追跡鶴   作:EMS-10

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 ALL甲クリア無理。丙に逃げりゅ。
 ゴトランドをゴトラタンに空目して、三度見した。紛らわし過ぎィ!


※注意※
非常に頭の悪い内容
頭を空っぽにしてご覧下さい
こまけぇこたぁいいんだよ!




第80話・何故ベストを尽くした?

 

──大本営、技術課、試験棟──

 

 

「最高だ……最高に危険だ、コイツは……」

 

「最高に危険だ、じゃないでしょ!アンタは。いや、アンタら(技術課)は何てモンを造りやがった!?言え!!」

 キメ顔で何言ってんだ、アンタは!?

 

「いやぁ、テンション上がり過ぎちゃって。気が付いたら、こうなってました」

 

 テヘペロ!みたいな顔すんな!なんだよ、あの変態機動は!トー○ギスと同等か、それ以上の動きをしていたぞ!?

 

「あっ、妖精さん達、次はフェイスバイザーのギミックをテストして?」

 

 

<りょうかいであります!

<ここからが、ほんとうのじごくだ!

<はざーどれべる、まっくす!

 

<<<ヤベーイ!

 

 

 野原主任の指示に、妖精さん達は、めっちゃノリノリで返答。いやぁ、元気があって、大変宜しい。

……宜しくねぇよ。

 

「あっ、ちなみに、これでもリミッターが掛けられていて、20%以下の性能しか出ていません」

 

「……は?」

 あれで20%以下の性能しか出ていないの?バカなの?死ぬの?

 

「現在は調整段階なので、20%以下の性能でテストをしていますが、徐々にリミッターを外して、最終的には100%の性能でテストをします。

……あっ、そうそう。ゾンビ(・ ・ ・)ちゃん──涼月の適性者、小嶋涼子さんの身体スペックと、艤装との同調率を調べた所、余裕で常時60%以上の性能を叩き出せるみたいです」

 

「」

 

「渡良瀬少佐、大丈夫?」

 

 あれの三倍以上の性能を、常時叩き出せる?嘘でしょ?ますますウチ(第603鎮守府)のパワーバランスが崩壊しちゃう。あと、涼月のスペックが上がったら、追いかけられた際、逃げられなくなっちゃう。

 その前に、艤装と接続した際、榛名みたいに艤装から記憶と感情が流れ込んで、発狂する恐れがある。もしそうなったら、何が何でも助け出す。

 

 

<ふぇいすばいざー、きどう!

<じょうたい、りょうこう!

<せかいにとどろけ!でんじゃらす・らぶ・ぞんびのほうこう!

 

<<<ゔぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙!゙!゙!゙

 

 

 うおっ!?何だ!?……って、妖精さん達の咆哮か。それにしても、ゾンビ化した涼月の咆哮にめっちゃ似ててたな。

……あっ、()10cm連装砲ちゃんが変形して、フルフェイスタイプのバイザーになった。

 バイザーは、こんな感じ→(━皿━)の顔……のような外見をしている。

 とりあえず、今はテストの様子を見る事に集中しよう。

 

 

……説明したくないが、何が起きているのか皆さんに説明します。

 カウンセリング課に、大鳳と榛名を連れて行き、診察を受けている間に時間を潰そうと───

 

 

( ━皿━)<<<イ゛ェ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!゛!゛!゛

 

 

 うるせぇ!俺!今!説明中!説明中だから、お静かに!!

 フェイスバイザーから、信じられないほど大きな咆哮が発せられた。うるさいなんてレベルじゃねーぞ!?

 

「渡良瀬少佐、ノイズキャンセリング機能付き耳栓を渡すのを忘れてました。どうぞ」

 

 野原主任、もう少し早く渡してくれませんか?鼓膜が痛いんですが。えっと、右耳用の耳栓はこっちで、左耳のは──よし。装着完了。

……さて、説明を再開するぞ。診察に時間がかかるから、以前此処(大本営)に来た時みたいに、時間を何処かで潰そうと──

 

 

( ━皿━)<<<ヴェ゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッ゙ッ゙ッ゙!゙!゙!゙

 

 

 だから、うるせぇ!!くそっ、ノイズキャンセリングが作動していても、聴こえてきたぞ!?おまけに、俺の身体に衝撃が走ってきた。これ、間近で喰らったら、内臓にダメージ入るんじゃない?

……あーあ、妖精さん達の近くに設置した木箱が、咆哮で粉々に砕けている。

 これ、アレだね。ティ○レックス亜種のバインドボイス──

 

 

( △言△)<<<ぶるるっるるああああああああ!!!

 

 

 若○規夫ボイスで叫ぶな!って、オイ!壁!壁に亀裂走ってる!あと、バイザーの形が変わってる!?おまけに、バイザーから紅い光と白煙が吐き出されているよ!?大丈夫なの!!?

 

 

 

──────────────

 

 

 

side 提督

 

 

──第603鎮守府、執務室──

 

 

一週間前。08:20。

 

 

「相棒、マジで頼む。落ち着いてくれ」

 

「あぁ、落ち着くよ。本当にスマン、木曾」

 翔鶴もとい、娼鶴(・ ・)を気絶させて一夜が明けた。

 ただでさえ支離滅裂な発言や思考をしているのに、徹夜した事により、更に悪化。お陰で理性が壊れやすくなってて、危うく翔鶴を襲う所だった。

 しかし、鋼の精神で最後の一線を超えてはならないと己に言い聞かせ、コト(・ ・)には及ばなかった。

 その後は、前話の通りだ。メタいけど気にしないでくれ。

 

「俺は正気に戻った。普段通り、仕事するよ」

 今日の秘書艦、木曾に説得され、さっきまで錯乱していたけど、今は大分落ち着いた。

 最初は娼鶴(・ ・)に、気絶するまであんな事(足裏くすぐり)をした罪悪感があったけど、冷静になれた今は、「妥当」と思っている。

 

「了解だ。早速だが、今朝、朝一で大本営からこの封筒が届いたから、確認してくれ」

 

「おう」

 気持ちを切り替えて、お仕事お仕事。

 木曾から封筒を受け取り、ペーパーナイフで開封。どれどれ?

……大規模反攻作戦を開始する、か。

 最近、日本各地に深海棲艦の大部隊が確認されたから、それを掃討する、という内容だ。開始は三週間後。

 

(提督になって5年以上経つけど、他所の鎮守府と合同で作戦に参加するのは、初めてだ)

 書類を見ると、俺の鎮守府は、他所の鎮守府──第8492離島鎮守府と合同で殲滅に当たれ、と書かれている。上手くやれるか、物凄く不安だ。

 

(弱気になってんじゃねぇ!)

 指揮官である俺が弱気に。不安になってどうする?しっかりしろ。

 軽く頬を叩いて気合い注入。

 さて、まずはこの事を皆に知らせないといけないな。今日は出撃組が未だ出ていない。急いで会議室に集まるよう、放送を入れよう。

 

(そうだ。榛名と大鳳。この二人をどう説得しよう?)

 俺は出撃させる気は全く無いが、二人は出撃させてくれ!と言ってくるかもしれない。精神的に不安定な二人を出撃させたら、轟沈──死亡する恐れがある。

 そう言ってきたら、どうやって説得する?

 

(二人とも、かなり頑固だから、説得しても聞き入れてくれるか……ん?メール?)

 説得する内容を考えていたら、端末にメールが届いた。誰からだ?……カウンセリング課?

 

(何だろう?)

 急いで端末を操作し、メールを開封。

……お!マジか。

 メールの内容を確認すると、一週間後。大鳳の再診を受ける日に、予約キャンセルが入ったから、榛名の事も診る、と書かれていた。

 

(運が良いな)

 榛名の診察は、まだまだ先になると思っていたから、有難い。

 

(……っと。放送を入れて、招集かけよう)

 大規模反攻作戦について説明しないと。榛名と大鳳については、頭ごなしに否定しないよう気を付けながら説得しよう。

 

 

 

──────────────

 

 

 

 

──大本営、カウンセリング課──

 

 

 

一週間後。10:00。

 

 

「では、よろしくお願いします」

 

「お〜う、任せな!」

 

 カウンセリング課の先生にそう言い、俺は診察室を出た。

 さて、後は先生に任せて、時間を潰そう。今回もカウンセリング課から専用端末を借りているから、終わればメールが届く。……今日、帰り際にスマホ買い直そう。じゃないと、不便で仕方ない。

 

 あれから一週間が経った。大本営から大規模反攻作戦を行う、という知らせを皆に伝え、準備を整えてきた。

 武器・弾薬、高速修復材、入渠液の用意は完璧。

 出撃は最小限にし、艦娘達のメンタル・フィジカルを整えている。

 あとは作戦決行の日を待つだけ……なんだけど、色々トラブルが起きた。

 

(案の定、榛名と大鳳は出撃させてくれ、って言ってきた)

 俺の予想通りだった。

 勿論、俺は許可しなかった。精神が不安定な状態で出撃したら、死ぬ恐れがある。そう説明したが、二人は「私達なら大丈夫。何時までもこのままじゃ、皆に迷惑をかけてしまう」と、真剣な顔で言ってきた。

 それから、何度も二人から出撃させてくれ!と言われたが、俺は首を縦に振らなかった。その結果、

 

 

『言葉で信じてもらえないのなら、行動で示すのみです!』

 

 

 会議室で大規模反攻作戦についての説明を終えた後。榛名は艤装を纏い、接続を行う。大鳳は涼月と演習をする。そう言って工廠に向かい、艤装を纏おうとしやがった。

 

(流石の俺もキレたわ)

 工廠に向かおうとする二人に、加減無し。全力全()のウェスタンラリアットをぶちかまし、怯んだ隙に扶桑さん達に頼んで拘束してもらった。

 まだ様子を見る必要があるんだよ?大人しくしてくれ。下手したら、今よりも悪化する恐れがある。

 時間はかかったが、何度も必死に説得(ノーザンライトボム)したお陰で、最終的には大人しくなり、俺の言うことを素直に聞いてくれた。

……ルビがおかしい?物騒?気のせいです。

 

(とりあえず、今日の診察次第だな)

 どうやら今回の診察は時間をかけて行うらしく、上手く行けば、ほぼ完璧に回復するそうだ。

 そう簡単に心って治るの?疑問に思い、先生に質問したら、「特殊な方法で治すから、大丈夫だ」と言われたので、それを信じる事にした。

 

(それにしても、どんな方法でメンタルを治すのだろう?)

 一度、先生に聞いてみたが、「企業秘密って奴だ」と言われ、教えてもらえなかった。

 気になるが、先生が教えられない(企業秘密)、と言ったんだ。深く詮索するのはやめよう。

 

 そうそう、榛名と大鳳以外にもトラブル……と言っていいのか分からんが、トラブルが起きた。何が起きたかって?翔鶴もとい、娼鶴(・ ・)が怖いんだよ。

 あの日、足ツボマッサージして、更に足裏をくすぐって気絶させたせいか、根に持たれた。

 事ある毎に、無言・真顔のままハイライトの消えた目で見つめてきて、目と目が合えば、ニタァ、って擬音がつくような笑みを向けてくるようになった。

 

(見つめるだけで何もしてこないから、余計に怖い)

 普段なら襲ってくるのに、それが一切ない。何を考えているんだ?

 ちなみに、娼鶴と俺が夜戦(意味深)に突入しかけた事は、今の所、皆には知られていない。

 マジで抱くべきなのか?いや、そうしたいけど、今は大規模反攻作戦が控えている。つーか、

 

(経験が一切無いから、喜ばせられるか不安だ)

 一応、そういったサイトを見た事があるから、知識はあるにはあるけど、上手くやれる自信は無い。誰か、経験ある人に聞いてみるか?

 

(確か、小嶋提督は経験ある、みたいな事言ってたな)

 嫁さん達(川内と神通)に襲われて、夜戦(意味深)によく突入しているみたいだし。今度聞いてみようかな?……いやいや、大規模反攻作戦が近いんだ。終わってから聞こう。

 

「あれ?貴方は……渡良瀬少佐?」

 

「ん?」

 考え事をしていると、声をかけられた。誰だろう?

……あ、作業着の男性だ。この顔は──

 

「やっぱり、渡良瀬少佐でしたか。こんにちは、一週間ぶりですね」

 

「こんにちは、野原主任」

 変態の巣窟もとい、技術課に所属する男性──野原さんに声をかけられた。相変わらず人懐こそうな笑みを浮かべている。

 

「先週、加賀さんに襲われたと聞いたのですが、大丈夫でしたか?」

 

「……ハイ、ダイジョーブデシタ」

 嫌な事件だったね……。あんまり思い出したくない。

 危うく卒業しかけたなぁ。ナニを卒業しかけたかは、言わん。絶対に言わんぞ。

 

「……なんか、聞いてゴメン」

 

 同情するような優しい目で見るの、やめて?

 

「……っと、そうだ。襲われた、で思い出したんですけど、少佐。()のアドバイス通り、鎮守府の人達(・ ・)抱きましたか(・ ・ ・ ・ ・ ・)?」

 

「……抱いてないです」

 危うく抱きかけましたが、まだ抱いてないです。

 幾ら「双方とも合意の上で」「避妊をするのなら」「黙認する」と言われても、なんというか、出来ない。出来ません。

 

「何やってんですか」

 

 真顔でドスの効いた声出さないで?ちょっと怖いですよ、主任。

 

「数日前、少佐と似た境遇──複数の艦娘達に好意を寄せられている提督が、艦娘()に襲われて精神崩壊しかけ、現在カウンセリング課のお世話になっているんですよ?」

 

「マジですか?」

 

「マジです。同じ目に遭いたいのですか?」

 

「遭いたくないです」

 襲われたら、確実に俺のメンタルに大ダメージが入る。断言出来る。腹決めて、襲われる前に抱くべきなのか?

 

「ちなみに、その提督は渡良瀬少佐が良く知っている人です」

 

「俺が良く知っている人?」

 誰だろう?小嶋提督かな?けど、昨日電話でやり取りした時は普通だったし、しょっちゅう襲われているのに精神崩壊はしていないから違う。もしかしたら、藤原大将かな?

 

「第08鎮守府の提督、と言えば分かります?」

 

「あ・・・(察し」

 浦樹……お前……。

 

「あまり大きな声で言えませんが、警備隊長(・ ・ ・ ・)──憲兵から聞いた話だと、手足を縛られ、監禁されかけたそうです」

 

「」

 

「幸い、憲兵妖精さんが早めに発見し、保護したお陰か、大事には至らなかったそうです。近日中に復帰する、との事です」

 

 憲兵妖精さん、ナイス。俺の数少ない友人を助けてくれて、ありがとう。

 

「ちなみに、襲った艦娘達は現在、カウンセリングを受けています。……少佐、貴方も監禁されたくないでしょ?」

 

「されたくないです」

 学生時代、瑞鶴──瑞稀に監禁された事があるから分かる。監禁はキツい。

 あの頃。監禁してきた時の瑞稀は艦娘じゃなかったから、力は俺よりも弱かったから何とか逃げられたけど、今は違う。艦娘だ。力がダンチだ。しかも、瑞稀だけでなく、複数の艦娘達から好意を寄せられている。その複数の艦娘達に襲われたら……襲われたら……あは。あはははは。

 

「しょ、少佐、顔が真っ青ですよ?」

 

「提督辞めたい」

 おかしいなぁ。俺の記憶が確かなら、提督の募集要項──業務内容に、「稀に良く(・ ・ ・ ・)艦娘達に性的な意味で襲われる」なんて書かれていなかったぞ?嘘をついたな、大本営!詐欺だ!ふざけんな!ブラック企業だ!コールタールよりも真っ黒な企業だ!!汚い。流石、隠蔽大国日本。汚いぞ。やり方が姑息だ。

 

「少佐が提督を辞めたら、別の意味で戦争が起きそうなので逃げないでください」

 

「いーや、俺は辞めるね。……そうだ、日本に居たらダメだ。海外に逃げよう」

 国内に留まっていたら、何れ見つかり、連れ戻される恐れがある。ならば、海外に逃げればいい。外国は日本よりも土地が広いから、見つけるのに時間がかかる筈。比較的平和になったアメリカ辺りに逃げ込もう。言語の壁はどうする?そこは妖精さんが開発した翻訳機を使えばいい。

 こっそり辞表を出して、荷物持って海上を全力疾走すりゃいい。文字通り死ぬ気で走れば、数千〜数万km位、楽に走破出来らァ!人間に不可能なんて無いという事を、証明してやらァ!不法入国?バレないよう上手く立ち回ればいい!!

 よぉし、そうと決まれば逃げる準備をしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「海外へ逃亡?面白そうね。私もお供するわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「野原主任、申し訳ございませんが、俺一人で逃げます」

 主任を巻き込むわけにはいきません。

 

「貴方一人だと、まともに生活出来ないと思うから、私も行くわ」

 

「いやいや、大丈夫ですよ」

 最初は文化の違いとかで苦労するかもしれませんが、何とかします。

……ちょっと待った。俺は今、誰と会話をしているんだ?さっきまでちょっと錯乱気味だったから気付かなかったけど、今は少し落ち着いたから気付けた。

 

 

 声が違う(・ ・ ・ ・)

 

 

 野原主任の声は、藤○啓治さんに似た声だけど、今俺が聞いた声は、井○裕香さんに似た声だ。 

 

「」

 

 野原主任を見る。顔を青ざめ、ガタガタ震えている。

 視線は、俺ではなく、俺の背後に向けている。

……あっ、これ、もしかしなくても、俺の背後に誰か居るな?

 オーケー、オーケー。冷静になれ。落ち着け。落ち着いて、この場を去ろう。丁度近くに、憲兵さん達の詰所がある。そこに逃げ込もう。

 後ろを振り返らず、ゆっくりと歩いて行こう。走ったりすると刺激を与えて襲われる恐れがある。

 まずは右足を前に──ぐえっ!?

 

「何処へ行く気?」

 

 首!首締まってる!?ヘッドロックしないで!?背中に密着しないで!?柔らかい物が直撃しています!あと、甘い香りがする!あがががが!!!痛い痛い!!!憲兵さん、助けて!提督が!数少ない提督適性を持つ人物が襲われています!

 

「逃がしません」

 

 あっ、やばい、意識が……。

 朦朧とする意識の中、俺は見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

(<(((⚫)))><(((⚫)))>)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハイライトの消えた目で、瞳孔を限界までかっ広げ、俺を見つめる加賀さん(・ ・ ・ ・)の顔が。

 

 

 

 

 

 

………………………。

 

 

 

 

 

──大本営、喫茶店──

 

 

 

「お待たせしました、アイスコーヒーです」

 

「ありがとうございます」

 アイスコーヒーを持った野原主任がやって来て、俺に手渡してくれた。香りが良い。味も良いんだろうな。……うん、美味い。流石大本営。良い豆を使っているな。これを毎日飲んだら、インスタントコーヒーが飲めなくなる。それほど美味しい。

 

「しっかし、災難でしたね」

 

「全くです……」

 アイスコーヒーを一口飲み、一息つくと野原主任がそう言ってきた。もうね、忘れたい。忘れさせて。

 

 あまり説明したくないが、俺が加賀さんに襲われた後の話をしよう。

 加賀さんにヘッドロックをかけられ、意識が朦朧としてしまった。その為、抵抗出来ず、お持ち帰り(・ ・ ・ ・ ・)されそうになった時、たまたま通りかかった綾波さん(・ ・)が、俺と加賀さんを発見。綾波さん(・ ・)は、すぐさま加賀さんの鳩尾に、無言で満面の笑みを浮かべながらヤクザキック(・ ・ ・ ・ ・ ・)をかまし、俺を助けてくれた。

 余談だが、鉄壁スカートだったから、何色かは不明、と言っておく。

 

 もし綾波さん(・ ・)が偶然俺達を見かけなかったら、俺は加賀さんの部屋にお持ち帰りされて、間違いなくパパにさせられていた。つーか、綾波さん(・ ・)、強過ぎない?加賀さんにヤクザキックかました後、俺が瞬きした間に加賀さんの全身の関節を外すなんて。

 

……話を戻そう。全身の関節を外され、痛みに絶叫する加賀さんの口に、綾波さん(・ ・)はハンカチをねじ込むと、そのまま足を持ち、引き摺って何処かに行ってしまった。

 んで、呆然としていたら、野原主任が気を利かせてカフェに連れて行ってくれて、今に至る。

 

「綾波さん(・ ・)、マジで何者だよ……」

 ウチの鎮守府に所属する娘達も強いけど、綾波さん(・ ・)と比べると、言葉は悪いが遥かに劣る。

 限界まで鍛えると、ウチの娘達もああなるのかな?嫌だなぁ。全員が綾波さん(・ ・)レベルになったら、迫られた時、逃げられなくなる。

……あっ、想像したら胃が痛くなってきちゃった。

 

「綾波さん(・ ・)は大本営所属のNo.(ナンバー)5の実力者なので、あの程度、造作でもないそうです。あっ、勿論、全艦種の中で、ですよ?」

 

「えっ?」

 あの実力でNo.5なの?嘘だろ?あれより上が居るのかよ。流石大本営。魔境だ。

 

「ちなみに、加賀さんは最下位らしいです」

 

「……は?」

 最下位?マジで?

 

「しかし、最下位とは言っても、大本営の中では、です。他所の鎮守府に所属する艦娘達と比べれば、加賀さんはかなり強いです。ちなみに、横須賀の赤城さんとタメを張れる実力者です」

 

 嘘だろ?あの、殺戮マシーン(・ ・ ・ ・ ・ ・)と呼ばれる、横須賀の赤城とタメ張れるのかよ。

 もう意味が分からねぇ。頭がどうにかなりそうだ。

 

「……少佐、本当に大丈夫ですか?」

 

「大丈夫じゃない、問題です」

 一番良い精神安定剤を頼む。俺、このままだと冗談抜きで精神崩壊起こして、カウンセリング課のお世話になりそうだ。

 

「……そういえば、渡良瀬少佐は今度の大規模反攻作戦に参加されるんですよね?」

 

「えぇ、そうです」

 どうやら野原主任は俺の顔色を見て、話題を変える為、大規模反攻作戦について聞いてきた。

 何故知っているんですか?とは聞かない。恐らく、大本営本部から伝えられて、知っているのだろう。

 

 よーし、せっかく話題を変えてくれたんだ。加賀さんの事は忘れよう。頭を切り替えるぞ。……切り替えた。

 

「報告書で確認しましたが、武器や資材なんかは大丈夫そうですね」

 

「はい。万全の状態にしてあります」

 念には念を入れて、かなり余裕があるよう準備した。

 妖精さん達や夕張に調べてもらった所、「一ヶ月ぶっ通しで戦っても余裕がある程です」と言われた。

 

「そう、ですか。しかし、厳しい戦いになるかもしれません。くれぐれも、油断しないでください」

 

「勿論です」

 幾ら万全の体制を整えても、油断してはならない。

 

「しかし、現在少佐の鎮守府では、二人の艦娘が精神的に不調で、出撃が出来ない状態らしいですね?」

 

「はい、そうです。本日、その二人をカウンセリング課に連れて来て、診察してもらっています」

 ただでさえ少ない、貴重な戦力が二人も抜けてしまっている。

 先生曰く、上手くいけば完治し、出撃が可能になるそうだが、もし失敗したらどうしよう?

 

「……ふむ、そうですか。こりゃあ、万が一に備えて、大急ぎで仕上げる必要があるな

 

「?」

 野原主任が小声で何かを呟いたが、カフェにいる人達の雑談のせいで、聞き取れなかった。

 

「少佐、この後お時間はありますか?」

 

「え?あ、はい。あります」

 真剣な顔で野原主任が俺を見てきた。何だろう?

 

「恐れ入りますが、少しお付き合い頂けないでしょうか?」

 

「構いませんよ?」

 まだまだ診察に時間がかかるから、余裕はある。

 

「ありがとうございます。早速ですが、これから技術課の試験棟に向かいます」

 

「あっ、はい。……はい!?」

 今なんつった?試験棟?

 

「少佐に、是非とも見てもらいたい物があるんです」

 

 うっわぁ、すんごくいい笑顔だ。嫌な予感しかしない。

 

 

 

 

side 提督 out

 

 

 

───────

────

 

 

 

 

Another side

 

 

 

「加賀さん、またですか?」

 

「も、申し訳ございません」

 やってしまった。

 彼を見かけ、声をかけようとした。この時はまだ、正気だった。しかし、「海外に逃亡する」という発言を聞いた直後、理性が崩壊。気が付けば彼を襲っていた。

 綾波さんにヤクザキックをかまされるまで、正気を失ってしまった。

 嫌われた。絶対、彼に嫌われた。ああ……嫌ぁ……。

 

「……大分キていますね(・ ・ ・ ・ ・ ・)?」

 

 綾波さん(・ ・)の声が、心配するような声に変わった。

 

「このままでは、まともに戦えなくなる恐れがありますね」

 

「……」

 

「う〜ん……そうです!元帥にちょっと、お願い(・ ・ ・)してみます」

 

 元帥にお願い(・ ・ ・)?一体何をお願いするのかしら?

 

「安心してください、加賀さん。悪いようにはしませんから♪」

 

 心が読めない(・ ・ ・ ・ ・ ・)から、何を考えているのか分からない。

 

「本当に大丈夫ですよ?心配しないでください」

 

 私の思考を読んだ(・ ・ ・ ・ ・ ・)のか、綾波さん(・ ・)は微笑みながらそう言ってきた。

 

「それでは、元帥にお願い(・ ・ ・)をしてきますので、また後でお会いしましょう」

 

……あの、待ってください。せめて、関節を元に戻してください──行ってしまった。

 

「誰か、助けて!」

 身動きが取れません!本当に誰か助けて!!お願い!!!

 

 

Another side out

 

 

───────

────

 





次回予告


 Are you ready(ゾンビに喰われる覚悟は出来たか?)


 no。(出来ていません)

 No。(出来ていないってば)

 NOOOOOOOOOOO!!!!!(やめろバカヤロオオオオオオオ!!!!)


第81話・Lunatic Dawn


「納品は四日後を予定しております。ギャハハハハハ!!!」


※ルビに深い意味はありません。


【補足的なナニか】

・トールギス…元ネタは「新機動戦記ガンダムW」に登場するモビルスーツ。
 大出力のバーニアを装備している為、殺人的加速が可能。但し、パイロットに凄まじい負担を掛ける為、常人ではまともに扱えない(という設定らしい)。
 約一名、乗りこなした変態パイロットが居る。

・ティガレックス亜種…元ネタは「モンスターハンター」シリーズに登場するモンスター。
 相手の鼓膜にダメージを与えて怯ませたり、吹っ飛ばす事が可能な程、凄まじい咆哮を放てるのが特徴。

・AGP涼月改…o゙o゙…゙…゙a゙a゙a゙a゙a゙a゙a゙…゙…゙

・第08鎮守府…中規模の鎮守府。所属する艦娘は50名を超えている。
 最近、この鎮守府を運営する提督が、一部の艦娘達に襲われ、監禁された模様。
 首謀者は、軽空母の適性を持つ、小柄な艦娘(女性)との事。
 監禁した理由は、「何度迫っても蔑ろにされた」から。

・Lunatic=狂人、狂気じみた。
 Dawn=始まり、兆し。


以上、補足終了。
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