風少女 〜蝶の羽ばたき〜   作:小方

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▽15 狼は毛が抜けても、悪い癖が直らない

2年生のゴールデンウィークを利用して、また京都へ行った。

 

おばあちゃん、京都好きだなあって思ってたら、ひいおばあちゃんが京都の人で、そちらの親戚が多いから、行く機会も多いらしい。

 

 

「お母さん…ひいおばあちゃんのお願いで分骨したからね。」

 

「ぶんこつ」

 

「ひいおばあちゃんの半分は、ひいおじいちゃんのお家のお墓の中だけど。もう半分は、京都のひいひいおじいちゃんとひいひいおばあちゃんのお墓に入ったの」

 

 

だから必ずこっちにもお参りに来るのよ。そう言ったおばあちゃんの手には、可愛い赤いダリアの花束。

ひいおばあちゃんが好きだったんだって。

 

おばあちゃんは京都へのお墓参りは、いつもお彼岸の時期に来るようにしている。だけど今年は、その時期に私がインフルエンザにかかってしまったので、時期をずらして、今日にしたらしい。

 

そういえばいつもお彼岸には、私はお母さんのマンションにお泊まりしているな。なるほど。その時に、こちらにお参りに来ていたようだ。

 

今までは私が小さかったから、遠出には連れて来なかったけど。そろそろ長距離の移動にも耐えられるだろうと、去年の夏に、初めて連れて来てくれたらしい。

 

蘭ちゃんは、電車の中でも大人しくしてられるから、安心だわ。とのこと。

 

うん。体力面でもゴリラだから、大丈夫だよ。ちょっとの疲れくらい平気だからね。

 

 

夏に来たときは茹だるほどの暑さで嫌になったけど、5月の初めの京都は爽やかだった。駅を出てすぐ、頬をくすぐる風が心地好い。

 

よし。歩くぞ。と思ったら、今日の行く先は遠いからと、タクシー乗り場へ連れて行かれた。

 

京都駅からタクシーで向かって着いたのは、いかにも由緒ありげなお寺さん。

ひいおばあちゃんが眠るお墓は、凄く古く見えた。

 

おばあちゃんが、火を付けたお線香を立てている間に、私がダリアの花束のフィルムを剥がして、花立てに供えた。

 

そうして。はじめまして、ひ孫の蘭です。とご挨拶をした。

 

 

 

お寺さんを後にして、今度はタクシーを使わず少し歩いて。お茶屋さんで一服した。

 

お茶屋さんって、芸妓さんがいるお座敷の方のお茶屋じゃないよ。休憩して飲食する方の、茶店(ちゃみせ)の方のお茶屋さん。

 

そこでおばあちゃんは、お抹茶と花菖蒲を意匠にした季節の和菓子を、私はお煎茶と柏餅をいただいた。

 

5月のお菓子で柏餅って、東京でも食べられるじゃないかと思ったら、味噌餡だって。

 

アンコに白味噌! なにそれ。ってなったけど。食べたら、これ好きだなあって思った。

お父さんとお母さんにもって、おばあちゃんにお願いして買ってもらった。

 

そうしてもう一杯お煎茶だけをいただいて、頼んでおいたお土産の味噌餡柏餅を私が持って。その近くのお漬け物屋さんに入った後に、忘れ物に気が付いた。

 

あれ? 肩から下げていたはずのポシェットが無い。

 

多分、さっきのお茶屋さんだ。肩から外して、横の椅子に置いた記憶があった。

 

 

「取って来るね」

 

 

おばあちゃんが着いて行くと言ったけど。大丈夫だよ。すぐ近くのお店だから。と、お店を飛び出した私だったが、迷いました。

 

お茶屋さんはすぐ近く、たぶん数軒挟んだ並びにあるはずなのに、進んでも進んでも見当たらない。

 

 

あれ? と来た記憶も無い道を、何のためらいも無く曲がり、また戻って、進んで。

 

似たような店構えが続き。歩いて歩いて、覗いて。覗いて、歩いて歩いて。

 

毛利蘭、七歳。

この日、生まれて初めて迷子となってしまいました。

 

 

 

 

 

「えー。どこだっけ」

 

 

京都独りぼっちな私。完全に迷子になりました。

 

恐らくお漬け物屋さんを出たところで、反対方向へ曲がってしまったのでしょう。

 

目標物のお茶屋さんが見当たらない時点で、まだ戻れば問題が無かったはずなのに。

思いきりよく突き進み。戻るつもりが逆に曲がり、曲がった記憶も無い角をさらに曲がって、進んで曲がって。本当に見知らぬ路地へと入り込みました。ごめんなさい。

 

後天的に臆病で慎重と言われる性質となった私だけれど、元来は物怖じせず大胆だったという、反する物を実は備えておりました。

 

つまり今回の事故(迷子)は、後者の本来の私の性質が出ての不運だった。

 

普段の学校や習い事の場では大人しくしている私が、出先で気持ちが開放的になっていたことが原因で迷子になるとは、きっと誰も思わなかっただろう。

 

今までは外出先でも、おばあちゃんやお父さんお母さんから、臆病な私は離れたことが無かったため、誰も知らなかった。

 

 

もちろん私も分からなかったし、知らなかった。まさか、自分が方向音痴だったなんて。

 

のちに決断力のある方向音痴と言わしめた私の。困った癖が発覚したのが、この日のことだった。

 

うわあ。どうしよう。

 

 

 

 




狼は毛が抜けても、悪い癖が直らない。

確か、 三つ子の魂百まで 的な意味合いだったように思う。

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