 

「そうよ。覚えられたわね。簡単でしょう

 

 

こうしておばあちゃんとおやつを作るのも、今日で何回目だろうか。

 

一番最初に作ったのは、ハムとキュウリのサンドイッチだった。

 

まな板から転がりそうなキュウリをにゃんこの手で押さえ、なんとか作ったキュウリの薄切りは、どこが薄切りかと聞きたくなるような、厚みもバラバラの不細工な切り口だった。

 

 

 

「挟んでしまったら見えないから、いいのよ」

 

 

おばあちゃんに言われるまま、上手に薄く切れた物だけをマヨネーズを塗った食パンの上に、丁寧に並べた。おばあちゃんの分にはカラシを少し混ぜたマヨネーズを塗ったが、私は辛いのは苦手だからカラシは抜きだ。

 

キュウリの上にロースハムのお布団を被せて、マヨネーズを塗ったもう一枚の食パンで蓋をする。

 

うん。簡単。

 

そうしてサンドイッチは切りやすいように、ラップフィルムを被せて少し馴染ませるわけだが、このラップがどうしても子供には扱いにくい。

 

 

 

「うー」

 

ラップフィルムの蓋の切り口で切ろうとするが、上手く切れないのだ。

初めてラップを切ろうとした子供は、多分みんな経験しているだろう。本当にラップフィルムは、慣れないと上手に切れない。

 

必死に蓋の切り口と格闘した結果。最終的にラップは、私の手の中でクシャクシャになって、煽りを食らったサンドイッチは、見事に傾いてバラバラになっていた。

 

 

「あー」

 

「あらあら、大変」

 

 

あらあらと言いながら、おばあちゃんはサンドイッチを手直しする。でもそれ以上は手出しせず、私に続けるように促してくる。

 

結局、クシャクシャになったラップを、私はハサミで切ることにした。

 

 

しかしラップに刃を入れたとたんに簡単に裂けてしまい、切り口が本体に貼り付いて取れなくなるという二次被害を生み出した。

 

 

「あああ」

 

「あらあら」

 

 

本体は取りあえず横に置いて、切れたラップのシワを伸ばして、被せようとするが簡単に破れてしまった。

 

 

「ああああああ」

 

 

苦労して切ったラップは、ゴミになった。

 

おばあちゃんが苦労して、張り付いてしまったラップを剥がす横で、私はそのままサンドイッチを切った。

 

ちょっと切りにくかったが、おばあちゃんがいつも丁寧に研いでいる包丁は、特に問題なくサンドイッチを等分した。

 

…ラップ要らないじゃんか。

 

初めてのサンドイッチ作成体験は、ラップで苦労した記憶だけを強烈に残した。

 

最初に得た教訓は、よく切れる包丁さえあれば、サンドイッチにラップは不要だった。

 

この前はカスタードサンドケーキを作ったんだけど、カスタードクリームって、電子レンジで作れるんだよね。知らなかった。

 

ちょっと手間で、面倒だなと思ったけど、私って料理するのに向いているんだって。おばあちゃんが言ってくれた。

 

料理は基本に忠実に。

うん。ピアノやバレエと一緒だね。

 

特に料理は、慣れないうちの下手なアレンジは、失敗の素だって。

 

 

「英理さんは頭が良すぎて、色々と試してしまうのよねえ…」

 

 

おばあちゃんはお母さんに料理を教えた時を思い出したのか、溜め息をついた。完璧に見えるお母さんの、独創的な料理の味付けを思い出しているんだろう。

 

あの美味しそうな見た目で、びっくりするくらい意外な味がするんだよね…。

 

おばあちゃんのご飯に慣れている私は、お母さんの作る変わった味のご飯が苦手だった。

あれ、なかなか飲み込めないんだ…。

 

探究心が強すぎるのも問題ね。職業病かしら。とおばあちゃんは首を傾げる。

お母さんの求める、料理の真理ってなんだろう。何故食べやすさを求めてくれないのかが謎だなあ。

 

今日の晩ごはんも、ちょっとお手伝いさせてもらうことになってる。

 

何を作るのかなあ。

 

 

 




原作の蘭ちゃんって全部の家事を一人でこなしてるようだけど、誰に習ったんだろうか。

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