だが後悔はない。
「ではキアラ殿!大変世話になった!」
「いえ、これも聖職者としての務めでございます」
ガゼフは馬に跨りながらキアラに話しかける。カルネ村が襲撃されて数日後、見事に回復したガゼフとその部下たちは王都へ戻る準備を整え今まさに出立するところだった。
「それでは私の気が済まないのだ。今度王都へ来られた際は是非うちへ来て欲しい!歓迎しよう!」
「ウフフ...ではその時はお願いいたしますわ」
「任せてくれ!ところでアインズ様の御姿が見えないが?」
「アインズ様でしたら御休息のために拠点へと戻られました。ガゼフ様を生き返らせるのに少々力を使い過ぎたようです」
「そうか...あの方にも感謝を申し上げたかったのだが」
「そのお気持ちだけで十分でございますよ。アインズ様には私から伝えておきますわ」
「そうしてくれると助かる。ではキアラ殿!またいずれ!」
ガゼフはそう言い残し馬に蹴りを入れ部下を引き連れ颯爽と村を去っていった。その様子を目を細めて姿が見えなくなるまでキアラが見つめていると不意にアインズが隣に現れる。
「なかなか好感の持てる人ですね」
「そうでございますね。あれではさぞ生きづらいでしょうに」
「キアラさんはああいうの嫌いなんですか?」
「.....いえ、ただ少し眩しいなと。私にはできなかった生き方ですので」
キアラはそう言うと悲しそうに笑う。アインズはなんといって良いか言葉が見つからず、迷った挙句キアラの肩をそっと抱き寄せる。
「アインズさん...?」
「キアラさんに何があったのかは俺にもわかりません。ただ俺もナザリックのみんなも、キアラさんの側にずっといますよ」
「......ウフフ.......そうですね。私に何かあったときには助けてくださいね?アインズさん」
「えぇもちろん」
二人は互いに笑い合うと、アインズの
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ナザリック地下大墳墓第二階層にあるシャルティアの自室。そこへアルベドはシャルティアにとある用件を伝えるために訪れていた。
「お茶会…でありんすか?」
シャルティアはまさかアルベドからそんな誘いを受けるとは思いもしなかったので、少し訝しげに眉をひそめる。ここ最近アインズによる”働き方改革”が実行されており、年中無休死ぬまで働く(まぁ死んでも働いている者も大勢いるが…)社畜精神を何とかするべく守護者達を含め、ナザリックにいる全しもべ達に休憩時間が設けられている。そのおかげというか
「えぇ、キアラ様がナザリックにいる女性陣を集めて開くそうよ。アウラと、あと手の空いているプレアデス達にも声をかけたわ」
「そうでありんしたか。えぇ、是非参加させて頂きますとキアラ様にお伝えくんなまし」
「わかったわ。時間は今から1時間後。場所は第九階層のパーティールームよ。私は準備があるから先に行くわね」
アルベドはシャルティアにそう告げるとアインズから直々に貰ったリングで転移していった。
「ぐぐぐぐ….見せつけるように転移しなくてもいいでありんしょうにっ!」
シャルティアは羨ましそうに転移が行われた空間を睨め付けると、自分も準備のために僕である
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「それでは皆さん揃ったようですし、女子会と参りましょうか」
キアラの希望で第九階層のパーティールームに集まったアルベド、シャルティア、アウラ、ユリ、ナーベラルの5人。ソリュシャン、エントマ、シズ、ルプスレギナは残念ながら仕事があったためここには不在だ。
「しかし、メイドである私達が一緒の席に座るなど...」
畏れ多いといった口調でユリが不安げに口を開く。ナーベラルも同じような気持ちなようで、顔には戸惑いが見て取れた。
「構いません。そんなに不安なのでしたら紅茶がなくなった時の給仕は2人にお任せ致しますわ。とりあえずまずはナーベラル。皆にお茶を淹れてもらますか?」
キアラは三人ににこやかな笑顔で告げ、その言葉に三人の顔は一気に嬉しそうなものへと変わり、指名されたナーベラルは主人の期待に応えるべく席を立ち上がり、側に準備してあったワゴンで紅茶を淹れ始める。そんなナーベラルの入れる紅茶の良い香りを楽しみながら、ふとアウラが疑問を口にする。
「でもキアラ様?どうして急にこんなお茶会を?」
「いえ、特に深い意味はございませんが、皆さんともう少し仲良くしたいなと思ったのですよ。それに昔はよくこうしてぶくぶく茶釜さんややまいこさん、餡ころもっちもちさんとこうして女子会をしたものです」
キアラはそう語ると、懐かしそうに目を細めて笑う。その様子は一つの芸術作品とでも呼べるほど絵になっており、その美しさに皆が息を飲み顔を赤らめる。
「あら?皆さんどうしたのですか?そんなに顔を赤くして」
「い!いえっ!そのっ…キアラ様はお美しいなと思いまして....」
ユリが恥ずかしそうに言葉を尻すぼみにしながら言う。
「ウフフフ...そんなことはありませんよユリ。貴方はやまいこさんに似てとても素敵な女性です。そういえば彼女、貴方を作る際に”自分に似せたんだ”って大はしゃぎで語っていましたっけ」
「そうだったんですか....やまいこ様が僕を......」
ユリはキアラの話を聞くと、小声ではあるが素が出てしまうほど嬉しそうな様子で呟いた。
「アルベド?どうかしたのでありんすか?さっきから随分と難しい顔をしてありんずが」
ふとシャルティアがアルベドの異変に気がつく。彼女は先ほどから視線を下に向け誰とも顔を合わそうとせず、どこか悩んでいる様子だったが、意を決したように顔をあげ、キアラを見据える。
「キアラ様。大変不敬であるのを承知でお訊きしたい事がございます。キアラ様は何故ナザリックを離れていらっしゃったのですか?」
その質問に皆の表情が固まる。ただアルベドだけはキアラを真剣な眼差しで見据えており、彼女のそんな様子にキアラは苦笑いをしつつ飲んでいた紅茶のカップを置いた。
「そうですわね。アルベド、貴方が思っていることは何と無く私もわかります。自分が見捨てられたのだと思って恨んでいるのですね?そう思うのは当然のこと。私はそれをどうこう言える立場ではございません。まぁその.....他の方の事情は私にもわかりかねますが、私がここを離れたのは病気のためでございます?」
「びょ、病気?至高の御方であるキアラ様が....?」
「ナーベラル、私は貴方が思っているよりも強くもないし万能でもないのですよ。あなた方に説明するのは難しい話ですけれども、元々私達の本体は”リアル”にあります。そしてこっちの世界で自身の端末を作り、それを動かすことで今まで貴方達に干渉する事ができたのです。だからいかにこっちの体が元気であろうと、本体に異常があればそれはこちらの世界での死に繋がるのです」
「じゃ、じゃあ他の至高の方々はその”リアル”で死んじゃったって事ですか?」
「いいえアウラ。ただ向こうの世界はこちらの世界より生きづらいのです。生きるためにここを離れた。だから誰もナザリックのことを好き好んで捨てたわけでなないと私は思いますわ」
「そうなんですか…」
アウラはそう呟き、寂しそうに俯いた。
「そ、それでキアラ様は!?その”本体”が死んでしまったらこちらのキアラ様もいなくなってしまわれるのでありんすか!?」
「いえ、おそらくそれはないでしょう。このナザリックが異世界に転移した際、こちらの端末である私が本体として機能し始めたようですし。納得していただけましたかアルベド?」
「はい。私の不敬な質問大変失礼致しました。この罰はいかような形でも受ける所存でございます」
アルベドは椅子から離れキアラの前に跪く。
「そう思うなら座って一緒にお茶を楽しみましょう。せっかくナーベラルが淹れてくれたお茶が冷めてしまいますわ」
キアラはそう言ってアルベドを制するとにこやかに笑う。そして思い出したように今度は彼女がアルベドに問いかけた。
「ところでアルベドは結局のところアインズさんのことをどう思っているのですか?」
「へ?」
アルベドは思わぬ質問にキョトンとした顔を浮かべる。
「いや、サキュバスとしてアインズさんと
「それはもちろん愛しておりますとも!確かにアインズ様と床を共にしたくてしたくて堪らないですけれども...」
「これだからサキュバスは嫌でありんすね。どこでもいつでも盛っていて見苦しいこと極まりないでありんす」
「あら、見境がないのは貴方ではなくてシャルティア?さっきからユリのことをチラチラ熱っぽい視線で見ているようですけど?」
アルベドとシャルティアが睨み合ってる横でユリが顔を少し赤くしながら恥ずかしそうに俯き、さらに横ではナーベラルがそのいがみ合いをハラハラした様子で見ている。アウラはため息をつきながらやれやれと言った様子で紅茶をすすっていた。そんな中、何か少し考えたキアラが爆弾を投下した。
「でも確かにアインズさんとの交尾は興味ありますわね」
「「「「「へ?」」」」」
図らずも5人の声が被る。
「だってアインズさんはアンデットの骸骨でしょう?ものがないのにどうやって
「そこはもう☆自主規制☆を☆自主規制☆して☆自主規制☆するしかないでありんす!」
「シャルティアは甘いわね。アインズ様は☆自主規制☆より☆自主規制☆の方がお好みに決まっているわ」
「ウフフフ....確かにアインズさんは☆自主規制☆好きそうですわね。でもそれですと☆自主規制☆とか☆自主規制☆はどうなのでしょうか?私は受けも攻めもいけますけどシャルティアは☆自主規制☆とかアインズさんが求めてきたらできますか?」
「うぅ...アインズ様がお求めになるのでありんしたら☆自主規制☆どころか☆自主規制☆や☆自主規制☆とか☆自主規制☆でもして見せますでありんすっ!」
だんだんと話が脱線していく痴女三人衆。本来ならアウラが止める場面ではあるのだが、アルベドとシャルティアだけでなくキアラもそこに参加しているためどうにも止めにくいようで、もはやアウラは耳を塞いで机につっ伏しながら止めることを早々に諦めている。ユリは相変わらず顔を赤らめて下を向いているが、その顔は先ほどよりだいぶ赤くなっている。ナーベラルは顔を赤らめながらも多少興味があるのか皆の空いたカップに紅茶を淹れ直しながら聞き耳を立てているようだ。
「だから☆自主規制☆より☆自主規制☆の方が絶対にいいでありんすっ!」
「いいえ!絶対に☆自主規制☆の方がいいに決まっているわ!」
「ウフフフ...では今度アインズさんを呼んで全部試してみましょう」
こうしてカオスと化した第一回ナザリック女子会はこの後一時間ほど続き、アウラは第六階層の自室にげっそりした様子で戻り、マーレに心底心配されたとかされなかったとか。
ーその頃のアインズ様ー
(!?!?なっ!なんだ今の得体の知れない寒気はっ!?)
第六感で謎の危機感に襲われていた。
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私の名前はエンリ・エモット。カルネ村に住むごく普通の村娘です。ある時、騎士達に村が襲われ、お父さんとお母さんはその騎士達に殺されてしましました。何とか妹を逃がそうと必死になって逃げていた私ですが、途中で騎士達に追いつかれ背中を大きく斬られて、もうダメかと思いました。だけどそんなとき、私を聖女様が救ってくださったんです!
「キアラ様ー!!」
「あら、エンリさん。どうかなさいましたか?」
この方が私を救ってくださった聖女様。お名前はキアラ様と言うらしい。すごく綺麗な方で村の男の人はキアラ様に会うたびに鼻の下を伸ばしてる。でもこれだけ美人な方なら仕方ないなと私も思ってしまうくらい綺麗ですごく笑顔が優しくて私もすぐに大好きになってしまった。最近はこの村に教会を建てるために訪れているらしく、その度に私はこうしてキアラ様に話しかけている。
「いえ、特に用があったわけではないんですけどご迷惑でしたでしょうか...?」
「ウフフ...そんなことはございませんよ。ところでネムちゃんはお元気ですか?」
「はい!おかげさまでネムも元気です!お父さんとお母さんが居なくなって大変だけれど何とか頑張ってます!」
「そうですか...」
キアラ様はそう頷きながら少し悲しげな顔で笑う。そんな顔も美人だなんて私は女として自信を無くしてしまいそうになります。ふとキアラ様は何かを思いついたように口を開きました。
「エンリさん。後で教会に来てくださいますか?」
「えっ、教会にですか?でもまだ完成してないんじゃ...」
「いえ、もう全体は完成はしているんですけど、まだ内装とか細かいところが出来ていないだけなので入ることは出来ますよ」
「わかりました!じゃあ畑仕事がひと段落したらお伺いさせていただきます!」
「えぇ、お待ちしておりますわ」
笑顔のキアラ様に見送られながら私は聖女様の特別になれた気がして気づけば思わず嬉しくてスキップをしながらその日の畑仕事へと向かっていました。
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「キアラ様?エンリですけど...」
「あぁ、エンリ。来たのですね。では
私の畑仕事が終わって日が傾きかけた頃、私はキアラ様に会うために教会を訪れました。その場にちょうどいた
「大丈夫ですか?」
「はい。村のみんなも協力してくれますし、何よりキアラ様が居てくださいます」
「そうですか...ではどうして泣いているのですか?」
「えっ...?」
私は目元に手を持っていくと確かにその手が水滴に触れ濡れていました。おかしいな。こんなんじゃいけないのにどんどん溢れて来て止まらないや...
「エンリ。泣きたいなら泣けば良いのです。貴方が妹を守るために強く在ろうとしているのは分かります。ただそれで貴方が壊れてしまっては何も意味がないではございませんか。ですからここで全てを吐き出しなさい。私は貴方の全てを受け入れましょう」
「あぁ..ぅぅ.....うわあああぁぁっっ!!!お父さん!お母さん!どうして死んじゃったのっ!?怖いよっ!辛いよっ!悲しいよっ!おいてかないでよぉぉっ!!!」
私はキアラ様に抱きついてみっともなく泣きました。真っ赤に目を晴らして枯れるまで涙を流しました。キアラ様の服をベトベトに濡らしているのに、キアラ様は私を優しく抱きしめて頭を撫でてくれます。私を包み込むように慈しむように何度も何度も...
「エンリ...こちらを向きなさい」
「....んっ!?」
そう言われて顔を上げると、キアラ様が私の口を強引に奪いました。いきなりのことで思わずキアラ様を押し退けようとしましたが、キアラ様は私の顎を押さえつけ深く深く私の中へと入ってきます。強引で情熱的なのに、その口づけは優しく貪るような口づけで、私は徐々に思考を溶かされ身体から段々と力が抜けていくのを感じました。
「んっ...ふぁ....んむっ.......」
私の口から漏れる甘い声と水の音が教会の中に反響し、その音に私の羞恥心はどんどんと高まっていきます。そしてついに私の身体は自分の体重を支えられなくなるほど力が抜けてしまい、そのままに床に崩れ落ちてしまいました。体が火照っているせいかやけに床が冷たく感じる中、キアラ様はそのまま私を押し倒し、両手を押さえつけるとそっと顔を耳元に寄せて囁きます。
「怖がることはありません。私が一切合切、辛いことも悲しいことも全て溶かして忘れさせてあげますわ。だから安心して私に溺れてくださいな...」
私はきっと、その日のことは二度と忘れることはないと思います。ちょっぴり怖かったけど、やっぱりキアラ様は優しくて美しくて愛おしくて...思い出すだけで胸が苦しくて熱くなります。私はまだこの気持ちがどういう意味なのかはよくわからないけど、キアラ様も私と同じように感じてくれていると嬉しいな...
その後、朝になり教会の椅子の上で目を覚ました私が辺りを見渡しても、もうそこにキアラ様の姿はありませんでした。ただキアラ様は私に毛布をかけてくれていたらしく、私はそれをそっと握りしめました。その時、私は胸元の違和感に気がつきました。そこには綺麗な紫色の石がはまった水玉の形をしたネックレスが掛けられていて、きっとキアラ様が私に掛けてくれたんだと思います。その事実に私は顔が緩むのを感じながら椅子から立ち上がると、軽い足取りで今日の畑仕事に向かいます。もう不思議と悲しくはありませんでした。
「キアラ様、次はいつ会えるのかな...?」
ご観覧ありがとうございます。
とりあえずあんまり話が進んでないですけどとりあえず投稿。
次の投稿はまたちょっと間が空きそうです。
もう少しちゃんと話を練ってある程度のところまで書けたら投稿しよかなと思ってます。
アカギ様
黒装束様
でゐめにあん様
ベル・ラフム@清姫のマスター様
黒帽子様
誤字報告ありがとうございました!