大分短めです。
多分次回辺りで入学編終わります。
個人的にはコンぺまでやりたいんじゃ……
ちょうど三日目、部活動勧誘期間の四日目を迎える朝、セラからすべての情報・手回しが終了したとの連絡が入った。それは朝食時のこと。三日前の夕食のようにタブレット端末を受け取り中におさめられた情報に目を通す。
拠点の座標、内部構造、上下水道の配置、敵構成員の一覧、犯した罪。私の指示にはなかった情報を含むそれを見ながら私はほくそ笑む。
これでいいのだ、素晴らしい。
私は自分の要求以上の仕事をしてくれた従者二人を満足そうに眺める家を出た。
男は久々に『あたり』である仕事を見つけて、上機嫌だった。
仕事の内容はある組織の拠点の警備だった。支給されたそこそこの性能のアサルトライフルを肩から下げて、誰も来ることのない道を見張るというとても簡単な仕事だ。そして、こんな簡単な作業に合わない額の報酬が与えられるのだ。
中で、どんな組織が何をするのかはまったくわからないが、この高額な報酬には口止め料も含まれているのだろう。
もとより、内容がわからないのだから話すつもりもない。
本当に天職だ。
現代において、自動車は衰退していき、より安全な中央集中管理のシステムをとるキャビネットが主流となっていた。残る自動車にしても、安全を突き詰めた結果が完全自動運転だ。よって、登録された正規の道しか進むことができない。この組織の拠点はキャビネット通る駅から離れているし、正規の道から大きく離れて場所に存在している。
よって人が来ることもない。
仕事内容のすり合わせの時聞いたが、ここの警備システムはそこそこの精度らしい。
つまり、一般の人間も魔法師もここを墜とすことは不可能だということだ。俺のほかにもにも銃を構えた仕事人が何人も暇そうにあくびを噛み殺しながら辺りを警戒していた。ぶっちゃけさぼっても敵なんて来るはずもないし問題はないが、いちおう金が生じているのだ。あとでぐちぐち言われて報酬の減額なんて喰らったらシャレにならない。
カサカサ
ふと草花がかすれる音が響く。まらりを見渡す。一応、自身のうちにある警戒レベルを一段階上げ、アサルトライフルを構えなおし、音のもとへと向かう。
「誰だ」
「ヒッ」
そこには美しく雪のような白銀の髪に、ルビーのようにきらきらと輝く瞳を持った少女がいた。美しい瞳には数滴の水を浮かべ、紫色のシャツと汚れのないスカートに包まれた体を両手で抱え震えていた。
「……お嬢ちゃん、こんなところでどうしたの」
「あ、あの……私まだこの国に来たばかりで……山を探検しようと思ったら迷っちゃって……」
少しつたない日本語。彼女の言葉から察するに外国人らしい。
男は喜んだ。こんなにも美しい女性にあったことはなかった。あたりを見渡してみても、この少女に気付いているのはこの男ただ一人。今ならこの少女を自分の思うがままにできると思いつくと思わずよだれあふれてしまいそうになる。
興奮とともに熱を帯びる体を隠しながら男は少女に近づく。
「じゃあ、おじさんが案内してあげるよ」
そういって少女の手を取る。目と目が合う。その時少女は理解したのだ、この男は信用ならないと。今まだ感じたことのない恐怖心が全身を駆ける。大きな声を上げようと開かれた少女の口を男は慌てて手でふさぐ。
「へへ、少しの間だよ……そしたらすぐに気持ちよくなれるからね」
そういって逃げようとする少女を無理やり押さえつけさらに奥へ奥へ、男の仲間もいないような場所を目指す。
周りには『誰も』いない。
はじかれるように男の手は振りほどかれた。
若干の苛立ちとともに少女を見る。
そこには先ほど兎のように震えていた少女はおらず、冷酷な、血よりも紅い瞳を持った雪の精がいた。
「別にあなたに思うことがあるわけではないけれど……死んで」
氷のように冷え込んだ声が響くと同時に、少女の周りに銀が舞う。
液体状の銀は少女の周りをふわふわと回っていた。
「|Automatoportum defensio:Automatoportum quaerere:Dilectus incrisio《自律防御:自動索敵:指定攻撃》」
さっきまで不規則に動いていた液体は一定の動きに定まり、やがて少女の足元にドラム缶くらいの大きさの球状に纏まった。
「な、何んだそーーー」
「
銀閃が舞う。
男は自らがどうなったのかを知覚する間もなく、その意識は暗転した。
アイリスに続く私のの傑作、『ヴォールメン・ハイドラグラム』。
アイリスは細い合成金属に施した刻印によって駆動する。この『ヴォールメン・ハイドラグラム』は水銀を主に作られた液体金属である。合金の原子一つ一つに刻印された回路によって駆動するこれは液体である分、アイリスとは比べ物にならない操作性と自由性を持つ。
か弱い少女の振りにまんまと騙されたこの汚い男は、人の知覚速度を超えて近づいた水銀によって起こされた極小の衝撃波をもろに受け気絶した。
この男は私の演技に騙されたのだ。決して私の見た目が高校生には見えないとかそんなわけはないのだ。
実戦でまだ使用したことのない『ヴォールメン・ハイドラグラム』の性能テストを兼ねている今回の襲撃だが、この感じからすると全く問題はなさそうだ。
しかし、こうやって一人ずつ誘い込んで無力化しようかと考えていたが、これは想像以上に面倒だぞ。
やはりこんな小さなやり方は私に向いていない。
アインツベルンたる私がこそこそする必要など全くない。
「
極小の回路一つ一つに火を灯す。
私の足元に丸まっていた銀は揺らめきながら、何本もの触手をまっすぐに伸ばしブランシュの拠点へと進む。このCADの特徴としてさっき挙げた操作の自由性に加えて圧倒的な索敵能力を持つ。タネは簡単だ。この液体金属はささいな振動も感知する。たとえそれが音の波だったとしても。周囲の音で環境を把握し、その場に合わせて動くことができるのだ。
今は、数多くの触手を施設内に這わせ、すべての場所を索敵したのち、一斉に無力化するプログラムを組んだ。
しばらく待つ。
感触でわかる。どうやら私の道具は無事全ての構成員を無力化したようだ。
この中でトップに立つ男の所在も手に取るようにわかる。安定して緩やかな心臓の鼓動音。感知している音から解析するに、寝ているらしい。外の惨状に気付くこともなく熟睡とは……悪事を働いている組織の幹部とは思えないくつろぎっぷりである。
安全が保障された小汚い廊下を進む。
コツコツコツ
そして件のリーダー、司一の眠る部屋へとたどり着いた。
詠唱はラテン語訳から引っ張ってきたものです。
多少目をつむってみていただければ幸いです。