マリア様がみてる Another ~シスター&シスター~ 作:夏緒七瀬
マリア像の前まで逃げるように走ってきたマリアは、雨に打たれることも気にせずにマリア様に祈った。
どうか、瞳子さまが傷ついていたり、ショックを受けいたりしないで下さいと。
私なんかのために、涙を流したりしないで下さいと。
そして――ごめんなさい。ごめんなさい、と。
マリアは今でも信じられなかった。
あの
そんなことがあるわけないと――自分に言い聞かせてきた。
それでも、瞳子さまが自分に向ける感情には気づいてきた。
だって、マリア自身も同じ感情を抱いているのだから。
それでも、ロザリオを受け取ることはできなかった。
瞳子さまと
マリアは雨に打たれなあらマリア様に拝み続ける。
あれは、瞳子さまの気の迷い。
そもそも、瞳子さまが自分を気にかけてくださったのも、同情から発したもの。
瞳子さまは――私のことを、守ってあげると言った。
でも、
誰かを守るために
それでも、マリアは瞳子さまに身を委ねたくなった。
そうできたならどんなに素晴らしいだろうかって、この期に及んでも考えしまう自分がいた。
でも、マリアは瞳子さまを拒絶した。
徹底的に。
これで、薔薇の館に通うこともなくなった。
菜々さんとお昼を食べることもないだろう。
蘭さんだって、もう私を気にかけたりしないだろう。
先ほどの会話で徹底的に軽蔑されてしまったのだから。
マリアは、自分が完璧なひとりぼっちになってしまったことを理解した。
もう、誰もマリアのことを追って来てはくれない。
後ろを振り返りたい気持ちをこらえきれずに、目を開けて来た道を見つめる。
だけど、そこには誰もいない。
瞳子さまも、追って来てくれない。
当たり前だ。
マリアは、ようやく自分に罰が当たったんだと安堵した。
これで良かったんだと、微笑んだ。
大粒の涙を流しながら。
自分が今、どんな顔をしているのかまるで分からなかった。
これで良かったんだと思っているのに、大きな後悔していることには気が付いていた。
気がつかないふりはできなかった。
でも、どうすることもできない。
もう、どうしていいのか分らない。
ぐちゃぐちゃになったこの感情では、なにも考えられない。
マリアは、雨に濡れながらひとりぼっちで帰って行った。
家にたどり着くまでの時間が永遠に感じられた。