快楽天が逝く。   作:Leu

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お待たせしました。


懸念

「それで?化け物が村人の命乞いにでも来たのか?はっ、何とも滑稽な話だな」

 

そうニグンはキアラを鼻で笑うが、彼の内心では焦りに満ちていた。スレイン法国の精鋭部隊として戦って来た彼は、当然人間ではない異形の存在とも数多くの戦闘を行ってきた。法国は人類で団結し、それ以外の種族を淘汰することを国是としている。そのため、むしろ人類種以外と戦うことの方が多いくらいだ。そんな歴戦を潜り抜けてきたニグンですら目の前にいるようなモンスターを見たこともない。そして何より今まで彼が培ってきた経験と、生物としての本能が総動員して自分に告げているのだ。"あれはマズイものだ"と。

 

(くそっ!あんな化け物がガゼフストロノーフの味方をしてるなんてきいてないぞっ!どうする?奴を抹殺するという目的は果たした。ならばここは1度撤退すべきか?)

 

そうして膠着した様相のキアラとニグン達をアインズはアルベドと少し離れた場所から透明化の魔法を発動して観察していた。

 

(しかしキアラさんも大胆だなぁ。監視がないのも確認して、情報系魔法での干渉も退けたとはいえ、あんな堂々と敵の前に出ていくなんて.....いやあの感じ、絶対あの人楽しんで遊んでるな)

 

アインズはジト目でキアラを見る。そんな視線を彼女が知るわけもなく、楽しそうに口を開いた。

 

「あなた方は私が慈悲を与えた村人達を殺すと仰っていましたね?そんなあなた方の前に私が立ちふさがるのは道理ではございませんか?そんなこともわからないとは、人間とはかくも愚かしくていけませんわ」

 

「何だと?化け物風情が大きく出たな。いいだろう!我々の使命は貴様のような異形をこの世から絶滅させること!人類を嘲笑ったその罪!その身で贖うがいい!総員!全天使で攻撃を仕掛けろ!」

 

ニグンの号令でそれぞれが天使を操り、キアラに向かって攻撃を仕掛ける。

 

「ウフフフフ.....では、蹂躙いたしましょう。スキル発動"大頭七野干法(だいずしちやかんぽう)"」

 

キアラは手を広げそれを発動すると、突如として彼女の頭上に直径2メートルほどのエネルギー体が出現する。それはまるで底知れぬ闇が渦巻いているような有様で、この世の悪意を凝縮したような醜悪さを放っていた。そしてそれは中から溢れ出す何かに耐えきれなくなったかの様に爆発し、細かい散弾となり1つ残らず一寸の狂いもなく天使達を襲い、攻撃を受けた天使達は一切のなすすべも無く全て消滅した。

 

「なぁっ!!あれだけの天使を一瞬でっ!?くっ!監視の権天使(プリンシパリティ・オブザベイション)!かかれ!」

 

監視の権天使(プリンシパリティ・オブザベイション)。ニグンが使役するその天使は、その場から動かないことを条件に、本来は味方の防御力を底上げできる補助に特化した天使だか、もはや強化していた天使達が全滅してしまったのでニグンは迷う事なくそれを動かした。監視の権天使(プリンシパリティ・オブザベイション)はキアラに接近すると、持っていたメイスを彼女の頭上に振り降ろしたが、キアラはその一撃を軽く片手で受け止めた。

 

「捕らえましたわ」

 

次の瞬間、地面から現れた白い大きな手が、監視の権天使(プリンシパリティ・オブザベイション)を鷲掴みにした。監視の権天使(プリンシパリティ・オブザベイション)は何とか脱出しようともがいてはいるが、ガッチリと捉えたその手が解けることなさそうだ。そしてメキメキと鈍い音を響かせると、その白い手は監視の権天使(プリンシパリティ・オブザベイション)を握りつぶし、光の粒へと変えた。

 

「ありえるかぁっ!?上位天使がたったの一撃だとぉっ!?そんなバカなことがありえるかっ!!」

 

「ニグン隊長!我々はどうすれば!?」

 

隊員たちが狼狽える中、ある事を思い出したニグンはニヤリとすると懐から何かをを取り出す。

 

「最高位天使を召喚するっ!」

 

彼の取り出したのは手のひらより一回り大きな水晶の結晶だった。それを見たキアラは少し目を細める。恒星天の熾天使(セラフ・エイスフィア)至高天の熾天使(セラフ・ジ・エンピリアン)が出てくるのなら多少なりとは手間取るが、別に勝てないことはないと判断した彼女はそのまま傍観するとこにした。

 

「あれは魔封じの水晶か?」

 

「えぇ、超位魔法以外なら魔法を封じ込められるユグドラシルのアイテムですね」

 

いつの間にかアルベドを引き連れ隣に現れたアインズに応えるキアラ。

 

「なるほど...アルベドよ。スキルを使用して我々を守れ」

 

「はっ!」

 

「ウフフ...アインズさんは心配症ですねぇ。私がただの召喚獣に負けると?」

 

「まさか。ただあまり慢心するのは感心しないな?どんな状況でも常に相手が自分の実力を上回ることを考慮しなくては」

 

「....そうでございますね。少し戯れが過ぎたようです」

 

キアラは少し申し訳なさそうにアインズに笑いかける。ニグンは突如現れた二人組と、それと言葉を交わすキアラを見て眉をひそめた。

 

(あれはやつの仲間か?だが今更仲間を呼んだところで勝ち目などっ!)

 

「さぁ見るがいい!最上位天使の尊き姿を!威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)!」

 

眩いばかりの輝きと同時に現れたのは、先ほどの天使達よりひとまわりもふたまわりも大きな天使だった。その天使の輝きであたり一帯は青白く照らされ、周囲に漂う純白の羽は神からの祝福のようだ。隊員達はその神々しさに歓声をあげ、勝利を確信した。ニグンも勝ったと言わんばかりの笑みでキアラ達を見ると、アンデッドの方はまるで絶望に打ちひしがれたかのごとく、顔を手で押さえていた。

 

「恐ろしいか?怯えるのも仕方ない」

 

「........くだらん」

 

「なに?」

 

「この程度の幼稚なお遊びに警戒していたとは」

 

「そうですね....私、少し飽きてきましたわ」

 

アインズは全く話にならないとばかりに首を横にふり、キアラは眠たそうに欠伸をする。そんな緊張感もなにもない姿を見たニグンは、大量の冷や汗をかきながらゴクリと唾を飲み込んだ。この水晶に込められた魔法は第七位階魔法。人類では決して到達できないと言われている領域の魔法だ。もし彼らの言っている事が本当で、この威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)がお遊びにしかならないとしたら、果たして人類が彼らに対抗するすべなどあるのだろうか?

 

(いや!ハッタリに決まっている!魔神をも消滅させる一撃だぞっ!?)

 

「っ....!!!”善なる極撃(ホーリースマイト)”を放てっ!!」

 

ニグンの命令と共に威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)がゆっくりと動き出すと、持っていた笏が砕ける。そしてそれが威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)に吸収されると、天使の輝きがさらに増し、一瞬、頭部が激しい閃光を放った。次の瞬間、巨大な光の柱がアインズとキアラのいる場所を貫いた。大きな轟音と共に衝撃波が辺りを駆け、ニグン達は吹き飛ばされないように足を踏ん張る。

 

(流石は法国に伝わる秘宝。この威力ならもはや灰すら残らないだろう)

 

一人勝利に酔いしれるニグンは口をニヤリと歪める。しかし彼の耳に届いたのは絶望を知らせる笑い声だった。

 

「ふははははは......これがダメージを負う感覚!痛みか」

 

「羨ましいですわ。私、常時発動型(パッシブ)スキルのおかげで全くダメージを感じられませんの」

 

「いや、俺と同じカルマ値-500なのにダメージが通らないとか相変わらずどんだけチートスペックなんですか...」

 

アインズも弱点である神聖属性魔法にガチガチの対策を施してはいるが、それでもカルマ値がマイナスであればあるほどダメージが増える”善なる極撃(ホーリースマイト)”を、微々たるダメージとはいえ完全に防ぐ事はできなかったようだ。それをキアラは同じカルマ値でありながら全くの無傷という耐久性を見せ、その見事なチートっぷりにアインズは内心、”俺よりこの人の方が魔王向いてるんじゃないかなー”とか思いつつ、思わず支配者ロールを忘れ素でつっこんでしまった。

 

「か...か.......下等生物がああああぁぁぁぁぁっっっ!!!!!!」

 

「ひいぃぃぃぃっっ!!!」

 

「アインズ様っ!私の超!超!愛している御方にっ!!痛みを与えるなどっ!ゴミである身の程をしれえええぇぇっっ!!!!」

 

さっきの攻撃で彼らが生きている衝撃に言葉を失っていたが、突如キレたアルベドを目の当たりにして今度は失禁してしまいそうな顔で怯えだすニグン。

 

「やっぱり私はそこに入っていないのですね...」

 

「あー...んんっ!良い、アルベド」

 

「で!ですが!」

 

「良いのだ。天使の脆弱さを除き、ありとあらゆる事態は私の狙い通りだ」

 

「では今度はこちらの番でございますわ」

 

アインズが暴走したアルベドを一歩下がらせると、代わりにキアラが前へと出る。

 

「大悟も解脱も我が指一つで随喜自在。行住座臥(ぎょうじゅうざが)など泡沫(うたかた)なれば、(あまね)く衆生を招きましょう。さぁ、私の胎内(なか)へ.......”快楽天・胎蔵曼荼羅(アミダアミデュラ・ヘブンズホール)”」

 

キアラが印を結びながら唄うようにスキルを発動すると、威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)の目の前の空間に亀裂が生じた。そしてとても耳障りで不気味な音をたてながら、その亀裂はゆっくりと開く。ニグンはその中の光景を目にした途端、猛烈な吐き気に襲われた。そこはまるでこの世の全ての醜悪さをかき集め、無理矢理に詰め込んだような有様で、中では何か得体の知れない触手のような物がうねうねと動きながらぎっちりとひしめき合っている。

 

「なんというか...すごいな、あれ。確かユグドラシルでは広範囲に防御無視の即死攻撃だったか?」

 

「えぇ。まぁユグドラシルの時と違い、感覚である程度範囲などをコントロールできるみたいですけれど」

 

「なるほど。それは面白い」

 

ニグンたちの恐怖などつゆ知らず、冷静に分析をする二人。その内に亀裂の中から無数の細く白い手が威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)に伸びる。そしてその体をがっちりと掴むと、徐々に亀裂の方へと威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)を引っ張って行く。もはやニグンにはその様子になすすべも無く、愕然とした顔で威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)が呆気なくその亀裂に溶かされながら飲み込まれて行くのを見ているしかなかった。

 

「そんな.......魔神をも超える力...お前達は一体......」

 

「我々はアインズ・ウール・ゴウンだ。この名はかつて知らぬ者がいない程轟いていたんだかな....では遊びはこれくらいにしよう」

 

「まっ!待ってほしい!アインズ・ウール・ゴウン”殿”!いや、”様”!私たち!いや!私だけで結構です!い、命を助けてくださるなら!望む額を用意いたしますっ!」

 

「あなたは間違っているわ。人間という下等生物であるあなた達が頭を下げ、命を奪われる時を感謝しながら待つべきだったの」

 

「確かこうだったか?”無駄な足掻きをやめ、大人しくそこで横になれ。せめてもの情けに、苦痛なく殺してやる”と」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「さて...」

 

ニグン達との戦闘が終わり、彼らを捕らえナザリックに送った後デミウルゴスに尋問を任せたアインズ。そんな彼の横で尼の服に着替えたキアラは、そばに横たわったガゼフの死体の前に屈む。

 

「それをどうするのだキアラよ」

 

「そうですね。蘇生の実験と私達の名を広めることも兼ねて蘇生の短杖(ワンド・オブ・リザレクション)を使い、彼を生き返らせようかと。あぁ、ちなみにアインズさんが蘇らせたということにしますので話を合わせてくださいね?」

 

そう彼女はにこやかにいうと、アイテムボックスから一本のワンドを取り出した。そしてそれを一度小さく振ると、ワンドとガゼフの死体が緑色の不思議な光を放ち出す。数十秒すると光は徐々に輝きを失い消えて行く。それとほぼ同時に先ほどまで全く息をしていなかったガゼフに呼吸が戻ったようで、胸のあたりがゆっくりと上下しているのが確認できた。

 

「...ん........わ..わたしはいっらい....き..きあらどの?」

 

「目覚められたのですね。どうですか?死から蘇った気分は?」

 

「よ、よみがえり...?」

 

「うむ、やはり経験値の消失は起こるようだな。言語障害はその弊害と考えた方が良さそうだ。まぁしばらく休めば治るだろう」

 

「っ...!?!?も!もんすたー!?!?」

 

キアラの後ろから現れたアインズを目にしたガゼフは驚き慌てて剣を探すが、あたりに剣はなくそれどころか体を起こすことすら難しいということに気が付いた。

 

「あぁ、ガゼフ様。こちらの御方は大丈夫でございます。この御方は我々の神であらせられますアインズ・ウール・ゴウン様でございます」

 

「か..かみ?」

 

「えぇ、私がアインズ様にお願いしましてガゼフ様を蘇らせていただきました」

 

「そ、そうなのか....このたびはかんしゃいたしますごうんさま」

 

「かまわぬ。キアラの頼みであったからな。ではキアラよ。私は先に戻る」

 

「はい。ありがとうございましたアインズ様」

 

アインズはそう言って踵を返すと、アルベドと共に転移門(ゲート)を使いナザリックへと帰って行った。

 

「き、きせきだ...」

 

まだ自分が生き返ったことに実感が持てないガゼフは思わずつぶやく。

 

「アインズ様は偉大な御方です。ただまだ本調子という訳ではなく、信仰が薄いこの地ではあなた一人を生き返らせることが精一杯でしょう。とりあえず私は他の兵士の皆様を治療して村の方々にあなた方を迎えに来て頂けるよう頼んできますね」

 

「かのじょは.....せいじょなのか....」

 

ガゼフは兵達を治療するべく離れて行く彼女の背中を見つめながらそう呟いた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

ナザリック地下大墳墓第9階層・執務室

 

「しかし本当に大丈夫なんですか?俺が神様だなんて」

 

「良いではないですか。魔王を演じようと神様を演じようと根本的には大して変わらないのですから。それにアインズ・ウール・ゴウンの名前をこの世界に広めるのでしょう?」

 

キアラはメイドに用意してもらった紅茶を啜りながら、机を挟んでアインズの前のソファに座ってなんでもないように答える。ちなみに護衛もメイドも守護者達も一時的に全て下がらせ、アインズ自ら静寂(サイレント)の魔法をかけているので今やこの執務室はアインズとキアラの二人っきりという状況である。

 

「それでアインズさん?私に話というのは?」

 

「あぁそうですね。俺たちがこの世界に転移してから数日経ったわけなんですけど、キアラさんは何か自分に変化を感じませんか?」

 

「と言いますと?」

 

「例えば俺はアンデッドになった影響か、一切感情が昂ぶるということがないんです。ある程度感情が昂ぶると抑制されて平坦なものになります。それと、疲れや食欲、眠気を全く感じません。まぁ食欲に関しては当然といえば当然なんですけど...あとは人間という種族に対する価値観ですね」

 

アインズの最後の言葉にピクッと反応したキアラは、飲もうと口まで運びかけた紅茶が入ったカップを持った手を止め、アインズの方を見る。

 

「カルネ村で人間に会った時、まるでそこら辺にいる虫でも見ているような感覚だったんです。ただ少し話してみると飼っている小動物に向ける愛着くらいの感情は湧くんですけど、それだけでどれだけ彼らが殺されようと怒りも悲しみも何も感じませんでした。それでキアラさんはどうなのかなって」

 

「私ですか....私は......そうですね。そんなに変わったようなことはありませんが、強いて言うなら自己中心的になったような気がいたしますね」

 

「自己中心的?」

 

「えぇ。自分がしたいと思ったことに対して我慢ができないと言いますか...」

 

「あぁ、だからカルネ村が襲われていた時、助けたい一心で飛び出して行ったんですね」

 

「いえ、あれはそんな気持ちのいい善意からきた行動ではありません。生物が自分以外の者に害されるのが許せなかったというのが適当な理由でしょうね。あまりうまく説明できないのですけど」

 

「それは”アルターエゴ”という種族故の感情というか特性なんでしょうか?」

 

「えぇ。”知性をもつ全てのものに対する敵対者”、そういう設定ですから」

 

「......それは俺や守護者達にも感じていることなんですか?」

 

「”いいえ”と言ってしまえば嘘になりますね。ただ他の見ず知らずの人間に感じるそう言った欲よりはだいぶん希薄なものに感じますわ」

 

キアラの話を聞いてアインズは悩む。確かに今の所はあまり大変な問題にはなっていないが、これから先どうなるかは未知数だ。

 

「んー....とりあえず根本的な解決にはなりませんけど何か感情を抑制するようなアイテムを探してみます。それでしばらくは様子を見てみましょう」

 

「そうですわね。ありがとうございますアインズさん」

 

キアラはそう言ってアインズに微笑みかける。それを見たアインズは一瞬ドキッとするがすぐに感情抑制が働き沈静化される。そんな毎度のことに心の中でため息をつきながら、さらに今度の方針を詰めるため話を続けるアインズであった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「.......と、以上がスレイン法国に関する追加調査の報告です」

 

「えぇ、ご苦労様デミウルゴス」

 

「いやいや、至高のお二人に比べたらこの程度雑事でしかないよアルベド。では私は失礼するよ」

 

「.......少し良いかしら」

 

アルベドに報告が終わったデミウルゴスが執務室を出ようとすると、アルベドが少し悩んだように彼を引き留めた。彼女らしからぬ不安そうな顔を見たデミウルゴスは眉をひそめる。

 

「どうしたのかね。そんな顔をするとは君らしくもない」

 

「えぇ、そうね。少し不安なの」

 

「不安?」

 

「キアラ様のことよ」

 

疑問符を浮かべるデミウルゴスにアルベドはソリュシャンから聞いた報告をデミウルゴスに話す。

 

「なるほど。そんなことが」

 

「えぇ。でも確かに私もカルネ村にお供した際に感じたわ。不敬な発言かもしれないけど、キアラ様がここを出て行ってしまうのはまだいいわ。一番の懸念はキアラ様とアインズ様が敵対してしまうことよ」

 

「それは....」

 

アルベドの言葉にデミルウルゴスは言葉を詰まらせる。

 

「もしその予想が最悪な現実になってしまったら、私たちはどちらを選ぶか選択を迫られることになるわ。私はアインズ様についていく。あなたは?」

 

「.......いえ、アルベド。あなたは考えすぎです。確かにソリュシャンやあなたがキアラ様に感じたことは事実かも知れません。ただ私はお二人がナザリックの外で星空をご覧になった際、一緒に同行させていただきましたが、キアラ様は我々やアインズ様に慈しむような目を向けていました。あれが嘘であるとも私は到底思えません。恐らくキアラ様は我々に話せないような何かを抱えていらっしゃるのでしょう。我々にそれを信頼してお話してくださらないのは僕として歯がゆい思いではありますが、そんな不敬な憶測をするくらいならキアラ様を支えられるように努めるのが僕である我々の義務ではないのですか?」

 

「......そうね。あなたの言う通りだわ」

 

「さっきの話はここだけの話にしておきます」

 

「えぇ、ごめんなさい。そうしてもらえると助かるわ」

 

デミウルゴスは手を振りながらアルベドの執務室を後にする。

 

(”どちらを選ぶか(・・・・・・・)”ですか)

 

アルベドには考えすぎだと言いはしたが、知に優れたデミウルゴスがそのことに関して考えていなかったわけではない。ただ、こうして事実を含めて突きつけられると改めて考えざるを得ない。

 

(そうなる前に何か対策は考えていた方が良いかも知れませんね)

 

そんな不安が杞憂に終わることを祈りつつ、悪魔は廊下を歩きながら思考を深く落としていった。




最後までご拝読ありがとうございます。
そういえば誤字報告とかすごく便利な機能があると最近知りまして...笑
いやぁ、ものすごくありがたいです!
でゐめにあん様ありがとうございます!
もちろん読んでいただいてる皆様に感謝です!
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