禍の団の二天龍たち   作:大枝豆もやし

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これは番外編です。
本編にはあまり関係ありません。


父兄参観のルシファー
第77話


○月□日

今日から父親になって一周年になった。

息子の成長を記録するために日記を書こうと思う。

というか妻が何か残せっていうから渋々始めてるんだけどな。

 

生まれたのは男だ。俺そっくりの銀髪に、妻そっくりの瞳。

名前はヴァーリにした。俺はもっとカッコいい名前にしたかったんだけど、妻がどうしても譲ってくれなかった。

なんでも俺のネーミングセンスはダサいって。

折角『覇瑠貴(はるき)』とか『王魔(おうま)』とか考えてやったのに。

 

これはいい男に育つな。なんせルシファーである俺と、俺が惚れた女の遺伝子で出来たこなんだから。

強くて賢い子供に育つに決まってる。

 

あと、ガキってけっこう重いな。

 

 

 

〇月△日

ヴァーリを肩担いだら妻にめっちゃ怒られた。

赤ちゃんを肩に担ぐと内蔵に負担掛かるからやめろって。

やっぱガキって脆いな。

 

脆い。

その癖して重い。

重たいなぁ。ガキって……命ってこんなに重かったんだな。

 

 

 

△月×日

ここ数日、俺の元部下が頻繁に家に出入りしている。

どいつもこいつもヴァーリの顔を見るなり、「あなたにはこの先、過酷な運命が待ちうけるでしょう」とか「坊主、お前も数奇な星の元に生まれたが乗り越えられるさ」

とか、「私も出来る限り力になるからどうか折れないでください」

 

とか、辛気臭いことばかり言いやがる。

ふざけんじゃねえ。コイツにそんなことさせて溜まるかよ……。

 

 

△月◎日

やばい、すっかり日記を書くのを忘れていた。

気が付けばもう三年も放置していた。俺の飽き性はなかなか治らねえな。

まあ、三年なんて俺達悪魔にとっちゃ一瞬だけど、人間やハーフにとってはそうじゃねえからな、ちゃんとしておかないと。

 

まあ、俺がコイツより先に逝くと思うけどな。

 

 

〇月□日

ヴァーリが魔力を使った。

まだ言葉どころか簡単な単語ぐらいしか言えねえ癖に、ここまで成長しやがった。

やっぱり俺の息子だな! 流石ルシファーの血族だぜ!

まさかこんな年で魔力を使うなんて俺も思わなかった。よし、今日は宴会だ!

 

けど、出来るなら戦いに関係ない方向に魔力を使ってほしい。

あんな目には遭ってほしくない。

 

 

□月△日

久々に悪夢を見た。

内容は百年以上前の戦争。

殺した敵や、俺の作戦で死なせた部下たちが、俺を恨めしそうに見ていた。

 

『俺らから全部奪っておいて、お前は幸せになるのか』

 

あいつらはそう言っていた。

 

目が覚めたら汗でぐっしょりだった。

 

 

□月×日

今日はヴァーリと遊んだ。

最近ヴァーリが魔力を使うようになったので俺は魔力の扱い方を教えながら遊ぶことにした。

子供は押し付けたものを嫌いになる。俺も親父の趣味を押し付けられたり、家臣に押し付けられたものは皆嫌いになった。

それで押し付けられたものが嫌いになったのをよく覚えている。だから俺はそうしないように心掛けている。

 

こいつには自由に生きてほしい。

誰にも縛られず、自分の意思で、自分の意見で責任を背負ってほしい。

俺みたいにはなってほしくない……。

 

 

×月〇日

最近ヴァーリの魔力の扱いがうまくなった。

魔力が安定して一定の形に保てるようになったんだ。

やっぱこれぐらいの子供は成長と呑み込みが早い。このまいけば俺なんか超えるぞ。

だから今日は戦闘訓練に移行した。といっても触りだけだ。

魔力弾を発射……ではなく、魔力弾でお手玉することにした。

いくら魔力弾が作れるようになったからって、すぐに実戦で使えるわけじゃない。

 

1魔力を集めて弾を作る→2弾を一定の大きさに留める→3生成した魔力弾に運動エネルギーを与える。→4的に当てれるようにする→

5連続で安定して命中出来るようにする→6動く対象を撃ち抜く→8対人訓練

 

この段階が出来るようになって初めて魔力を戦闘で使えるようになる。

戦闘で使いものになるにはこれらをちゃんと出来るようにならなきゃいけない。

まあ、俺みたいにテキトーな悪魔はバカ多い魔力に任せてバカスカ撃ってるけどな!

けど、ヴァーリにはそんな大人になってほしくない。

 

ちゃんとコツコツ練習して、ちゃんとした魔法が使える大人になってほしい。

これはその一環だ。テキトーに魔力をばら撒くだけの下品で幼稚な戦闘をコイツにしてほしくない。

 

こうやってヴァーリと遊んだおかげで今日は悪夢を忘れられた。

ずっとこんな毎日が続けばいいな……。

 

 

×月×日

どんどん腕が上がっていく。

動きながらでも的に当てるし、何なら雑魚悪魔なら倒せるレベルだ。

俺の息子の才能がマジでヤバい。コイツはマジで大物になるぞ!

けど、押し付けたり焦るのは禁物だ。そんなことしちゃヴァーリの才能が無駄になる。

今後が楽しみだ。

 

 

〇月◎日

ヴァーリが神器に覚醒した。

目覚めたのは神滅具、しかも二天龍の片割れだ。

 

俺が留守の間、襲撃されたとこで覚醒したらしい。

念のため転移用の魔法陣を家にセットしたおかげで犠牲が出る前に駆け付けられたが、まさかこんなことになるなんて……。

 

転移して最初に見た光景は、あいつが必死になって戦ってる姿だった。

ボロボロになりながらも、後ろでテメエの母親を庇ってやがった。

ああ、知らねえうちにかっこよくなりやがって……!

 

けど、どうせなら、もっと別の道で覚悟を決めてほしかった!

 

 

◎月●日

あの日から俺はヴァーリとの訓練をやめるようになった。

これ以上戦わせる力を持ったら、こいつは確実に戦いへ赴くようになる。

それは嫌だ。コイツには悪魔がどうだの魔王がどうだのといった下らないものに囚われてほしくない。

自由に生きてほしい、普通に生きてほしい。幸せになってほしい。

けど、俺の願いは叶いそうにない。

 

ドラゴン系の神器は宿主に戦闘と異性を引き寄せる。しかもそれが二天龍レベルになったらいつかは来る片割れとの戦いは避けられないという。

おかげでアイツのために考えた平和で過ごす計画が全部おじゃんだ。

 

なんで……なんでよりによって俺の子供にあんなモンが付いてるんだ!?

 

 

□月○日

最近トラブルが増えた。

おそらくヴァーリの神器が覚醒した影響なんだろうが、半分は俺のせいでもある。

出てくるトラブル内容は魔王に恨みを持つ者や新魔王派の悪魔ばかり。どれもこれも俺に関係するものばっかりだ。

もし俺が普通なら……人間ならこんなことにはならなかっただろう。

 

なんで俺は悪魔何かに……魔王なんかに生まれたんだ?

 

 

□月◎日

嫌だ嫌だ嫌だ。

コイツは普通に生きていくんだ。

 

 

☆月〇

また悪夢を見るようになった。

内容は様々。俺が殺してきた奴らが恨み言を言ったり、見捨てた奴らが俺に縋りついたり……家族を殺されたりと。

 

これは、俺への罰なのか?

何もかも投げ捨てて逃げ出そうとして、俺だけ幸せになろうとした罰なのか?

 

―――ふざけんじゃねえ!!

 

それなら俺だけを狙え! なんで関係のない家族も巻き込むんだ!? クソみたいな俺には家族なんか持つ資格はないって言いたいのか!?

 

だったら、最初から与えるなよ…………。

 

 

★月○日

もう嫌だ…。もう見たくない。

 

 

★月@日

ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!

 

 

★月Ω日

もう何か月もマトモに寝られない。おかげでヴァーリに当たってしまった

俺は父親失格だ

いや、自分の決も碌に拭けず、逃げ出すような屑野郎なんて大人失格だ。

 

そんなある日、カテレアがテロに誘ってきた。もう一度政権を取り戻そうと。

見返りとして他種族の奴隷やら女やらを差し出そうとしたが、無論断った。

今更そんな真似が出来るか。俺はヴァーリの父親なんだ。

もう魔王なんてやってられるか。

 

やってられるかよ……!

 

 

◆月○日

ある日ふと考えた。もし俺が魔王になったら、人員を動かして間接的に守れるんじゃないか?

もう俺一人で家族を守るのは限界だ。だったら他に頼る方が効率的なんじゃないか?

けど、そんな恥さらしなことをしていいのか?

魔王の座から逃げておいて、今更そんなことが許されるのか?

いや、そもそもこのままでいいのか?

 

俺は魔王に就くことで償うべきじゃないのか?

 

 

◆月□日

あれからもう何日も経過した。

悪夢は相変わらず続いている。

あいつらは俺の耳元で言うんだ。

 

「魔王としてもう一度戦え」 「魔王としての責任を果たせ」

 

分かっている、本当ならそうするべきなんだ。

俺には力も財産もある。頼りないが旧魔王も全員生き残っており、部下もちゃんと生き残っている。

出来るならやるべき。もう一度魔王としてやり直すべきだ。

 

けど、そうするには大事なものが増えてしまった。

 

我ながら言い訳にしか聞こえないが、今の俺にとってはすべてだ。

殺してった敵にも、死んでいった部下達にも家族がいた。俺だけ許されていいはずがない。

けど、俺には……。

 

ああ。情けない話だ、ヴァーリの奴はやっと言葉が話せるぐらいの年でもう覚悟を決められるのに、何百年も生きている俺はそれ以下だってことだ。

 

本当に空っぽな人生だ

 

 

 月○日

妻を殴ってしまった。

 

彼女は俺の隣に座り、相談に乗ってくれようとしていた。

でも、俺はソレを望まなかった。

このまま消えてしまいたい、そう思っていた。

でも一人にはなれなかった。気付いたら、隣によく知った顔があった。

 

彼女は俺を一人にしなかった。一人にしてくれなかった。隣にいてくれた。

それが救いになっていたと思う。でも同じくらい煩わしくて、大嫌いになりそうだった。

暖かい彼女の手が、俺には煉獄の業火に思えた、

 

優しく暖かい手に救われた

優しく温かい手に俺は苦しめらた。

 

思い知らされるんだ、俺がこの暖かさを奪ってきたクソ野郎だと。

だから俺は逃げるために殴ってしまった。

 

俺は震え、泣き始めていた。言い訳なんか出来ないと思った。

情けない。本当に情けない。自分で自分を殺してやりたくなった。

 

けど、彼女はそんな俺を抱きしめてくれた。

その背を、頭を撫でて、落ち着くように安らぐようにしてくれた。

優しく言葉をかけてくれた。自分だって泣きたいぐらい痛かったはずなのに、殴った相手を抱きしめ慰めてくれていた。

 

 

「大丈夫」

 

「大丈夫だよ、ちゃんと出来る」

 

「貴方は強いもの。だからちゃんと立てる」

 

「立ち上がって、跳び越えて、その悲しい気持ちを乗り越えていける」

 

「そして、またきっと笑えるよ」

 

 

立ち上がれると、彼女は言った。

 

 

「貴方は誰かの痛みが分かる誠実な魔王様だもの」

 

「貴方は私に宝物をくれた。何度も私を守ってくれた」

 

「貴方は私の魔王様よ。誰よりも優しくてとても強いの」

 

 

俺は強いと、彼女は言った。

 

 

「大丈夫。貴方はいつだって負けたままじゃないって信じてるわ!」

 

 

 

信じてくれた。

 

彼女がくれたこの胸の中にある気持ちを、俺の半端な気持ちで汚したくない。

 

重圧は残っている。今でも押し潰されそうだ。

 

けどなんでだろうか、だからこそ行ける気がする。

 

何故か意味もなく笑っている。

 

 

―――愛する女にここまで言われて、裏切れねえよなぁ……!

 

 

 

 月☆日

俺は魔王としてやり直すことにした。

 

今更無駄だってことは分かってる。

 

自己満足だってことは重々承知だ。

 

けど、だからって逃げてばかりじゃいられない。

 

今の俺には笑っていてほしい人がいる。幸せになってほしい子がいる。

 

なら、行くしか選択肢はねえだろ!!

 

情けない姿を見せるかもしれない。

 

また泣き出すかもしれない。

 

けど、負けたままの姿は二度と見せない。

 

もう逃げない。もう目を背けない。

 

 

 

 

―――俺の代の責任は、俺が終わらせる

 

 

そうすれば俺も誇れるようになるかもしれない

 




えー、本編を終わらせておきながら、新しく番外編何て投稿して申し訳ありません。
というのも、本編で書き忘れがありましたので急遽付け足しました。

私が付け足したものはヴァーリの原点と、D×Dの大人へのアンチです。
何て言うかD×Dの大人ってロクなのがいないと思うんですよ。
リアスの親は金出すだけでちゃんとした教育や人材を用意しないし、イッセーの親もイッセーが悪魔として危険な場にいるのに止めもしない 。アイツら本気で自分達の子かわいいと思ってるのか?
そもそも子供に危険な仕事させてるのに何も思わない時点でマトモな大人ではないと思ってます。
何て言うか、大人としての責任を誰一人も全うしてないと思うんですよ。
例えば子供たちの手に終えない敵を倒したり、主人公たちのバックを整えたり。そういうのないんですかね。
少なくともイッセーの暴走を止めたり、オカルト部を叱ったり、厳しい言葉を投げ掛ける大人が必要ではないでしょうか。
そういったことをするどころか、戦争の後処理もせず、若い世代に問題を押し付ける。
そりゃあんな大人ばっかりなら色々歪むし、子供も変な風に育ちます。
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