マリア様がみてる Another ~シスター&シスター~ 作:夏緒七瀬
「お姉さま、まだいらしたんですか? それに、マリアも?」
瞳子さまが薔薇の館に戻ってきたのは、マリアと祐巳さまの会話がちょうど終わったところ。
まるで二人の会話がひと段落するのを見計らったかのように、瞳子さまがビスケットの扉を開けて目を丸くする。
「お帰り、瞳子。演劇部おつかれさま」
「お姉さまこそ、山百合会のお仕事おつかれさまです」
二人は互いの労をねぎらったが、直ぐに瞳子さまは眉を寄せる。
「って、違います。どうして、二人がまだ薔薇の館に残っているんですか?」
「マリアちゃんと二人で瞳子を待ってたんだよ。ね?」
「はっ、はい」
祐巳さまに振られてマリアは首を縦に振る。
「はぁ、お姉さまに付き合わされたのね? マリア、今日は帰って良いって言ったでしょう」
「いえ、私が手伝わせてくださいって言ったんです。それに、祐巳さまがいろいろなお話をしてくださったのでとても楽しかったです」
「お姉さま、余計なこと言っていないでしょうね?」
瞳子さまが、じろりと祐巳さまを見て尋ねる。
「余計なことって?」
「余計なことは余計なことです」
「わからないなー」
「まったくもう」
楽しそうに
そんな光景が、どうしてかマリアの胸を強く締めつけた。
そんな些細な会話を、とてもうらやましく思った。
だって、二人が本当の姉妹のように見えたから。
その輪の中に私も入れたなって――マリアは、そんなことを思ってしまった。
「さぁ、早く帰りましょう。マリアも行くわよ」
「はい」
マリアは、祐巳さまと瞳子さまの間に挟まれて帰路を辿る。
マリア像の前で三人仲良く手を合わせると、祐巳さまが楽しそうに言った。
「なんだか、私たち家族みたいだね」
マリアは、本当だと思った。
先ほど、心の中で瞳子さまの妹になれないと祐巳さまに謝罪をしたばかりなのに――マリアは、もっとこんな時間が長く続けばいいのにと願っていた。
マリア様に。
お願いだから、もっと瞳子さまと祐巳さまと一緒にいさせて欲しいと。
マリアは、そんな自分勝手で優柔不断な自分をとても情けなく思った。
でも、この時間は長くは続くない。
もう少しで、私にかけられた魔法は解けてしまう。
そのことをマリアは知っていた。
シンデレラの魔法は、長くは続かないのだから。
☆
自宅に帰ってくると、マリアは制服を着替える前に花瓶の水を取り替えて、綺麗な水と入れ替えた。そこに飾られた白い百合の花を眺めて、それがまだ綺麗に咲いていることを確認する。
百合を飾った花瓶を写真立ての隣に置くと、マリアは小さく「ただいま」と言って微笑む。
これが、マリアの日課。
マリアは制服を着替えながら、今日一日の出来事を振り返る。
祐巳さまの言葉が、いつまでもマリアの頭の中から離れなかった。
「