風少女 〜蝶の羽ばたき〜   作:小方

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△18 ショートブレッドとミルクティー

イギリス土産だと有希子さんにご馳走してもらってから、ショートブレッドにはまってしまった。

 

ブレッドがパンという意味を持っていると聞いて、どこがパンなの? クッキーじゃないの?と最初は言いたくなったが、それならカップ焼きそばは焼いてないよね? あれはカップ茹でそばでしょ。というのと同じ様な屁理屈だから、何も言わない。

 

まあ、パンと言われてるけど、実際のところショートブレッドは、バタークッキーだ。

ただそのまま水分無しで食べると、口の中が非常にもっさりする。しっとりでもまったりでもない、もっさり。

 

バターが多いせいなのか、どっしりと重くて、なんとなく舌に粘り付く。しかも初めて食べた銘柄は、私にはかなり甘く感じた。美味しいんだけど、ちょっとストレスが溜まる。

 

 

 

 

ショートブレッドとの出会いはそんな感じだった。

衝撃の出会いに慌てて紅茶を飲んで、舌がスッキリして納得した。紅茶のお供として食べることを想定されているからだわ。これ。

むしろ紅茶が無かったら、キツかった。

 

そんな感じの第一印象だったのに、なぜか妙に癖になってしまった。

 

おばあちゃんが簡単に作れると教えてくれたので実際に作ってみたら、材料の種類は少ないし、レシピは単純。まさに料理初心者向けのお菓子だった。

 

なんだろうな。第一印象の悪い人と付き合ってみたら、妙に波長が合ってしまい、意外に相性が良かった。そんな感覚。

おばあちゃんにレシピをいくつか調べてもらって、最近はよく一緒に作っている。

 

でもあのもっさり感は嫌なので、バターを減らしたり甘さを抑えたりして、レシピは甘さを控え目に改変している。

自分は甘いものが好きだと思ってたけど、それほどじゃなかったみたいだ。

 

 

 

ショートブレッドを見ると、どうしても工藤さん一家を連想してしまう。初めて食べたのが、工藤さんのお宅だったこともあるだろうけど、たぶん語りに語っていたうんちく王の優作さんのせいだろう。

 

ショートブレッドはスコットランド発祥と優作さんが教えてくれたけど、あの人たちがイギリスへ行った理由は、シャーロックホームズなんだろうな。

 

優作さんがホームズの話をするときは、新一君も食い付いて来るから、あの親子は余程ホームズが好きらしいし。

 

 

 

『新ちゃんったら、ホームズがするからって、ヴァイオリンを習いたいって言うの』

 

 

この前、有希子さんが言っていた。好きでも中々そこまではやらないだろうから、新一君は余程のホームズマニアなんだと思う。結局どうしたかは知らないが、あの様子なら近所のヴァイオリン教室に行けば、新一君の姿があるかもしれない。

 

 

 

ホームズ好きの彼らが言うには、ホームズは紅茶と同じくらいコーヒーもよく飲んでいたらしいけど、私は紅茶派。だから今日のショートブレッドにも紅茶を入れる。

 

有希子さんが入れるように本式のティーポットじゃなくて、ティーパックだけどね。イギリスの人がするように、牛乳は別にちゃんと温めてある。

 

入れる手順を面倒がらず、きちんと守ればティーパックでも美味しいのよとは、おばあちゃんの言葉だ。

 

はい。基本に忠実にだね。アレンジするのは、もっと上手に出来るようになってから。

 

それではいただきます。と、おばあちゃんの美味しいミルクティーを先ずは一口飲んで、ショートブレッドをかじった。

 

 

 

 

 

そもそもショートブレッドのショートは、短いのショートじゃない、食感を表すショートらしい。

 

ショートブレッド。サクサクしたパン(クッキー)。

 

 

え? じゃあ苺のショートケーキは?

と思ってたら、あったよ。イギリスの苺のショートケーキ。

本来のサクサクしたケーキという意味通りのが。

 

当時都内でも珍しかった、イギリスの家庭料理のお店に、アフタヌーンティーセットで、イギリス風苺のショートケーキがあるというので、おばあちゃんが連れて行ってくれた。

 

 

うん。そのまま、生クリームとイチゴをショートブレッドで挟んだものだったよ。ただし、形は円形。

 

 

生地がスポンジケーキじゃないから、フォークで上手く切ることが出来ず食べにくかったけど、美味しかった。

やっぱりショートケーキと言ったら、スポンジケーキに生クリームと苺の組み合わせが、浮かぶけど、これはこれで悪くなかった。

 

でも気になったのは、食べたことのないイギリス料理。夕方に近い時間帯だったから、普通の料理を頼む人もいて。厨房からお肉をグリルする良い匂いがしていた。

 

近くの席の人の前に、ウェイターがお皿を置いた。

 

んー。遠目だから分かりにくいけど、サーモンサラダとソーセージかな?

いいなあ。スモークサーモン…。

 

大きなソーセージのお皿には、ソースのかかったマッシュポテトもたっぷり添えられている。

 

「今度来ましょうね」

 

 

って言ったおばあちゃん。忘れないでね。

 




今は手軽に買える赤いチェックの箱のショートブレッドは、実際の私には甘過ぎでした。甘いものが好きな別の人は美味しいと言ってたから、好みによるんでしょう。
でもやはり口の中がもっさりするから、水分は必須。

昔行ったことのある、イギリス料理のお店が美味しかったのは事実です。
イギリス料理が不味いって、本当に? と首を傾げる程度には。
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