死神くんside
「え?見られた?誰が?誰に?」
「人間の女性に俺がです。何回言わせるつもりですか?族長」
あの人に姿を見られてから、俺はすぐ境界に飛んでいった。そして死神の詰所に飛び込んで、族長に事の全てを話した。しかし、最近全く無かった事象のため、何回か同じことを言わされた。族長なんだからすぐに理解しろよ。因みに今ので5回目だ。
「ふん~。何百年振りだろうね~。この事象。その娘霊感とか強いの?」
「いえ。全く無いです。周りにゴロゴロ霊がいるのに、気付いたのは俺が話してた霊だけの様です」
「じゃあ神とその神と話してる霊限定か……」
全くもってややこしい上に限定的すぎる。一体彼女の何が俺たちの様な存在を目視させているのか、それがさっぱり分からない。それに対策のしようもない。
「まぁ取り敢えず確認させてもらうね。え~っと……お前の担当してる町の女性で、歳が19…他に何か分からない?」
「誕生日が6月でした」
これは彼女が鞄にぶら下げてたバスの定期券から得た情報だ。調べたと言うわけではない。
「6月ね~……他には?身体的特徴でもいいから」
「黒髪」
「日本人は大体黒髪でしょ?」
「セミロングよりもやや短い髪型。あと全体的にボーイッシュな感じ。身長は160あるか無いか位」
「よくそんなに覚えられてたね~」
仕事上は当然の事だ。そもそもあんたが教えた事だろ。と言うか見ただけでスリーサイズや靴の大きさ、指の太さや過去まで一瞬にして見抜くお前には負けるよ。
「ん~っと。その情報に該当するのは……この16人かな~。管轄してる範囲が広すぎるからまだこんなに居たよ」
別に良いだろ。管轄の広さは。誰かと行動するよりは1人で行動してた方が楽なんだから。報酬もその分増えるわけだし。
「……あ、この娘だ」
「どれどれ……ん?何で10代で早死リストに入ってるんだ?」
「は?」
早死リスト。それは他の神が定めた寿命に到達する前に死んでしまう可能性のある人間をまとめた物だ。大体このリストに載せられるのは20代~40代前半までの人間。10代の人間が載るのは珍しい。そしてそんな人間がいた場合は、死神がなんとしても天寿を全うさせる為に色々とする義務が出てくる。めんどくせ~。
「ちょっと調べてくるからここで待っててね~」
そう言って、族長は詰所を出ていき、死因などを専門に扱う別の神の詰所へと向かっていく。場所によっては1日かかるが、まぁ1時間位で戻ってこれるだろう。
~1時間30分後~
「いや~、すまんすまん。途中で黒猫に横切られちゃって」
「……で?なんで早死リストに?」
「受けないか……まぁいいや。早死リストに載ってたのは、彼女が呪いとかを受けやすい体質だからだ。まぁそれほど魂が純粋って事なんだけどね。俺達の様な神を見ることが出来るのも、その純粋さ故だろう。理由はそれ以外にもありそうだけど」
呪いを受けやすいほど純粋な魂……と言うことは、霊がなんの意識もせずに起こしてしまった霊障も直に受けるってことか……厄介だな。
「あぁ後、彼女のご先祖様。かなり遠い方のだけど、弥生時代位かな?神憑りの経験があるみたい。それで微量だけど神の力が宿っちゃってる感じだって」
微量でも神の力を持っていると言うか事は、悪霊や邪な考えを持った霊に魂を喰われやすいって事か。どっちに喰われたにしろ、厄介な事になるのは回避できないな。
「まぁそんなわけで、俺の独断だけど、お前にはその娘としばらくの間一緒に行動してもらうから」
「は?」
「呪いとかから守ってあげて。ついでに早死しないようにもしてくれ。期間は彼女の中に残っている神力が完全に消えるまで。それまではサポートとして、俺のお供を町中に放っておくから、彼女の護衛に集中してくれ」
……イヤイヤイヤ!俺に管轄ほうっておけって言うのかよ!なに言ってんのコイツ!仮にも死神族の族長だよね!?なんで態々人間の女1人のために仕事放り投げなきゃいけないのさ!?バカなの!?死ぬの!?いや。もう死んでるか。
「じゃあしばらくお願いね~。お供は後で放っとくから」
月香side
「と言うわけです。不本意ながら、仕事を放り投げて貴女の護衛に付くことになりました」
「……ごめん。何にも理解できない」
だってそうでしょ!いきやり押し掛けられて、しかも呪いとか霊障とか受けやすい体質って言われて、更にご先祖様の誰かが神憑りをしてその時の神の力が残ってるって言われたんだよ!1回で理解出来るわけ無いじゃん!
「まぁ噛み砕いて言うとですね。……早死させないために手伝いをしてこいって事です。まぁ、何と無く呪いとか霊障とか関係なしに早死しそうな理由がここに来て分かりましたけどね」
え?ウソ!?なんで!?ただ上がり込んで話をしてただけなのに!?
「カップ麺の空。コンビニ弁当と惣菜の空。賞味期限と消費期限の切れてる食材にグチャグチャになって掃除のされてない部屋。溜まった洗濯物。折り畳まれてない服と散らかってる作業台……なに考えてるんですか貴女は」
上がり込んで訳の分からない話をして、更には部屋を見回してボロクソ言うとはなんて失礼な!!……でも事実だから言い返せない……。そりゃあ、こんなに不健康な生活をしてたら早死もするか……
「まずは生活態度を改めて貰います。最初は部屋の掃除ですね」
「私、掃除苦手なんだけど……」
家事も無理だけど……
「はぁ……分かりました。貴女の身の回りの事を徹底的に手伝わせて頂きます」
そう言うと死神さんは立ち上がって、少し浮き上がった。
「ちょっと邪魔です」
「え?うわぁあ!!?」
何故か私までも浮かせられた。そして部屋を完全に見渡せる位置まで来ると、死神さんは指を鳴らした。すると部屋中に散らかってた物が勝手に動きだし、ゴミはゴミ箱に、服は折り畳まれてクローゼットに、洗濯物は洗濯機に入っていって回され、食器は勝手に洗われている。なにこれスゴい?!
「まぁこんなものですね」
「うぉわ!?」
イッタァ~。普通落とす!?部屋は一気に綺麗になったからありがたいけど、普通落とす!?結構痛いんだけど!!
「今回は俺が片付けましたけど、次からは自分で片付けてくださいね。掃除のやり方とかは教えますので」
「はい……ん?何で仮面付けてるの?」
「顔を見られないためにです」
「なんで?」
「見られたら今後色々と不都合が起きるからですよ」
「へぇ~……」
スゴく気になる。スゴく見てみたい!声綺麗だし身長も高いから顔も整ってるのかな~?出来ればマンガのキャラにしたいな~。
「さてと。これを買ってきてください」
「なにこれ?」
「食材です。あと調理器具。お金はこれを使って構わないので」
わ~。諭吉さんがスゴくいっぱ~い。え?私が買ってくるの!?今から!?マンガ描きたかったのにぃぃぃ!!
死神くん
広大な町を1人で管轄している凄腕の死神。仕事中に月香に姿を見られてしまい、詰所で調べてもらった所、月香について色々と判明。寿命を迎える前に早死するのを防ぐために護衛という名目で族長に面倒な仕事を押し付けられた。仕事のない日は基本境界をブラブラしている。皆さんご存知の無気力な救世主に出てきた海堂達のサポートをしていたのがこの人です。
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