追跡鶴   作:EMS-10

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 ゴトランドが出なくて、毛根が死滅しかけているので初投稿です(挨拶)



第83話・魂の咆哮

 

『闘争本能の赴くままに!』

 

『くっ、ちょこまかと!』

 

『(━皿━)<A゙A゙A゙A゙A゙A゙A゙A゙A゙A゙A゙A゙A゙A゙A゙A゙A゙!゙!゙!゙!゙』

 

『ぎ゙ゃ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!゙!゙?゙』

 

 十数km以上も離れているのに、涼月の咆哮が無線だけでなく、埠頭にまで響いてきた(・ ・ ・ ・ ・)

 こりゃあ、至近距離で聴かされた時雨は、たまったもんじゃないだろうな。

 

「時雨さんの鼓膜にダメージが入りました。しかし、艦娘の力と妖精さんの加護で緩和しているので、破裂はしていません。入渠すれば治るレベルのダメージです」

 

「報告ありがとう」

 端末を見ながら、夕張が報告してくれた。

 いやぁ、それにしても活きのいいゾンビだなぁ。はっはっは。

 

『捕゙マ゙エ゙マ゙ジダァ゙♪゙』

 

 あっ、ゾンビが両腕で時雨を捕まえた。

 ここまでか?

 

『捕まえたのは……こっちだよ!』

 

 おお!なんか時雨が、バトル物の漫画やアニメの主人公が言うような、かっこいいセリフを言い出したぞ。

 

『ねぇ、パイ(ルバンカー)食べないかい?』

 

 時雨、そこは「おい、パイ食わねぇか?」って言わないとダメじゃないか。というか、何故急に大○洋さんの迷言を言い出したんだ?

 

『このパイ(ルバンカー)は、とっても美味しいよ?』

 

 時雨の奴、右腕に装備したラ○ージ・パイクを起動した。低いエンジン音が唸りを上げている。

 成程。パイルバンカー喰らわないかい?を略して、パイ(ルバンカー)食べないかい?って言ったのか。……納得している場合じゃないよ。

 

(おいおいおい、アイツ(ゾンビ)、死んだわ)

 流石のゾンビも、フルチャージされた○ベージ・パイクを喰らったら、大破するだろう。いや、確実に大破するだろう。いやいや、AGP化されたゾンビ(涼月)なら、もしかしたら耐えるかもしれない。

 

『なら、ご馳走になりましょう』

 

 大丈夫か?演習用に威力を抑えられているけど、下手したら大怪我するかもしれないんだぞ?あっ、ちょっ、時雨がパイルバンカーを涼月の腹目がけて撃ち込んだ!!

 この後起こる出来事を想像したら、見るのが怖くなったから、思わず目を閉じてしまった。

 

『おあがりよ!』

 

──ッッ!?金属同士がぶつかり合う独特の音と、破裂音が聞こえてきた。うわぁ……ひでぇ音がしたぞ。大丈夫か?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『この艤装凄いですよォ!さすが技術課(変態技術者達)の最新作ッッッ!!!』

 

 

 

 

 

 あっ、大丈夫そうですね。あと涼月さん、声。声が子○武人さんっぽくなっているよ?小嶋提督と全く同じ声になっているよ?君の声は藤○咲さんっぽい声でしょ?何で変わっているの?フルフェイスバイザーに変声機でも付いているの?もしかしたら、野原主任の事だから、こっそり付けたのかもしれない。

 

『(・_・)』

 

 あーあ。時雨が真顔になって硬直している。

 それもそうだ。今までの涼月なら大破していたのに、第一次特殊改装(・ ・ ・ ・)を施された涼月は、小破未満(カスダメ)の損傷しか受けていない。おまけに、撃ち込んだパイルバンカーが、ひしゃげているのだから。

 

『おかわりは、ありますか?』

 

『ぁ……ぁぁ……』

 

 時雨、演習が終わったら、抱きしめてナデナデしてあげるよ。勿論、涼月が見ていない時にね。

 

『(△言△)<o゙o゙o゙o゙o゙o゙…゙…゙』

 

 あっ、フェイスバイザーが開いた。そして唸り始めた。耳栓あったっけ?無いな。指で耳を塞いでおこう。ほら、夕張も耳を塞ぎな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『W゛o゛o゛o゛o゛o゛o゛o゛o゛o゛o゛o゛o゛o゛o゛o゛o゛o゛o゛o゛o゛o゛o゛o゛o゛o゛o゛o゛o゛o゛!゛!゛!゛!゛』

 

 

 

 

 

「─────ッッッ!!!?」

 咆哮がッ!衝撃波となってッ!襲いかかってきたッ!

 唸れ!ゾンビ(涼月)

 叫べ!ゾンビ(涼月)

 世界に轟け!デンジャラス・ラブ・ゾンビ(究極生命体に進化した涼月)の咆哮!

 

 まるで強風に煽られた様な衝撃が襲いかかってきた。

 耳を塞いでいるのに、うるさい。近所迷惑ってレベルじゃねーぞ。近隣住民になんて説明すりゃいい?

 

 

 さて、耳を塞ぎながらで悪いが、何が起きているのか説明しようと思う。

 あれは、今から二日前の出来事がきっかけだった。

 

 

 

──────────────

 

 

───────

 

 

────

 

 

 

 

 

side 提督

 

 

──第603鎮守府、執務室──

 

 

08:10。

 

 

「───く?──とく!」

 

 有り得ねぇだろ。何で大本営に所属する艦娘が、此処(第603鎮守府)に異動して来るんだ?

 ここ最近、深海棲艦の出現頻度が増え、更に通常種が強大化──flagship改が良く出てくるようになったけど、それが理由か?

 

「──督!」

 

 おのれ、深海棲艦。何故強くなった。何故出現頻度が増えた。

 あれか?艦娘を取り纏める存在である提督に、精神的苦痛を与えて、指揮系統を滅茶苦茶にして、混乱させる作戦か?汚い。流石深海棲艦。やり方が汚い。

 いいぜ。そっちがその気なら、こっちにも考えがある。

 ウチ(第603鎮守府)のヤベー奴ら全員をけしかけてやる。覚悟しやがれ、深海棲艦。

 

「提督!!」

 

「……んあ?」

 なんだ?阿武隈。大声出して。

 

「んあ?じゃないですよ!さっきから何度も呼びかけているのに、無視しないでください!」

 

「すまん、考え事していて気付かなかった」

 

「もう、しっかりしてください!」

 

「あいよ」

 しっかりします。さて、気を取り直して、お仕事お仕事。今日も一日頑張るぞい!

 えーと、まずは出撃組に近海を警邏してもらって──

 

「……提督?もう一つの分厚い封筒は開けないんですか?」

 

「無いよ、そんなの(真顔」

──出撃組以外の娘達には、待機してもらって。資材の残りを確認して。あと、小嶋提督に近況報告を入れて……。あ、そうだ。加賀さんが異動してくる事も伝えないと。けど、出撃組はあと数分後に出る。昼頃には帰ってくるから、昼ご飯を食べる時、食堂で話そう。

 

「提督、現実逃避するの、やめよう?」

 

「阿武隈、今すぐにこの分厚い封筒を破棄するんだ」

 

「ダメです。開けてください。大本営から届いたんですから、きっと重要な書類です」

 

「やだ。開けない」

 この分厚さ。俺の予想が正しければ、艤装の設計図(究極生命体に進化させる計画)だ。いや、絶対にそうだ。

 

「いいから、開けてください!」

 

「やだやだやだ!」

 

「駄々をこねないでくださぁい!」

 

「俺はこの封筒と書類を破棄するぞ!阿武隈ァ!」

 

「いいから!開けてくださぁい!!」

 

「だが断る!」

 

「ん"ん"っ!?早く開けてくださいぃ!!」

 

 

……。

 

 

「うぅ……穢された……お婿に行けない……」

 

「ん"ん"っ!?誤解を招くような事、言わないでください!お婿に行けないなら、あたしが貰います

 

「事実じゃん!俺の腹を、嫌らしい手付きで触ってきたじゃん!」

 触っていない、って言ったけど、ほんの一瞬だけ俺の腹をねっとりとした手付きでさすってきたの、知っているよ?

 あと、小声で何か言ったみたいだけど、聞き取れなかった。何を言ったんだろう?聞きたいが、嫌な予感がするからやめておこう。

 

「嫌らしい手付きで触っていませんっ!いいから、早く開けてくださいぃ!!」

 

「わーったよ……」

 いてて……割と容赦なくやられたな。咄嗟に受身を取ったけど、完全に勢いを殺せなかった。もっと鍛えないとダメだな。

 

 駄々をこねて開封を渋っていたら、半ギレ状態になった阿武隈に、バックドロップをぶちかまされてしまった。何時の間に習得したんだよ。あーあ。執務室の床が凹んでいるよ。妖精さんに頼んで直してもらおう。

 

(開けたくねぇ……)

 ペーパーナイフを持つが、開ける気が起きない。マジで開けたくないが、これ以上開封を渋れば、またバックドロップをぶちかまされるかもしれん。

 

「(<⚫>)(<⚫>)」

 

チラッと阿武隈を見ると、「はよ開けろ」と睨んでいる。

……仕方ねぇ、開封しよう。覚悟を決め、ペーパーナイフで分厚い封筒を開ける。

 えーと、何何……。あ、やっぱり。届いちゃったよ。野原主任、頑張り過ぎですよ?もっとゆっくりで良かったのに。あははは。

 

「よし、破棄しよう」

 シュレッダーに入れちゃえ。

 

「ダメです!」

 

「破棄する!なんと言われようが、俺は絶対にコイツ(書類)を破棄──」

 してやる!そう言おうとしたら、

 

「えっと、大発動艇をセットして……」

 

「──OK、破棄しないでちゃんと読むよ」

 艤装を部分展開して大発動艇をセットし始めた。

 阿武隈、やめて?提督は陸上型だから、特効で大ダメージ受けちゃう。4桁ダメージ受けちゃう。だからやめて?

 

「……何でそんなに破棄したいんですか?」

 

「……見れば分かる」

 口で説明する気が起きん。

 書類を阿武隈に手渡し、俺は椅子にもたれかかって溜息を吐く。まだ執務が始まって30分も経っていないのに、何時間もぶっ通しで執務をしたような気分だぜ。

 

「……提督、頑張ってください」

 

「これ以上頑張りたくないです」

 書類を見た阿武隈が、そう言ってきた。

 おい、憐れむような視線を向けるな。

 これ以上頑張ったら、精神的に過労死(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)しちゃうよ。

 なんだよ……加賀さんが三日後に異動してくるわ、涼月のAGP仕様の艤装設計図が届くわ。俺の精神を崩壊させる気か?

 ちなみに、艤装パーツは09:00頃に届く、と書類に書かれている。あと、技術課から数名(?)、妖精さんを派遣してくれるそうだ。

 

(……嘆いていても変わらない。受け入れよう)

 駄々をこねようが、海上を全力疾走して逃走しようが、何も変わらない。仕方ねぇ、受け入れてやるよコンニャロウ!ゾンビでもネメ○スでもかかってきやがれ!

 

(……あっ、いけね。小嶋提督に近況報告しなきゃ)

 08:30に、連絡をする約束をしていたな。時計を見ると、08:28。そろそろ連絡する準備をしないと。

 連絡が終わったら、涼月と夕張を呼び出して艤装の改装を行う事を伝えないと。本当は伝えたくないけど。

 

 

 

………………。

 

 

 

11:50。

 

 

「……よし、一旦ここまでにして、昼食を摂ろう」

 キリの良い所まで終わらせることが出来た。続きは昼食を摂った後にしよう。

 

「分かりました」

 

 気が付いたら、3時間近くぶっ通しで執務をしていた。ちょっくら背伸びしよう。……あー。背骨がバキバキ鳴る。

 

「その前に一旦工廠に寄って、夕張に声を掛けよう。恐らく、艤装弄りに夢中になっていると思うから、止めるのを手伝ってくれ」

 何時だか、鈴谷の艤装を改装するのに夢中で、何度声を掛けても作業を止めず続けようとしたっけ。

 恐らく今回も、夢中になって作業をしているかもしれない。

 

(いや、確実に夢中になっているな)

 涼月の艤装パーツが届き、設計図と部品を確認した途端、奇声上げて大はしゃぎしていたからなぁ。

 ちなみに、涼月は第一次特殊改装(・ ・ ・ ・)を受けられる事を聞くと、夕張ほどじゃないが、喜んでいた。

 

「止める、って、普通に声を掛ければ良いんじゃないですか?」

 

「言葉じゃ止まらないんだよ……物理的に止めなきゃ、何時までも続ける」

 羽交い締めにしても、続けようとするからなぁ。

 

「だから、阿武隈。説得しても続けようとしたら、遠慮なくバックドロップをぶちかましてやってくれ」

 

「わ、分かりました」

 

 さて、工廠に向かうか。

 

 

……。

 

 

 

──第603鎮守府、工廠──

 

 

ナズェトメルンディス!?(何故止めるんです!?)

 

「いいから!作業をやめてくださぁい!ん"ん"っ!やめてくださいいいぃぃ!!!」

 

 やっぱりこうなったか。

 俺は今、阿武隈が夕張をヘッドロックして作業を止めさせているのを眺めている。

 最初、阿武隈はバックドロップをぶちかまそうとしたが、様々な部品やら工具やらが散乱していて、それらを壊す恐れがある為、ヘッドロックをする事にしたみたいだ。

 しかし、夕張は作業を続けようと、ヘッドロックをされても、陸に上がった魚のようにジタバタと暴れ、抵抗をした。落ち着きなさい。艤装は逃げたりしないから。

 

<うちの、しゅにんみたいです

<しゅにん、にごうです

<いいぞ、もっとやれ

 

 おーい、大本営から派遣された妖精さん達、煽らないで?

 言い忘れたが、大本営から派遣された妖精さん達は、以前技術課の試験棟で、AGP涼月改の艤装を動かした妖精さん達だ。

 

「グェッ……ゲホッ……」

 

「阿武隈、ヘッドロック緩めて。夕張が死にかけてる」

 最初は派手に暴れていた夕張だったが、阿武隈が艦娘の力を使ってヘッドロックをしているからか、顔色が青白くなり、抵抗する力が弱まり始めた。

 

「分かりました!」

 

「ゴホッ……し、死ぬかと思いました……」

 

「大丈夫か?」

 ヘッドロックから開放された夕張に声を掛ける。

 おいおい、首に跡が残っているぞ。阿武隈、お前どんだけ力込めたんだよ。やり過ぎだ。

 今まで阿武隈の事を、大人しい娘だと思っていたけど、認識を改めた方が良さそうだ。最近、由良から色々教えてもらっているみたいだし。

 

(嗚呼……ウチ(第603鎮守府)がどんどん武闘派になっていく……)

 数ヶ月前までは平和だったのに……。どうしてこうなった。

 

「だ、大丈夫です……死んだお爺ちゃんとお婆ちゃんが、川の向こうから手を振っているのが見えましたが、大丈夫です」

 

「ダメじゃん」

 それ、臨死体験じゃない?全然大丈夫じゃないよ。

 

<りんしたいけん!

<あんびりーばぼー!

<つぎは、あなたかもしれません

 

 妖精さん達、黙りなさい。絶対体験したくないです。

 

 

 

…………。

 

 

 

──第603鎮守府、食堂──

 

 

12:20。

 

 

「すまん、遅くなった」

 夕張の作業を止め、作業着から艦娘の装束に着替えさせた後、食堂に向かうと、既に全員揃っていた。

 午前中に出撃してくれた娘達も居る。

 

「大丈夫よ。丁度今、準備が整った所だから」

 

 本日の昼食担当、大鳳がそう言ってくれた。

 もしかしたら、気を遣って「今、準備が整った」と言ってくれたのかもしれない。

 

「そうか。ありがとう」

 

「席はあそこが空いているわ」

 

「分かった」

 大鳳が指をさした先を見ると、時雨と満潮の間。榛名と山城の間。海風と矢矧の間。そして、瑞鶴と翔鶴の間。この四つの席が空いていた。

 

 俺は迷わず、瑞鶴と翔鶴の間の席──ではなく、翔鶴から一番離れている時雨と満潮の間の席に向かった。

 最近、時雨や満潮と事務的な会話しかしていないから、コミュニケーションを取りたい。

 決して翔鶴が怖いから、一番離れた席を選んだわけじゃないぞ。……ごめん、嘘言いました。翔鶴が怖いから、一番離れた席を選びました。

 ちなみに、阿武隈は海風と矢矧の間に。夕張は榛名と山城の間に。大鳳は翔鶴と瑞鶴の間の席に座った。

 

「(<(((⚫)))><(((⚫)))>)」

 

……うん。翔鶴さんが無表情で。尚且つハイライトの消えた目で見つめてくるけど、無視しよう。翔鶴。君とはそのうち、大真面目に話し合うから、今は我慢してくれ。瑞鶴、君のお姉さんを何とかして?

 アイコンタクトを取ろうと瑞鶴の目を見ると、

 

「(<(((⚫)))><(((⚫)))>)」

 

 瑞鶴、君もか。姉妹揃って瞳孔かっ広げて見つめてきやがった。怖いよ。俺が席に座る間、ずっと目で追ってこないで?

 

「邪魔するぞ」

 時雨と満潮に声を掛け、席に座る。……なんだよ、時雨。満潮。ジト目で見ないでくれ。心にクる(・ ・)

 

「何で翔鶴さんと瑞鶴さんの間じゃなくて、僕達の所に来たんだい?」

 

 時雨が呆れたような顔をしながら、俺の耳元に顔を寄せ、小声でそう言ってきた。 

 

「翔鶴が怖いからだ(最近、時雨と満潮と会話していないからだ)」

 いかん、本音と建前が逆だ。

 

「司令官、アンタ、そのうち翔鶴さんと瑞鶴さんに刺されるんじゃない?」

 

「怖い事言わないでくれ」

 有り得そうで怖い。いや、昔ならともかく、今の翔鶴はそんな事しない……と思う。信じているよ、翔鶴。

 あと瑞鶴。君は流石に刺してこないと思う。変わりに性的な意味で襲ってきそうだけど。

 

「そ、それじゃあ、食べよう」

 気を取り直して、ご飯を食べよう。時間は有限。いつまでもダラダラしてたら、午後の執務に支障が出ちまう。

 

 

(<(((⚫)))><(((⚫)))>)

(<(((⚫)))><(((⚫)))>)

 

 

 鶴姉妹(翔鶴と瑞鶴)がすんげぇ目でこっちを見ている気がするが、気のせいだ。無視しよう。

 全員が席に座ったので、俺は手を合わせる。それを見た皆も、手を合わせた。

 

「いただきます」

 

「「「「「「いただきます」」」」」」

 

 俺がいただきますを言うと、皆も合わせて言ってくれた。

 今日のメニューは、茹でた鳥のササミステーキと、レンコンと人参のきんぴら、小松菜のおひたし、豆腐とワカメの味噌汁、白米。そして、林檎だ。

 これ、アスリートの食事メニューだね。大鳳らしいな。

 

「……うまい」

 まず、ササミステーキを食べる。味付けはやや薄目だが、とても美味しい。

 

「そういえば提督。今朝、涼月の艤装パーツが届いたみたいだけど、どんな仕様なんだい?」

 

「……ゾンビが究極生命体に進化するような仕様だ」

 ササミステーキを咀嚼していると、時雨が質問してきた。それを飲み込み、俺は思った事を正直に伝えた。

 

 説明が大分遅くなったが、AGP涼月改の艤装について話そうと思う。

 書類に書かれていた事を、そっくりそのまま描写するから、暇な人はゆっくり読んでいってくれ。

 

 

【AGP涼月改】

・機動力と防御力を両立した仕様

・通常形態は従来の艤装より、耐久性と対空性能を大幅に強化

・新たに自律稼動が可能な、()10cm連装砲ちゃんを2体(・・)追加

・通常形態の最大航行速度は、約35ノット

・第603鎮守府所属、秋月型防空駆逐艦三番艦、涼月のデータを元に、艤装本体の反応速度を向上

・これにより、従来の艤装と比較して、三倍以上の反応速度を得ている

 

 

 これが、通常形態。次に、ギミックを説明する。

 

 

・ギミックは、艤装本体ではなく、長10cm連装砲ちゃん及び、()10cm連装砲ちゃんに搭載

・長10cm連装砲ちゃん2体は、ナックル型の武装に変形し、両腕部に装着する事が可能

・両腕部の武装は、ナックル形態とクロー形態の二種類がある

・ナックル形態は、砲弾を弾く事が可能

・クロー形態は斬るのではなく、破砕(はさい)する事を目的としている

・尚、ギミックが発動中は砲撃が不可能になる為、注意

()10cm連装砲ちゃんは、1体は頭部を保護するフルフェイスタイプのヘルメットバイザーに。もう1体は胸部と腹部を保護するプロテクターに変形する

・ギミック作動時は通常航行の他に、ショートステップのような移動が可能になる

・正面を向いたまま、後方に移動することも可能

・ショートステップ移動時の平均速度は約50ノット。最大約69ノット

・完全停止状態からでも、ショートステップ移動が可能

・頭部のヘルメットバイザーには、特殊なマイクを搭載

・大声を出すことで、衝撃波を発生させられる

・衝撃波の範囲は任意で調整可能

・深海棲艦の装甲を無視したダメージを与えることが可能

・但し、連続で使用すると発熱する為、放熱する必要有

・放熱時は自動でバイザーが解放され、白煙と赤い光を吐き出す

・放熱時は、マイクの使用が出来なくなる

・バイザーは、任意で解放が可能

・任意解放時に叫ぶと、通常時の二倍以上の衝撃波を発生させる事か可能

・解放時のみ、バイザー部に搭載された()で噛み付く事が可能

・無傷のレ級eliteを噛み砕く事が可能(大本営本部所属、島風型高速駆逐艦(・ ・ ・ ・ ・)一番艦、島風が実証済)

 

 

……以上。

 

「究極生命体に進化って……ネ○シスにでもなるのかい?」

 

「多分な……」

 時雨が苦笑いを浮かべている。それもそうだ。ただでさえ厄介なゾンビが、更に厄介な究極生命体に進化するのかもしれないのだから。

 

「司令官……頑張って」

 

 なんだよ、満潮。そんな優しい顔をして。あっ、頭撫でてくれた。ありがとう。頑張る。提督、超頑張るよ。

 嗚呼……癒される。一番離れた席に座る鶴達が、すんげぇ目で見てくるけど、無視だ無視。

 

(小嶋提督が、「駆逐艦娘はいいぞ。」って何時も言っているけど、なんとなく分かった気がする)

 父性を刺激されるから、荒んだ心が癒される。いいねぇ。痺れるねぇ。

 俺、満潮のパパになるわ。いや、満潮だけじゃなく、時雨や夕立、海風、秋雲、早霜、それから初霜のパパになろう。第603鎮守府に所属する逐艦艦娘は皆、俺の娘だ!

……涼月?涼月はゾンビだから、娘じゃない。ペットだ。俺や家族を襲わないよう、しっかり調教しないといけないな。

 休日は皆でお出かけして、一緒に遊んで。それから──

 

(……バカヤロウ。なんて事考えているんだよ)

 変な妄想してんじゃねぇよ。

 

「……ねぇ、提督。穏やかな顔をしたと思ったら、険しい顔をし始めたけど、大丈夫?」

 

「……大丈夫だ、気にしないでくれ」

 対面の席に座る千歳さんが、心配そうな顔をして、そう言ってきた。

 いかん、顔に出ていたか。自分じゃ真顔でいたつもりだったんだけど。

 

「何を考えていたんだい?」

 

「……すまん、時雨。言えない」

 絶対に言えない。第603鎮守府の駆逐艦娘は皆、俺の娘だ!なんて考えていたとは、言えない。言ったら確実にドン引きされる。

 

「……」

 

 うわぁ、時雨がジト目で見てくる。何か話題を変えて誤魔化そう。

 けど、何を話して話題を逸らせばいい?下手な話題だと誤魔化されたと思って、逆に聞き出そうと追及される恐れがある。何か話題、話題……そうだ、加賀さんが異動してくる事を伝えよう。

 これなら、インパクトがデカいし、重要なお知らせだから、誤魔化せるかもしれない。全員揃ってるし、丁度いい。よし!

 

「あー……皆、食べながらでいいから聞いてくれ」

 そう言うと、皆は食べるのを一旦止めて、一斉に俺を見てきた。いや、食べるのをやめなくていいよ?

 

「食事の邪魔をしてすまない。皆に伝えなければならない事がある」

 さて、どう説明しようかな?単刀直入に言えばいいか。

 

「実は──」

 

 

……。

 

 

「──というわけだ」

 説明したぞ。さて、どんな反応をするのやら。

 

「大本営から、って……あなた、大本営を脅したの?」

 

「脅していないよ」

 葛城、君も阿武隈と同じ事言わないで?俺、そんな度胸無いよ?

 

「とにかく、三日後に異動してくる。皆、仲良くしてやってくれ」

 此処の皆は良い娘ばかりだから、優しく接してくれるだろう。

……そうだ。後で加賀さんの事を、瑞鶴に話しておこう。

 

(きっと驚くだろうな)

 加賀さん──麻子さんと、瑞鶴──瑞稀はとても仲が良く、「麻子姉」って呼んでべったりしていたからな。それが原因で「本当のお姉ちゃんは私なのに!」って翔鶴──静流がいじけて、俺に八つ当たりしてきたっけ。懐かしい。

 

(……おっと、考え事をしていないで、さっさと食べよう)

 この後も仕事があるんだ。のんびりしている暇は無い。

 

 ちなみに、この後時雨に、満潮に撫でられた時何を考えたのか、めちゃくちゃ追及された。くそっ、誤魔化せなかった!

 結局、俺は正直に白状した。その結果、俺は皆からパパ良瀬と呼ばれるようになってしまった。解せぬ。

 そうそう。一部の娘達が「パパにしてあげる!」とか抜かして襲ってきたが、扶桑さんと由良、夕立が止めてくれた。

……どんな風に止めてくれたか、って?新技(・ ・)を披露して止めてくれた、とだけ言っておく。

 

 

 

──────────────

 

 

 

 

──第603鎮守府、埠頭──

 

 

二日後、14:30。

 

 

 

 大本営から加賀さんが異動してくる知らせと、AGP涼月改の艤装設計図とパーツが届いて二日が経った。

 この二日間は特に何も起きなかったが、一応話しておこう。

 

 まず、瑞鶴に加賀さんの事を話した。すると、予想通り瑞鶴は喜んだ。

 それもそうだ。あんなに仲が良かったのだから。

 ただ、艤装の影響を受けて、あまり感情を表に出さなくなった事を話すと、少しだけショックを受けてしまった。

 確かに、以前の加賀さん──麻子さんと違い、感情を表に出さなくなったが、性格は変わっていない。接していけば、それが分かる筈。これは、時間が解決してくれるだろう。

 

 次に、AGP涼月改について話そう。

 夕張と派遣された妖精さん達によると、連装砲ちゃん達の改装──妖精さんの加護を掛ける箇所が非常に多かった為、作業開始から二日以上かかった。

 途中、何度か様子を見に行ったが、案の定夕張は休憩無しで作業を続けようとしたり、こっそり徹夜して作業を行おうとした。その度に俺がノーザンライトボムをぶちかまして止めた。

 

 そして今日。ついにAGP涼月改の艤装が完成した。

 パッと見だと、艤装本体は以前と形状は殆ど変わらないように見えるが、よく見ると空気抵抗を減らす為に流線型になっている。

 その他、新たに()10cm連装砲ちゃんが追加された。

 仕様書によると、島風型高速駆逐艦(・ ・ ・ ・ ・)一番艦、島風が使用している連装砲ちゃんを流用している。なので、破損しても比較的簡単に直せるそうだ。

 あと、涼月の装束だが、若干変わった。変わったと言っても、頭に付けているペンネントの色が黒から白になり、「第六十一駆逐隊」と刺繍されていた物が、「第四十一駆逐隊」に変更されただけだが。

 何故ペンネントの文字が変わったのか。妖精さん達によると、史実を再現しているそうだ。詳しくはWik○pedia先生で調べてくれ。

 黒から白に変わった理由?知らん。

 

 余談になるが、ペンネントにもギミックが仕込まれているらしい。

 どんなギミックが仕込まれているか気になるが、仕様書には「作動してからのお楽しみ!ギャハハハハ!!!」って書かれていたから、詳細は分からない。野原主任の事だ。きっと碌でもないギミックが仕込まれているのだろう。

 ペンネントがマ○タークロスみたいな鞭になるのかな?気になるが、今から試験航行を行う。考察するのは後にしよう。

 

「主機……チェック。

 バランサー……チェック。

 魚雷発射管……チェック。

 長10cm連装砲ちゃん……チェック。

 ()10cm連装砲ちゃん……チェック。

 残弾……チェック。

 バイタル……チェック。

 チェック完了。異常ありません」

 

 端末を確認しながら、夕張がそう言った。

 

「分かった。涼月、現段階で何か違和感は無いか?」

 念の為、涼月に聞く。心配し過ぎだって?うるせぇ。

 決してゾンビから究極生命体に進化されるのが怖いんじゃない。艤装から記憶や感情が流れ込み、涼月が。涼子(・ ・)が苦しまないか、心配なんだ。

 

「いいえ、ありません。大丈夫です」

 

「そうか。もし、少しでも違和感を覚えたら、すぐに言ってくれ」

 

「了解しました」

 

(今の所、異常は無い)

 AGP化された艤装と初接続を行った時も、特に異常は無かった。

 榛名の時は、艤装から記憶や感情が流れ込み、一瞬だけ顔を歪めていたが、涼月はそれが無かった。しかし、油断は出来ない。

 ただでさえ涼月は艤装との同調率が高い。いや、高過ぎる(・ ・ ・ ・)。何が起きるか分からない。

 それなのに、第一次特殊改装(・ ・ ・ ・)を受けた事により、更に同調率が高くなった。

 

(試験航行中に、艤装から記憶や感情が流れ込んで苦しむ恐れがある。しっかり見ておこう)

 少し。いや、かなり不安だ。榛名の時のように、苦しむかもしれない。そうなったら──

 

「提督」

 

「……なんだ?」

 

「そんな険しい顔をしないでください。涼月は。いいえ。()なら、大丈夫です。信じてください」

 

「……分かった」

 気付かないうちに、険しい顔をしていたみたいだ。その為、涼月が天使のような微笑みを浮かべながら、そう声を掛けてきた。

 不安なのは、俺だけじゃない。涼月の方が、もっと不安な筈だ。それなのに、気を遣わせてしまった。何をやってんだよ。しっかりしろ。

 

「涼月、これより艤装のテストを行ってもらう。まずは通常形態で航行を行ってくれ。指示は随時、こちらから出す」

 

「了解!」

 

 涼月は敬礼をし、海へ向かって行った。

 

「夕張、常に涼月のバイタルをチェックしてくれ。どんな些細な事でも、異常が見られたら直ぐに報告してくれ」

 

「了解しました!」

 

 さて、始まる。しっかり様子を見よう。

 万が一、暴走した時に備えて、派遣された妖精さん達がスタンバイしてくれている。

 頼むから、何も起きないでくれ。

 ゾンビから究極生命体に進化しても構わない。襲われても構わない。だから──

 

(無事に終わってくれ)

 

 

 

side 提督 out

 

 

───────

────

 





次回予告


────吼えろ。
 己を鼓舞する為に。

────吼えろ。
 己が生き残る為に。

────吼えろ。
 己の恐ろしさを伝える為に。



第84話・銀色のゾンビ(ネメシス)



「こういう時はな……






逃げるんだよ、時雨エエエェェェェェェェッッッ!!!」



【補足的なナニか】

・おい、パイ食わねぇか?…「水曜どうでしょう」という番組で、大泉洋さんが言い放った迷言の一つ。
「水曜どうでしょう」は観るだけで元気が出る、魔法の番組。気になった方は、DVDを買いましょう(ダイマ)

・ラベージ・パイク…元ネタは「BORDERBREAK」に登場する武器。
 フルチャージ時の威力は凄まじく、当たれば一撃で撃破出来る程の破壊力を持つ。
 第8492離島鎮守府所属、明石型工作艦一番艦、明石が製作した物を、第603鎮守府に送ったらしい。

・子安武人…声優。イケメンボイスの持ち主。ただし、時々暴走する。
 暴走すると、どうなるのかって?「ボボボーボ・ボーボボ」や「デート・ア・ライブ」、「ビーストウォーズ・リターンズ」を観れば分かる←
 イボンコ☆ペッタンコ!イェイ!

・ネメシス…スタアァァァァァァァァァァァァァァァァァアッズ!!!!!!
 元ネタは「バイオハザード3」に登場するB.O.W.。
 何度倒れても蘇り、しつこく主人公を追いかけて来る化け物。この小説の涼月みたいな奴です。

・マスタークロス…元ネタは「機動武闘伝Gガンダム」より、「マスターガンダム」が使用する武装(?)

・島風…大本営本部所属、島風型高速駆逐艦(・ ・ ・ ・ ・)一番艦、島風の適性者を指す。
 AGP化された連装砲ちゃん達を従えて、様々なデータを取り、そのデータを元に第603鎮守府所属、秋月型防空駆逐艦三番艦、涼月のAGP艤装を製作。

・AGP涼月改…アンコントロールスイッチ! ブラックハザード!
 今まで使用してきた涼月(未改装)の艤装と比べ、反応速度が大幅に向上している。
 例えるなら、マグネットコーティングを施されたガンダム。
 技術課によると、ドイツから齎された技術を使用した、との事。ドイツの科学力は世界一イイイイィィィィ!!!

・世界の艦娘に関する技術…武器に関しては日本。艤装本体に関してはドイツ。妖精さんの加護はアメリカが、非常に高い技術力を持つ(という設定)。




以上、補足終了。
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