私と死神さん   作:憲彦

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仕事、辞めたい。


第7話

月香side

 

私は今、絶賛正座中です。そして目の前にはお怒りモードの死神さんが腕を組んで私を見下ろしています。仮面を付けてるので表情は読めませんが、目から分かります。完全に怒っていると。

 

「さて月香さん。何故あんな道を通ったんですか?貴女にはお奨めしないと言った筈ですよ?」

 

「え、えっと……早く帰りたかったから?」

 

「バカですか!バカなんですか!!いやバカなのは分かってましたけど!貴女は今、自分がどれだけ危険な状態か理解してるんですか!?僅かとは言え神の力を身に宿してるんでよ!復活を考えてるバカな亡者や邪な連中の良い餌なんですよ!?早く帰りたかった?確かに還れますよ。無にね!これからは俺が言った事を守って下さい!分かりましたか?!」

 

「はい…わかりました」

 

そんなに怒る!?と言うかバカって言い過ぎだよ!!そこまでバカじゃないよ!そもそも何で通っちゃ駄目なの?そこから分からないんだけど!

 

「ねぇ、何で裏路地とか人通りの少ない道って通っちゃ駄目なの?」

 

「はぁ……バカだ」

 

なんでタメ息吐いて呆れたように言うのさ!?

 

「小さい頃とか、来たことないけど嫌な感じがするとか、人通りの少ない場所に脚を1歩入れたけどすぐに引き返した。なんて経験ありませんか?」

 

「ん~…何回かあったと思うけど」

 

言われてみれば、確かに無いわけではない。小さい頃を思い出せば意外と出てくる。気にしてなかったけど、改めて考えると何でだろ?

 

「それは人間の持つ限定的な予知能力。いわゆる第六感です。体が意思とは無関係に危険と判断して、その場から逃げようとする動きを取るんですよ」

 

「なんで?」

 

「意思とか感情とかを置いて、体が先に気付くからですよ。危険なものが潜んでいることに。でも残念な事に、成長するに連れてそれが鈍くなっていくんですよね~。だから平気で裏路地とか人通りの少ない場所に行って痛い目を見るんですよ。本来人通りの少ない場所や、明かりの少ない道と言うのは、亡者が集まりやすい場所なんです。日本の怪談話や恐怖体験の大半が暗い場所や人のいない場所なのはそう言う理由です。日本特有なんですけどね」

 

成る程成る程。メモしておこう。そして早速ネーム描いたりしておこう。いつでも原稿を作れるようにしておかないと。ん?

 

「なんで日本特有なの?大体外国でも幽霊とかって夜のイメージがあるけど」

 

「それは歴史が関わってくるので深く話すつもりはありませんが、月香さんは風葬と言うのを知っていますか?」

 

「ふうそう?」

 

「風葬とは、遺体を野天・洞窟・樹上などに放置して自然に風化させる葬法です。簡単に言えばその辺に放置しておくこと。当然、時代的な問題もありますが、きちんと供養されているとは言えないので、亡者の霊魂がそこら中に漂う事になります。それがまた別の場所から別の霊魂を呼び寄せ、巨大な塊となります。結果その周辺は風水的にも物理的にも良くない場所となり、どんなに栄えていようと数十年で廃れてしまいます。平城京が良い例ですよ」

 

あれそんな理由だったの!?確かに時間で見たら短かったけど、それそんな理由だったの!!?なんかとんでもないこと聞いちゃったんだけど!?

 

「当然、どんなに時間が経とうと霊魂は集まりやすい状態になってるので、体が勝手に無理と判断してその場所から離れようとします。素直にその行動に従うことが身のためですよ」

 

「な、成る程。確かに今日体験したもんね。あんな事。良く良く考えたらかなり危険だったね。以後、通らない様にするよ」

 

「えぇ。そうしてください。一々助けるのは面倒なので。まぁ死んだら死んだで、俺は通常の職務に戻れるので楽なんですけどね」

 

なんかとんでもない事言われたような……助けてくれるんだよね?ちゃんと助けてくれるんだよね!?私の寿命が来るまで守ってくれんだよね!?ねぇ!

 

「で?なんで忠告したのに、あんな道通ったんですか?」

 

あ、そうだった。死神さんに言うことあったんだ。

 

「実はね。死神さんの話を元にして描いたマンガ、載るかもしれないの」

 

「へぇ~……え?何て言いました?」

 

「だから!私たちの描いたマンガ!雑誌に掲載されるかもしれないの!」

 

「そんなバァカな……」

 

おぉ。驚いてる。こんな死神さん珍しいな~。クソっ!仮面の下の顔を見てみたい!!仮面を剥ぎ取りたい!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死神side

 

いや、嘘でしょ。アレが載るの?大丈夫なの?と言うか、会議に回すとか言われただけでしょ。気が速いんじゃない?掲載されても人気が無かったら連載は無いでしょ。なのに何で続き作る気満々なの?

 

「載るとは決まってませんよね?会議に回されそうになってるだけですよね?」

 

「でももしかしたら載るかもしれないんだよ!作ろうよ続きを!!」

 

何でこんなに目を輝かせて言えるのさこの人は。と言うか何を描くつもりなの?

 

「一応聞きますが、何を描くつもりなんですか?」

 

「死神さんの日常だよ。正確には、こっちに来て私と生活を始めた辺りから!」

 

うわぁ~……マジで?他になんかあるでしょ。何でよりにもよって俺の日常?しかもこっちに来てからのって。夢無さすぎでしょ。

 

「人気出ると思えないんですけど……」

 

「大丈夫大丈夫!人気でなくて、打ち切りにならないようにするから!最終回まで描ければ、私は満足だよ。それに少女誌だもん。こう言う系って意外と受け良いから!タイミング見て恋愛要素入れるし!」

 

なおさら問題じゃね!?少女誌なのにタイミング見てって何!?ほとんど日常ギャグ系で行くつもりだろ!人気出る出ない以前の問題だよ!雑誌社間違えてんじゃないの!?

 

「さぁ~てと。続きのネームを作っておこうっと」

 

「え?」

 

「ほら死神さんも手伝って!」

 

うわぁ~。マジで描くの~。今日は疲れてるかは描きたくないんだけどな~。

 

「ほら速く速く!」

 

あぁ…これ今日は徹夜になるかも……死神の仕事、と言うより族長の命じる仕事もそこそこブラックだったけど、この人とやる仕事も負けず劣らずのブラック…!

 

「はぁ……で?どこから描くんですか?」

 

「そりゃあ、初日からでしょ!私にとってかなり衝撃的な出来事だったからね」

 

取り敢えず神の体は疲れない様になってるけど、これは精神的にかなり疲れるな~。バクマンの主人公達の気持ちが何と無く理解出来る気がする……これを中学の頃からやってたのか……マジで尊敬するよ。あの2人。

 

「なんで知ってんだ?俺……」

 

「ん?何が?」

 

「いえ。何でもありません。気にしないで下さい」

 

取り敢えず、記憶を呼び起こしながら描きますか……。眠くなったら寝よう。最後まで付き合う義理は無いわけですし。

 

「さぁ!描くわよ!!」

 

ドン!

 

あ、無糖のブラックコーヒーが大量に……これ、二徹しそうな勢い……無条件で最後まで付き合わされるパターンだ。もう死んでるけど、死にそう……




平城京の例は気にしないで下さい。適当に言ってるだけですので。

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