風少女 〜蝶の羽ばたき〜   作:小方

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原作でも新一君と蘭ちゃんの仲が深まる要素って、幼少時を外してしまったら無さそうかも。

まず二人の趣味嗜好に接点が無いし、性別が違えば回りの目もあって反発心も出て来る。

大きくなって出会ってたら、きっとこんな感じで上手くいかない。




▽9 海より山派? いやいや。むしろインドア派

工藤さん家のピアノが弾きたい。そう思っても、なかなか行く気にならなかった。主に構ってきすぎる有希子さんのせいで。

 

それでも欲求に耐えられず、とうとうお邪魔することにした。

 

有希子さんには、いつでもピアノを弾きに来ていいのよ。と言われたが、お父さんじゃあるまいし突撃するのは失礼が過ぎる。

なんて親子だと思われそうなので、きちんとお邪魔させてくださいと、事前に電話をしました。

 

親しき仲にも礼儀あり。

お父さんがおばあちゃんに良く言われているが、全く身に付いてない格言だね。駄目だよ。

 

ともかく私は、親しくないので尚更きちんと礼儀は大事。

 

そうしてお邪魔した工藤さんのお宅でピアノを堪能させていただき、有希子さんにジュースとお菓子を勧められるままごちそうになりました。

 

今回は予測して、お昼ご飯は少なめにしましたよ。

 

 

「蘭ちゃんは本当にピアノが好きなのね」

 

「ええ。家でも暇さえあれば弾いているわねぇ」

 

 

習い始めの下手なピアノをBGMに、お話しをしていた有希子さんとおばあちゃん。

私がまだ小1で道にも慣れていないので、おばあちゃんが連れて来てくれました。

 

 

「蘭ちゃん。喉は渇いてない? ジュースがあるわよ」

 

 

「ください。手を洗ったら」

 

「あら、お利口ね。新ちゃんもそうなら良いのに」

 

 

手が汗でベタついて気持ちが悪いまま飲食するのは嫌なので、有希子さんに断ってから手を洗いにリビングを出た。

 

 

「あ」

 

 

「こんにちは」

 

 

廊下を出た途端、サッカーボールを抱えた新一君と遭遇した。取り合えずペコリとお邪魔してますのご挨拶。

新一君の返事を待たずに手を洗いに行った。

 

ついでに用も足して、リビングへ戻ったら新一君がいて、手を洗えと有希子さんに叱られていた。

 

 

「もう。新ちゃん、そんな汚れたボールを持ち込まないで。おやつはまだよ。手を洗って来て」

 

 

注意しながら有希子さんが、手洗いから戻った私を引き合いに出して叱るから、手を洗いに行く新一君に睨まれた。

 

えー。私は悪くないよう。

 

 

 

 

新一君も交えてのおやつタイムは、主に大人ばかりが喋っていた。私と新一君の間に会話は無い。

 

だって話すことなんて無いし。

 

 

「あの、おば様。今度家族で海に行く予定なんですが、ご一緒しませんか?」

 

「あら、いつ?」

 

 

予定は来週ですか。うん、お盆過ぎた海はクラゲだらけになるものね。行くなら、その頃になるでしょう。

 

 

「おばあちゃん、駄目だよ。合宿があるから」

 

「ああ、そうだったわね」

 

 

残念ながら、バレエ合宿の予定がありました。嬉しそう? えー。

 

そりゃあ、なんの接点もない新一君の遊び相手として海に行くより、バレエ教室のお友達と過ごしたいのは当たり前でしょう。ねえ。

 

ほら。横で新一君もどうでも良さそうな顔をしてるし。不参加で良かったでしょう。

 

分からないかなあ。歳が同じだからって、セットにまとめられても、私たちは戸惑いしかないんだよね。

 

何より私、バレエ合宿の話を聞いてから、凄く楽しみにしてたんだから。

 

だからごめんなさい。有希子さん。食い下がらないで下さい。

 

バレエ合宿では、バレエの練習以外に森の中を散策したり、みんなでご飯やおやつを作ったりする予定らしい。

 

帰りには軽井沢でお買い物も出来るというから、おばあちゃんにお土産を買って帰ろう!

 

というわけで、私の頭の中はすっかりバレエ合宿モード一色なんです。

 

残念ですが、また今度機会があれば誘ってください。

 

ちなみにバレエスタジオでは、冬にスケート教室とスキー教室も企画しているそうですが、一応参加を予定しています。

 

リゾートホテルに宿泊で、父兄の参加も可能って…行きたい!

 

バレエと何の関係が? とおもったら、普段の生活やバレエで使わない筋肉を付けたり、色んな経験を体験させて自立心を育てる方針らしいです。

 

 

凄い考えてるな。お母さんもこのバレエスタジオは良いわよって言ってたから、問題は無さそうです。

 

なんでも大人バレエのコースを、お母さんと一緒の事務所のスタッフさんも何人か受講しているから、知ってたよう。

 

スポーツジムに行く感覚で、バレエのコースを取る女性は多い。スタイルが綺麗になって、練習着もオシャレだって理由かな。大人の生徒さんが巻いてる巻きスカートとか、素敵だからね。

 

宿泊はリゾートホテルで、移動にはバレエ教室の送迎バスがあるし、スキーもスケートも現地のインストラクターが付くらしいし、至れり尽くせり。

 

去年のスキーインストラクターは、元日本代表の人だったっていうから凄い。

 

でもみんなを見てると、自立心とかより、単に楽しいから参加を希望しているようだった。

 

そもそも、うちのバレエスタジオは、本格的にバレリーナを目指す人には向かないからなあ。

 

 

バレリーナ育成より、バレエを土台に別になにかしらのスポーツをしたり、体力と綺麗な体を作りたい人が通うところだから、遊びの要素が多いんだ。

 

そう言う私も、週に二回しかレッスンには行っていない。私にはピアノが一番だから。

 

数あるバレエ教室の中から、おばあちゃんはここを選んで勧めてくれたんだけど、大正解だったよ。バレエ教室のお友達とは、和気藹々と楽しく学んでいる。

 

私がバレエを習っていると言うと、じゃあ将来はバレリーナね。と言われるし、有希子さんにも訊ねられたが、違います。

 

私の夢は、別にあるんだ。

 

 

 

 

で、後で有希子さんから聞いたけど、私は行かなかった海には、新一君と同じ学校の同級生を誘ったらしい。

 

うん。ろくに接点も親交もない私と行くより、新一君も楽しかったでしょう。

 

えー? 何か事件があったんだ?

大変でしたね。

 

 

 

 

 

夏休みも終盤に、偶然町の図書館で、新一君と明るめのボブカットの女の子と行き合った。

 

すれ違いざま私は、ペコリと頭を下げた。

 

 

「誰?」

 

「母さんの知り合いの子供」

 

「ふうん」

 

 

後ろからそんな会話が聞こえた。

 




有希子さんの押しの強さに負けず、蘭ちゃんがバレエ合宿を満喫している間に、さざなみ編が終了しました。

若い赤井さんと新一君との出会いに立ち会うこともなく、赤井さんに世良ちゃんをヨロシクとも言われません。

交代要員は、きっともう一人の幼馴染みでしょう。問題無い。

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