生まれ変わって調整体魔法師   作:アマノハブキ

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生存報告

しばらくは不定期更新になると思います。しかし、これからもなるたけ続けてけたらなと思っています。

よろしくお願いします。


第9話

 

 

 

「単刀直入にお聞きします。イリヤスフィール・フォン・アインツベルンさん、生徒会に入りませんか?」

 

「お断りします」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法科高校に入学して早数日。

私はほのかと雫と一緒に食堂でお昼ご飯を食べていた。

食べているのはもちろん和食。今日は肉じゃが定食だった。味の染み込んだジャガイモ、甘く優しい食感の人参、主張しすぎずしっかりとした味の牛肉。ここのシェフはいい腕をしている。

 

このご時世、未来食というわけではないが、日本食が見れなくなった場所もところどころある。しかし、この学校ではちゃんと日本食も用意されており、毎日日本食が食べられる。それだけでドイツから日本に渡って来た意味があるというものだ。

 

先日の一科生と二科生のいざこざを解決?してからというもの、中心人物であった森崎は大人しくなり、楽しい食事中に不快な声はあまり聞かないようになった。

 

モノを食べる時はね、誰にも邪魔されず、自由でなんというか救われてなきゃあダメなんだ 。とは誰が言ってた話だったっけ。

 

「でも、先日のイリヤさんのCADとてもすごかったですね!あんなに細いものに複数の術式を刻めるなんて!」

「イリヤさんがすごいのは当然」

「ふふ、ありがとう」

 

鼻息荒く話すほのかに対して、なぜか自慢げに胸を張る雫の姿が面白くて少し笑ってしまう。

 

「あのあと、気になってイリヤさんの論文、いくつか読みました。刻印魔法の基礎技術を、あそこまで改良できるなんて本当に驚きました!とくに第24号の論文なんて!あの発想は誰も思いつきませんって!」

「本当にありがとう。なんかくすぐったいわ」

「ほのかはわかってる。第24号の書いてあることがわかったなら『体細胞と刻印魔法 刻印魔法の医療技術転用』の論文も読むべき。これは極小物体への刻印を課題とした実験の副産物というサイドストーリーがあってーー」

「そうだ!もうすぐ部活動勧誘期間が始まるらしいけれど、二人は何部に入るか決めた?」

 

そのままにしておくといつまでも話してしまいそうだったので多少無理に話を変える。

やっぱり、目の前で自分のことを褒め称えられ続けるのはこそばゆい。

マスコミや政治家、アインツベルにいい顔をしようとする者たちに言われ続けていい加減なんとも思わなくなったと思っていた。しかし、『友達』に純粋に褒めてもらうのはまた違う感じでどうしてもなれなかった。さっきも言ったがとてもくすぐったい。

 

「うーん、部活動勧誘期間中は各部活を観れるらしいから、そこで見てから決めたいなぁって」

「わたしもほのかと一緒…………えっと、それで。もしよかったら、部活動見学、一緒に回りませんか?」

 

そう聞いてくる雫に対して私は二つ返事で了承した。

 

「もちろん!是非ご一緒させてもらうわ」

「やった……ありがとうございます!」

「もう、せっかくの友達なんだから敬語はやめてって言ってるのに」

「うぅ……あ、ありがとう。イリヤさん」

 

そういえば、ここの学校の部活動についての事前情報はゼロに等しいんだった。ゼロではないのはなぜか、というのも、入学式後にカリキュラムなどを確認した際に部活の欄を流し読みしたからだ。あくまでも、あの時は日本の高校ではどんなことを学べるのかというのを調べるために、それらに関係した欄しかちゃんと読んでいなかったからだ。

 

もしかしたら、ほのかや雫は部活動について何か知っているかもしれない。

 

お昼休みの終了までまだあるし、ここで聞いておくのも手かもしれない。

 

「えっとーー」

「イリヤスフィール・フォン・アインツベルン さんですか?」

 

ほのかと雫にかけようとした言葉はふと頭上から放たれた声に遮られた。

 

声のした方を見てみると見覚えのある顔がそこにはあった。フワフワとした黒髪に小柄ながら素晴らしいプロポーションをもつ女性。国立魔法大学付属第一高校生徒会長こと、七草真由美だ。

 

「こんにちは、生徒会長」

 

取り敢えず返事をする。しかし、なんで声をかけられたのか全く見に覚えがない。もしかして、先日のイザコザの件だろうか?だとしたらとても面倒くさいので是非ともおかえりいただきたいところなのだが。

 

「普通に名前で呼んでくれても大丈夫なのに」

「では、七草先輩と。それで、用とはなんでしょうか?」

「少し話したいことがあるの。イリヤさんは今日の放課後は暇かしら?」

 

話?やはり先日の件なのだろうか。というか何故名前呼びか。あっちが先輩だからだろうか。まぁ、ともかく。折角の学園生活なのだし、『直接生徒会長に呼び出される』なんてシチュエーションはそうそうないだろうし。別に断る必要もないか。

 

「大丈夫です」

「ありがとう、では放課後に生徒会室でお待ちしてるわ」

 

そう言うと、小さく手を振って行ってしまった。ほぅと一息ついてほのかと雫の方を見る。ほのかと雫はすこし不安げな表情を浮かべていた。

 

「どうかした?」

「今の生徒会長さんでしょ?もしかして先日の一件で呼び出されたとか?」

「まぁ、そうかもしれないしそうじゃないかもしれないわね。別に貴方が思い詰めることなんてないわよ。私自身、悪いことなんてしてないし。ほら、元気出して。私、ほのかに部活のことでいくつか聞きたいことがあるの」

 

そう言うと、すこし表情が晴れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一科生と二科生の大きな違い。それは魔法師である教師から直々に実技指導が受けられる点がまず最初に挙げられる。

ぶっちゃけ、私はそこらの魔法師よりも魔法が扱えるのでいらないといえばいらない。

 

 

しかし、学習方法として見習う点はたくさんあることがわかった。

 

 

というのも、過去に政治家の権力争いにアインツベルン が巻き込まれたことがあったのだ。そのとき、ドイツの魔法教育局の特別顧問になってしまったのだ。私は面倒ごとが嫌いだ。最初は魔法教育局の局長にされるところだったのだ。

 

 

どうして魔法教育局の特別顧問になんてなったのか、話は少し長くなる。

 

 

しかし、当時の私は新しいCAD、汎用型CADに特化型CAD用の照準補助システムを繋げた例のモノの開発に夢中だった。そんなことする時間があったら開発に回したいと考えていた。実際、食事や風呂の時間を削ってでも研究をしようとしてセラの指揮の元、リズに首えり引っ掴まれて風呂場まで輸送されたこともあった。

 

だから、それに気づけたのは幸運だった。私を生み出したのと同時に両親はこの世から去り、ドイツを代表する魔法師の家系の当主となった私には、そこそこ仕事がある。その中に書類仕事も含まれているのだが、開発で大忙しでまともに書類なぞまともに確認していなかった時に「魔法教育局局長について」の書類が挟まっていたのだ。

 

その書類を確認するや否や、政府に乗り込み、断りに行った。

 

最初は断るつもりだった。しかし、眼前で行われる小さな政治家の下らない言い争いを目にすると冷静になった。よくよく考えれば教育局でのコネは色々使えるのでは、と思い至ったのだ。魔法教育局などというくらいなのだから、政府はもちろん、研究所やその他の機関とも関係があるはずだ。これなら、研究論文を提出するために様々な機関をわざわざ回らずとも、魔法教育局の人に丸投げするだけで世に公表できるのではないかと。

 

局長だと、何かと前に出る機会が多いので、それ以外なら受けてもいいと承諾。

 

そうして勤めることになった職が、ドイツ魔法教育局特別顧問。主な仕事は、魔法教育機関に配布する教科書や資料の校閲・アドバイス、魔法教育機関の視察、カリキュラムの確認などだ。

 

よって、日本に来た目的の一つに、日本の教育機関のシステムを少しでも持ち帰って、ドイツで活かせるようにすることも含まれているのだ。

 

そんなことを考えていたら、いつのまにか生徒会室前まで来ていた。

 

廊下の一番奥、私の目の前には教室とは全く異なる作りのドアが鎮座していた。セキュリティーのためか無骨ながら重厚感を放つ扉、その扉の隣には『生徒会室』と達筆な文字で刻まれた木版とドアのロックなどのシステムを管理するためのタッチパネル。よくよく見てみると、このセキュリティーシステムは遠坂重工の最新版ではないか。

 

「よし」

 

意を決してタッチパネルに触れる。

 

『あ、イリヤさん。今開けるわね〜』

 

タッチパネルの画面に真由美が映り、彼女の返事と同時にドアからカチン、と音がなった。そして自動でドアが開き、イリヤを迎え入れる。

 

 

 

さて、どんな話をするんだろうか。

 

 

 

 

 

 

 





2018/11/11

最後の方少しだけ変えました。今頑張って続き書いてますので、行きてたら投稿します。

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