追跡鶴   作:EMS-10

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 現在、活動報告にてアンケートを実施しています。宜しければ、ご協力お願いします。
 詳細については、活動報告の「ネタ募集」をご覧下さい。

※前回のあらすじ※
・今日も第603鎮守府は平和です
・おや?千歳さんの様子が……
・こんなの五月雨じゃない。さ淫れ(・ ・ ・)よ!


※警告※
R17.9有
来いよ運営。垢BANなんか捨てて、かかってこい
お前らの嫁だろ、早くなんとかしろよ


※この小説内の季節は、9月上旬頃となっています。



第96話・理性は投げ捨てる物

 

side 提督

 

 

──第603鎮守府、翔鶴・瑞鶴私室──

 

 

五月雨達が派遣されてきた翌日。

大規模反攻作戦開始まで、あと3日。

04:00。

 

 

「……んぁ?」

 ふと、意識が覚醒した。しかし、眠いから目は閉じたままだ。

 

(なんか、暑いな)

 クーラーは……ついている。稼働音が聞こえるし、時折涼しい風が身体に当たるから、止まってはいない。

 なら、どうしてこんなに暑いんだ?

 疑問に思っていると、少しずつ目が醒めてきた。

 それと同時に、俺の両隣から、寝息が聞こえてきた。

 

(……何で瑞稀(瑞鶴)静流(翔鶴)が隣で寝ているんだ?)

 ゆっくりと目を開け、周りを見ると、二人が俺の両隣で眠る姿が視界に入ってきた。

 何故二人が俺の部屋に居るんだ?まさか、夜這いか!?

……いや、違う。昨夜、五月雨がヤベー奴だと判明し。 更に歓迎会の時、夕張が五月雨と鉢合わせして、少しだけドンパチ賑やかになり。夕張のメンタルケアをし。その後、千歳さんを労ったりして、精神的に疲れたから癒される為、二人の部屋で一緒に寝る事にしたんだった。

 

 分かっていると思うが、二人に如何わしい事は一切していないぞ?

 逆に、二人に如何わしい事をされそうになったが、誠意を持って説得(ノーザンライトボム)したから、ナニ(・ ・)も起きていない。シて(・ ・)もいない。

 

(……良く眠ってる)

 ふと、俺の右隣で眠っている瑞稀の寝顔を見る。

 髪は普段のツインテールではなく、下ろしている為、別人に見える。ツインテールもいいけど、下ろした髪型も可愛い。

 頭を撫でたい衝動に駆られたが、起こしてしまう恐れがある。

 壁に掛けられた時計を見ると、4時になったばかり。起床時間まで、まだ1時間以上ある。やめておこう。

 

(静流は……こっちも、良く眠ってる)

 次に、俺の左隣で眠っている静流の寝顔を見る。 

……あっ、静流のパジャマが少しだけ肌蹴ている。その為、立派な胸部装甲を覆う(ブラ)が見えた。

 

(黒か。しかも、レースが沢山付いている)

 ハッキリ言う。エロい。それにしても胸大きいな。大きいだけでなく、形も良い。

……何見てんだよ。やめろ。

 しかし、目を逸らす事が出来ない。

 

(……触りたい)

……何を考えているんだ?やめろ。幾ら俺に好意を寄せてくれているとはいえ、寝ている時に。意識が無い時にそういう事をするのは失礼だ。せめて、触るなら起きている時に──

 

(イカン、下半身に血が集まってきた!)

 落ち着け!冷静になれ!おい俺の主砲(・ ・)!大人しくなれ!荒ぶるな!!くそっ、大人しくなるどころか、益々元気になりやがった!

 完全にテント張ってる。仰向けに寝ているから、余計に目立つ。おまけに、ムラムラして仕方ない。

 

(こんなのを見られたら、「楽にしてあげる」とか言って、襲われるかもしれん)

 いや、かもしれない、じゃない。確実に襲われる。

 早く鎮めないとマズい。必死に鎮めようと、目を閉じて無心になるが、何ヶ月も発散させていないせいか、一向に大人しくならない。

 

(ダメだ、鎮まりそうにない)

 こうなったら、一旦俺の部屋に戻って着替えて、ジョギングして気を紛らわそう。

……いや、待てよ?

 

(俺の部屋に盗聴器を仕掛けているらしいが、2人は寝ている。こっそり抜け出して自室に戻って発散しても、バレない!)

 チャンスだ。この機会を逃すわけにはいかない。

 かれこれ何ヶ月も我慢してきたが、正直もう限界が来ている。

 さっさと部屋に戻って、発散させるぞ!

 

 音を立てないように、細心の注意を払いながら、ゆっくりと上半身を起こす。緊張しているせいか、俺の主砲(・ ・)は大人しくなってくれた。

 

 完全に上半身を起こした後、素早く瑞稀と静流を見る。寝ている。

 よし、次はゆっくりと立ち上がるぞ。

 バレないよう、ゆっくり……ゆっくり……──

 

「……んぅ……」

 

「!?」

 足に力を入れて立とうとした瞬間、瑞稀が身動(みじろ)ぎをしながら声を出した。

 気付かれた!?……いや、違う。寝返りを打っただけだ。

 暫く様子を見たが、寝ている。大丈夫そうだ。ついでに、静流を見る。……うん、彼女も寝ている。

 一旦深呼吸して落ち着こう。……良し、立とう。

 

 足に力を入れて、ゆっくりと立つ。

 急いで二人を見る。……寝ている。バレていない。

 さて、気付かれる前に部屋を出よう。

 足音を立てないよう、注意しながらドアへ向かう。

 ドアまで、あと1m。

 50cm。

 10cm。

……到達。振り返り、二人を見ると……寝ている。良し良し。

 慌てず、靴を履いて、ドアの鍵を開けて、ドアノブを掴んで──

 

「──ッッ」

 開ける前に、素早く振り返る。

 何時ものパターンなら、ドアを開けようとした瞬間に、「何処へ行く気?」と声を掛けられ、失敗に終わる。俺は学習した。だから、振り返った。

 

(……寝ている)

 振り返ると、そこにはハイライトの消えた目で、俺の直ぐ後ろに立つ瑞稀と静流の姿──ではなく、静かに寝息を立てて眠る二人の姿が視界に入ってきた。

……今回は大丈夫そうだ。よし、今のうちに部屋を出よう。

 

 焦らず、慌てず、素早く靴を履き、音を立てないよう最新の注意を払いながら、ドアを開ける。

……よし、出れた。あとはドアを閉めて──やった。出れた。

……あっ、鍵開いたままだ。どうしよう。

……ま、いっか。

 

 

 

………………。

 

 

 

──第603鎮守府、提督私室──

 

 

 

「……無事、到着っと」

 ふふ。ふふふふふっ。ふはははははは!!!やった!やったぞ!!!

……おっと、喜んでる場合じゃない。今は一分一秒も無駄に出来ない。さっさと発散させて、楽になろう。

 モタモタしていたら、二人が起きて俺が居ない事に気付き、盗聴器を作動させる恐れがある。

 クーラーを付けていないから、部屋の中に熱が篭っていて滅茶苦茶暑いが、我慢だ。

 

(えーと、ネタ(・ ・)は何にしようかな?)

 PCを起動させて、新規フォルダのお宝画像を使おうかな?いや、PCは起動するのに時間がかかる。やめておこう。

 スマホは……直ぐに電源がつくけど、如何わしい画像を一切入れていないから、役に立たない。

……一ヶ月くらい前。休養状態の時、時雨が誤送信してきたお宝画像があるだろ、って?そんな物は無い。消した。

……そうだ、瑞稀と静流を使おう!

 

(昨夜、二人に色々やられたから、それをネタにすれば!)

 一夜が明けたが、しっかり覚えている。

 瑞稀と静流にノーザンライトボムをぶちかます際、二人の身体に触れた。その感触を、俺の身体はしっかりと覚えている。

 二人の身体の感触を思い出していたら、主砲(・ ・)最大仰角(・ ・ ・ ・)になった。

……よし。これなら()けるぞ。

 

 ネタは決まった。そうと決まれば、さっさと発散させよう。

 えっと、ティッシュとゴミ箱。それから、確実に独特の臭いが出るから、誤魔化す為にファ○リーズを用意して、窓を開ける。

 

……準備万端。ようやく苦しみから開放される。

 ジャージを脱いで、次にパンツを──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「《ナニ(・ ・)しているんだい?》」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──脱ごうとしたら、真後ろから、ブラー効果の効いた野○伊織さんそっくりの声が聞こえてきた。

……幻聴かな?裏瑞鶴(仮名)の嗜虐的な声が聞こえてきたんですが。いや、幻聴だな。

 

「《もう一度聞くよ。ナニ(・ ・)しているんだい?》」

 

……幻聴じゃなかった。

 恐る恐る振り返ると、髪と肌の色が真っ白で。額に二本の角を生やし。瞳の色が真紅の裏瑞鶴(仮名)さんが、ニヤニヤ笑いながら俺を見ていた。

 そういや、まだ彼女の名前を決めていなかったな。色々考えているけど、全く思いつかない。早く名前を決めてあげなきゃ……じゃなくて。ちくしょう。ちくしょう!!あと少しだったのに。本当に、あと少しで発散出来たのに!!

 

「《だんまりかい?ふふっ》」

 

 裏瑞鶴(仮名)さん、ニヤニヤ笑いながら迫って来ないでください。離れて?

 

「《おやおや。随分と元気がいいみたいじゃない。ふふふ》」

 

 あっ、こら。俺の主砲(・ ・)をガン見しないで?立派なテントを張っているから、目立って仕方ない。手で隠そう。……そういえば、

 

「な、なぁ。さっきまで、部屋で寝ていたんじゃ……あと、何時の間に部屋に入った?」

 疑問に思った事を聞こう。

 部屋を出るまで、何度も確認した。規則正しく寝息を立てて、気持ち良さそうに寝ていたじゃん。もしかして、演技だったの?だとしたら凄い演技力だ。君、女優になったら?

 あと、部屋に入ってすぐに鍵を閉めたのに、どうやって侵入して来たの?

 

「《瑞稀は(・ ・ ・)寝ているけど、私は起きていたから、準が部屋を出て行くのに気付いていた。それだから、準が部屋を出たのを確認してから、瑞稀の身体を掌握して動かし、こっそりあとを付けてきたのさ。ああ、安心しな。今も瑞稀は寝ているよ。

 準の部屋は、ピッキングツールで開けて入った》」

 

「成程。納得した。説明してくれてありがとう。色々言いたい事があるけど、一言。ピッキングするの、やめて?」

 

「《ピッキングは乙女の嗜みだから、やめないよ》」

 

 やめようよ。そんなの(ピッキング)、乙女の嗜みなんかじゃない。

 

「《……随分と辛そうだね。手伝ってあげようか?》」

 

 ニヤニヤしていた裏瑞鶴(仮名)が、突然真剣な顔になってそう言ってきた。

 

「いや、いい。結構だ」

 とても魅力的な提案だけど、お断りします。

 断ったけど、絶対聞き入れてくれないだろうな。恐らく実力行使してくるだろうから、急いで迎撃体制を取ると、

 

「《分かった。やめる》」

 

「……えっ!?」

 今、なんて言った?やめる?

 

「《だから、やめる──手伝わない、って言った》」

 

 嘘やろ。あっさり引き下がったぞ。その証拠に、俺から離れてくれた。

 てっきり「だが断る!」とか言って、強制的にお手伝いしてくると思ったんだけど。

 

「……あの、ガン見しないで?」

 おーい、真剣な顔のまま、主砲(・ ・)をガン見しないで?手で隠しているけど、恥ずかしい。

 

「《気にしないで》」

 

「いや、気にするよ」

 俺、見られて喜ぶ性癖なんて無いから、恥ずかしいです。ほら、俺の主砲(・ ・)から目を逸らして。逸らしなさい。

 

「《私の事は空気だと思って、気にせず発散して。絶対に何もしない。手を出したりしない。誓うわ》」

 

「嫌だよ!見られながら発散するって、どんな羞恥プレイだよ!?いいから、見ないで!!!」

 そう言ったが、裏瑞鶴(仮名)の視線は俺の主砲(・ ・)に向いたままだ。

 

「《遅かれ早かれ、瑞稀や静流。そして、準に好意を寄せる娘達に見られるのだから、気にしない。練習だと思って、私の目の前で発散しな》」

 

「お断りします!」

 いやまぁ、確かにそうだけどさぁ……。

 

「《いいから、さっさと野生解放(・ ・ ・ ・)して、主砲(・ ・)から欲望(・ ・)を盛大にぶちまけな!しっかり見届けてあげるからさ》」

 

「絶対嫌だ!あと卑猥なこと言わない!」

 野生解放(・ ・ ・ ・)なんて、ぜってーしねぇぞ。解放したら、理性がぶっ飛んでただのビーストになる自信がある。そんで、ふとした拍子で裏瑞鶴(仮名)に手を出してしまう恐れがある。だから解放はぜってーしねぇ。あと、卑猥な単語言わない!色々(ぼか)してくれてるけど、そういう事言わない。慎み持ちなさい!

 

「《相変わらずウブだねぇ。分かったよ、一人にしてあげる。もう何ヶ月も発散出来ていないんでしょ?瑞稀や静流、皆には黙っておいてあげるから、安心して己の欲望をぶちまけな》」

 

 

 

…………。

 

 

 

「……さて、発散するか」

 色々あったが、裏瑞鶴(仮名)は部屋から出て行き、一人にしてくれた。

 せっかくのチャンスなんだ。ふいにしたくない。

 よーし、発散するぞ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 パンツを脱ぎ、いざ、発散しようとした瞬間、瑞鶴──瑞稀が突入してきた為、失敗に終わりました。

 

 後で分かった事だけど、裏瑞鶴(仮名)が俺の部屋から出て、自室──翔鶴と瑞鶴の私室に向かっている途中、眠っていた瑞稀の意識が覚醒し、裏瑞鶴(仮名)の魂から俺が一人で発散しようとしている情報を得て、一瞬で身体のコントロールを奪って俺の部屋に突撃したらしい。

 勿論、裏瑞鶴(仮名)は必死に抑えようとしてくれたらしいけど、提督(渡良瀬準)絶対犯すウーマンと化した瑞稀を止める事は出来なかったそうだ。

 

 話を戻そう。部屋に瑞稀がやって来て、俺のCAST OFFした下半身を見て、瑞稀もCAST OFF。そしてそのままル○ンダイブされ、襲われました。

 俺、言ったよね?大規模反攻作戦が終わって落ち着くまで、そういった行為はしない、って。けど、瑞稀は、

 

 

『迷った時は、

 

 

股間(本能)に従えばいい!!!』

 

 

 そう言って襲ってきやがった。

 確かに、瑞稀を襲いたい衝動に駆られ、迷ったけど、ダメだよ、従っちゃ。理性働かせよう?

 必死に説得するも、股間(本能)に従っている瑞稀は止まらなかった。その結果、

 

 

 危うく卒業(・ ・)しかけました。

 

 

 今回ばかりは冗談抜きで、マジで危なかった。

 どれ位危なかったか説明するとだな、

 

 

 俺の主砲(・ ・)の先端部分が、瑞稀の雑草(・ ・)が生えていない格納庫(・ ・ ・)の入口と、接触事故(・ ・ ・ ・)を起こした。

 

 

 こう言えば、どれ位危なかったかお分かり頂けるだろうか。

 ちなみに、近藤さん無し(・ ・ ・ ・ ・ ・)。更に、俺は押し倒され、両腕を押さえ付けられた状態だった。

 咄嗟に、瑞稀の股間に電気あんまをぶちかましてダウンを奪わなかったら、瑞稀の格納庫(・ ・ ・)に格納されていた。

 

……はぁ。ムラムラして仕方ない。このままだと、ふとした拍子に暴発(・ ・)しそうだ。何とかしないと。

 

 ちなみに、瑞稀は現在、正気に戻ったのか大人しくなっている。頼むから、大規模反攻作戦が終わるまで、大人しくしてくれ。

 言い忘れたが、それらの出来事は二人──いや、裏瑞鶴(仮名)を含めて、三人だけの秘密にしている。これがバレたら、瑞稀が他の娘達に袋叩きにされかねん。

 この秘密は、絶対墓場まで持っていく。絶対にだ。

 

 

 

……………………。

 

 

 

──第603鎮守府、執務室──

 

 

16:30。

 

 

「提督さん、午後の演習で負傷した方達ですが、長門さんと山城さん以外、全員復帰したそうです。破損した艤装は、全部修理が終わったみたい」

 

「そうか。長門教官と山城は、あとどれ位で復帰出来る?それと、資材と艤装パーツはどれ位消費した?」

 内線が入り、俺の代わりに受話器を取った本日の秘書艦、由良が報告してくれた。

 

「長門さんと山城さん共に、あと三十分以内に復帰出来るそうです。消費した資材と艤装パーツだけど、合計で──」

 

「分かった。消費した資材と艤装パーツを、報告書に纏めてくれ」

 

「了解しました」

 

 しかし、資材の消費量は予想よりも少ないな。変態の巣窟(技術課)が開発したAGP仕様の艤装が幾つも破損したから、結構かかると思っていた。

……派遣されてきた娘達の艤装には、どんなギミックが搭載されているか気になるって?すまん、思い出すだけで胃が痛くなるから、割愛させてもらう。

 

 閑話休題。

 長門教官と山城。二人はまだ入渠槽から出られないか。まぁ、あんな事をしたんだから、仕方ない。

 

……何をしたか説明するとだな、アレだ。殴り合い(・ ・ ・ ・)をした。砲撃の応酬じゃなくて、拳の方の、な。

 もうね、正直言ってアホかと。二人とも、艦娘らしい戦い方しよう?背中に背負ってる艤装は飾りですか?

 つーか、山城。君は何で、榛名と扶桑さんを瞬殺した長門教官と、ほぼ互角の殴り合いが出来るの?バカなの?死ぬの?

 

……落ち着け。これ以上考えるな。考えたら、俺の胃と精神によろしくない。忘れよう。

……よし、気を取り直して、お仕事しよう。

 

 えっと、由良から聞いた資材の消費量と、現在ウチ(第603鎮守府)にある資材を頭の中で計算。

……うん、大丈夫だ。まだまだ余裕がある。ウチの娘達と、派遣されてきた娘達を含めて全力出撃させても、大規模反攻作戦中に枯渇しないで済みそうだ。

……内線が入った。受話器に手を伸ばそうとしたが、先に由良が取ってしまった。早いな。

 

「はい、こちら執務室です。……はい……はい……了解しました。直ぐに向かいます」

 

「どうした?」

 

「摩耶さんから内線が入りました。五月雨さんがやらかしていて、対処しきれないので応援を要請されました」

 

「……分かった。すまんが由良、対応を頼む」

 

「了解です」

 

 そう言うと、由良は執務室を出て行ってしまった。

……はぁ。胃が痛む。万年筆を置き、溜息を吐く。

 今の所、そこまで胃は痛んでいない。激痛に襲われる前に胃薬を飲んでおこう。

……おっと、ノックされた。

 

「誰だ?」

 引き出しから胃薬を取り出そうとしたが、一旦仕舞って声をかけた。

 

『こちら、吹雪型駆逐艦一番艦、吹雪です!報告書が完成しましたので、お持ちしました!』

 

「入ってくれ」

 吹雪か。胃薬を飲む姿を見せたら、余計な不安を与える恐れがある。今飲むのはやめて、我慢しよう。幸い、そこまで痛くないし。

 

「失礼します!こちら、報告書になります」

 

「ありがとう」

 報告書を受け取り、内容を確認。

 吹雪が提出してくれた報告書は、吹雪の艤装に関する物だ。

 

 どうやら昨日、此処に来てから吹雪の艤装──主機の調子が悪かったらしく、工廠妖精さん達が修理を行った。

 本来なら夕張も修理に携わるのだが、五月雨のせいで携わる事が出来なかった。

 閑話休題。そして本日正午頃、修理が完了し、異常が無いか確認する為、吹雪に装着してもらい、近海で試験航行をしてもらった。

 

……それにしても、艤装の反応速度が速い。いや、速過ぎる。並の艦娘だったら、まともに扱えないぞ、これ。それなのに、吹雪は軽々と扱っている。

 流石、横須賀鎮守府所属の艦娘。どう鍛えれば、軽々と扱えるようになるんだろう?吹雪に聞いてみるか。

 報告書を見ながら、そんな事を考えていた時だった。

 

「ぐっ!?」

 い、痛ぇ!胃が、痛み出した。胃薬飲もう。この痛みは、我慢出来る痛さじゃない。吹雪に情けない姿を見せてしまうが、やむを得ない。

 妖精さんの素敵技術で作られた魔法瓶と胃薬を、引き出しから取り出し、胃薬を服用。続いて、魔法瓶に入れておいた白湯をコップに注ぎ、飲む。

……ふぅ、楽になった。流石、医療妖精さん特製、スーパー胃薬。直ぐに効果が現れてくれた。いやぁ、それにしても痛かった。

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

「大丈夫だ、問題ない」

 一息ついていると、吹雪が心配そうに声をかけてくれた。

 心配かけてごめんよ。本当に大丈夫だから──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『これより、逃げた大嘘つきを【自主規制】します!!』

 

 

『ぎゃああああああああああああ!!!』

 

 

 

「……」

──五月雨のドスの効いた声と、夕張の悲鳴が外から聞こえてきた。

 窓から外を見ると──夕張と五月雨が鬼ごっこしているね。楽しそう。

 

……くそっ。また胃が痛んできた。吹雪、ごめん。たった今、大丈夫じゃなくなったわ。胃薬追加で飲もう。

……あ、口から血が出てきた。それだけじゃない。目と鼻からも出血している。急いで胃薬飲んで止血しなきゃ。

……胃薬に止血効果あったっけ?いや、無いな。何で胃薬に止血効果があると思ったんだ?しっかりしろ、俺。

 

 執務室の窓から海を眺めながら、胃薬を白湯で流し込む。

 ふと思った。夕張の護衛をしていた摩耶と夕立。そして、応援に駆けつけた由良が居ない。まさか、五月雨にやられたのか?

……もう、何も考えたくない。俺は考えることをやめた。

 

……うん、美味い(・ ・ ・)。何故か分からないが、胃薬が美味しい(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)

 

「あ、あの、渡良瀬司令官」

 

「なんだい、吹雪(・ ・ )?」

 吹雪が、心配そうな顔をしながら俺に声をかけてきた。

 

「その、えーと……」

 

「?」

 どうした?顔を引き攣らせて。

 

「目と鼻と口から大量に血を流しています。今すぐ医務室に行った方が良いのでは……」

 

「大丈夫だよ」

 ニッコリと微笑みながら、俺は吹雪に穏やかな声で返答した。

 俺なら大丈夫だ。これは、余分な血液を排出する為に、目と鼻と口から血を流しているだけだから。

 決して、外から聞こえる夕張と五月雨のやり取りを聞いて、出血しているわけじゃない──

 

 

 

『貴女の産道を通ってきた気がするんです!』

 

 

『ごめんちょっと何言ってるのか分からない』

 

 

 嘘言いました。外で夕張を追い回す、五月雨のブッ飛んだ発言を聞いたせいで、出血しています。

 うん。俺も五月雨が、何言ってるのか分からない。夕張に同意するよ。

 

 

『5分程度でいいので、夕張さんの胎内に還らせてください!!』

 

 

『NO!絶対に、NO!!』

 

 

「五月雨は元気がいいなぁ」

……あっ、五月雨が夕張を押し倒して、スカートを奪った。見ちゃダメだ。目を逸らそう。

……夕張の悲鳴と、タイツが破かれる音が聞こえてきた。これ以上はマズいな。横須賀鎮守府で、五月雨のストッパー役だった吹雪に頼んで、止めてもらおう。

 何で吹雪が五月雨のストッパー役なのを知っているか、って?昨夜、歓迎会を開いた時、吹雪本人から教えてもらったんだ。だから、知っている。

 

「吹雪、大至急五月雨を止めてくれ。やり方は吹雪に任せ──お゙お゙お゙ぼ゙ぼ゙ぼ゙ゔゔぅ゙ぅ゙っ゙っ゙っ゙!゙!゙?゙」

 

「渡良瀬司令官ッ!?」

 

 いけね、吐血しちゃった。そのせいで、真っ白の提督服が真っ赤に染まってしまった。また汚しちゃった。今月で何着目だ?クリーニングに出さなきゃ。

 あと、派手に吐血したせいで血液不足に陥ったからか、ふらついちゃった。あっ、これ、倒れるね。

……と思ったけど、吹雪が慌てて俺を抱きかかえて支えてくれた。

 お陰で倒れずに済んだけど、吹雪の装束に俺の血がかかり、赤く染めてしまった。ごめんよ。

 

「医務室に運びます!気をしっかり持って下さい!!」

 

 あー……視界がぼやけてきた。

 まだ、仕事が沢山あるのに……あー、ダメだこりゃ。意識飛ぶわ。

 

 

ぼっこれろ(壊れろ)オオオォォォォォ!!!』』

 

 

 俺の意識が完全になくなる直前、千歳さんの雄叫びが聞こえた気がした。

 

 

 

side 提督 out

 

 

───────

────

 





次回予告


 千歳さん、助かったっぽい。もし助けに来てくれなかったら、夕張さんの純潔が散らされていたかもしれないっぽい。
……はぁ。毎日毎日、トラブルが絶えないわね。そのせいで、提督さんが苦しんでいる。全く。皆の頭ん中、どうなっているのかしら?何で提督さんに迷惑をかけるのかなぁ?
……あれ?提督さんの事を考えると、お臍の下辺りが熱くなる。それに、この感覚は……う"ぅ"……欲に身を任せたら、提督さんに迷惑かけちゃう!我慢よ、夕立!!


第97話・兆候


「僕の妹がこんなに変態なわけがない」


【補足的なナニか】

・ブラー効果…ぼかし効果の事。詳細は各自でお調べ下さい。

・裏瑞鶴(仮名)…久々の登場第603鎮守府所属、翔鶴型航空母艦二番艦、瑞鶴の適性者、風見瑞稀の魂に宿る存在。色々謎が多い。
 裏瑞鶴(仮名)が表の人格として現れると、外見は深海鶴棲姫になる

 髪と肌の色が白。
 額に角が二本生える。
 瞳の色が真紅。
 声にブラー効果がつく(深海鶴棲姫の声になる)。

 になる模様。尚、感情が昂ると髪が逆立つ。


以上、補足終了。
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