この作品は東方projectの二次創作小説です。原作との差異や改変等ございますので、苦手な方、お嫌いな方はブラウザバックをお勧めします。
急いで書き上げることにしました第二話です。
それでは、どうぞ。
家に帰ってきたら見慣れない
声を掛けたら攻撃された。
「…………」
「…………」
互いに無言。
少年は見知らぬ誰かに警戒を。
幽香は自分の攻撃にも威圧感にも動じぬ少年に懐疑と驚愕を。
(無傷、ですって……?)
いくら咄嗟の攻撃とは言え、そこらの野良妖怪程度なら木端微塵にする程の威力を先の妖力弾を持っていた。
なのに少年はそこに立っている。
傷は無い。どころか、周囲にも奥にも被害は出ていない。
そしてなにより、
「えと、初めまして、お姉さん」
名も知らぬ少年は自然体であった。
それこそ、大妖怪風見幽香にご丁寧にも挨拶し、あまつさえ『お姉さん』と呼ぶ程には。
「……ええ、初めまして、人間さん」
そんな少年に幽香が次に抱いた感情は好奇心だった。
自分の妖力を前にして怯まぬその丹力、自分の攻撃を耐えた謎の力。
果たして、今目の前にいる人間は本当に人間か?
長い妖生だが、今のこの力を手にした自分に敵う存在など見たことなかった。ましてや、まるで自分を知らないように振る舞う存在など想像もしなかった。
自分の名前や姿が広く知れ渡っている自覚はあるが、誰もが自分を見てすぐにあの風見幽香だと分かるとは流石に思っていない。
しかしこの少年は異常だ。
その自然さが、平常心が、今大妖怪と対峙しているというのに何の変哲もないその態度が。
あまりにも普通で、どこまでも異常だ。
「私は風見幽香。花
「へー」
「へーって、それだけ?」
「?」
可愛らしく小首を傾げる少年。さらりと流れる少年にしては長い髪。
そこで幽香はその髪色に疑問を持った。
少年の髪色は人間らしからぬ白色。若干くすんではいるものの、白と言って差し支えない程には白い。
「白いのね」
「? うん、白いのですよ」
「は?」
「え?」
会話が噛み合っていない。
「髪のことよ」
「……ああ、これね」
少年は髪の先端をくるくると弄り、少し疲れた表情をした。
髪の色が普通の人間のように黒色ではないのは、特殊ではあるものの不思議ではない。
ただ、不思議ではないというだけで、異常ではあるが。
髪色が特殊と言えば自分もだが、人間側にも特殊な髪色をした存在は目にしたことがある。
しかしその全てが退魔師や陰陽師と言われる者で、その中でもさらに外法に触れた者が特殊な髪色をしていた。あのスキマ曰く、そういう奴らは大抵人間社会にも居場所を無くしてしまったような存在らしい。
少年もまたそんな人間なんだろうか。
「生れ付きなんですけどね。生まれた時なんて覚えていませんけど」
先天的なものらしい。ならば外法に触れて髪の色が変わったという訳ではない。
じゃあ何故だ?
普通の人間の子がそんな髪色をして生まれるとは思えない。いや、そうして生まれてきたからこそこうしてこんな森の中にいるのか?
そもそも親はどこにいる? 捨てたのか、死んだのか。どちらにしろ、捨てたのなら何故少年は人の住む場所へと移動しない?
人間の子供がこんな所に一人でいること自体がおかしい。動物や妖怪に今まで襲われなかったのだろうか。こうして分かりやすく生活しているのに?
一度目の前の少年に興味を持つと、次から次へと疑問が湧いてくる。
最近面白いことも無くなってきたので、丁度いい暇つぶしにはなるかもしれない。
「そろそろ貴方のことも教えてくれないかしら?」
「僕?」
「ええ、貴方は人間? それとも人外?」
直球で投げつけてみた。
「さあ?」
返ってきたのは予想していなかった回答。
はて、自分で自分の種族が分からない?
「自分が何者か分かっていないの?」
「僕にとっては周りが誰でも、自分が何でも、どうでもいいですから。あんまり意識したことはありません」
本当にこの少年は人間なのだろうか。
こう、もっとこう、子供というのは無邪気で小生意気なものだと聞いた。自分の強さもあり、赤子や童と接する機会などありもしないが、目の前の少年の言葉が普通の子供と大きく違うことぐらいは分かる。
「そういうお姉さんは、大妖怪って言っていましたよね」
「ええ、それなりに有名だと思うけど、聞いたことないかしら」
「残念ですけど、僕は知りません」
無知故に今なお放っている妖力に怯えないのだろうか。
いや、そもそも妖怪とは恐れの象徴。その妖怪が放つ妖力を一身に受けて恐怖ないしは少なからず不安や焦燥にも似た感情を抱かない筈はない。
しかし少年は相変わらず玄関先で自然体のまま立ってこちらを見つめている。
「……妖力は感じないのかしら?」
「妖力?」
「そのまま妖怪の力のことよ。今も貴方に向けて妖力を浴びせているのだけど……寒気とか、得体のしれない不安とか感じない?」
「特にありませんね」
そもそも妖力を感じていないのだろうか?
そう思い、自分が放っている妖力を追ってみる。
(あら……?)
妖力は問題なく放たれている。
だが、その流れは少年に届く前に全て消えていた。
妖力に形はない。色もなければ姿もないので、感じることは出来ても目視することはできない。幽香程の大妖怪や、妖力ではないが似たような力を使う神仏の類にはそれを目視できる程に濃密にすることが出来るが、今はそんなことはしていない。
そんな性質故か、何の目的や用途も考えずにただ放出するだけでは妖力はすぐに消えてしまう。力があればその分遠くへと飛ばすことはできるが、今のこの近距離でわざわざそれを考える必要もあるまい。
考えられるのは一つ。
「貴方、何か能力を持っているのね」
「! すごいですね。お姉さん分かるんですか」
少年は一瞬驚いた顔をした後、無邪気に笑った。
年相応なその表情にそんな顔もできるのかと、どうも自分の中の子供のイメージと合致したことに僅かに安堵し、一つ息を漏らす。
一切の予備動作無しで妖力弾を放ってみた。
「わわっと」
「……ふうん」
案の定、妖力弾は少年の元に届く前に霧散した。
先の咄嗟に放ったものとは威力は桁違いに強い筈だが、少年は驚くだけで、衝撃も何も届いた様子はない。
実際にこうして目にするとその異常性が際立つ。
何度も言うが、幽香は並び立てるものなど殆ど存在しない程の大妖怪である。
そんな幽香の攻撃を何の動きも見せずに無力化する。これがどれほど常識離れしたことか、当の少年自身はイマイチ理解していないらしい。
「びっくりするじゃないですか、もう。お姉さんも僕を殺したいんですか」
「随分とませたことを言うのね。貴方の命に興味なんてないわ。私が興味を惹かれているのは貴方の能力、強さだけよ」
「そんなに僕は強くありませんよ?」
「私の攻撃を二度も防いでおいてよく言う」
しかしまあ、ここまで来たなら幽香にも分かる。
あのスキマが言っていた面白い存在というのは、まず間違いなくこの少年だろう。
幽香がこんな森の奥にやって来たのには理由がある。
それは、あの胡散臭いスキマ妖怪、八雲紫からこんな話を聞いたからだ。
曰く、人間も妖怪も関わろうとしない禁忌の存在。
曰く、下手したら大妖怪にすら届き得る程の実力。
曰く、どこまでも心優しい人格。
当初はそんな言葉など気にも留めなかったが、もしかすると幽香を超えかねない程の実力を持つと言われれば、まあ顔ぐらい見に行ってもいいかなと思うくらいには興味を持つ。
それが紫の思惑通りであったとしても、実害は無いのだから無視する。
さて、
「もう少し、私と遊びましょう?」
少年の足元から植物の蔦を伸ばし足を絡めとる。そのまま壊してしまっては人間(?)の子供などそれだけで死にかねないので、あくまで巻き付く程度に力は弱めておく。
同時に妖力弾を多数展開させ、多方面から一気に少年へと放つ。少年の能力の効果範囲を推し量るためだ。前方だけなのか、もっと広いのか。
家など知らない。壊れてしまったところで自分には関係無い。
「うっひゃあ!?」
流石に今度は破砕音が響いた。
倒壊する家、粉塵が舞う中で少年が驚いて逃げ出す姿が見えた。やはり効いてなかったっか。
……
「これならどうかしら」
外に逃げ出したなら好都合。ここは森の中。植物溢れるこの場は、幽香の独壇場である。
花が少ないのは玉に瑕か。
もう一度蔦を伸ばす。葉に妖力を込めて飛ばす。
粉塵が晴れたその先には、やはり無傷の少年が立ち竦んでいるだけだった。しかし今しがた飛ばした蔦や葉が少年を取り囲むように一定の範囲で空中で静止していた。
(質量があるのなら消えないということ? 無効化するような能力という訳でもないみたい)
「来な、いで!」
少年が叫ぶと、幽香が放った植物達は何かに振り払われたかのように吹き飛んだ。
これには幽香も驚いた。
この少年は今、数多の退魔師や陰陽師が挑戦しては為し得ることのできなかった幽香の攻撃を耐えるという偉業を打ち立てたのだ。
一歩、少年へと近付く。
「あ、あはは……僕は逃げた方がいいですかね?」
「そうね。逃げる方が賢明だわ。逃がす気はないけれど」
もう一歩踏み出す。
「お姉さんは、僕が怖くないんですか?」
「貴方より私の方が怖い存在よ。貴方なんかに恐怖を抱く程私は臆病じゃないわ」
さらに一歩。
「……そんな人、じゃありませんでしたね。そんな妖怪さんはお姉さんが初めてですよ」
「あら、それは運が良かったのね。貴方を怖がらない妖怪は腐るほどいるわよ」
もう一歩を、
「?」
「うん。そうですね。でも、それ以上は近付いてほしくないです。僕にとっても、お姉さんにとっても」
踏み出せなかった。
少年との距離はまだまだある。日傘を伸ばしても届くことは無い。
ならばと腕を伸ばそうとするが、自分の体より前に出すことが出来ない。一歩下がり、ようやく伸ばせた腕が掴むの虚空。
『何か』があった。
成程、これが少年の能力の正体か。
「結界の類かしら」
「僕に聞かれても困ります。自分の能力なんて分かっていませんから」
握り潰そうと力を込めると、電流が走ったような衝撃と、バチィッ! という音がして咄嗟に手を離してしまった。
「名前を付けるとしたら、そうね……『拒絶する程度の能力』といったところかしら?」
「拒絶する、ですか。はは、僕にピッタリですね」
自嘲気味に笑う少年。子供離れしたその表情にやはり人外ではないのかという思いが高まる。
まあ少年が人間か人外かなんて幽香にとってはどうでもいい。大事なのは、自分の力が少年には通じていないという一点である。
内側からならと結界のようなものの内側から、しかも少年の背後の地面から蔦を伸ばし絡みつかせようとしてみる。しかし妖力そのものが内側に届かないので、植物どころか妖力弾の生成すら不可能であった。
今まで様々な奴等と戦ってきたものの、こんなことは初めてだ。
「貴方、面白いわ」
「そんなことを言われたのも、お姉さんが初めてですよ」
少年は一歩後ろへ下がった。能力の効果範囲は動かない。
どうやら、自分の力は効かないようだし、これ以上の戦闘行為は無駄だろう。
久方振りの敗北は若干悔しい思いはあるものの、今はそれより少年への興味が強い。
「ねえ」
「はい?」
幽香はなるべく笑顔を意識して、
「少し私とお話ししないかしら。貴方のことが知りたいわ」
少年は、驚いた顔をして、何故か、痛ましい笑みを浮かべた。
◇◆◇◆
家は壊れてしまったので、その場凌ぎとはいえ植物を操って壁や屋根を修復しておいた。
家財道具はどうしようもないが、もとより物は少なかったし、修復後の方が前より見た目は新しいのはどういうことなのか。
まあ自分がここまでしてあげる義理はないのだが、話を持ち掛けた手前場所ぐらいはどうにかしようということである。
感謝するよう少年に言うと、
「いや、お姉さんが壊しましたよね?」
と冷静に返されてしまった。可愛くない奴だ。
少年は自分と一定の距離を保ちながら、一応家には上げてくれた。むしろ何ももてなすことが出来ないことに引け目を感じているようであった。
やはり見た目に反して思考がやけに成熟しているのに違和感を感じる。これもまた、少年を人間とは思えない一因なのだろうか。
まあ話せる程度に近付けるようになっただけマシか。
「それで、幽香さんはご友人に」
「知人よ」
「……知人さんに話を聞いて、ここへ来た、ということですか」
断じて胡散臭いあのスキマが友人などということはない。
「私が怖くないの? 曲がりなりにも、貴方を攻撃した妖怪なんだけど」
「襲われそうになることは何度もありましたから。幽香さんが特別という訳ではありません」
まさかこの風見幽香をそこらの野良妖怪と同等に扱うとは。
不敬だとか身の程知らずだとかを通り越し、一周回って面白い。
「それにしても」
「?」
「よく貴方みたいな幼い人間が一人でこんな所で生き延びられるものね」
「まあ幽香さん曰く『拒絶する程度の能力』がありますから。安全については大丈夫ですしね。食事もそこまで必要ではありませんし」
「食事の必要がない?」
「これまであまり食べなくても何とかなっているので、そういう体質なんじゃないでしょうか」
それは単純に食事そのものの量や回数が少ないのに体が順応してしまっているだけでは。
だが餓鬼のように腹だけが出ている訳でもないし、衣服越しだが、そこまで栄養失調特有の体形でもない。むしろそこらの貧困や飢饉に苦しむ村の子供と比べたら十分にしっかりとしている。
少年が戻ってくる前に家を見渡した感じでは、微量とはいえ子供一人には十分量の備蓄もあった。
「貴方、生みか育ての親は?」
「親というものがどういうものか分かりませんが、僕は前からここに一人で住んでいますし、最初から一人ですよ」
物心付く頃にはもう一人だった、ということだろうか。
なら、一人で立ったり歩いたり、言語の習得も含めて、肉体的精神的問わずにある程度成熟するまで誰が面倒を見ていた?
もし最初からという言葉通りに赤子の時からここに一人だというのなら、妖怪等に襲われなかったのは能力が先天的に備わっていたということで説明はつくが、今こうして生きていること自体が非現実的になってしまう。一応食事は量や回数が要らないだけで必要ではあるようだし。
少し厳しい視線を向けると、少年はイマイチ理解していないのか、にこりと笑いかけた。
はあ、と溜息を一つ。少年のことが訊けば訊く程分からなくなってしまう。
「……ああ、そう言えば貴方の名前を聞いてなかったわね」
「名前、ですか」
「ええ。私は貴方を何と呼べばいいのかしら」
「お好きに呼んでください。僕に名前はありません」
……なんだと?
いや、不思議なことではない。今まで一人だったというのだから、そりゃ自分の名前なんて持ち合わせている筈がない。
しかし、まあ。
「無いなら無いで別にいいわ。気が向いたら好きなように呼ぶから」
個人の名前に興味は然程無い。いつか、少年に名前が必要になった時にでも呼び名を決めればいい。
自分が知りたいのは少年の素性であって少年そのもののことではない。
ただ、
「……うん。うん、そうですね。でも、僕のことはあまり気にかけないでほしいです」
そのどこか虚ろな笑顔は気になった。
訂正。
気にすることができなく
本当にこの主人公はショタなのか。
主人公の精神年齢が見た目の割に高すぎ問題。誰だよ敬語キャラにしたやつ……
一応取り敢えずまず疑問に感じる筈のことについては答えさせたと思いますが、何かご不明な点がございましたらご連絡下さい。
それでは、次回も読んでいただけることを願いつつ、ここらで終わりとっせていただきます。
途中まで主人公の白髪設定を忘れてたなんて言えない……