追跡鶴   作:EMS-10

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※警告※
暴力的・グロテスクな描写が含まれています
原作とは異なる設定・描写が含まれています
深海棲艦が喋ります


※この小説内の季節は、9月上旬頃となっています。

※暫くシリアスな展開が続きます。



第104話・海蛇と呼ばれた悪魔

 

side 提督

 

 

──第603鎮守府、執務室──

 

 

大規模反攻作戦八日目。

09:00。

 

 

 本日の天気、土砂降り。気温29℃。湿度80%。

 

 昨日の夕方頃から突然降り始めた雨は、最初は弱かったが、日付が変わる頃には、前が見えない程の土砂降りになり、今も勢いが全く弱まらず、寧ろ益々強くなり、激しく降り続いている。

 更に、強風というおまけ付き。

 

(予報では、数日間(・ ・ ・)降り続け、風もかなり強い状態が続く、か……)

 窓の外を見ると、午前中なのに真っ暗だ。

 

 

 大本営から、深海棲艦の新種(・ ・)──覚醒種(・ ・ ・)が出現した事と、小嶋提督から、第三目標の海域に、深海棲艦が新たに6隻、集結したと報告を受けて一日が経った。

 

 まず、新種(・ ・)については、警邏していた娘達を含め、直ぐ会議室に集めて説明し、充分警戒するよう伝えた。

 ウチの娘達と、派遣されてきた娘達は必要以上に騒がず、冷静に受け止めてくれたから、騒ぎにはならなかった。

 

 次に、小嶋提督からの報告を伝えた。

 こちらは残念ながら、伝えた途端、騒ぎになってしまったが、千歳さんや加賀さん、長門さん、由良の4人が一喝し、騒ぎを鎮めてくれた。

 

 何故、騒ぎになったのか。これには理由がある。

 それは、新たに集結した6隻の深海棲艦が原因だ。

 

 たった6隻。それだけなら、ウチの娘達と派遣されてきた娘達、向こう(第8492離島鎮守府)の娘達の実力なら、軽々と捻り潰す事が出来る。

……普通の深海棲艦ならば、な。

 

(けど、普通の深海棲艦じゃない)

 レ級flagship(フラレ)。コイツが出た。

 

 データによると、フラレは、レ級elite(エリレ)や鬼・姫級と比べ物にならないほど装甲が厚く、駆逐艦並に速く、そして、判断能力が高い。

 それだけじゃない。主砲・副砲の威力と装填速度が桁違いに高く(・ ・ ・ ・ ・ ・)

 更に、魚雷と艦載機の搭載数が、エリレの実に2倍以上(・・ ・ ・)らしい。

 

(そんな奴が6隻も居るんだ。騒ぎになる)

 正直俺も、小嶋提督に教えてもらった直後は、かなり取り乱しちまった。隣に居た瑞鶴と初霜のお陰で、すぐに冷静になれたけど。

……話を脱線させてすまん。戻す。

 

(そんな相手とまともに殺り合ったら、確実に轟沈者(死亡者)が出る)

 小嶋提督と話し合い、どうするか考えていた時だった。

 冒頭で話したが、急に天候が悪化した。

 

(最初は天候が回復してから、攻略する予定だったけど──)

 小嶋提督が、「悪天候なら、敵はまともに艦載機を飛ばせない」と言い、急遽、悪天候の中、攻略を行う事にした。

 

 事実、深海棲艦達も艦娘と同じく、悪天候では艦載機をほぼ(・ ・)飛ばそうとしない。

 フラレと比べると、艦載機の搭載数は劣るが、フラレよりも艦載機の操作が上手い、あの空母棲姫ですら、悪天候では殆ど艦載機を飛ばさず、例え飛ばしたとしても、まともに操作出来ないのか、普段よりも動きが鈍い物になる。

──と、端末のデータに記されてある。

 

 余談になるが、千歳さんと加賀さんは、こんな悪天候でも艦載機を飛ばす事が可能らしい。

 流石に今の天候──強風だと、制御出来ないんじゃないか。

 

 そう思って聞いたところ、千歳さんは「普段の7割程度の力しか出せないが、問題なく戦える」との事。

 ちなみに、加賀さんは5割程度の力しか出せないそうだ。

 

 閑話休題。

 

 なので、悪天候の今。艦載機を飛ばせる千歳さんと加賀さんを主軸に強襲を仕掛け、近接戦闘が得意な娘達で乱戦に持ち込み、可能ならば殲滅。

 最低でも6隻全てのフラレに、艦載機の発着艦が不能になる程度のダメージを与える、というゴリ押しな作戦を行っている。

 

 ちなみに、空母艦娘は千歳さんと加賀さんを除いて、鎮守府に待機させている。

 千歳さんと加賀さんがハッキリ言った。まともに飛ばせないなら、足手まといだ、と。 

 

(そんなわけで、この悪天候の中、出撃をして攻略を──ッ!?窓が揺れた音か。驚かせやがって)

 強風が吹いた事で、窓が大きく揺れ、結構大きな音が鳴った。そのせいで、神経質になっていた俺は驚き、思わず椅子から飛び上がりそうになった。

……落ち着け。冷静になれ。一旦考え事をするのをやめて、リラックスしよう。

 

 俯いていた顔を上げ、ふと、視界に入った時計を見ると、向こうの娘達と合流する海域に到達する時間になっていた。

……まだか。まだ連絡は来ないのか?

……だから、落ち着け。冷静になれ。深呼吸だ。深呼吸して落ち着け。冷静でなければ、まともに指示を出せなくなるぞ。

 

 

…………。

 

 

 

(6隻居るフラレの内、1隻が不審な動きをしている、か……)

 無線が入るまで、昨日、小嶋提督から伝えられた言葉を、頭の中で繰り返していた。

 

 小嶋提督が言うには、偵察部隊が動向を監視した所、6隻居るフラレの内、1隻だけが__海域の深海棲艦達から離れた位置──十数km以上離れた所に居て、単独行動を(・ ・ ・ ・ ・)取っている(・ ・ ・ ・ ・)そうだ。

 

(深海棲艦は、鬼・姫級ならまだしも、人型の通常種は、敗走している時以外は決して単独行動を取らない)

 超弩級重雷装航空巡洋戦艦と言われるレ級だが、一応奴も通常種に入る。

 レ級flagshipでも、味方の深海棲艦が居るなら、味方と群れて行動する。決して単独行動を取らない筈なんだが──

 

(何か、考えているのか?)

 いや、きっと何か考えている。小嶋提督もそう言っていた。

 勿論、この事はブリーフィングで皆に伝えてある。

 

 閑話休題。

 

 今更になるが、第三海域の攻略に向かってくれた娘達を紹介しようと思う。

 

 まず、ウチから攻略に向かってくれた娘達から。

 

 フラレに攻撃を行う、第一艦隊。

 旗艦・千歳さん、長門さん、山城、那智さん、由良、夕立。

 

 次に、フラレ以外の深海棲艦に攻撃を行う、第二艦隊。

 旗艦・加賀さん、扶桑さん、熊野さん、阿武隈、吹雪、五月雨。

 

 最後に、ウチの第一、第二艦隊の支援及び、負傷者の護送を行う、第三艦隊。

 旗艦・能代さん、榛名、名取さん、涼月、初霜、文月。

 

 以上、18名だ。

 千歳さんと加賀さん、長門さんから、「機動力と火力、回避能力が高い娘以外は足手まとい」「乱戦に持ち込むから、人数が少ない方が良い」と言われた為、このような人数とメンツになった。

 

 ちなみに、小嶋提督にもこの事を話し、同意してもらったので、向こうもウチと同じ人数と、近接戦闘が得意な娘達にしてくれた。

 

 続いて、向こう(第8492離島鎮守府)の艦隊を紹介する。

 

 フラレに攻撃を行う、第一艦隊。

 旗艦・神通、金剛、筑摩、衣笠、阿賀野、浜風。

 

 続いて、フラレ以外の深海棲艦を攻撃する、第二艦隊。

 旗艦・川内、羽黒、高雄、青葉、嵐、江風。

 

 最後に、向こうの第一、第二艦隊の支援及び、負傷者の護送を行う、第三艦隊。

 旗艦・霞、伊勢、愛宕、朝霜、清霜、明石。

 

 以上、18名。

 駆逐艦娘が多いが、侮ってはならない。

 小嶋提督が教えてくれたが、とんでもなく戦闘力と判断能力が高く、全員血の気が多い(・ ・ ・ ・ ・ ・)──どんなにズタボロになろうが、獰猛な笑みを浮かべて、獲物を喰らう戦士達らしいから、今回の作戦に選んだそうだ。

 

 あと、向こうの第三艦隊に工作艦の明石が居るが、彼女はウチと向こうの娘達が重症(・ ・)を負った時、即座に応急処置を施す為に、出撃させたそうだ。

 

 余談になるが、小嶋提督曰く、「様々なギミックを搭載した艤装を纏っているから、相当な戦闘力がある」そうだ。

 どんなギミックを搭載しているか説明したいが、長くなる為割愛する。

 

 閑話休題。

 

……くそっ、胃が痛んできやがった。急いで胃薬を飲もう。

 引き出しから胃薬と魔法瓶を取り出し、素早く服用。程なくして効果が現れ、痛みが引いていった。

 

「司令官、大丈夫?」

 

「……俺なら大丈夫だ。気にしないでくれ」

 待機組の一人、早霜が心配そうな顔をしながら声を掛けてきた。

 情けねぇ。部下に弱った姿を見せるなんて……しっかりしろ。

──ッッッ!!!無線が入った!!!

 素早く無線機を手に取り、スイッチを入れる。

 

『こちら、第一艦隊旗艦、千歳。無事、向こうの娘達と合流出来たわ』

 

「──ッ!?りょ、了解ッ!陣形を整えたら、予定通り、周囲を警戒しつつ、__海域に向かってください」

 

『了解』

 

 無線が切れた。次に無線が入るのは、目標地点に到達してからだ。

 

……それにしても、千歳さんの声、怖かった。

 普段なら、穏やかな声で報告してくれるけど、さっき聞いた声は低く、感情を一切感じさせなかった。

 

(それ程の相手なんだ)

 これから相手するのは、それだけ強い。嫌でもそう思わされてしまった。

……冷静になれ。

 何度も言っているが、再び己に言い聞かせる。

……イカン、催してきた。こんな時に。

 

(急いで行こう)

 締まらねぇな。

 

「早霜、少し席を外す。直ぐに戻る」

 

「了解しました」

 

 早霜に一声掛け、急いで椅子から立ち上がり、御手洗に向かおうとした時だった。

 

 執務机に置いたある物(・ ・ ・)に俺の手が当たり、床に落としてしまった。

 

「……あっ!」

 やっちまった……。急いで屈み、床に落とした物を拾う。

 その落とした物とは──

 

 

 

──────────────

 

 

『出撃して帰ったら、一緒に聴きましょう!』

 

『おう、楽しみにしてるぞ』

 

『ふふふ……私の自慢のスピーカーで聴かせてあげます♪

 

 床が揺れ、鼓膜がブチ破れる程の音量でッッッ!!!』

 

『うん。そこまで上げなくていいよ。常識的な音量でお願いします』

 

 

 『それがッ!デスメタルをッ!聴く時のッ!常識的なッ!音量ですッッッ!!!』

 

 

『何それ、デスメタル怖い』

 

 

──────────────

 

 

 

(初霜……)

 ブリーフィングを終え、出撃する娘達に無理は決してせず、無事に帰ってくるよう言った後。

 執務室に向かい、小嶋提督と最終確認をしようとしたら、初霜が自室から持ってきて、俺に手渡してくれたCDだった。

 

 何故、手渡してきたのか。部屋に置いたままで良かったんじゃ?

 色々疑問に思ったが、手渡された時はツッコミを入れる余裕が無かったから、そのまま受け取り、執務机の上に置いたんだっけ。

 

「司令官?」

 

「……すまん」

 CDを手に持ち、ジャケットを見ていたら、早霜に声をかけられた。イカン、さっさと御手洗に行かねぇと。

 

(……無事、生きて帰ってきてくれ)

 CDを執務机に置き、御手洗に向かいながら、無事に帰ってきてくれるよう、祈った。

 

 

side 提督 out

 

 

───────

────

 

 

side 千歳

 

 

──第三目標、__海域──

 

 

「私が艦戦を出すわ。加賀さんは攻撃機の発艦用意をして。他の娘達は作戦通りに動いて。いいわね?」

 

『『『『『『りょ、了解!』』』』』』

 

 反論しないよう、殺気を込めて指示を出したから、皆、素直に言う事を聞いてくれた。

 

「………今回は、抑えない」

 相手が相手だ。普通にやったら、轟沈者(死亡者)が出る。

 

 

絶対、誰も死なせない。

 

 

 皆や提督にドン引きされようが、全力の1歩手前(・ ・ ・ ・・ ・ ・)の力で暴れてやる。

 本当は全力を出したいけど──

 

(昔と違って、全力を出すと、反動で暫く動けなくなる)

 昔なら、全力を出して暴れても、即座に回復(・ ・ ・ ・ ・)出来たけど、今は歳のせい(・ ・ ・ ・)か、回復が遅くなった。だから、少しセーブして暴れなければならない。

 

(最近、どんどん力が衰えてきている(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)のよね……)

 昔──荒れていた頃、かなり無茶な事をしまくったから、そのツケが回ってきた。

 それだけじゃない。最近、私の信念(・ ・ ・ ・)が揺らぎ始めている。

 

(悟を見つける為、頑張ってきたけど、最近は諦める気持ちが、少しだけ出始めちゃった)

 提督──準くんと、準くんに好意を寄せる娘達を見ていたら、なんだか自分のしている事が馬鹿らしく思えてきちゃって、そのせいで信念が揺らぎ──

 

『千歳さん?どうか、されましたか?』

 

「……ううん、なんでもないわ?」

 いけない。ボーッとちゃった。そのせいで、神通さんに声を掛けられてしまった。

 頭を切り替えないと。

 

(……落ち着きなさい。今は余計な事を考えるな)

 戦闘モードになりなさい。

……良し。頭を切り替えたわ。

 

(さぁ、お仕事の時間よ?)

 素敵な天候(・ ・ ・ ・ ・)だけど、問題は無い。

 さて、まずは雑魚(・ ・)からお掃除(・ ・ ・)しちゃいましょう♪

 

「艦載機の皆さん、殺っちゃってください♪」

……早く行きなさい。行け。殺れ。命令。従え。しばくぞ。

 

(本当は、艦載機格納庫を担いで殴りに行きたい(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)けど、それをやると皆をサポート出来なくなっちゃう)

 だから、今回は艦載機だけで戦いましょう。

 

 

 

 

………………。

 

 

 

 

『喰らい付いたら、離さないって……言ったネ!!』

『私が牽制します!』

『動きが止まりました!そこっ!!』

 

 無線から、金剛さんと浜風さん、筑摩さんの声が聞こえてきた。それから少しして、フラレの1体の反応が、レーダーから消えた。

 

 

 戦闘開始から30分位が経ったけど、殆ど掃除(・ ・)出来た。予定より早い。

 今の所、轟沈者(死亡者)は出ていない。けど、何名かフラレの攻撃で負傷して、離脱している。

 

(残って戦っている娘達は、中破以上の損傷を負った娘は出ていない。行ける)

 敵の残りは、空母棲姫1隻と軽巡棲姫1隻。それから、フラレが5隻。ただ──

 

(フラレの内の1隻だけ、開戦してから今も、十数km離れた所に居る)

 そいつ(・ ・ ・)は艦載機を飛ばさず。砲撃も雷撃もしてこない。何を考えているのかしら?

 

(棒立ちしているみたいだから、攻撃したいけど──)

 空母棲姫や4隻のフラレが艦載機を飛ばしてきたから、その相手で手一杯。

 他の娘達も、4隻のフラレに振り回されていて、とてもじゃないけど、向かう余裕が無いみたい。

……まぁいいわ。何もしてこないみたいだし。けど、警戒はしておきましょう。

 

(ただ、離れたところに居るフラレが覚醒種(・ ・ ・)なのがね……)

 まぁいいわ。雑魚(・ ・)を全部片したら、私と、覚醒者(・ ・ ・)になったばかりだけど、神通さんと川内さんが居るから、3人で叩き潰してやりましょう。

 

……何故覚醒種(・ ・ ・)だと分かるのか、ですって?感覚で分かるのよ。

 それ以上は上手く説明出来そうにないから、このお話は終わりよ。

 

 ちなみに、川内さんと神通さんは、まだなりたて(・ ・ ・ ・)だから、気配を感じ取れていない──おっと、

 

「遅い!」

 思考を中断。意識を集中し、艦載機を操作。

 空母棲姫とフラレの放ってきた敵艦載機を撃墜。

 この天候なのに、そこそこ上手く飛ばせる。良い腕ね。私程じゃないけど。

 

……あら、空母棲姫が爆撃を受けて沈んだわ。私の艦載機じゃないわね。加賀さんが殺ったみたいね。

 

『こちら、加賀。千歳さん、空母棲姫の全滅を確認しました。しかし、私の艦載機は殆ど残っていません』

 

「了解よ。加賀さんは邪魔だから(・ ・ ・ ・ ・)、下がって」

 

『了解』

 

 流石、元・大本営本部所属。No.2の空母艦娘に扱かれたから、相当良い腕をしている。けど、まだまだよ。

……さて、後は私に任せて。

 

 加賀さんが空母棲姫を仕留めてくれたから、残るは仮面の無い(・ ・ ・ ・ ・)軽巡棲姫(・ ・ ・ ・)1体と、フラレ5体(・・)──

 

 

『ハイクを詠め。カイシャクしてやる』

『━━━━━━━━━━━ッッッ!!?』

 

『油断しましたね?二重の極みです』

『━━━━━━━━━━━ッッッ!!?』

 

 

「……フラレの残り、3隻」

 無線から、川内さんと神通さんの声。それと、フラレの断末魔が聞こえてきた。

 2体、殺した(・ ・ ・)みたいね。

 

 

『痛ッ!あんた、硬過ぎよ!』

『ほう?貴様、私が全力で着艦(・ ・ ・ ・ ・)したのに沈まないとは。どうだ?私専属のヘリポート(・ ・ ・ ・ ・)にならないか?』

『那智、遊ぶな。

──ヌ゛ぅ゛ん゛!゛!゛』

『……長門さん、どうやればフラレを素手で(・ ・ ・)引き裂ける(・ ・ ・ ・ ・)んですか?』

『気合いだ』

 

 

……那智さんと長門さん、山城さんがフラレを撃破。

 フラレ、残り2隻。

 

 

『五月雨さんは、主砲を乱射(・ ・ ・ ・ ・)して足止めを!初霜さんは、魚雷をばらまいて!

 榛名さん!名取さん!涼月さん!そのまま軽巡棲姫を追い回してください!』

 

『『『『『『了解です!』』』』』

 

 

 ウチの第三艦隊の娘達が、軽巡棲姫を追い回してくれている。

 周りの様子は──神通さん達が相手しているフラレは、もうじき沈むわね。

 よし。由良さんと夕立さん達が相手しているフラレを殺りましょう。

 

 艦載機に指示を出し、攻撃態勢に入ろうとした瞬間だった。

 

 

(ッ!敵の増援!?)

 レーダーに、敵の反応が複数現れた。素早く彩雲を飛ばし、偵察を行う。

 ただでさえ大量の攻撃機を操作しているから、脳に負荷が掛かって頭痛がするけど、我慢よ。

 普段より7割程度の速度で彩雲を飛ばすと、やがて増援の数と編成が、彩雲を操作する妖精さんから伝えられた。

 

(……冗談にしては、笑えないわね)

 敵の増援は、40隻前後。

 普段なら、今いるメンツでも充分捻り潰せる。

 けれど──

 

(マズい。フラレが5隻も居る!)

 今はフラレを相手したせいで、そこそこ燃料と弾薬を消費している。

 更に、私を除いて全員が小破以上の損傷を負っている。

 私だけなら、楽に逃げられるけど、皆はそうじゃない。くそっ!どうすれば──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ゥゥゥゥ↓ウウウウウウイイィィィィイイイイイ↑ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ♪』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッッッ!!?」

 今の声は……!?

 聞き間違いじゃない。()の声とそっくりだ。

 忘れもしない。あの、独特のふざけた(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)笑い声。

 今まで数え切れないほど、深海棲艦の声を聞いてきたけど、今聞いた笑い声を出すのは、()しかしない。

 

 そんな……バカな!!

 

(()2年前(・・ ・)ラバウル(・ ・ ・ ・)頭を(・ ・)吹っ飛ばされて(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)沈んだ!!)

 確かに、由良さん達(・ ・ ・ ・ ・)が沈めた。何度も確認したから、間違いはない。

 

 

 何故!?

 ()は沈んだ!死んだ!!

 

 

(……考えるのは、後にしなさい!!!)

 今は、増援をどうにかする事を考えろ!!

 でも、()が居る!!

 このままじゃ、殺られる!!

 

 

『この気配(・ ・)……懐かしいなァ?イヒャヒャヒャヒャヒャヒャ♪』

 

 

……くそっ。詰んだ(・ ・ ・)。こうなったら、私が特攻して時間を稼──

 

 

 

『ン〜?なァんか、フェアじゃないナァ?気に食わねェナァ?』

 

 

 

「────ッッッ!!?」

 艦載機を出した!発艦した位置は、単独行動を取っていたフラレからだ!何時の間にか、数km近くまで来ている!

 常にレーダーで位置を把握していたのに、何故!?

 

(迎撃しなきゃ!)

 気になるけど、今は迎撃しなきゃ!

 急いで艦戦を向かわせる。

 けど、()が放った艦載機は──

 

 

 

『『『『『━━━━━━━━!!!?』』』』』

 

 

 

 

 何機か撃墜されても、私が向けた艦戦を無視してエルロン・ロールしながら進み続け、由良さん達と神通さん達が相手しているフラレと、増援としてやってきた、深海棲艦達目掛けて殺到した。

 

 その数、推定500機以上(・・・ ・ ・ ・)

 悪天候にも関わらず、私以上に上手く(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)艦載機を操作し、フラレを含めた全ての深海棲艦だけ(・ ・)を沈めてしまった。

 

(混線しているせいか、深海棲艦達の断末魔が聞こえてきた。相変わらず不快な音ね)

 深海棲艦だけ(・ ・)を全て沈めると、夥しい数の艦載機が、私達に何もせず(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)、主の元へ戻って行った。

 その様子を、残った娘達は呆然と見ていて、対空射撃をしなかった。

 

……いいえ、出来ない、が正しいわね。

 対空射撃が届かない高度を飛んでいるから。

 やがて、全ての艦載機が主の格納庫に格納されると──

 

 

『これでヨシ。これでオイラ(・ ・ ・)だけを見てくれるナ!』

 

 

 再び、()の声が聞こえた。

……そうだった。()は、そういう個体だった。

 ()は深海棲艦とは思えない思考・言動をする。

 

 

『さァて。そろそろ遊ぼうカ!』

 

 

「ッッッ!!?」

 マズい!()が動いた!由良さんの所に向かっている!!

 急いで思考を中断。考えるのは後!!今は皆を死なせないよう動く事が最優先事項!!!

 

(速い。いいえ、速過ぎる(・ ・ ・ ・)!)

 艦載機を向かわせて──くそっ!予想通り(・ ・ ・ ・)全く効いていない(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)

 

「由良さん!逃げてッッッ!!……くっ!畜生ッッッ!!!

 電波障害!?()が発している!!!

 このままだと、由良さんと、第一艦隊の皆が!!!

 

「機関、最大出力!!」

 主機の出力を限界まで高め、由良さん達の所へ向かう!!

 私が今居る位置から、由良さん達の居る位置は、かなり離れている。()の方が、先に着く!!

 

「ぐっ……」

 頭痛(・ ・)が……艦載機を操作・()攻撃しながら(・ ・ ・ ・ ・ ・)最大出力で航行(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)しているせいで、脳に過負荷(・ ・ ・ ・ ・)が掛かっている。

 

(我慢しなさい!今は痛みを気にしている場合じゃないわ!)

 早く行かないと、由良さんが危ない!!!

 

 

side 千歳 out

 

 

───────

────

 

 

side 由良

 

 

 そん、な……。嘘よ。嘘よ!

 今聞こえた声。それに、さっきの敵艦載機達の動き。

 間違いない。()だ。

 

(何故!?お前は、私達(・ ・)が沈めた筈!!)

 意識が朦朧としていたけど、確かに顔を吹っ飛ばして(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)沈めた。なのに、何故!?

 

 もしかしたら、似たような声の個体──それはない。

 現実逃避するな、由良(・ ・)。事実を受け止めなさい!

 

 そう自分に言い聞かせたけれど、頭はそれを否定した。

 きっと、アレよ。そっくりさんよ。

 よく言うじゃない?世界には、自分とそっくりの顔をした人が、3人居るって。

……人じゃなく、深海棲艦だけど。

 

 

……長門さん達が、()に攻撃を開始した。

 けれど、全く効いていない(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)

 

 

 あっという間に、長門さん達は()に蹴散らされ、大破(・ ・)してしまった。

 

 

……無理よ。普通の艤装(・ ・ ・ ・ ・)じゃ、かすり傷一つ(・ ・ ・ ・ ・ ・)付けられない。

 

 

……千歳さんの攻撃機が、()に攻撃した。

 こちらも長門さん達の攻撃同様、全く効いていない(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)

 

 

……()が電波障害を発生させているから、無線が使えない。

 幸い、レーダーは生きている。そのお陰で、接近して来るのが分かる。

 

 

……身体が、動かない。動かせない。

 

 

……止まってる場合じゃない。動け。動きなさい。動け!

 

 

……ダメ。動かない。

 

 

 そうこうしている間に、()が私の目の前まで接近してきた。

 さっきまで、推定70ノット以上で航行していたけど、今は5ノット以下で航行している。

 

 

『イヒャヒャヒャヒャヒャヒャ♪やっぱりユキノ(・ ・ ・)だ!』

 

 

……気が付けば、目の前に()の顔があった。

 鼻と鼻が触れ合う程、近い。

 

 

「その傷。その艤装──」

 気が付けば、口を開き、そう呟いていた。

 

 

 露出している腹部にある、傷跡。

 腰から生えている、2本(・・)の尻尾。

 

 

……嗚呼、そっくりさんじゃない。本人(・ ・)だ。

 

 逃げたい。けど、それは出来ない。

 

 何故なら、私は()オトモダチ認定(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)されているから。

 

 逃げれば、何処までも追いかけて来る。

 

 隠れれば、隠れた所を更地にする(・ ・ ・ ・ ・)

 

 抵抗したいけど、普通の艤装(・ ・ ・ ・ ・)だから、傷一つ付けられない(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)

 

 唯一、()にダメージを与えられる艤装──Code:N(・・・・・)は、無い。

 

 

……あははは。あははははははは。

 

 

 

 

 詰んだ(殺される)

 

 

 

 

「お前は……お前は、2年前(・・ ・)由良達(・ ・ ・)が殺した筈……」

 なら、せめて。せめて、何故生きていたのか、知りたい。

 

「何故……何故ッ!?

 何故、生きているッ!海蛇(・ ・)ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ン〜?何故って言われてもナ……分からん!」

 

 

 

 

……ふざ……けるな……。

 

 

side 由良 out

 

 

───────

────





次回予告


……提督、しっかりしなさい。
……負傷した方達は、全員復帰したわ。
……初霜さんも無事よ。一命()取り留めたわ。
……殺しているのよ。殺されもするわ。
……。


 いい加減にしなさい、()ッ!


 何時までもメソメソしない!顔を上げる!まだ戦いは終わっていないのよ!
 昨日より風が弱くなった(・ ・ ・ ・ ・)から、私が出るわ。翔鶴型航空母艦の実力を見せてあげる!
……なんですか?由良さん。
……無駄?それは、どういう意味ですか?


第105話・敗北


「出来る、出来ないじゃない。
やるんだよ(・ ・ ・ ・ ・)



【補足的なナニか】

・エルロン・ロール…水平飛行中にエルロンのみを使用して、直進しながら左または右方向に360度ロールする事で、曲技飛行にも使われる、初歩的な航空機の操作技法の一つ。

・海蛇…とあるレ級を指す。CVは、「千葉繁」さんの声で脳内再生してください。
 数年前、ラバウル(・ ・ ・ ・)に出現。艦娘及び、深海棲艦に(・ ・ ・ ・ ・)甚大な被害をもたらした。
 2年前に、とある艦娘(・ ・ ・ ・ ・)が沈めた筈だが……。

以上、補足終了。
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