続く予定無かったんよ?
ユーハバッハとの戦いから10年。
十三番隊隊長である浮竹は亡くなり、朽木ルキアが隊長に就任した。
そして善之助は三席になっている。
噂によると、とうとう善之助も卍解も会得したようだ。
その噂を聞いて『また団子が美味くなるんじゃないか?』や『いや、団子の数が増えたんだろ』等の声が尸魂界中を飛び交っている。
当の本人は特に気にしていないようだ。
◇◆◇◆◇◆
空座町上空。
善之助は再び空座町に来ていた。
今回は虚の討伐ではなく新しく就任した隊士の実践訓練の付き添いだ。
穿界門を抜け、空座町上空に降り立つ。
既に新隊士2名は空座町に来ていた。
「済まない。遅れてしまったかな?」
「いえ、大丈夫です」
姿勢を正しくして男性の死神が返事をする。
横にいる女性の死神は初の実践からか緊張でソワソワしていた。
「落ち着いて、今日君達に討伐してもらうのは基本的な虚だ。危険と判断したらすぐに帰還してくれて構わないから」
「は・・・はい・・・」
大丈夫だろうか・・・?と善之助は女性の死神を見て不安になった。
女性死神の名は明智恵、男性死神の方は神田隆二というらしい。
じゃあ、早速行ってみよう。と善之助はスタートの合図を出した。
それと同時に隆二がすぐに瞬歩でその場を離れる。
恵もワンテンポ遅れるも、すぐに移動した。
◇◆◇◆◇◆
数時間前。
「アジューカスレベルの虚が空座町に?」
「あぁ、そうなのだ」
善之助は朽木ルキアに呼ばれ、十三番隊隊長室に呼ばれていた。
「新隊士の実践の日に遭遇するとは・・・ツイてないですね・・・」
「私も同感だ」
「・・・ってあれ?そういえば空座町には死神代行の黒崎一護とその友人達が住んでいましたよね?彼にそのアジューカスを任せれば・・・」
「私もそう思ったのだが少し前にその近くで交通事故があったらしくてな・・・一護はその対応をしているのだ」
死神代行、黒崎一護───彼は死神である志波一心とクインシーである黒崎真咲の間に産まれた子で、過去に反逆者の藍染惣右介やクインシーの長のユーハバッハ等の人物を倒しているという経歴を持つ。
その功績から尸魂界では知らないものはいない男性である。
「成程・・・そしてその上例のアジューカスレベルの虚は私達十三番隊の担当する区間に出没したので私に同行させるのですね」
「済まないな・・・頼めるか?」
朽木ルキアの要請にふた返事で了承した善之助であった。
◇◆◇◆◇◆
善之助は霊圧を探るが今の所アジューカスレベルの虚の反応はない。
(このまま何事も無く帰れればいいのだが・・・)
そう思い、2人の様子を見に行こうと1歩足を運んだ瞬間だった。
「っ!?」
微弱だが禍々しい霊圧が善之助の肌を撫でる。
(来たか・・・!!!!)
善之助は咄嗟に2人の霊圧を補足する。
自分から見て恵は南西1000m先、隆二は東600m先だ。
そしてアジューカスレベルの虚の霊圧位置は・・・
(っ!上空の南1025m!)
女性の死神の位置が一番近い。
間に合ってくれよ・・・!と心の中で思いながら善之助は空を駆けた。
◇◆◇◆◇◆
「あ・・・・・・く・・・・・・」
女性の死神の死覇装は所々がビリビリに破け、手足もあらぬ方向へ曲がっている。
そしてそのか細い首はモヒカンをしているアジューカスレベルの虚が握っていた。
「はぁ・・・強い霊圧してるから来てみたらハズレのようでやんスね」
アジューカスはビルの屋上の床に女性の死神を叩き付け、その太腿に自らの斬魄刀を突き刺す。
「ーーーー!!!!!!!!!!!!」
んーっ!!!!んーっ!!!!!!!!と女性は痛みと恐怖で必死に叫ぼうとするがその口は塞がれて後の2人には届かない。
それをいい事にニヤリと笑みを浮かべたアジューカスは斬魄刀の切っ先を喉元に向けて突き出す。
ギィン!!!!!!!!!!!!
だがその一歩手前で他の斬魄刀に防がれた。
善之助が咄嗟に斬魄刀の軌道を逸らしたのだ。
「っ!?なにも・・・」
「赤煙遁!!!!」
詠唱破棄で縛道を使う。
ボワッと赤い煙がアジューカスの目を潰す。
その隙に善之助は恵を抱えて戦線離脱を図った。
◇◆◇◆◇◆
「はぁ・・・はぁ・・・」
肩で息をする善之助の横では恵がガタガタと震えていた。
「君・・・大丈夫か?」
「は・・・はい・・・」
口ではそう言うものの、その表情と身体の震えは尋常では無かった。
これ以上の演習は不可能。と判断し、隆二に連絡を入れる。
「隆二君、済まないが演習中止だ。すぐに尸魂界に帰還しよう」
通信機の向こうから分かりました。という声が聞こえる。
善之助は通信機を切って彼の到着を待った。
「ここにいたでやんスか」
ゾクッとするような霊圧と声が後ろからした。
振り返ってみるとそこには先程のモヒカンアジューカスが立っていた。
善之助は恵を庇うように前に出て斬魄刀を抜く。
「次はアンタがあっしの相手ってわけでやんすね?成程・・・結構美味しそうな匂いがするでやんす」
「そいつはどうも」
善之助の斬魄刀は戦闘向けではない。
やれる事といえば2人を逃がす時間稼ぎぐらいだ。
そんなのを承知で善之助は斬り掛かる。
だがその刀身はアジューカスの鋼皮によって防がれた。
(これがアランカルの鋼皮・・・想像以上の硬さだな・・・)
一旦距離を取って様子を伺う。
その時、逆方向から隆二がやって来た。
善之助は2人に帰還せよと同時に隊長である朽木ルキアに空間凍結と援軍を頼む。
2人は頷いて穿界門を開け、先に尸魂界に向かった。
「これで1対1だな」
「そうでやんすね・・・なら・・・稼げ────
ドウッ────!!!!!!!!
凄まじい霊圧が周囲を包む。
「・・・笑え────団子剣」
善之助の始解を使った。
そして吹き荒れる霊圧の中に団子の1つを投げ入れる────がその団子は粉々に砕かれた。
そして何かが飛んできて善之助の頬を掠める。
その飛来物は小判であった。
霊圧が収まり目の前には両手がブレード状になり、その刀身には多くの小判が突き刺さっている。
だがそれ以外にも多くの小判がアジューカスの周囲を回っていた。
そしてモヒカンは変わらぬものの首には高そうなファー。
言うなれば成金のような姿をしたアジューカスが出てきた。
(これが・・・帰刃)
「こいつがあっしの帰刃でやんす」
「見た目と言い悪趣味だな」
そんな事言えるのも今の内でやんすよ!と複数の小判を飛ばしてきた。
キン!!!!キン!!!!キン!!!!
善之助は串団子になった斬魄刀で打ち払うが何枚かが善之助の身体を裂いていく。
・・・なぜ小判を打ち払える程の強度を持つ団子が食べられるのかは聞いてはいけない・・・
「蒼火墜!!!!」
巨大な青白い炎の球で小判を撃ち落とす。
このままではジリ貧だ。
(仕方ない・・・やるしかないのか・・・)
唐突に善之助は自分の串団子と化した斬魄刀の団子を自ら食べ始める。
(・・・?何かする気でやんすね・・・?)
団子を食べ終えて善之助は────解放した。
「
七色の
暫くしてその七色の霊圧はそれぞれの色で丸く纏まっていく。
そして遂にその姿が顕になった。
「絶笑七聖団子剣」
善之助の右手には七色に輝く七つの串団子が握られていた。
「それが卍解・・・」
「あぁ、そういえば名乗ってなかったな・・・オイラは善之助、十三番隊第三席だ」
「あっしはヌジームでやんす」
行くぞ・・・ヌジーム!と叫び、駆け出す。
ヌジームも小判を飛ばすがギリギリの所で躱される。
そして────善之助は七色の串団子を振った。
団子達は高速で飛んでいき、ヌジームの口に七つ纏めて入った。
急な事に口を閉じてしまい、中の団子を食べてしまう。
ヌジームの表情は少しづつ柔らかいものになっていった。
「全く・・・あっしの負けでやんす。こんな美味いものを食べさせた死神に斬れないでやんすよ」
フッ・・・と笑い、また会おう。とだけ言ってヌジームは帰っていった。
◇◆◇◆◇◆
数週間後。
技術開発局内で緊急信号が発令される。
局員は一斉にその場所の特定を急いだ。
「リン!!!!見付けたか!?」
「はい!補足しました!」
鵯州の言葉に坪倉リンはすぐに返答した。
そしてその画面が映し出される。
「な・・・!?なんでこいつが空座町に向かってんだよ!?」
鵯州も自分の目が信じられなかった。
元
ラスノーチェスの現王が空座町にゆっくりと向かっていた。
◇◆◇◆◇◆
「またか・・・」
空座町上空で見回りをしていた善之助が呟く。
先程技術開発局から《ヴァストローデ級虚ティア・ハリベル、空座町二接近中、注意サレタシ》との連絡があり、辺りを警戒していた。
そしてその感覚は来た。
ドン────!!!!
押し潰されるような感覚。
そして虚特有の禍々しい霊圧。
遂に来た。
空が割れ、その中から刀身の真ん中が空洞になった斬魄刀を背中にした女性のアランカル、ティア・ハリベルが姿を現した。
その前に善之助が瞬歩で現れる。
「お前は・・・?」
「十三番隊第三席、善之助だ」
善之助という名前に反応するハリベル。
(そうか・・・こいつが・・・)
ハリベルは少しばかり目を閉じて、再び上げる。
「貴様が変わった斬魄刀を持つという死神だな?」
「さぁな・・・それでアンタは何しに来た?偵察か?」
偵察?とハリベルは呆れた顔をする。
「愛染がない今、私が偵察するメリットがあるか?」
確かに・・・と納得する善之助。
その善之助にハリベルは指を差した。
「私の狙いはお前だ」
◇◆◇◆◇◆
「俺が・・・お前の狙い?」
「そうだ」
ハリベルに言われた事に疑問を持つ善之助。
そんな善之助を無視して再びハリベルが口を開く。
「お前の力・・・見せてもらうぞ」
チン!
斬魄刀を一瞬で抜いて急接近し、斬魄刀を振り下ろすハリベル。
そのハリベルに善之助は斬魄刀を横にして対応する。
だが予想以上にその斬撃は重く、善之助は撃ち落とされた。
地面ギリギリで体制を立て直す善之助。
尸魂界に空間凍結を頼んで再び上昇した。
「どうした?斬魄刀を解放しないのか?使わなければ私には傷一つ付けられないぞ?」
そんな事は言われないでも分かっている。
明らかな挑発なのも分かっていた。
出し惜しみをする善之助に再びため息が漏れるハリベル。
「ならば・・・使う状況を作るまでだ」
ハリベルは斬魄刀を切っ先は下に、天に掲げるようにして前に出す。
「討て────皇鮫后」
大量の水がハート型を描き、ハリベルを包み込む。
そして、巨大な剣を持ったハリベルが現れた。
「行くぞ」
その言葉に警戒して善之助は始解した斬魄刀を構える・・・が対応しきれない速さでハリベルの攻撃を喰らい、地面に叩き落とされる。
「嘘・・・だろ!?」
あまりの戦闘力の跳ね上がり様に理解できない。
立ち上がろうにも激痛で激痛で身体が言うことを聞かなかった。
だがハリベルはその善之助の前に降り立つ。
「所詮はそんなものか・・・言っただろう?解放しろ────と」
ハリベルは善之助の卍解を待っているようだった。
(どうせ死ぬくらいなら・・・)
善之助は必死に立ち上がり、卍解を使った。
「卍解────絶笑七聖団子剣!!!!」
善之助が斬魄刀を振ろうとした瞬間、その手はハリベルによって止められた。
善之助は自らの終わりを感じ、目を閉じてしまうが来るはずの痛みが全く来ない。
不思議に思って目を開ける。
そこには・・・絶笑七聖団子剣の味を確かめているハリベルがいた。
「えっと・・・何を?」
「言っただろう?お前の力を見せてもらうと」
ハリベルによると虚圏に帰ってきたヌジームの話を聞いて真偽を確かめる為に来たのだとか。
つまり・・・刺客ではなく本当の客として空座町に来たと言うことだ。
「成程・・・彼が言った以上の美味さだ・・・」
満足したハリベルはまた会おう。とだけ言って虚圏に帰っていった。
それからというもの、何度も空座町にアランカルが襲来してきたがハリベルのフラシオンだったり、噂を聞いたアランカルだったりと、その大半が善之助の斬魄刀を食べるのが目的のアランカルが続出した。
最初は技術開発局側も警戒していたが徐々に「善之助殿、対応をお願いします」という塩対応に変わっていった。
尸魂界全土でも『尸魂界で唯一平和理に争いを解決出来る斬魄刀』という言われが増えた。
ある日、一番隊総隊長の京楽春水に呼ばれ、「アランカルを退けるのは有難いけど常連さんを増やすのは止めてね?」と苦笑しながら釘を打たれていた・・・
ぜんまいざむらい
今日も善を施したり?
続k「もうヤだよ!!!!!!!!(作者)」
〜完?〜
なんか知らんけど疲れたよ・・・
てか巫山戯て書いたこの作品の方がすぐにお気に入り登録付いて、真剣に書いた小説が埋まってるってってなんじゃそりゃ!?