マリア様がみてる Another ~シスター&シスター~   作:夏緒七瀬

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18 積極的と一抹の

 放課後。

 

 薔薇の館に顔を出したマリアは、そつなく山百合会の手伝いをこなして、無事に今日の役目を終えることに成功していた。とは言っても、ほとんどお客様扱いをされていただけで、薔薇ファミリーの皆さま方と楽しくお話をしただけだった。

 

「それじゃあ、私はゴミを出してきますね」

 

 マリアはせめて最後くらいはしっかり仕事をこなさなければ思い、自らのその仕事を志願した。

 

「私が手伝うわ」

 

 ゴミ箱を持ってゴミ集積場へと向かって行くマリアに続いたのは、瞳子さま。

 

「瞳子さま、それだったら私が行きますけど」

 

 気を聞かせてそう言った菜々さんだったが、直ぐにその語尾を小さくした。

 

「菜々ー、あんたはお姉さまのお手伝いがあるでしょう」

 

 由乃さまが言うと、瞳子さまは黄薔薇ファミリーに向かって小さく頭を下げる。

 マリアはそのやり取りの意味がよく分からなくて、首を傾げるしかなかった。

 何かあったのかしら?

 そんなことを思った。

 

「あの、私一人でも大丈夫ですけど?」

「あら、私と一緒じゃ嫌かしら?」

「いえ、そんなこと。でも、瞳子さまにゴミ捨てをさせるなんて」

「私のことを特別に思わなくていいのよ。紅薔薇のつぼみ(ロサ・キネンシス・アン・ブウトン)であるという以外は、私だって普通の生徒と変わりないんだし」

 

 それもそうなのだけれど、そんなふうに割り切れるほどマリアは物わかりが言いわけではない。

 それでも、マリアは瞳子さまの言葉に頷いた。

 

「はい。それじゃあ、お願います」

 

 そうして、二人はゴミ箱を持って薔薇の館を出ていった。

 

 

 ☆ 

 

 

「瞳子ちゃんって、意外に積極的よね」

 

 ビスケット扉から出て言った二人を見送った後、由乃が感心したように言った。

 

「そうねえ。きっと、祐巳さんの良い影響を受けているんじゃないかしら?」

 

 志摩子が続き、微笑を浮かべて祐巳を見る。

 

「そんなことないよ。もともと瞳子は積極的なところがあるし、誰を前にしても物怖じしない性格だし」

「それもそうね。でも、祐巳さんの妹になってからは大分落ち着いていたから。やっぱり意外よ」

 

 由乃が祐巳の言葉に反応する。

 

「瞳子ちゃんは、マリアちゃんを妹候補に選んだのかしら? 祐巳さん、どうなの?」

「由乃さん、気が早すぎ」

「でもー、祐巳さんだって気になっているんでしょう? それに薔薇の館的にも、そろそろつぼみの誰かが妹を作ってくれないと困る時期だし」

 

 由乃は、にやりと笑みを浮かべて乃梨子を見る。ぎくりとした乃梨子は、由乃の挑発には乗らないぞと知らん顔を決め込んだ。

 

「まぁ、最悪、茶話会って手もあるし。まぁ、お手並み拝見と行きましょうかしらね?」

「茶話会だけは、ぜったいにしませんからね」

 

 乃梨子はついに爆発して言った。

 

「それに、由乃さまはご自分の妹が一年生だから、余裕ぶっていられるんです。ご自身が一番最後に妹をおつくりになったことをお忘れなく」

「私は菜々が入学するのを待っていただけよ。最後になるのは仕方ないでしょう」

 

 由乃も乃梨子に対抗して声を上げる。

 

「二人ともやめてください。お姉さま、大人げないですよ」

「菜々、あんたはどうしていつもいつもお姉さまの味方をしないのよー」

「お姉さまが間違っているからです」

 

 菜々はきっぱりと言った。

 

「それと、あまり妹候補のことで盛り上がるのも止めてください。クラスでもその話題で持ちきりで、マリアさんもすごく困っているんですから?」

「そうなの?」

 

 由乃が心配したように尋ねる。

 

「嫌がらせは続いているの?」

 

 乃梨子が続いて尋ねる。

 

「今のところ収まっています。瞳子さまが直接釘を刺したので暫くは何もないと思いますけど、やっぱり噂話だけは収まりそうもなくて」

「でも、こうして薔薇の館に通っていれば嫌がらせを受けることもなくなるでしょうよ。後は瞳子ちゃんがマリアちゃんを妹にすれば、万事解決よ」

 

 由乃が腕を組んで自信満々に言い、菜々は溜め息を吐いた。

 

「そんなに簡単な話じゃないと思います。瞳子さまには先にお話ししたんですけど、今日新聞部の真美さまがマリアさんにお話を伺いにやってきたんです」

「真美さんが?」

 

 その言葉に反応したのは祐巳だった。

 

「はい。でも、記事する気は無いと仰っていましたし、それに取材というよりも、この噂話が広まるのを心配しているような雰囲気でした」

 

 そこまで聞いて、祐巳は考えた。

 

 以前の新聞部ならいざ知らず、真美さんの代の新聞部はゴシップネタを提供したり、特ダネを追うような姿勢は取っていない。新聞部の部長が真美さんから、妹の高知日出実ちゃんに移っても、その姿勢や方針は変わっていないはず。

 

 その真美さんが、わざわざマリアちゃんを気遣って話を聞きに来たという事は、この問題は自分たちが考えている以上に大きくなっているのかもしれない。

 

 そんな、一抹の不安が祐巳の脳裏に過っていた。

 

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