機動戦士ガンダムSEED DESTINY 〜僕の平和〜 作:自由の魔弾
私達3人は、町はずれの大きな看板の前にいた。ここが待ち合わせ場所だ。さっきからスティングとアウルは「雨がどうこう」と話しているが、私は別の事を考えていた。先ほど町で会ったソーマのことだ。一見、普通のナチュラルに見えたが、妙に強制力のある言葉やネオみたいな暖かい感じがソーマを普通のナチュラルじゃない事を証明させた。
「ん?あれだな。待ち合わせの相手は」
さっきから腕時計を見ていたスティングが、近づいて来た車に目をやった。前部座席にはザフトの軍服姿の男たちが座っていて、スティングの視線を受け、黙ってうなずく。私達も黙ってバギーの後部座席に乗り込んだ。
バギーが軍事工廠の敷地内を走っている最中も私はソーマの事を考えていた。なぜだか分からないが、ソーマの笑顔や撫でられた時の手の感触が忘れられないのだ。
(ネオ以外に私が安心する人物がいたなんて……。また会えるかな?)
そんな事を考えていると、走っていたバギーが巨大な格納庫の前で停車した。内部に駆け込んだ私達に、案内役の男たちが武器を手渡す。スティングとアウルが慣れた手つきで銃に弾倉を装填し、私はナイフを鞘から抜き放った。白く光る刃を見たとたん、私の中でスイッチが入る。
これからが本番だ。
アスランとカガリはデュランダル議長に伴われて司令部を出た。突然、議長が工廠を案内しようと言い出したのだ。周囲には格納庫が建ち並び、ときおり広い路面をモビルスーツが地響きを立てて横切る。あたりは明日予定されている式典のためだろう、ひどくごった返している。
「姫はさきの戦争でも、自らモビルスーツに乗って戦われた勇敢なお方だ」
デュランダルは行き交うモビルスーツや、格納庫の中をときおり指し示して解説しつつ、この行為を言い訳するように言った。
「また最後まで圧力に屈せず、自国の理念を貫かれた『オーブの獅子』、ウズミさまの後継者でもいらっしゃる」
しかし彼はもの柔らかな笑顔のまま、こう続けた。
「だが、力なくば、理念を守り抜くことは叶わない。だからこそオーブも軍備を調えていらっしゃるのでしょう?」
力なくば叶わないーーーむろん、カガリもそれは理解しているはずだった。力のない者の言葉など誰も聞こうとはしない。
彼女は思いつめたようにデュランダルに向きなおり、拳を握って叫んだ。
「だが!強すぎる力はまた争いを呼ぶ!」
カガリは死の道具を生み出そうという行為を黙って見ていることが出来ないのだ。それはアスランも同じだ。
だがデュランダルは動じる気配もなく、ゆるやかにかぶりを振る。
「いいえ、姫。争いが無くならぬから、力が必要なのです」
カガリは言葉をのんで立ちつくす。その時、警報が鳴り響いた。
「なんだ………?」
アスランはカガリのそばに寄って、あたりに油断なく目を配った。
ーーと、一棟の格納庫から、巨大な扉を貫いて数条のビームが放たれた。扉は吹っ飛ぶように溶け落ち、ビームの飛び込んだ向かいの格納庫でなにかが誘爆する。
「カガリ!」
アスランはとっさにカガリを抱いて物陰に飛び込んだ。爆風がさっきまで彼らのいた道路を駆け抜けていく。
(一体、なにが起こったんだ!?)
アスランは物陰から顔を出して、爆発の方向を見やった。風に吹き流されていく爆煙の陰から、巨大なシルエットが現れる。
「あれは!」
そこに在ったのは、3機のモビルスーツだった。2つの目と2本の角を持つ特徴的な頭部、"ジン"などと比べてスラリとした直線的なフォルム。それぞれ特殊武装を施されてはいるものの、その基本的なデザインは見間違えようがない。
「ーー『ガンダム』………!」
「姫をシェルターへ!何としても押さえるんだ!"ミネルバ"にも応援を頼め!」
最初の衝撃から立ちなおると、デュランダルはまず、随員にそう指示した。それに従って1人の兵士が「こちらへ!」と先に立つ。アスランは呆然と立ちつくしているカガリの肩を抱き、すばやく彼のあとに続いた。
先導されてアスランとカガリは格納庫の間を走っていた。が、建物の陰を出たところで、アスランは足を止め、カガリを引きずるようにして建物の陰へ飛び下がる。ほんの十数メートル先でモビルスーツ同士が戦闘を繰り広げていたからだ。案の定、爆発が起こり、反応が遅れた先導の兵士が、あっという間に炎にのまれた。
「こっちだ!」
アスランはできるだけ戦闘区域から離れようとカガリをうながして走る。が、彼らの退路を阻むように、黒い機体が道路の向こうから躍り出た。黒い機体が跳躍し、空中で"ディン"と交錯する。と、見るや、黒い機体の背中にあった二枚の翼が展開し、発せられた光刃がすれ違いざまに"ディン"を両断していた。
落下してきた"ディン"が格納庫の屋根を突き破り、中で激しい爆発を起こす。爆風は物陰に隠れた二人をも襲い、アスランはとっさに自分の体でカガリを守った。
「アスラン………!」
「大丈夫だ」
破片が直撃しなかっただけでも幸運だったのだ。しかしこうなった以上、カガリを何としても守らなければ。
アスランは狂おしい思いで辺りを見回すと、路上に倒れた機体に気づいた。さっき見た新型ーー"ザク"だ。破壊された格納庫から飛び出したものらしい。それを見た途端、アスランはカガリをうながして"ザク"へ向かって駆け出した。
「さぁ、乗るんだ!」
「え……!?」
戸惑うカガリを抱き上げて、アスランは開いたコックピットハッチから身をくぐらせる。すばやくシートに着くと、慣れた手つきで機体を立ち上げる。
「こんなところで、きみを死なせるわけにいくか!」
エンジンが滑らかな駆動音を伝え、モニターに光が入る。アスランは状況をつかむため"ザク"の身を起こした。が、その動きが黒い機体の注意を引いてしまったらしい。
(ーーしまった!)
黒い機体がビームライフルを構える。アスランはレバーを操作しビームを回避すると、同時に黒い機体に突っ込んだ。黒い機体はそのスピードに反応しきれず、"ザク"のショルダーアタックをまともに受けて、背後に吹っ飛ばされた。
だが黒い機体はそれで引き下がってはくれなかった。逃げる隙など与えてくれそうにない。となれば、戦ってかちとるのみだ。
カガリを守るためのアスランの死闘が始まった。
それと同時に1つの機体が動き出していた。
「おっさん!なんか前と装備が違うんだが?」
《気にするな!ちょっと高機動なだけだ。他は変わってねぇよ。あと、おっさん言うな!》
ソーマは注意されながらも、慣れた手つきで機体を起動する。それはかつて、戦争を止めるために自分の剣となった愛機だった。
「へいへい、分かってますよ。ソーマ・アイリス、"グローリー" 出るぞ!」
主人公の機体は完全オリジナルです。今後も様々な武装や兵装が登場する予定です。