追跡鶴   作:EMS-10

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奪われるのは嫌だ。
奪われるくらいなら、



壊してしまえ




※このお話は、第603鎮守府に所属する涼月の過去編になります。
 まだ本編をご覧になっていない方は、本編をご覧になってから、此方をお読み下さい。



Page:SUZUTSUKI
兄を追いかけて


 

─第603鎮守府、執務室─

 

「涼月、涼月さん、やめてください。拘束具付けようとしないでください」

 

「無理です♪」

 

「…はぁ」

 

「提督?」

 

「涼月、どうしてそこまで俺に拘るんだ?」

 

貴方が真剣な顔と口調で問いかけてきました。

どうして?それは。

 

「提督と一緒に居たいからです」

嘘偽りの無い想いを言葉にして伝えました。

 

「提督の。貴方の傍に、ずっと居たいんです。それこそ、一緒のお墓に入りたい程に」

 

「…」

 

「…ダメ、でしょうか?」

 

「…そこまで好かれるような事、した覚えは無いんだがなぁ」

 

「…」

貴方にとっては、何気ない行動や言葉だったのかもしれません。でも、私にとっては…

 

 

 

【Page:SUZUTSUKI】

 

 

─15年前─

 

 

「ねぇ、おにーちゃん。涼子のパパとママは、どこにいるの?」

 

「……」

 

また、同じ質問を兄さんにした。

この質問をする度、10歳年上の兄さんは悲しそうな顔をした。

当時の私は、遠慮という物を知らない、そして、我儘な子どもだった。

だから、兄さんが悲しそうな顔をしていても、構わず同じ質問を繰り返してしまった。

 

「ねぇ、どこにいるの?」

 

「涼子、俺達のパパとママはね…」

 

顔を歪め、怒鳴りたい気持ちを抑えて兄さんは説明してくれました。それでも、理解は出来なかった。

絵本やテレビには、当たり前の様に存在する両親。しかし、私と兄さんに、その当たり前の存在は無かった。

 

「涼子ちゃん、おやつ出来たわよ。お手手を洗ってキレイにしてきなさい?」

 

「おやつ!うん、わかった!」

 

兄さんに助け舟を出したのは、孤児院の管理者である、妙齢の女性だった。

 

 

 

─10年前─

 

 

相変わらず、私は遠慮を知らない我儘な子どもだった。

どうやら私が産まれて間もない頃、両親は交通事故に巻き込まれて亡くなってしまったそうだ。身寄りのない私と兄さんはここ、孤児院に預けられることになったそうだ。

 

「涼子ちゃん、自分が何をしたのか、分かっているの?」

 

「……」

まただ。また、やってしまった。

お気に入りのお人形さんを、壊してしまった。

きっかけは、些細なものだった。

私がお気に入りのお人形さんで遊んでいると、同じ孤児院の娘達に奪われそうになった。正確には私だけの物ではなく、ここ、孤児院全員の物だった。ただ、お人形さんを使って遊ぶのは女の子だけだったから、正しくは女の子用の物、ですが。

 

「…取られそうになったから、壊しました」

そう。何故か私は【奪われる】という事を極端に嫌う性格でした。奪われると嫌な思いをする。奪った側は、奪った物で楽しそうに遊ぶ。そんな様子を見ていると、無性に苛立ってしまう。だから、壊した。壊してしまえば、遊ぶ事はできない。それに、奪おうとした相手は悲しむ。奪おうとした奴が悲しむ顔をしていると、心が満たされる気がした。

 

「そういう事しちゃダメだって、いつも言っているでしょう?」

 

管理者の女性が私を叱る。

私が壊したのは、1度や2度ではない。

食器。おもちゃ。寝具。

数え切れない程の物を壊してきた。

その度に叱られました。それでも、私はやめなかった。

やがて、孤児院の人達は私という存在を疎ましく扱うようになりました。

私はただ、奪われたくなかっただけなのに。

 

 

 

─9年前─

 

 

「…」

まただ。また、あいつらが兄さんにちょっかいをかけている。

1年前に、ここへやってきた3人の女の子達。

兄さんは孤児院の子ども達の中で最年長だった。だから、皆の面倒をよく見ていた。

そのせいか、兄さんに好意を抱く娘が現れだした。

ふざけるな。兄さんは、私だけのモノだ。お前達はお前達だけで仲良くすればいい。私には、兄さんしかいない。

兄さんのことは好きです。けれど、その好きは異性としてではなく、家族として好き。私の大切な存在を、奪われてたまるか。

 

「涼子、大丈夫か?」

 

「兄さん…」

膝を抱え俯いていると、兄さんが心配そうに声をかけてくれました。それだけで私は満たされた。そう、満たされていました。

 

 

兄さんが、孤児院を出ていくまでは

 

 

 

─8年数ヶ月前─

 

「…えっ?」

ある日。大雪の日のことでした。兄さんに大切な話があると言われ、管理人室へ行くと、兄さんにそう言われました。

管理人室には私と兄さんの他に、孤児院の経営者であるおじさんとおばさんが居ました。

どうやら、孤児院の経営が上手くいかないらしく、それを解決する為に兄さんは提督になると言いました。

提督。妖精さんに資質を認められた、選ばれた人間。世間ではそう認識されています。どうやら兄さんには提督の適性があったそうで、それになると言いました。

私は反対しました。提督になると、鎮守府という所で住むことになり、兄さんと離れ離れになってしまう。私は必死に止めました。けれど、兄さんは首を縦に振ってはくれませんでした。

泣きじゃくる私の頭を優しく撫で、兄さんは微笑みました。

 

 

「大丈夫。絶対、帰ってくる」

 

 

そう言って、兄さんは居なくなりました。

 

 

─6年数ヶ月前─

 

孤児院を出る直前、電話番号の書かれた紙切れを渡されました。それは、兄さんの携帯番号でした。

いつでもかけていい。そう言ってくれました。

しかし、忙しいのか、中々電話に出てくれませんでした。

あまり頻繁に電話をすると、兄さんに迷惑をかけてしまう。私は、電話をかける頻度を減らしました。

兄さんが居なくなってからは、毎日が退屈なものになりました。

大切な家族を失った喪失感。

私は、生きる気力が無くなりました。

周りからは疎まれ、相手にされない。

仕方ない。そうなるような事をしてきたのだから。

今更、反省しても遅い。

独りで部屋の隅に座って、周りの娘達を眺める。

そんな日々を送っていると、ある日、孤児院に1人の男性がやってきました。

真っ白な制服を纏った、精悍な顔付きの男性。

その男性は、提督と名乗りました。

提督。つまり、兄さんがなった職業。

おじさんとおばさんは、その提督に険しい顔で何かを言っていました。

私には、おじさん達の言葉は聞こえていなかった。

何故なら、その提督と名乗る男性の一言を頭の中で繰り返していたから。

 

 

「艦娘適性者を探している」

 

 

艦娘。それは、今から数十年前に海から現れた深海棲艦と呼ばれる化け物に、唯一対抗することが出来る存在。

艦娘は、提督と共に鎮守府で過ごす事ができる。

つまり。

 

(艦娘になれば、兄さんに会える!)

それからの行動は早かった。二つ返事で艦娘になると言い、適性検査を受けさせてくださいと、目の前の男性に頭を下げて頼みました。勿論、おじさん達には反対されました。しかし、私は止まりませんでした。

提督に連れられ、隣町のとある施設へ行き、検査を受けました。

…私以外にも、兄さんに好意を抱いていた3人も受けると言って付いて来たのが気になりますが。まぁ、いいでしょう。

検査は、簡単なものでした。名前を呼ばれ、小さな部屋の中に入ると、桃色の和服と紺色の袴を纏った、黒髪を後ろに一つに纏めた1人の女性と、先程私達をここに連れてきてくれた提督が、端末のような物を持って椅子に座っていて、机に小さな煙突の付いた箱のようなものが置かれていました。

提督は私の名前と年齢を聞くと、箱のようなものに手を触れるよう、言いました。私は迷わず箱に手を触れました。

次の瞬間、頭の中に様々な光景が流れました。

広大な海。

耳をつんざく轟音。

何度も攻撃を受け、ボロボロになる船。

そして。

 

(こんなにボロボロになっているのに、浮いている)

素人目でも分かる。いつ沈んでもおかしくない状態の船の姿が見えました。

それなのに、その船は必死に海上を走り続けていた。やがて、その船は港に辿り着いた。直後、船は沈みだした。

 

「ッ!?」

そこで、映像は切れました。今のは?

 

「ほう、涼月とはな」

 

提督が、口を開きました。

すずつき?それは、一体?疑問に思っていると、提督は説明してくれました。

かつて、世界を巻き込んだ大戦争。第二次世界大戦の時に海の上を駆け戦った駆逐艦という名称の船のことらしい。

 

「しかも、最期の光景を見るとは。余程、同調率が高いようだ」

 

最期の光景?同調率?疑問に思う事が多い。質問したかった。けれど、できなかった。

 

「検査を受ける他の娘達が大勢待っている。気になる事が多いと思うが、後にしてくれ」

 

提督がそう言うと、退室するよう促されました。

 

 

───────

 

 

「あの光景は、涼月の最期…」

頭の中に浮かんだ光景を思い出しながら呟く。

あの後、部屋を出るとカーキ色の制服を纏った男性に連れられ、別室に待機するよう言われました。

部屋に入ると、3人の女性が椅子に座っていました。

 

(これから、どうなるのでしょう?)

今更ながら、不安になってきた。

いいえ、大丈夫。艦娘になれたのだから、兄さんに会える!

不安になりそうな気持ちを、軽く頭を振って払う。

それから暫くすると、新たに3人、部屋にやってきた。私と同じ孤児院に居た、あの3人だ。

 

(あの3人も、適性があったんですね…)

残念だ。

そして、私がこの部屋に来て時計の長針が一周した頃、提督がやってきた。その間、全員無言で椅子に座っていた。

 

「艦娘の適性を持つ女性は君達だけだった」

 

入室して私達の正面の壇上に立つと、そう言いました。

あれだけ検査を受けに来た人が居たのに、私を含めてたった7人?その数の少なさに私は驚いた。パッと見、数百人。もしかしたら、もっと居たかもしれない。それなのに、こんなに適性者が少ないなんて。

驚く私をよそに、提督は説明を続けました。

 

「君達には、これより養成所に行ってもらう。そこで、艦娘についての詳しい説明や、訓練を受けてもらう。言っておくが、とても厳しいものだ。覚悟をしておくように」

 

上等です。兄さんに会えるのならその程度、何ともありません。

拳を握り、決意する。

絶対、兄さんに会うんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、この時の私は知らなかった。

私の想像を超える絶望が待ち受けていたなんて。

 

 





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私は何故、こんな所に居るの?誰か、教えて。










※続きは近日中に。
番外編だから短いです。あと、説明が多いです。ご了承ください。
全部で4話を予定。


Q:涼月のアルファベット、何で「THU」ではなく「TSU」なの?
A:ヘボン式の「TSU」表記にしました。もし間違いだったら。ローマ字表記に詳しい兄貴or姉貴orオカマさんがいたら、優しく指摘してやってくださいオナシャス!(土下座)

Q:なら何でローマ字表記にした?
A:カッコイイからです(迫真)

Q:カーキ色の制服を纏った男性…憲兵かな?
A:そうです。何故、憲兵が居るのか。それについては後程説明します。

その他、気になる事がありましたら、活動報告の質問箱的な所にコメントしてやってください。
あぁ、そうそう。この小説はギャグ小説だ。現実世界の倫理観だの価値観だの持ち出さないでくれ。細かい事は気にしちゃいけない。いいね?
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