機動戦士ガンダムSEED DESTINY 〜僕の平和〜 作:自由の魔弾
「それでは、敵戦艦及び敵強奪機体追撃作戦の詳細を確認します。あくまで個人的な意見なので参考程度に考えて下さい」
ソーマはブリッジにて、逃亡した敵戦艦の追撃作戦の概要を説明する。よく見ると、数時間前には居なかった人物も居るようだが、今はこちらを優先させるべきと考え、振り切るように話を始める。
「まず、現在の状況を確認します。現在、この"ミネルバ"は逃亡した敵母艦・・・えっと、"ボギーワン"でしたっけ?それの追撃にあたっています。"ミネルバ"の性能面から見て、恐らく数分後には"ボギーワン"を補足すると思われます。そして、その場所は『デブリベルト』」
ソーマの言葉に、その場に緊張が走る。それもそのはずだ。
『デブリベルト』ーーー宇宙開発が始まって以来、廃棄された宇宙ゴミ、小惑星の類いが地球の引力に引かれてたどり着く宙域のことをいう。ソーマはそのデブリベルトが今回の戦闘宙域だというのだ。
「ずいぶんと面倒なところに誘われたようね・・・」
タリア艦長はいち早くこちらの状況を察知した様子で、ソーマが言わんとすることを理解する。他の面々も大体の理解はしたようだ。
「艦長も仰る通り、少々面倒なところでの戦闘となります。ならば、少しでもこちらを有利な状況にする作戦を立てました。
名付けて『ボギーワンをボギッと奇襲大作戦!!』です」
その発言に思わずその場が凍りついた。ソーマはその空気を消去するかのように大きく咳払いをして「説明を続けます・・・」と沈んだ気持ちのまま説明を再開する。
「まず、この"ミネルバ"の搭載モビルスーツ全機を先行させます。その際、モビルスーツは途中でエンジンを切って、ブースターの余韻だけで移動してください。幸い、この宙域にはモビルスーツの残骸もあるようですし、奇襲に最適です。いかがでしょう、タリア艦長?」
ソーマに話を振られ、タリア艦長はそちらに顔を向けたが黙っていた。ソーマの作戦と自分の作戦を天秤にかけて、どちらが最適かを計っているのだ。そして、タリア艦長は答えを出す。
「・・・わかりました。その作戦で行きましょう。メイリン、艦内に通達。本艦はこれより"ボギーワン"奇襲作戦を開始する!」
指示を受けてメイリンが、うわずった声で艦内に呼びかける。
「それでは、各員配置について!」
タリア艦長の声でそれぞれが所定の位置に移動を始める。デュランダル議長とその二人とソーマを残して。
「君はずいぶんと奇抜な発想をしているようだね。私も驚いたよ」
デュランダル議長がソーマに話しかける。ソーマはそっけない返事をする。
「はぁ・・・そうですか。あの・・・そちらの二人は?」
「あぁ、君には言って無かったね。オーブのカガリ・ユラ・アスハ代表と随員のアレックス・ディノだよ。代表、彼はソーマ・アイリスです。今はこの艦を手伝ってくれています」
その事実を聞いて、ソーマは一瞬でカガリのもとに駆け寄り、手を取り挨拶をする。
「挨拶が遅れて申し訳ありません。性はアイリス、名はソーマでございます。作戦立案の任があったとはいえ、貴女のような美しい女性をもてなせなかった無礼をお許し下さい!」
さっきまでとはまるで別人のような態度と突然の謝罪に、カガリは反応に困りながらも返事する。
「いや、そんなに気にしなくていいぞ?我々もつい先ほど来たばかりだ」
カガリの言葉に胸を打たれたソーマは、一瞬でその場に倒れこむ。そのうちカガリがオーブの母なんて呼ばれる日も近いなぁなんて思いながら。そのとき、
〈敵艦補足、距離8000!コンディション・レッド発令!パイロットは搭乗機にて待機せよ!〉
締まらない空気を、鳴り響くアラートが打ち破った。
「っと、来ましたね。それでは、失礼します!」
ソーマも戦闘に備えるため、その場を離れて格納庫に向かう。その姿をアレックスは、いや・・・アスランは歯がゆい思いで見送るしかない自分を叱責するしかなかった。ソーマと自分。同じ立場でここまでに違う道を歩んでいる理由を見つけられないまま。
〈モビルスーツ発進三分前、パイロットは搭乗機にて待機。繰り返す。発進三分前、パイロットは・・・〉
アナウンスの流れる格納庫を、パイロットスーツを着用したソーマは、堂々と佇む灰色の機体目指して飛び乗った。かつての感触が脳裏に焼きついている所為か、体が勝手に機体を起動させる。
「出来ればもう使いたくは無かったんだけど・・・」
起動を確認したソーマは、回線を開く。もちろん相手は味方モビルスーツ全機にだ。
「挨拶が遅れて済まない。今回の作戦指揮を執るソーマ・アイリスだ。当分の間はこの"ミネルバ"所属ってことになってる。以後、よろしく頼む」
すると、いち早く回線が開き、そこには真紅の瞳を宿した少年が映し出された。
〈いきなり出てきて何なんだよ、あんた!〉
ソーマは呆れながらも、返事をする。
「だから、最初に謝ったろ?それに、僕はあんたじゃない。ソーマだって言っただろ?〉
そっけない返事に、シンは声を荒げて突っかかる。
「そんな事はいいんだよ!大体、何であんたみたいな部外者に命令されなきゃいけないんだよ!」
それは正論だが、今はそんな事言っている場合ではないので、すぐに引き下がる。
「分かった分かった。僕が悪かったから早く出撃して、ほら早く!」
そう言うと、シンは煮え切らない思いのまま回線を閉じた。一息つくのも束の間、すぐに新たな回線が開く。
〈ごめんなさい、シンってばすぐに突っかかるんだから・・・。あっ、私はルナマリア・ホークです。よろしくお願いします!〉
映し出されたのは、赤い髪の少女だった。そう、以前も見た子だ。
「気にしなくていいよ、慣れてるから。それより、君って妹いる?」
〈あ、はい。メイリンっていう通信担当の。でも、それがどうしたのですか?〉
「同じ赤髪だからもしかしたらと思っただけだよ。いや、あの子はいいね。正直言ってタイプなんだよね!よかったらで良いんだけど、あの子の連絡先教えてくれないかな?いやさぁ、さっき突撃したらボッコボコに叩きのめされちゃって。アッハッハ!!」
ルナマリアは困惑しながら、ソーマをフォローする。
〈勝手に自暴自棄にならないで下さい!いいですよ、後でレクルームに来てくださいね〉
「すぐ行きます!!速攻で、一瞬で!」
恐らく向こうの画面いっぱいにソーマが映っているだろう。度が過ぎると自主規制されるので注意しなくては。
〈あ、あはは・・・じゃあ私もう行きますね?」
「あ、うん。頑張ってね。エンジン切るの忘れないでね!」
そう言って回線を閉じた。さて、あと一人か。
〈レイ・ザ・バレルです。よろしくお願いします〉
「あ、うん。よろしくね」
回線を閉じた。あまりの掴み所の無さにびっくりしてるのはソーマ本人なのだが。
ソーマは軽く頭を掻きながら、他の機体が発進するのを待つ。
「何ていうか・・・曲者ばかりだよな、この部隊。ってそれは僕も一緒か」
そんな事言っている場合じゃないと、改めて意気込む。
「さぁて、頑張ってくれよ・・・」
彼の微笑が表すものは、喜怒哀楽のどれも当てはまるものではない。それは彼のみが知ることだろう。