ちまちまと書き進めていたらこんなにも遅くなってしまいました。申し訳ありません。
本来この話は二、三話くらいに分けて書こうと思っていたんですが、書いてる途中で冗長になるor短くなりすぎるのどちらかになる予感がしたので急遽合体。一つに纏めました。
それでは、どうぞ。
少年が風見幽綺として新たに歩み出してから、それなりの年月が経った。
幽綺と幽香は全国を旅し、四季折々の花々や土地特有の植物を観光した。それは時には海を越え、この国にはない独特の進化や成長を遂げた草木を見に行くまでであった。
少年にとっては全てが真新しく映るのか、見たことのない程目を輝かせていたのが、幽香にとってひどく嬉しかった。
あれは何、これは何、どんな生態なのか、どんな名前なのか。事ある毎に幽香を呼び、跳ね回るその姿が、初めて見た幽綺の見た目相応の行動で、それが普通だというのに見慣れていなくてなんだか変な気分だった。
そして旅をしているうち、幽綺について分かったことが大きく三つある。
一つは、彼の能力。
幽香はかつて他を寄せ付けようとしないその能力を、『拒絶する程度の能力』と名付けた。
だが、いつの間にかその能力が変質していたのだ。
いや。これでは語弊があるか。
十中八九、彼の能力が変質したのは夢の件が片付いたその日。幽綺が幽綺という名前を与えられ、彼が孤独から解放された日。
変質した能力を名付けるのならば、『届かせる程度の能力』
思えば。
元の能力である『拒絶する程度の能力』は、彼自身、ないし夢に出てきた過去の誰かの在り方によって生み出された能力なのだと思う。他人を誰もかれも拒絶し、自分から孤独を選び、誰も傷付けまいとする優しさと自己犠牲によって形作られた能力。
それが、幽香に出会い、孤独の苦しみを思い出し、誰かと共に歩みたいと決意したその日、その能力は反対の性質を得た。
即ち、何かを一定以上寄せ付けないようにするものの逆。何かを必ず何かに届ける力。
それは他者に触れることを恐れた少年自身であり、少年の傍に居ると約束した幽香自身なのかもしれない。
それは誰かと関係を作ることを避けて交わさなかった言葉だったかもしれない。はたまたその全てに乗せた想いなのかもしれない。
そうして彼は、心を交わすことを知ったのだ。
「より正確に言うのならば」
だが、紫曰く。
「彼の能力は
どうやら彼の能力は元々『届かせる程度の能力』ないし酷似した能力である可能性が高いらしい。
証拠として、紫は幽香と共通するある記憶の断片を語った。
少年の夢の内容の一部分。最初の夢の少女の行為。
彼女は何もない虚空に向かって話しかけていた。あれは恐らく、近くの植物に話しかけていたのではないか、と。
幽香にとってその可能性は間違いないと思われた。と言うのも、少年の能力が変質していたことが発覚した時の理由も、少年が明らかに植物と会話していたからだ。幽香も植物と意思疎通が出来るので、しっかり会話が成立していたことは確認済みである。
そして紫の推測の続きによると。
幽綺の能力が『拒絶する程度』に一度変わってしまったのは、少女の様子から察するに彼女より後。その時点で幽綺の元となった人格は殆ど出来上がっていたのだろう。
それが元の能力に似たもの、もしくは元の能力そのものに戻った経緯は、幽香の推察通りで間違ってはいないだろうとのことだった。
少年にとって喜ばしい変化であることには違いないので、能力の変質については素直に喜んでいいのだろう。
それに、思い返せば。
あの時、泣きじゃくる幽綺を抱き締めた時。少年から感情の奔流が流れ込んできた。つまり、その時点で幽綺の能力は変質して、能力によって彼自身の感情が幽香に『届いた』のだろう。
それから暫くは能力の把握と特訓の期間を設け、さらに今も日々の特訓をきちんとこなしているからか能力の扱いは随分と上達した。
そしてこの時期にもう一つの事実を知った。
能力の特訓の折、幽香と一緒に居る、即ち妖怪としての生活をしている以上、必ずどこかで誰かと争わなければならない時が来るということで戦闘訓練も実施したのだ。
最初幽綺は戦闘行為にあまり良い表情をしなかったが、必要性はきちんと理解していたし、さらにそこは男としての意地なのか、幽香を守るためという理由もあって最終的にはその提案を受け入れることにした。
だが、やはり傷付けるという行為に忌避感があるのか、彼は比較的傷の付きにくい棒術を主に指南してもらっていた。それに関しては、紫や幽香の古い伝手を使わせてもらった。一応剣や槍も実践に使える程度には鍛えたが、積極的に使おうとはしなかった。勿論、棒術であろうと怪我はするものなのだが。そもそも棒術と言ってもあくまで動きの基本や体捌き等が主で、流派だとかに則っているわけでもない。
長くなったが、今はそういう肉弾戦に関することは置いておく。
幽綺の才能は、紫が主だって師事した、陰陽術や式神等の術式に関する分野で開花したのだ。
平たく言えば、彼はあまりにも才能があった。それこそ、紫達は超える程に。
一を聞いて十を知る、程度の話ではない。十どころか百、なんなら虚数や文字式に到達してもおかしくない……は言い過ぎかもしれないが。とにかく、彼の才能には目を見張るものがあったのだ。
何故か、と訊かれれば、分からない、としか答えようがない。
なんとなく察しはつくものの、明確な答えなど持ち合わせていない。
極論を言えば、才能なんて個人差で片付けてしまうようなものだ。流石に幽綺の場合はそれでは収まり切れないとはいえ。
因みに、紫にとって一番驚いた出来事というのが、
「紫さん、新しく術式を編んでみたんだけど……見てくれない?」
「―――へっ?」
それは確か、あまりの成長速度に紫が教授する内容に悩んでいた時だ。
当初教える予定の無かった自分なりの術式の編み方を教えてみるかどうか決断しかねていたら、急に幽綺がそんなことを言い出したのだ。
幽綺は今、新しく編んでみた、と口にした。つまりは紫が教えていないものまで自力で辿り着いたということだ。
そして、自分独自の術式を編むというのがどれ程難しいものか、紫はきちんと理解している。何せ自分も通った道だからだ。今でこそこうして教える側に立っているが、当時は独学で学ぶしかなくて大変だったのを覚えている。
それが、教えてそう月日も経っていない幽綺がこうして成し遂げてみせた。
自分とは違い先生として自分がいるというのもある。だが、それでもこの成長速度は異常だ。それこそ、素っ頓狂な声を上げてしまう程には驚いた。
でも、それは良いことなのだろう。才能があること自体は別にいいのだし、幽綺にはそれを腐らせない人格が備わっている。ならば、心配することはないのだ。ただ本当に、驚くべきことなだけなのだ。
「え、ええ。分かったわ。見せてちょうだい」
「これなんだけど……取り敢えず、札に込めてみた」
……いや確かに、札を使った術式や戦い方は教えたけれども。自分の術式を札に込めるなんて教えていないのだが。
という思考を押しとどめ、顔に出さないようにし、受け取った札から術式を読み取る。
「ふむ……やっぱり粗は目立つわね」
「まあ、そうだろうね」
「けれど、誰にも教わらずにこの段階まで来たのは正直びっくり、なんて言葉じゃ足りないわ。それに、術式自体も問題なく発動するようだし」
はい、と札を幽綺に返す。
それから改善点や伸ばすべき点などを話し合ったが、内容は置いておく。
ともかく、幽綺が才能を惜しげなく開花させた結果、彼は紫が得意とする式神に関する術式だけでなく、陰陽術、結界術、空間術など、なんだか紫ですら下手すれば手の付けられない境地にまで辿り着いてしまった。流石に相性があるのか、式神に関しては紫の方がまだ上ではあるが、それも術式の系統が分岐してしまい、断言できるとは到底言えない。
それに、性格によるものかまだ研鑽を積み、さらなる高みを目指そうとしているのが空恐ろしい。戦うこと自体は好きではないが、こと術式を学ぶという点においては彼はそこにやりがいを見出しているようだった。
そして、彼が会得したのは体術や棒術、陰陽術等に留まらない。
幽綺はそれと並行して、妖術を扱えるようになっていった。
そう。妖術である。
無論彼は妖怪ではないし、妖怪の血が混ざっていた訳でもない。
では何故妖力が扱えるのか。
それは彼について知った最後の一つ。彼を構成するものについてにも繋がっていく。
厳密に言うのならば、彼が何者かを特定したのではなく、少なくともこれではない、という形で理解したと言うべきだろう。
ほぼ確信していたとは言え、やはり彼は純粋な人間ではなかった。
もう幽綺と旅をするようになって一世紀近く経っただろうか。
今は一時旅を止め、すっかり定着してしまった『我が家』での旅の休憩且つ幽綺の術式と肉体の鍛錬を兼ねた空白期間。
幽綺はもう少年から青年と言える程に成長し、人間でいう所の十六から十八あたりの見た目へと姿を変えた。
齢二桁にも満たないような容姿から、人間ならばもう元服してもおかしくない程の年齢へと。
……約百年の月日を経て。
なるべく気にしないように、その話題に触れないようにはしてきたが、流石にそろそろ興味を我慢するのも限界が近付いてきている。
彼の正体。彼を構成する何か。
……そして、曲がりなりにも彼は成長している、つまり、老化はする、という事実。
彼自身がそのことを気にしている様子はない。こうして気にしているのは、幼少期(と言ってもいいのかすら微妙だが)から彼を知っている幽香と紫の二人だけ。
いつだったか、もう随分前に彼の出生の秘密に関わる昔話を紫にされた覚えがあるが、あれは本当に話だけで何か謎が解明されるようなものではなかった。
その紫はと言うと、幽香の目の前で紅茶を飲んで寛いでいやがる。特に何かをしに来たわけではなく、幽綺の様子を見に来ただけらしいが……まあ、今の所本当に変な動きはしていないし、放置でいい。
だが、そうだな。折角居るのだし、どうせいずれ話してみようとは思っていたのだ。それが今になったところで問題はない。
「ねえ、紫」
「? なに、改まっちゃって」
「結局、幽綺ってなんなの?」
紫の方は見ない。視線は術式で作り出した長物を素振りしている幽綺に注いだまま、表情も特に変えずに尋ねる。
「……やっぱり、気になるわよねえ」
「その言い振りだと、そっちも知らないのね」
「ええ、まあ。私だって全知という訳ではないし」
「私も彼の素性や出生を一切気にしてこなかったのだから、何か言うつもりはないわよ」
でも興味は尽きないのも確かな訳で。
だが実のところ、幽香の関心は彼が何者であるかという話とは別の所にあった。
彼は成長する。
どれだけその速度が遅かろうと、肉体的な意味で彼は成長し、老化する。つまり、ほぼ間違いなく寿命がある。 確かに人間よりは断然長いだろう。今までの経過年数と姿の変わりようを見るに、およそ十倍近くの差があるのだろうか。
だが、それでも幽香や紫のような妖怪と比べてしまうと、その生涯は短いと言えるだろう。
いつか別れが来る。
最近幽香の心によく過るようになったこの思いは、たとえただの独善、我儘であったとしても、どうにかしたいと思うほどには日に日に強まるばかりだった。
彼にはもっと永い時を生きて欲しい。その隣に自分を置いて欲しい。死んでしまったところで冥界や地獄まで追いかけてしまえば何か別の手立てがあるのかもしれないが、できれば生きて現世を共に居たいと思うし、閻魔等面倒な奴らに目を付けられるのも避けたい。
「幽綺を妖怪化させて半妖にさせてしまえば……」
「幽香」
「分かってるわよ。冗談だっての」
「……その気持ちは大いに理解できるけど」
幽香の呟きに紫は顔を顰めた。
彼を構成するものに妖怪を混ぜてしまえば、寿命の問題は解決するだろう。
だがそれは、あまりに勝手が過ぎる。
妖怪という要素を混ぜるというのは、いや、妖怪に限らず元あるものに別の要素を混入させるということそれ自体が、その者への冒瀆に他ならない。その者自身が望んだのならともかく、こちらの都合で勝手に混ぜるのが決して褒められる行為ではないというのは、いくら幽香であろうと理解している。
だが、一度思い浮かんでしまった禁断の蜜の味に似た誘惑は中々頭から抜けなくて。
「…………」
「幽香?」
言ってみるだけだから。断られたのならそれでいい。色んな言い訳が頭を駆け巡った。
だから、そう、どっちに転んでもいいのだから。
「は、」
「?」
「話くらい、してみてもいいんじゃないかしら……?」
幽香の躊躇いがちの言葉に、紫は目を丸くしてしまった。
幽香が倫理的に反していると分かった上でそう提案したこととか、こんなにも幽綺に入れ込んでいることだとか、理由は様々なれど、それが普段の幽香らしくないことであるのは確かだった。
いやまあ軽く一世紀近く一緒に過ごしていて尚別れもせずにいるのだから、幽香が幽綺を、そして幽綺からもまた幽香を悪くは思ってないどころか、家族愛を通り越した絆で繋がっているのは簡単に分かるのだけれど。
相互依存、とでも言えばいいのか。
幽綺にとってもこの変化は決して悪いものではない筈だ。
……だからこそ、幽香がこの話をしてしまえば、彼は断らないということも容易に想像がつく。
紫は溜息を一つ溢して、やれやれという雰囲気をわざとらしく発しながら、
「……私から話をしてみる。貴方からだと、まず間違いなく受け入れるでしょうから」
「悪いわね」
「いいわよ。言ったでしょう? その気持ちは理解できる、って」
一度立ち上がり、彼の名を呼ぶ。
「幽綺ー、ちょっといいかしらー?」
「――はーい、少々お待ちくださーい」
視線の先で彼は長物を形作っていた術式を解き、身体を宙に浮かせ、まっすぐこちらへと飛んでくる。
この百年の間で、幽綺は既に飛行術を習得している。高所にも慣れ、自在に旋回や加速も出来るようになっている。流石に天狗のような存在と比べれる程ではないが、随分と上達したものだ。
幽香達の前で着地し、汗を拭いながら穏やかな笑みを湛える。
「どうかしましたか、二人とも」
「ええ、少し。大事な話があるのだけど……いいかしら?」
「私は構いませんが……それならば、先に湯浴みをしてきても? 汗や汚れを落としたいのですが……」
「分かったわ。急ぎじゃないから、ゆっくりしてきてもいいわよ」
分かりました、という言葉と共に軽く一礼して、幽綺は家の中へと戻っていった。
幽綺が湯浴みから戻ってきたところで、紫は早速その話題を切り出すことにした。
「貴方、自身の寿命についてどう考えているの?」
「寿命……ですか?」
首を傾げる幽綺。
「ええ。もう分かっていると思うけど、貴方は人間じゃない。自分の成長が人間より遅いのは、自覚しているわね?」
「はい。それについては把握していましたが、それが、何か?」
「……成長速度がどうのっていう話じゃなく、たとえ遅くとも貴方は成長しているという点についてなんだけど」
一息。
ちらりと幽香に視線を移せば、見た目では分かりにくいものの若干身体に力が入っているし、呼吸も少々浅いような気もする。緊張、しているのだろうか。
おそらく幽香自身に自覚は無いのだろうが、無意識で、この話の結末を不安に思っているのかもしれない。
仕方あるまい。何しろ、幽綺の将来的な生死に関わってもくるのだから。
「貴方、生きて幽香と一緒に居るのと、死んだとしても一緒に居る、の二択があるとしたらどちらを選ぶ?」
「急ですね……んー、どちらかと言われれば、死ぬよりは生きていたいとは思いますが」
「でも、今の貴方は成長している以上いずれ寿命を迎えてしまう、ということは理解している?」
「ええ、まあ。ですが、命というのはそういうものでは? 姉さんや紫さんのような人外の存在でもない限り、寿命による死は避けられぬ宿命でしょう」
「……ここに、それを解決する手段があると言えば、貴方はそれに乗るのかしら?」
幽綺の返答が、止まった。
その言葉の真意を探ろうとする視線が、二人を射抜く。不審に思っている様子はない。だが、その真意が読めず、困惑はしているようだった。
互いに見詰め合って暫くして、ようやく幽綺が口を開いた。
「……それは、どういう?」
「貴方に妖怪という存在を混ぜて、半不死、少なくとも寿命による老衰や見た目の成長を無くしてしまうことができます。……これが独善であることは理解しています。ですが、こういう提案をしてしまいたくもなる私達の心情も、理解してくれないかしら」
「ええ、ええ。お双方がそれ程までに私に生きて欲しいと願っている、愛してくれているというのは、私の自惚れでなければ確かだと思います。それを自覚できるくらいには長年一緒に居ましたから」
「ええ。私も、幽香も、貴方を愛しているのは事実よ。特に幽香は、いつの間にやら家族以上の愛情を向けて痛い。痛いわ幽香。真面目な話しているんだから抓らないで痛たたたたた」
ふん、と鼻を鳴らして幽香は腕を組んだ。
一見不機嫌そうにも見えるが、彼女なりの照れ隠しであることは、この場に居る残りの二人も理解していた。大方、紫に余計なことを言われそうになったからだろうが……隠したところで今更であろうに。他人に客観的に言われると何となく恥ずかしく感じるような、複雑な乙女心とかいうものだろうか。残念ながら紫は幽香が居る以上幽綺にそういう感情を向けることは控えているし、他に経験がある訳でもない。幽綺自身にとっては、その愛情を理解していても、一から十まで把握している訳でもない。ここらは幽香自身にしか分からない心の機微だろう。
話が逸れた。
ともかく。
幽綺も、妖怪という存在を混ぜるというのがどういう行為であるのかは分かっている。
だが。
「私は、別に構いませんよ?」
「それは、提案したのが私だからとかいう理由ではなく?」
「はい。どうせ私は人間ではありませんし、今更何を混ぜようと、私は風見幽綺のままです。お二人が私をそう扱う限り、私は私のままですから」
「……そう」
もう一度、そう、と息を吐く。
杞憂であった、のだろう。
彼は紫や幽香が思っている程自分という存在、自分を構成する中身について執着していなかった。いくら二人が心配事を並べた所で、彼自身がこう言うのなら、そこまで思いつめることはなかったのだと思う。心配しなくていい、悩まなくていいということでは決してないが、やはり胸のつかえが取れるような感覚はあった。
それを現金な奴だと、浅ましいものだと思うほどには、まだ自分は倫理観や道徳を捨ててはいないらしい。
「じゃあ、今から貴方に妖怪を混ぜて、貴方を半妖にしてしまうと言っても……貴方は了解するの?」
「ええ。寧ろ、私からもお願いしたいぐらいです。そこに生きて幽香姉さん達と一緒にいられる手段があるのなら、私は喜んでその方法に手を伸ばしますよ」
紫と幽香は互いに目を合わせる。
朗らかに、軽やかに微笑む幽綺の姿に、彼女達が想定していたような感情は見受けられない。憂いも不安もない、こちらに全面的な信頼を寄せているのが分かる。
全てを委ねている訳ではなく、彼の性格から考えても、しっかりと半妖となることの意味も危険も考慮した上でそれを受け入れることにしたのだと思う。
信頼を得られているのは嬉しい。出会ったばかりの頃と比べたら考えもしなかった変化だろう。少し過去に思いを馳せていたからか、もう数十年も経つと言うのに思い出してしまう。
そして。
彼が半妖となることを受け入れてくれるのならば。
……ここから先は、幽綺と幽香、姉弟で話を進めるべきなのだろう。
「……幽綺」
「……はい、姉さん」
「――本当に、良いのね?」
「――こちらからも、お願いします」
幽香もそう思っていたのだろう。紫が何かせずとも、彼女は自ら口を開いた。
名前を呼び、最終確認。
薄く、優し気な笑みを浮かべている幽綺の表情は、普段通りであるように見える。
だが彼の眼には、決して揺るがない決意が見受けられた。
その眼を見て、幽香は一つ頷く。
「分かったわ。それじゃあ――」
そして。
ここが。
遠い未来、人外達の楽園の地、忘れ去れた者の安寧の地にて、姉と共に名を馳せることになる、
――――大妖怪 風見幽綺の誕生だった。
いちいちストーリー考えるのがだるくなったので一気に出したとも言う。
とりあえず、今出してもいいかつ、これからの話で必要な情報は出したと思います。
主に三つ。
・能力『届かせる程度の能力』
いつもの。程度の能力。紫様曰く、〈元に戻った〉能力。何故変質したのかは文中にあった通り。変質する前から能力を持っていた理由についてはいずれ。
・戦闘力
つおい。陰陽術や式神、妖術を問わず、主人公はそういう術式関連に対して高い適正を持っています。格闘等近接については、術式程ではないにしろ鍛錬を重ねて上達。その道の達人ほどではないにしろ、トップクラスであるのは確か。棒術が基本だが、剣や弓等の普通の武器も扱えないことはありません。
・在り方
結果として、彼は半妖という立ち位置に落ち着きます。ですが、残り半分が人間でないことが確実のため、現時点で全容は明らかでありません。少なくとも半分は妖怪。さらに本編では書いていませんが、幽香の力を受け継いでいるので、妖怪部分としての実力も相当。
とまあこんな感じでしょうか。割と、というかめちゃくちゃガバガバ。
どうやって半妖になったのかとかも一応考えてはいたのですが、いや要らねえわ、となったのでカット。というよりも考えていた内容に自分の文章力が見合っていません。悲しい。
それでは、次回も読んでいただけることを願いつつ、ここらで終わりとさせていただきます。
Twitterで見た、目だけ肥えている状態な気もしなくはないが、いやでもがばがばだわこれ、と思う今日この頃。