追跡鶴   作:EMS-10

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※警告※
暴力的・グロテスクな描写が含まれています
過激発言あり
深海棲艦が喋ります


※特定の人物・団体等を誹謗・中傷する意図は一切ありません。
 予め、ご了承下さい。

※この小説内の季節は、9月上旬頃となっています。



第105話・敗北

 

Another side1

 

 

──2年前(・・ ・)ラバウル(・ ・ ・ ・)──

 

 

『──ね───、────』

 

 

……あーあ。もう終わりかヨ。

 せっかくオトモダチ(・ ・ ・ ・ ・)に出会えたってのに。

……もっと、遊びたかったナ。

 

 

『─────。──……』

 

 

……ダメだ。雨と風がうるさくて、___(・ ・ ・)が何言ってるか、よく聞えネェ。

 それに、顔を(・ ・)吹っ飛ばされたから、その衝撃で耳がダメになってらァ。

 

……イヒャヒャヒャヒャヒャヒャ♪。

 まぁいいサ。オイラ(・ ・ ・)は満足出来た。

 思い切り遊ぶ(・ ・ ・ ・ ・ ・)事が出来た。 

 もう、悔いはネェ。

 

 

『──────、_蛇(・ ・)

 

 

……前言撤回。悔いあるわ。

 オイラには、____って名前がある(・ ・ ・ ・ ・)んだゼ?教えたジャン?

 名前で呼んでくれヨ。

 ___(・ ・ ・)達、カンムス(・ ・ ・ ・)が付けた海_(・ ・)って名前じゃなく、オイラの名前で、サ。

 

……ダメだ、沈む。

 

 

 次は何時(・ ・ ・ ・)海上に(・ ・ ・)出られる(・ ・ ・ ・)かナァ?

 

 

……意識が……急……朦…朧…して……き……タ……。

 

 

……アバ……ヨ……___(・ ・ ・)。元……気……で……ナ……!

 

 

 

───────

 

 

────

 

 

 

 

 

───暗い。

 

───何も、見えない。

 

 

 

………………。

 

 

 

───どれだけ時間が経ったか分からない。何せ、真っ暗だからナ!イヒャヒャヒャヒャヒャヒャ♪

 

───真っ暗闇。おまけに、冷たい。

 

───____(・ ・ ・ ・)の気候に慣れたせいか、寒く感じる。

 

 

………………。

 

 

───腹減ったナァ。果物食いたいナァ。

 

───ふぁ〜あ……あれ?動く?あくび出来たゾ?

 

 

 今までピクリとも動かなかった身体が、動く。いや、動かせた。やっとか(・ ・ ・ ・)

 

 

 手は……ちゃんとある。動く。

 

 足……ある。動く。

 

 腹、胸、そして──顔。吹っ飛ばされた(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)顔がある(・ ・ ・ ・)

 

 手で触ると、確かにある。元に戻った(・ ・ ・ ・ ・)みたいだナ。

 

 ___(・ ・ ・)の持つオモチャ(艤装)喰い壊された(・ ・ ・ ・ ・ ・)尻尾は──元通りに直っている。

 

 これなら、オトモダチ(・ ・ ・ ・ ・)を探せる!遊べる(・ ・ ・)

 

……その前に、何か食おう。

 

……適当に、その辺泳いでる魚でも捕まえて、食うカ。

 

 

 

………………。

 

 

 

──現在、__海域──

 

 

 

「……おーおー、眩しいネェ」

 何時ぶりになるか分からんが、海底から浮上して、海上に出た。

 久々に見た空は青く。海は、オイラが沈んだ時と違い、穏やかだった。

……にしても、涼しい(・ ・ ・)ナァ。____よりも涼しい。何処だ?此処。

 

……あン?木偶共(・ ・ ・)少し離れた(・ ・ ・ ・ ・)所に集まって、何やら騒いでる。

 

「群れなきゃ、何も出来ねェのかヨ」

 遠くから群れている奴らを、冷ややかな目で見ていたら、カンムスがクウボセイキ?とか呼んでいる偉そうな奴(・ ・ ・ ・ ・)がオイラに気付いて何か言ってきた(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)

 ケド、コトバが(・ ・ ・ ・)分からない(・ ・ ・ ・ ・)から、無視。

 

ニホンゴ(・ ・ ・ ・)以外は、サッパリなんダ」

 オイラとお話したいなら、ニホンゴ(・ ・ ・ ・)で話せ。

 

 

 

 

…………。

 

 

 

 暫く(・ ・)空を眺めていると、やがて天気が荒れ始め、やがて大雨と強風が吹いてきた。

……オイラが沈んだ時も、こんな天気だったナァ。

 

 

 

………………。

 

 

「……」

 木偶共(・ ・ ・)が殺気立つ気配を感じた。

 

(落ち着けヨ。カルシウム不足(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)カ?)

 そう思った直後だった。

 

 

───懐かしい気配を感じた。

 

 

 この感じは……間違いない。カンムス(・ ・ ・ ・)だ。

 遠くから、カンムスの気配を感じた。それだけじゃない。

 

(木偶共(・ ・ ・)の数が多いから、余計な気配を発してて、カンムスの気配を(しっか)り感じ取れないから、確信は持てないケド──)

 ___(・ ・ ・)に似た気配ダナ。

 まさか、___(・ ・ ・)が居るのカ!?

 気になるケド、勘違いかもしれない。だから、暫く様子を見よう。

 

 

………………。

 

 

 どんだけ時間が経ったんだ?

 一切何もせず(・ ・ ・ ・ ・ ・)、遠くから、群れている木偶共(・ ・ ・)がカンムス達によって花火(・ ・)になるのを眺め続けた(・ ・ ・ ・ ・)

 

(随分減ったナァ)

 うじゃうじゃ居たのが、今は両手で数えられる数まで減った。

 お陰で、木偶共(・ ・ ・)の放つ、余計な気配が殆ど消えてくれた。

 だから、容易にカンムス達の気配を感じ取れるようになった。その結果──

 

「やっぱり、ナ……イヒャヒャヒャヒャヒャヒャ♪」

 この気配。間違いない。___(・ ・ ・)だ!

 

 

「ゥゥゥゥ↓ウウウウウウイイィィィィイイイイイ↑ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ♪」

 ヤッベェ!嬉しい!起きてすぐ、___(・ ・ ・)と会えるなんて!

 

 

「この気配(・ ・)……懐かしいなァ?イヒャヒャヒャヒャヒャヒャ♪」

 勘違いじゃない。正真正銘、___(・ ・ ・)の気配だ!

 けど、万が一がある。今すぐ確認しに向かおう──オイ。何しに来た、木偶共(・ ・ ・)。邪魔だ。

 

 突然、木偶共(・ ・ ・)の気配が増えた。ゾウエンって奴みたいだ。

 

(これ以上、___(・ ・ ・)を疲れさせるな。

 ___(・ ・ ・)が疲れたら、オイラと思い切り遊べなくなる(・ ・ ・ ・ ・ ・)だろうが)

 遊ぶ(・ ・)なら、ジブンとアイテがバンゼンの状態でやらなきゃ、つまらない(・ ・ ・ ・ ・)

 疲れてる相手と遊ぶ(・ ・)なんて──

 

 

「ン〜?なァんか、フェアじゃないナァ?気に食わねェナァ?」

 だから、ぶっ殺してやる。

 片方の尻尾(・ ・ ・ ・ ・)からヒコーキ(艦載機)を飛ばして、木偶共だけ(・ ・ ・ ・ ・)に向かわせる。

 風が強いケド、この程度(・ ・ ・ ・)なんともない(・ ・  ・ ・ ・ ・)

 

(……おーい、邪魔すんなヨ。___(・ ・ ・)以外のカンムスに、用はナイヨ)

 途中、カンムスのヒコーキが飛んで来て、何機か墜とされたけど、無視。

 

 本当は、ヒコーキを飛ばしてきたカンムスをぶっ殺したかったけど、ソレをしたら、___(・ ・ ・)のココロが乱れて、遊んで(・ ・ ・)くれなくなる(・ ・ ・ ・ ・ ・)恐れがある。

 だから、我慢。無視。

 

 

…………。

 

 

(……マ、こんなものかナ?)

 1匹(・・)だけ逃げられたケド、邪魔なヤツらを全部花火(・ ・)にした。

 もう一度周囲を確認して、邪魔者が居ない事を確認。

 

「これでヨシ。これでオイラ(・ ・ ・)だけを見てくれるナ!」

 ___(・ ・ ・)以外のカンムスがオイラを見て、敵意と殺意を向けているけど、無視。

 

「さァて。そろそろ遊ぼうカ!」

 オイラは、___(・ ・ ・)だけと遊びたいんだ。

 だから、必要以上に(・ ・ ・ ・ ・)邪魔(・ ・)しなけりゃ、何もしない(・ ・ ・ ・ ・)ヨ。

 

(___(・ ・ ・)目掛けて、全速前進(・ ・ ・ ・)ダ!!)

 今のオイラは風だ。誰にも止められない!

 ホラホラ。オイラが通るんだから、道あけナ!

 

 途中、オイラの前に飛び出してきたカンムスが何人か居たけど、跳ね飛ばした。コウツウジコ、発生!ってナ。

 

 続いて、カンムスのヒコーキが花火(・ ・)を投下して来たけど、なんともない(・ ・ ・ ・ ・ ・)から無視。

 

 

──あと少し。あと少しで、

 

 

(ユキノ(・ ・ ・)に会える!)

 イヒャヒャヒャヒャヒャヒャ♪楽しくなってきたァ!

……おっと、速度を落とさなきゃ。じゃないと、ユキノ(・ ・ ・)と衝突しちまうからナ。

 

 (はや)る気持ちを抑えて、速度を落とし、棒立ちしているユキノ(・ ・ ・)に近付く。

……うん。間違いない。

 

「イヒャヒャヒャヒャヒャヒャ♪やっぱりユキノ(・ ・ ・)だ!」

 そっくりさんじゃない。本人だ!確定!

……アレ?どったの?そんな顔して。

 

 鼻と鼻が触れ合うほど近くでユキノ(・ ・ ・)の顔を見ると、怯えたような顔をしてる。

 ホラホラ、オイラだヨ?____だヨ?忘れたのカ?

 

 

「その艤装。それに、その傷」

 

 

 ウンウン。覚えてくれてタ!そうだヨ!オイラだヨ!

……そういや、オイラの顔、どうなってんだろ?顔の表面だけ(・ ・ ・ ・ ・ ・)吹っ飛ばされたから、傷だらけになってるのカナ?

 

……まぁイイヤ。

 

 

「お前は……お前は、2年前(・・ ・)由良達(・ ・ ・)が殺した筈……」

 

 

 とりあえず、落ち着こうゼ?ユキノ(・ ・ ・)。冷静じゃなきゃ、楽しく遊べない(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)ゼ?

 

……今更だけド、ユキノ(・ ・ ・)が持ってるオモチャ(艤装)、普通だナ。

 オイラと遊んだ(・ ・ ・)時に持ってた、アレ(・ ・)じゃナイ。

 

……あーあ。これじゃ、思い切り遊べない(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)

 

 

「何故……何故ッ!?

 何故、生きているッ!海蛇(・ ・)ッ!!」

 

 

 仕方ネェ。出直す(・ ・ ・)カ。

 その前に、

 

 

「ン〜?何故って言われてもナ……分からん!」

 シツモンされたから、ちゃんと答えなきゃ。無視してフキゲンになられたら、遊んで(・ ・ ・)くれなるなる(・ ・ ・ ・ ・ ・)からナ。

 

 

 

 

Another side1 out

 

 

───────

────

 

 

side 由良

 

 

 

 終わった。もうダメだ。お終いだ。

 

 

(あの時(・ ・ ・)副作用(・ ・ ・)で、理性が(・ ・ ・)ほぼ消えていた(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)から戦えたけど──)

 今は違う。正気だから(・ ・ ・ ・ ・)海蛇(・ ・)の狂気や威圧感に負けて、怯えてしまっている。

 

 

──1度だけでいいから、提督さんに、抱いて(・ ・ ・)もらいたかったなぁ。

 

 

 死の恐怖が襲いかかって来たせいで、そんな事を考えてしまった。

 

 けど、いいよね?これから(・ ・ ・ ・)死ぬんだし(・ ・ ・ ・ ・)

 

 抵抗する気は起きない。

 

 自慢じゃないけど、()は数え切れない程の修羅場をくぐってきた。

 

 ちょっとやそっとじゃ、心は折れない。

 

 逆に、生き続けてやる(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)と、やる気を出した。

 

 でも、コイツ(・ ・ ・)は例外。

 

 それ程の奴なの。

 

……提督さんの声、聞きたいなぁ。けど、海蛇(・ ・)が電波障害を発生させているから、無線が使えない。声を聞く事が出来ない。

 

……あははは。つまんない人生だったなぁ。

 

 

(……あっ、千歳さんが接近してきてる。それに、初霜(・ ・)さんも)

 レーダーに、千歳さんと初霜さんが()の所に向かっているのが示されている。

 初霜さんは比較的()の近くに居たから、もう間もなく到着する。

 

 けど、初霜さんでは、海蛇(・ ・)にダメージを与えられない。逆に、狩られてしまう。

 

 千歳さんは数km以上離れた位置に居るから、到着するのにまだ数分(・ ・)掛かる。

 足止め位なら可能だろうけど、致命傷までは与えられないでしょう。

 

 

 

 

……ごめんなさい、皆。先に死ぬね?

 

 

 

 

 

 

ユキノ(・ ・ ・)

 

 

……海蛇(・ ・)が声を掛けてきた。いよいよ、ね。

 覚悟は──出来ていない。死にたくない。生きたい。生きて、生きて、生き続けて。そして、

 

(幸せになりたかった……)

 多くは望まない。

 ただ、笑って過ごしたい。

 やっと見つけた、幸せ──第603鎮守府という、私が落ち着いて過ごす事の出来る、居場所。そして、提督さん──渡良瀬君という、男性。

 

 

 彼と結ばれて(・ ・ ・ ・)、幸せに──

 

 

 

「そのオモチャ(・ ・ ・ ・)じゃ、オイラは楽しめない。だから──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間をくれてやる。アレ(・ ・)を用意して、遊んでくれ(・ ・ ・ ・ ・)♪」

 

 

 

 

「──────」

 満面の笑顔。それと同時に、ただでさえ凄まじい威圧感が、更に増した。

……海蛇(・ ・)の左目が、青く光っている。あの光は──flagship改になった深海棲艦だけが発する光だ。

 

 やめて。もう、やめて。()戦いたくない(・ ・ ・ ・ ・ ・)

 

 

「だから、出直すよ(・ ・ ・ ・)

 

 

……出直、す……?見逃してくれる……の?

 

 

 

「あっ、逃げるナヨ?逃げたら、何処までも追っかけるからナ?イヒャヒャヒャヒャヒャヒャ♪」

 

 

……逃げられない。

 

 

「隠れても、隠れた場所を吹っ飛ばして、引き摺り出すからナ?」

 

 

……隠れられない。

 

 

「オイラはこの辺を彷徨いて待ってるから、アレ(・ ・)を持って、絶対来てくれよナ?

 そうだナ……前は海が大荒れだったから、お日様が出る日(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)遊ぼう(・ ・ ・)

 カンムスやニンゲンは、お日様が出る日が分かるんダロ?」

 

 

……天気予報のお陰で、大体の天気は分かる。

 次にお日様が出る日──晴れるのは、三日後(・ ・ ・)

 

 

……嫌だ。戦いたくない。

 

 

「もし、来なかったら──」

 

 

「由良さん!援護します!」

 

 

(初霜……さん……!)

 ダメ!来ちゃダメ!逃げて!

 けど、声が出せなかった。

 必死に声を出そうとしたけど、喉から出るのは、空気が漏れる音だけ。

 そうこうしている間に、海蛇(・ ・)は尻尾を初霜さんに向け、そして──

 

 

ユキノ(・ ・ ・)オトモダチ全部(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)を、こうするゾ♪」

 

 

 

 

 

 主砲(・ ・)を、初霜さんの()目掛けて発砲した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 直後、初霜さんの()から、真っ赤な花(・ ・ ・ ・ ・)咲いた(・ ・ ・)

 

 

 土砂降りの雨の中。視界は最悪なのに、何故か花が咲く(・ ・ ・ ・)光景が、ハッキリと見えた。

 

 

 それだけ、勢い良く(・ ・ ・ ・)花が咲いた(・ ・ ・ ・ ・)から、見えた。

 

 

 

 

 私は、それを呆然と見る事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

side 由良

 

 

───────

────

 

 

 

side 提督

 

 

──第603鎮守府、執務室──

 

 

大規模反攻作戦九日目。

09:00。

 

 

「……了解……しました……はい……はい……失礼します……」

………………ふざけるな。

 受話器を叩き付けたい衝動に駆られたが、必死に抑える。物に当たっても、結果が変わる訳じゃない。抑えろ。

 

「……提督、大本営は何と──」

 

「……日本の主要都市を護る、各地の大規模鎮守府(・ ・ ・ ・ ・ ・)が担当する海域に、大量の覚醒種(・ ・ ・ ・ ・ ・)が出現したから、その対応に追われて、増援を送れそうにない、だとよ」

 大本営本部の艦娘達や、外国から派遣されてきた航達も、全員がそれぞれの大規模鎮守府で対応しているから、無理らしい。

 

「そ、そんな!?」

 

「大本営は言葉を濁したが、俺達が護っている此処は、ハッキリ言ってド田舎。重要施設等が無いから、侵攻されてもそこまで日本の経済とかに影響が出ないから、切り捨てる、だとよ」

 実際にはそんな事言われていないが、俺にはそう聞こえた。だから、翔鶴にそう伝えた。

 それを聞いた翔鶴は目を大きく開けて驚き、すぐに怒りの表情を浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 第三目標の__海域を攻略する為に出撃して、一日が経った。

 結果は、失敗。

 理由は、覚醒種(・ ・ ・)レ級flagship改(フラレ改)が出現し、艦娘側に甚大な被害が発生した為。

 

 

 まず、向こう(第8492離島鎮守府)が攻略の為に出撃した24名全員が、中破以上の負傷(・ ・)をしてしまった。

 

 中破の娘は、フラレ改以外の深海棲艦に攻撃され、離脱した娘が11名。

 大破の娘は、13名。全員、フラレ改1隻に。たった1隻にやられた。その中には、川内と神通が含まれている。

 

(川内と神通が、アッサリやられるなんて……)

 向こうの最高戦力だぞ?それが、アッサリやられるなんて……。

 幸い、轟沈者(死亡者)は出ていない。

 

 

 次に、ウチ(第603鎮守府)の娘達だが、24名中、16名(・・ ・)が中破。7名(・・)が大破した。

 中破した娘は、フラレ改以外の深海棲艦にやられて離脱した娘だ。

 そして、大破した娘は、フラレ改に遊ばれて(・ ・ ・ ・)大怪我──全身複雑骨折をしてしまった。

 その大怪我を負った娘の中には、千歳さんも含まれている。

 

……冗談だと思うだろ?あの、千歳さんが、だぞ?

 現在、入渠を済ませて回復したが、身体に違和感がある(・ ・ ・ ・ ・ ・)為、安静にしている。

 

 言い忘れたが、負傷した(・ ・ ・ ・)娘達は全員、回復している。ただ、復帰にはまだ時間が掛かる。

 

 

 閑話休題。

 

 

「……どうすりゃいいんだよ」

 報告によると、ありとあらゆる攻撃が効かない。

 千歳さんの攻撃ですら、フラレ改にかすり傷を与えられなかった。

 

 考えても、考えても、良い案は浮かばない。それは、小嶋提督も同じだった。

 

(かなり落ち込んでいたな、小嶋提督……)

 電話で声を聞いたけど、何時もの覇気が全く無かった。

 それもそうだ。嫁さん達が、酷く痛め付けられたのだから。

 千歳さんから聞かされたが、川内と神通の二人は、フラレ改に手足を【自主規制】、達磨にされた(・ ・ ・ ・ ・ ・)そうだ。

 

 幸い、妖精さんの超技術、入渠液と高速修復材──通称・バケツのお陰で、一命を取り留め、元に戻り(・ ・ ・ ・)リハビリ(・ ・ ・ ・)を行っているそうだ。

……それにしても、達磨にされた、か。

……やべっ、想像したら、気分が悪くなってきた。

 

「提督、顔色が悪いですよ?」

 

「大丈夫だ、気にしないでくれ」

 いかん、翔鶴が心配そうな顔してる。しっかりしろ。

……内線が入った。取らなきゃ。

 

「こちら、執務室です」

 

……先に、翔鶴に取られた。だらしねぇぞ。

 

「……分かりました。伝えます」

 

「……なんだった?」

 予想はつく。

 

「……初霜さんの事です」

 

「……そう、か」

 初霜……どうして……どうして、あんな事に……。

 

 

 

 

 

 

 話が前後するが、昨日何が起きたか、詳しく話そうと思う。

 

 昨日、中破以上の負傷をした娘が複数出たと為、帰還すると報告を受け、すぐに入渠出来るよう準備を整えていると、急に無線が通じなくなった。

 何度もかけたが繋がらず、心配と不安に押し潰されそうになっていると、中破した娘達が帰還して来た。

 

 急いで入渠させ、再び無線を繋げようとしたが、全く繋がらない。夕張や妖精さん達に頼んで見てもらったが、ダメだった。

 

 まさか、轟沈(死亡)したのか!?

 最悪の事態を想像し、呆然としていると、千歳さん達全員が帰還したと、大雨の中、埠頭で待機していた翔鶴から報告が入った。

 

 どうやら甚大な被害を受けた為、千歳さんの判断で帰還する事にしたそうだ。

 良かった。そう思ったが、翔鶴の次の一言で、俺は錯乱した。

 

 

 『初霜さんが、意識不明の重体です』

 

 

 その言葉を聞いた俺は、気が付けば執務室を飛び出し、翔鶴達が居る埠頭へ向かって走っていた。

 土砂降りの雨のせいで、全身が濡れたが、気にならなかった。

 

 そして、埠頭に辿り着いた俺が見たのは、フラレ改の砲撃により、口と鼻を吹き飛ばされ、死んだ人のようにピクリとも動かない、千歳さんによって抱きかかえられた、初霜の姿だった。

 

 

「──提──」

 

 

 最初は夢だと思った。

 

 

「──督───提──」

 

 

 あまりの衝撃に、現実逃避してしまった。

 

 

「──督?───督!──」

 

 

 現実逃避している間に、夕張に代わって千歳さんと由良が、初霜の艤装を手際良く解除し、ストレッチャーに乗せて入渠室へ運んで行ってしまった。

 

 

 それを見た俺は、自室に引きこもってしまった。

……まぁ、すぐに翔鶴と瑞鶴がやって来て、活を入れられて(ノーザンライトボムされて)、元に戻れたんだけど──

 

 

「提督!!」

 

「……なんだ?」

 翔鶴が怒った声で俺を呼んでいる。思考を中断しよう。

 

「もう、しっかりしなさい!……初霜さんをどうするか、聞いているのよ?」

 

「……」

 

「……何時までも目を逸らさないで、事実を受け止めなさい」

 

「……分かった、受け止める」

 翔鶴が言ったが、何時までも目を逸らすわけにはいかない。しっかりと事実を受け止めなきゃならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フラレ改に顔の一部(・ ・ ・ ・)を吹っ飛ばされた事で、初霜のスイッチ(・ ・ ・ ・)が入り、ロックな思考・言動を一切隠さなくなり(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)、アグレッシブな性格になってしまった、という事実を。

 

 

「……初霜と少し、話をしてくる」

……初霜は死んだんじゃないのか、って?死んでないよ。生きているよ?

 お顔が凄い事になったけど、入渠して既に元通り。後遺症も傷跡も無く、元気に(・ ・ ・)騒いでいる(・ ・ ・ ・ ・)よ。

 

 初霜によると、フラレ改が砲撃する直前、波に足を取られ、バランスを崩し、イ○バウアーのような体勢になった事で、頭を吹き飛ばされずに済んだが、代わりに口と鼻を持ってかれて(・ ・ ・ ・ ・ ・)しまったそうだ。

 

……運良い(・ ・ ・)ね。今度、宝くじ買ってもらおう。当たる気がする。

 

……こんな時に、アホな事考えるな、だと?考えたくなるよ。

 

 

あんな初霜を(・ ・ ・ ・ ・ ・)見たら。

 

 

(正直言って、今の初霜と話をしたくない)

 以前は、多少ロックな思考・言動をしていたけど、今の初霜は、以前とは全然違う。

……一応、天使だったんだけどなぁ。どうしてああなった。

 

「……胃薬と白湯、用意しとくわ」

 

「……ありがとよ」

 常識人を捨てたつもりだったけど、シリアスな展開のせいで、常識人に戻ってしまい、胃袋と精神にダメージ受けるようになっちまった。

……ヤベー奴側になりたい。

……ダメだ。ヤベー奴側になってる暇は無い。初霜のケアと、由良のケアをしないと。

 

(由良は殆ど負傷していなかったが、心が壊れかけて(・ ・ ・ ・ ・)いる)

 詳細を話すと長くなるから、簡単に話すが、どうやら覚醒種(・ ・ ・)のフラレ改に見逃され(・ ・ ・ ・)、負傷しなかった。

 そして、フラレ改に後日、遊ぼう(・ ・ ・)と言われたそうだ。

 

 これらの出来事が原因で、由良の心が壊れかけている。

 今は千歳さんがケアしてくれたから、完全とは言えないが、元に戻ってくれた。

 けど、かなり不安定な状態だ。

 

 他にも色々説明したい事があるが、今はケアをする事が最優先だ。

 優先順位を決めて解決していかないと、取り返しのつかない事になるからな。

 

(とりあえず、由良よりも初霜がヤベーから、初霜からケアしよう)

……大本営のカウンセリング課に頼れば良いだろ?

 予約取ろうと電話したけど、患者でごった返してるから無理、って半ギレした声で言われた。

 だから、俺がケアする事になった。

 

……上手く出来るかな。

 

 

 

side 提督 out

 

 

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Another side 2

 

 

──大本営・技術課、?????──

 

 

「ほ、本当にコイツ(・ ・ ・)を運ぶんスか?」

 

「運ぶよ」

 ビビらないで?時間が無いんだ。ほら、早く準備して?

 

「で、出来ませんよ!無理っス!」

 

「あのなぁ……

 

 出来る、出来ないじゃない。

やるんだよ(・ ・ ・ ・ ・)

 

 

「──ッ!?りょ、了解っス!!」

 

……ごめんね?おっかない声出して。後でコーヒーとショートケーキご馳走するから、許して?

 

「……さて、枷を外す(・ ・ ・ ・)か」

 コイツ(・ ・ ・)が発する空気のせいで、クーラーのついていない此処が、とても寒い(・ ・ ・ ・ ・)

 此処の外は気温30℃超えてるのに、此処の中だけ氷点下行きそう(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)なんだよ?

 流石、Code:N(・・・・・)。いや、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

南方棲戦姫の魂(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)、と言うべきかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《…………………………。》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Another side2 out

 

 

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次回予告


……誰か、初霜止めて。猛獣用麻酔撃ち込んで。秋雲さん、これ以上あんな初霜を見たくないよ。
……ん?提督、どったの?突然叫んで。
……えっ?海蛇(・ ・)に対抗する手段が見つかった!?


第106話・反撃の兆し


「ぁぁぁぁぁあああああああああああああっっっっっ!!!!」」


【補足的なナニか】

・海蛇…2年前、ラバウルで、とある艦娘達(・ ・ ・)に沈められた、とあるレ級を指す。
 これ以上の情報は、現段階では公開不能。

・Code:N…大本営技術課の、とある場所に保管されている存在(・ ・)
 これ以上の情報は、現段階では公開不能。

以上、補足終了。
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