風少女 〜蝶の羽ばたき〜   作:小方

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コナンとルパンはよく特別編でコラボしているけど、コナン世界ではルパンの位置ってどうなってるんだろうか。

キッドとルパンって商売敵だよねえ…。ニアミスしていたら面白い。





△24 月の淡さに無常を知る

「あ」

 

「なあに? 蘭ちゃん」

 

「……」

 

 

晩ごはんを食べている時に、歯が取れた。

 

正しくは乳歯が抜けただな。

里芋とイカの煮物を噛んでたら、メリメリって感じであっさりと根っこから取れちゃった。

 

指で押すとグラグラしていたから、けっこう前から気になってたんだけど。無理に抜くのはダメだとおばあちゃんが言うので、ずっと触るのを我慢していた。やっと取れてスッキリしたよ。

 

とりあえず口の中が大変なことになってるから、全部ペッてしよう。

 

 

「ああ、抜けたのね」

 

 

でも抜けた歯と一緒に吐き出した里芋も血染めになってて、おばあちゃんがびっくりしてた。

 

ご飯を中断して席を立ち、口をすすぎに行く。うわー。口の中が血だらけで、凄く気持ち悪い。

 

 

「蘭ちゃん。大丈夫?」

 

「んー」

 

 

何度も口をすすいだけどなかなか血が止まらなくて、ティッシュで押さえた。

 

 

「もうご飯いらない」

 

 

別に痛くはないが、今食べてもたぶん血の味しかしないだろう。おばあちゃんにお茶だけもらって、ソファに腰を下ろした。

 

何となくテレビのリモコンを手に取って電源を点けると、ニュース番組をやっていた。特に関心は無かったが、そのままにした。

 

 

『世紀の怪盗、キッドが最初に現れたのはパリでした。以降キッドは主に宝石を専門に狙い…』

 

どうやらニュースではなくて、過去に起こった未解決犯罪を振り返る特集番組だったようだ。今はちょうど怪盗キッドの事件簿とやらをしていた。

 

 

『犯行予告状を送りつける大胆さ、思いもよらぬ鮮やかな手口で犯行件数100件以上、その被害総額は300億円以上とも…』

 

 

怪盗キッドかあ。ルパン三世か怪盗キッドかと言われる程、有名な大怪盗らしいけど、私は今までどちらの名前も聞いた記憶が無かった。

全然興味が無かったから、右から左へニュースが抜けてたのかもしれない。

 

ただキッドによる被害の数字が、やたらに大きすぎて何だかよく分からないということだけは理解した。

 

 

比較されているルパンとの共通点は、魔法のような手口と見事な変装と声色で。どちらも芸術的に周囲をあざむき、狙った獲物は逃がさないということらしい。

 

 

ルパンには、キッド程エンターテイメント性は無いらしいが、そりゃあそうだ。犯罪者がエンターテイメント性を求めて、どこへ行き着くつもりなのか。

 

始めこそキッドの軌跡を追う流れだったのが、なんだか流れが変わってキッドの熱狂的なファンだというコメンテーターの女性が、キッドについて熱く語り始めた。こういうのを編集もせずに放送するとか、今思うと番組はキッドをどうしたかったのだろうか。

 

私はテレビの電源を切った。

 

 

「変なの」

 

 

犯罪の多発に苦しむこの国で、犯罪者であるキッドを迎合するような番組の主旨が苦痛で、続けて視るのが嫌だった。

 

 

「人の物は欲しがったらダメなんだよ。お父さんの仕事が増えちゃう」

 

 

ただでさえお父さんの仕事が忙しくてあまり会えないのに、仕事が増えるようなことを歓迎出来るはずがない。私はキッドが嫌いになった。

 

さっき耳にしたエンターテイメントという言葉に、ふと黒羽さんと快斗君が浮かんでいた。

 

違う。キッドは人を困らせる犯罪者。私たちを喜ばせてくれる黒羽さんたちとは違うから。

 

 

そういえば快斗君とは住んでいる所は離れているのに、不思議と出先でちょくちょく出会った。まーさんが言っていた縁があるというのは、こういうのを言うんだろうなと思った。

 

快斗君もきっと運命だなと笑っていた。

自然と普通に連絡して会うようになり、新しいマジックが出来るようになると見せてもらっている。

 

先月は快斗君の同級生の女の子、青子ちゃんとも一緒になって、遊んだ。楽しかったなあ。

 

快斗君のお父さんの黒羽盗一さんが、マジックの舞台の事故で亡くなったとニュースで聞いたのは、それから間もなくのことだった。

 

 

 

 

 

 

お葬式で喪主のお母さんの横で唇を真一文字に結び、泣くのを我慢している快斗君に、私はなかなか近づけなかった。

快斗君はしきりに、蒼白い顔色のお母さんを気にしているようだった。

 

 

ああ、彼はお父さんの黒羽さんの代わりに、お母さんを守ろうとしているんだ。そう思ったら涙が止まらなくなってしまった。

 

 

「なに蘭が泣いてるんだよ」

 

 

だって快斗君が泣いてないから。

 

 

「そんなに泣いたら、目がとけちゃうよ」

 

 

結局私があまりに泣くので、快斗君がお母さんを置いてこっちに来てしまったのは、本当に申し訳ないと今も思う。

全く我ながら呆れてしまう。慰めるどころか、逆に快斗君と青子ちゃんに慰められてしまった。ごめんなさい。

 

私を慰めながら、お父さんのようなマジシャンを目指すと言った快斗君。応援してます。

 

絶対出来る。だって快斗君は魔法使いだから。って言ったら嬉しそうだった。

 

うん。彼なら大丈夫。きっと夢を叶えることが出来るから。

 

 

 

 

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