追跡鶴   作:EMS-10

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いつも通り訓練をして。
いつも通り出撃をして。
いつも通り演習をする。
執務を手伝ったりもした。
そんな毎日を送っていた。
変わらないのだと思っていた。
アレを見るまでは……。


※現在、活動報告にてアンケートを実施しています。よろしければご協力お願いします。


木曾

 

──4年10ヶ月前、江ノ島鎮守府──

 

 

「報告書だ」

 

「うむ、ご苦労」

 

先日の演習に参加したから、報告書に纏めて藤原准将に提出した。

正式に艦娘になってから、毎日が充実していた。

未だ出撃するより、演習や訓練をする方が多いのがアレだが……。

 

「木曾、鈴谷に報告書を出すよう、言ってくれないか?」

 

「了解だ」

鈴谷、まだ提出していなかったのか?おやっさん、少しキレてるぞ?

……ん?俺が何故、藤原准将の事を「おやっさん」と呼ぶのかって?男気溢れてて顔が厳ついからだ。

江ノ島鎮守府に来て少し経った頃、報告書を提出した際に思わず「おやっさん」って言っちまったんだよなぁ。怒られると思った。けど、「どうしてそう呼ぶんだ?」と聞かれたから、正直に答えた。そしたら、

 

『お前がそう呼びたければ好きにしろ』

 

苦笑しながらおやっさん呼びを許してくれた。ただ、そう呼んでいいのは、鎮守府内──出撃や演習の時は提督と呼べと言われた──だけにしろ、と注意された。

 

(見た目は怖いが、優しい人だ)

見かけで判断しちゃいけないな。今後気を付けよう。

さて、鈴谷を探しに行くか。

 

 

──────────────

 

 

──4年数ヶ月前──

 

 

「少将に昇進、おめでとうございます」

 

「ああ。ありがとう」

 

先日、深海棲艦の大規模な侵攻があり、それを撃滅した功績により、おやっさんは少将に昇進した。残念ながら俺は出撃させてもらえなかった。

 

(まだまだ、俺は弱い)

先輩達と一緒に訓練させてもらっているが、毎回ボコボコにされる。

 

(絶対、強くなってみせる!)

その為に毎日自主トレしたり、先輩達から戦い方や艤装の扱い方等を教わっている。

すぐに強くなんてなれない。だから、諦めずに努力するしか無い。

 

 

──────────────

 

 

──4年前──

 

 

「えっと、ここだったな」

先日、俺が出撃した際、大破した。幸い、入渠によって後遺症も傷跡も残らず完治したが。

 

(千歳さんのフォローが無かったら、死んでいた)

重巡リ級eliteに砲撃され、一撃で大破してしまった。意識が朦朧とし、身動きが取れなかった。そこをリ級eliteが再び砲撃しようとした時だった。千歳さんの艦爆隊によって救われた。

 

(甘いものが好き、って言ってたから、喜んでくれるといいんだが)

千歳さんにお礼がしたいとおやっさんに言ったら、甘いものが好きだと教えてくれた。ただ、俺が千歳さんの名前を出したら、おやっさんが怯えていた。何でだ?

 

(まぁ、後で聞けばいいか)

千歳さんの部屋に着き、ドアをノックする。反応は無い。留守なのかな?それとも、

 

(飲み過ぎてダウンしてるのか?)

昨日、千歳さんはお酒を飲んでいたからなぁ。もしそうなら、介抱してあげよう。

 

「千歳さん、木曾です。居ますか?」

一応、声をかける。無反応。もしかしたら、返事が出来ないほど酔っているのかもしれない。

失礼を承知でドアノブを捻る。鍵はかかっていないから、すんなり開いた。ゆっくりとドアを開けると、

 

 

素早くドアを閉める。見間違いかな?

 

 

(いやいやいやいやいや、落ち着け俺。落ち着くんだ。きっと、見間違いだ)

壁一面に一分の隙間無く貼られた写真と、床一面に置かれた人形なんて無い。見間違いだ。そうだ。そうに決まっている。

再びドアを開ける。

 

写真写真写真写真写真写真写真写真写真写真写真写真。

人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形。

胸にハートマークが描かれ、赤く塗られた針が心臓と思しき場所に刺さっている。

 

「はっはっはっ!」

笑うしかない。怖い。逃げよう。

ゆっくりドアを閉め、自分の部屋に戻ろうと振り返った。

 

 

「あらあら♪」

 

 

「」

満面の笑みを浮かべる千歳さんが居た。

 

 

……………………。

 

 

「……はっ!?」

お人形さん!写真!……あれ、ここ何処だ?

 

「気が付いたか?」

 

「おやっさん!?」

目を覚ますと、おやっさんが心配そうに俺を見下ろしていた。

 

「廊下で倒れていたと、千歳から連絡が来てな。大丈夫か?」

 

廊下で倒れ……千歳さん!

 

「千歳さんは何処だ!?」

逃げないと、ヤバい!

 

「……その様子を見るに、知ってしまったんだな」

 

あの、おやっさん?どうしたんだ?そんな、何もかも諦めたような、穏やかな顔して。というか、

 

「おやっさん、知ってたのか?」

千歳さんの部屋のこと、知ってるみたいな口調だな。

もしそうなら、もっと早く教えて欲しかった。

 

「……ああ。知っていた」

 

「……いつから、ああなったんだ?」

気になったから聞いてみよう。

 

「……かれこれ、ウン十年前からだ」

 

「」

数十年前から、って……手の施しようがないと思います。というか、

 

「千歳さんって、何歳なんですか?」

見た目、俺より少しだけ歳上に見えるけど、一体、今幾つなんだ?

 

「木曾深追いはやめろ女性の年齢はパンドラの箱だ決して開いてはならない忘れろ忘れるんだいいな?」

 

「お、おう」

真顔のまま、めっちゃ早口で言われた。どうやら触れちゃいけないみたいだ。考えるのはやめておこう。

 

 

 

 

──────────────

 

 

 

──3年前──

 

 

「おぉ〜、中将じゃん。やっるぅ!」

 

「鈴谷!そのような口の利き方は……」

 

「はっはっ、構わん」

 

鈴谷がおやっさんに軽い口調でそう言ったのを、熊野が注意した。しかし、おやっさんは気にしていないのか、構わないと言った。懐の深い男だ。

先日、敵棲地を殲滅した事により、おやっさんは中将になった。僅か数年で准将から中将になるとは、流石だな。

その為、江ノ島鎮守府に所属する艦娘全員で、食堂でおやっさんの昇進を祝っている。

 

「鈴谷がお酌してあげるね♪」

 

「頼む」

 

「鈴谷、そのような持ち方はマナー違反ですわよ?」

 

「えぇ〜、細かい事はいいじゃん。提督の昇格お祝いなんだし」

 

「熊野、気遣いありがとう。だが、そう固くならなくて良い」

 

「提督がそう仰られるのなら……」

 

相変わらず熊野はお固い。もう少し気楽に行こうぜ?

 

 

──────────────

 

 

──2年数ヶ月前──

 

 

「援軍?」

 

「そうだ」

 

秘書艦をしていると、おやっさんにそう言われた。

どうやら、江ノ島鎮守府の精鋭達が、最前線に援軍として向かうそうだ。残念ながら、そこに俺と鈴谷、熊野は含まれていない

 

「一ヶ月ほど、ここを留守にする。その間、木曾達に江ノ島鎮守府を任せたい」

 

「分かった」

それから、おやっさんに色々説明を受けた。

おやっさんが不在の間、大本営から代理の提督が来てくれる事。精鋭達が抜けた分を、近くの鎮守府──日本最強と呼ばれている横須賀鎮守府──がカバーしてくれる事。

 

「不安に思うかもしれんが、お前達なら大丈夫だ」

 

一通り説明をすると、微笑みながらそう言ってくれた。そこまで信用してくれるとは。なら、その信用に応えないとな!

 

 

──────────────

 

 

──2年前──

 

 

「……」

 

「……」

おやっさんと援軍に向かった精鋭達が此処(江ノ島鎮守府)に戻ってきて来た。一人も欠けることなく帰ってきてくれたが、おやっさんの顔はずっと険しいままだ。どうしたんだ?何度か聞いてみたが、「話せない」と言うばかり。だから、おやっさんから話してくれるまで聞かないことにしよう。

 

「また昇進したんだな」

 

「……ああ」

 

そう。おやっさんは大将に昇格した。しかし、ちっとも嬉しそうにしない。本当に何があったんだ?

そう思った時だった。近海に深海棲艦が出現したと報告が入った。

 

「待機組は速やかに出撃、近海に出現した深海棲艦を殲滅しろ!繰り返す────」

 

近海だから、グズグズしてると本土に攻撃される恐れがある。おやっさんは素早くマイクにスイッチを入れ、待機組に指示を出した。

俺は残念ながら待機組に含まれていないから、出撃出来ない。

 

「木曾、入渠槽の準備を整えてくれ」

 

「了解だ 」

万が一負傷した時に備えて、すぐに入渠槽を使えるよう準備を整えた。

 

 

───────────

 

 

──1年数ヶ月前──

 

 

「……平和をください」

 

「だ、大丈夫か?」

おやっさん、白目剥いて椅子に腰掛けてるよ……。

先日、千歳さんが荒れた。報告書を提出しに執務室に向かうと、扉の向こうからおやっさんの悲鳴と千歳さんの怒鳴り声が聞こえた。只事じゃないと思い、執務室に入ったら、見てしまった。

 

(千歳さんがタンスみたいな艤装を担いで、おやっさんを殴打しているなんて……)

一体、何があったんだ?

執務室に入ってその光景を呆然と見ていると、俺に気付いたのか千歳さんは大人しくなった。そして、そそくさと執務室を出て行ってしまった。マジで何があった?……うわぁ、おやっさんの顔に青アザ出来てるよ。

 

「木曾、君は何も見なかった。聞かなかった。いいな?」

 

「アッハイ」

聞きたい。何があったのか。でも、おやっさんは有無を言わさぬ空気を纏っていたから聞く事は出来なかった。

俺の他にも、騒ぎを聞き付け執務室に先輩達が来たが、全員「あっ、いつものか」と言ってすぐに去ってしまった。

……気になる。聞いてみよう。その前に、報告書を出さないと。

 

 

…………。

 

 

「あぁ、うん。アレね……うん。気にしちゃダメよ?」

 

「は、はぁ……」

先程執務室に様子を見に来た先輩の一人に聞いてみると、そう言われた。気にするな、って……。

 

「いつもの事だから、大丈夫よ。うん。大丈夫。気にしちゃダメ。絶対、深入りしちゃダメ」

 

「え、あの……」

どうしたんですか?目が虚ろになって身体が震えてますよ?

 

「木曾、好奇心旺盛なのは良い事だけど、千歳さん関連は決して突っ込んじゃダメよ?死ぬわ」

 

「死ぬんすか!?」

嘘だろ?そんなにヤバいのか!?

と、とりあえず、先輩がこう言うんだ。これ以上関わらない方が良さそうだ。

 

 

──────────────

 

 

──数ヶ月前──

 

 

「……」

 

「……」

 

「とぉ↓お↑おおおおおおおう↓!!!」

 

「…平和だなぁ」

 

「…平和だねぇ」

 

自主訓練を行い、休憩しながら鈴谷と会話をする。

目の前では、熊野が独特の雄叫び──本人は気合を入れた叫び声だと言っているが、俺は奇声だと思う──をあげながら砲撃訓練をしている。

 

「……千歳さん、怖い」

 

「あぁ。怖い」

あれから、千歳さんの恐ろしい姿を見たり、噂を聞いた。そのせいで、今じゃ出撃や演習、訓練の時以外は自分から近寄らなくなった。

 

(あの笑顔が恐ろしい)

パッと見、慈愛に満ちた笑みだが、色々見たり聞いたりしたせいで、恐ろしく感じるようになってしまった。

時々、夢に見る。その度、飛び起きる様になって寝不足になる事が……。

ちなみに、鈴谷も俺と似た経験があるそうだ。おかげで目の下にクマが出来てしまった。

 

「熊野のメンタルが羨ましい…」

あいつは、千歳さんの部屋や言動を見ても、ケロッとしている。それどころか、

 

『1人の殿方をそこまで強く想う。素晴らしいことですわ』

 

肯定しやがった。熊野、お前の心臓には毛が生えているのか?

 

「鈴谷も。熊野の様な鋼のメンタルになりたい…」

 

鈴谷、そんなゲンナリした顔するな。せっかくの可愛い顔が台無しだぞ。

……はぁ。相棒に会いたくなってきた。

最近、出撃が増えて養成所で過ごした連中と連絡取ってねぇなぁ。

 

(皆、元気にしてるかな?)

最後に連絡取ったの、いつだったっけ……。

……あ、熊野がこっち来た。休憩は終わりだな。

 

「んじゃ、次は俺がやる」

 

「あいよ〜」

 

さぁて、今日は主砲の射程ギリギリの的を撃つか。

いつまでも二軍に居るわけにゃいかないしな!

 

 

──数週間前──

 

 

「俺達が」

 

「異動?」

 

「そうだ」

 

ある日、おやっさんに呼ばれ執務室に行くとそう言われた。

おやっさんの顔は青アザだらけになってる。昨日、千歳さんが荒れた。原因は知らないが、その対応をしたせいで負傷したようだ。相変わらず、苦労してるんだな……。

 

「お前達は再来週、第603鎮守府へ異動してもらう。異論は認めない」

 

第603鎮守府って、相棒──渡良瀬提督──の居る鎮守府じゃないか!?

 

「マジで!?」

 

「お、おい、鈴谷」

今は真面目な話をしている最中だ。流石のおやっさんもキレるぞ?

 

「あぁ、マジ、だ」

 

……あれ、怒らなかった。それどころか、悪戯っぽくニヤリと笑っている。いつもなら、「今は真面目な話をしている!」と怒鳴ってくるのに。珍しいな?

 

(おっと、今は話をしっかり聞こう)

考え事するのは後だ。

それから、おやっさんに異動する理由や、異動先の住所について教えてもらった。

 

「そういうわけで、荷物を纏めてくれ」

 

「「了解!」」

鈴谷と俺が、相棒の居る鎮守府へ異動か。ははっ!ワクワクしてきた!

……ただ、熊野を一人、置いて行くのが心苦しい。寂しがるかな。

 

 

………………。

 

 

「あら、そうですの。二人とも、身体を壊さぬよう、気を付けてください」

 

「お、おう……」

夜。就寝前、熊野に俺と鈴谷が異動する事を伝えると、そう言ってきた。

 

(寂しがったりしてくれないのか?)

自惚れかもしれないが、熊野とは、そこそこ仲が良い筈。だから、異動すると聞いて寂しがったり嫌がったりするのかと思ったが、普段通りの微笑みを浮かべていた。

 

「二度と会えなくなるわけではありません。だから、寂しがったりなんてしませんわ。一人でも大丈夫です。だから、安心して異動してくださいな」

 

「熊野……」

そう、だよな。もう二度と会えなくなるわけじゃない。

 

「ただ、時々で良いので連絡をください」

 

「毎日沢山メールしてあげるから、覚悟しときな?」

 

「いや、流石にそれは迷惑だろ……」

鈴谷、気持ちは分かるが、それはやり過ぎだと思うぞ?冗談だよな?

それから、消灯時間が来るまで熊野と鈴谷、俺の3人は他愛ない雑談をした。

 

 

──────────────

 

 

「どうした、おやっさん」

異動まで、あと数日。荷物を纏め終え、いつでも異動出来る準備は整った。何となく江ノ島鎮守府内を彷徨いていた時だった。おやっさんから放送が入り、執務室に来るよう言われた。そして執務室に入ると、おやっさんがいつもの厳つい顔で俺を見つめてきた。

 

「来てくれたか。話があって呼び出した」

 

「話?」

俺、何がやらかしたか?ここ数日の記憶を辿るが、特に何もトラブルとかは起こしていない。書類も、全部期日内に提出してある。一体なんだ?

 

「あぁ、そう不安がるな。叱る為に呼び出したワケではない」

 

「お、おう……」

そうか。それなら安心だ。少しだけ緊張が解けた。

 

「単刀直入に言おう。木曾、君に第二次改装を施す」

 

「……はぁ!?」

今おやっさんは、なんつった!?第二次改装?マジか!?

 

「ふっ。驚くのも無理はない」

 

「あ……え……?」

すまん、未だ頭が追い付かない。第二次改装って、あの第二次改装か?

 

「言いたい事や聞きたい事が山ほどあると思うが、それは第二次改装を受けてからにしてくれ。ともかく、今は工廠へ向かってくれ」

 

「お、おう……」

マジで意味が分からん。ともかく、今はおやっさんに言われた通りにするか。俺は執務室を出て工廠へ向かった。

 

 

………………。

 

 

 

「木曾さん、待ってましたよ」

 

「明石さん……」

工廠へ行くと、青髪の女性、明石さんが既に工具を持って待っていた。

 

「ふふっ、緊張しているの?」

 

「あ、いや、その……」

緊張というか、未だ頭が追い付いていないというか……。とにかく、混乱している。

練度や艤装とのシンクロ率は既にソレを受けられる領域まで来ている。来ているが、何故今第二次改装を受けるんだ?

 

「大丈夫よ。すぐに終わるから。さあ、そこに立って?」

 

「は、はいっ!」

とにかく、今は第二次改装を受けよう。その後、おやっさんに聞けばいい。

俺は明石さんに指示された場所に立ち、第二次改装を受けた。

 

 

………………。

 

 

「接続、異常なし。これで…良し。終わったわ」

 

「あ、ありがとうございます」

あれから30分足らずで改装は終わった。どうやら、既に艤装は組み立てられていて、艤装と接続するだけだった。それにしても、

 

「すげぇ数の魚雷ですね」

そう。魚雷の搭載数が、今まで(第一次改装)と比べて倍以上に増えた。それ以外にも、装束が変わった。

 

(海賊みたいだな)

そう。マントを羽織い、サーベルを帯刀している。眼帯をしているから、本当に海賊みたいだ。

 

「えぇ。なんてったって、重雷装巡洋艦ですから」

 

「重雷装巡洋艦?」

確か、魚雷を通常の艦娘より多く搭載出来る艦種だ、って養成所で教わったな。

 

「はい。圧倒的雷撃火力を持つ艦種に改装しました」

 

「へぇ……」

それから、明石さんに色々説明を受けた。

雷撃火力だけでなく、艤装の性能──航行速度や旋回性能等──も大幅に向上した事。操作が複雑になった事。その他色々。

 

「さて、こんな所でしょうか。何か質問はありますか?」

 

「いえ、ありません」

一通り説明を受け、俺はそう答えた。

 

「了解です。では、試運転をしましょう」

 

「あっ、はい」

試運転か。上手く扱えるか?

……違うだろ。扱うんだよ!やるんだよ!弱気になるな!

艤装を纏ったまま、桟橋へ向かう。今までと違い重量が増えている筈だが、艤装の加護のお陰で、そこまで重く感じなかった。

 

(さて、やるぞ!)

ビビるな。落ち着いてやれば出来る。

 

『では、航行から始めてください 』

 

無線から明石さんの声が聞こえた。

 

「了解。球磨型軽巡洋艦五番艦木曾、改め、重雷装巡洋艦木曾、抜錨する!」

 

 

………………。

 

 

「問題は無さそうだな」

 

「あぁ。最高だ!」

試運転を終え、桟橋へ戻ると明石さんとおやっさんが居た。

試運転をした感想を聞かれ、最高だと答えた。今までより速く航行出来るし、小回りも利く。何より、雷撃火力が凄まじい。

 

「……さて、何故お前に第二次改装を施したか説明しよう」

 

「あぁ」

感想を言ったあと、おやっさんがそう言った。俺は黙ってそれを聞く。

おやっさん曰く、第603鎮守府は戦力を強化する必要があり、その為、俺に第二次改装を施したそうだ。

 

「本当は鈴谷にも第二次改装を施したかったが、色々あって施せなかった。理由はすまんが聞かないでくれ」

 

「分かった」

おやっさん、申し訳なさそうな顔をしている。聞かないでおこう。

 

「さて、艤装を解除して明石に預けてくれ。お疲れ様」

 

そう言うと、おやっさんは執務室に行ってしまった。

 

(さて、解除しますか)

艤装との接続を解除し、明石さんに預けた。

異動まで、あと数日。待ち遠しいな。

 

(相棒はどんな反応をするのやら)

きっと驚くだろうな。そうだ、今のうちに決めゼリフでも考えておくか。

 

(魚雷の押し売りに来たぜ……こんなんでいいか)

久々の再開だ。少しくらいカッコつけてもいいだろ。

 

 

──────────────

 

 

 

──異動当日──

 

 

「少々お待ちください」

 

第二次改装を受けて数日後。俺と鈴谷は第603鎮守府へ異動した。途中までは私服で移動──電車とタクシーで移動した──し、鎮守府正門まで行くと、養成所で共に過した早霜が出迎えてくれた。建物内に入り、格納領域から艦娘用の装束を展開し、私服から装束に着替えた。これで良し。

そして、俺と鈴谷は執務室の扉の前まで来た。

 

(少し緊張してきた)

隣に立つ鈴谷を盗み見ると、少しだけ顔が強ばっていた。どうやら鈴谷も緊張しているみたいだ。

 

「早霜です。本日着任された方達を、お連れしました」

 

……おっと、そろそろご対面だな。落ち着け。

早霜がゆっくりと扉を開き、入室した。俺達も早霜の後に続いて入室。

 

(少し痩せたな)

養成所で共に過した相棒が椅子に座って俺達を見ている。心做しか、やつれている気がする。

 

「ようこそ、第603鎮守府へ。俺はここの提督、渡良瀬だ。…久しぶりだな」

 

相棒がそう言った。そして、俺を見て驚いた顔をした。

 

「最上型重巡洋艦三番艦、鈴谷だよ。久しぶり!」

 

「久しぶりだな」

 

おっと、鈴谷が自己紹介を始めた。俺もしないとな。

 

「球磨型軽巡洋艦五番艦木曾改め、重雷装巡洋艦、木曾だ!

今の俺は、軽巡の頃と違って、魚雷の搭載数が桁違いだ」

 

……よし、噛まずに言えた。練習した甲斐があった。

おうおう、相棒の奴、益々驚いた顔してる。

 

「魚雷の押し売りに来たぜ、相棒!」

……決まった。

 

「あ、あぁ…」

 

……あれ、何この空気。もしかして、滑った?

やっべぇ、超恥ずい。いや、まだだ。まだ終わりじゃない!

 

「なんだぁ、そんな気の抜けた返事して。具合でも悪いのか?」

こ、これで良し。リカバリーは完璧だ!

その後、相棒と少しだけ会話をし、早霜に案内されて俺達の部屋に向かった。

 

(痛い娘扱いされたかな……)

不安だ。

 

 

──────────────

 

 

──第603鎮守府、現在──

 

「……さて、休憩は終わりだ。次は筋トレだ!」

 

「元気だなぁ」

 

「ほら、行くぞ!」

相棒にそう声をかけ、トレーニングルームへ向かった。

 

「はいよ」

 

…………。

 

「あら、木曾……それに、あなたも」

 

「よう、葛城」

トレーニングルームへ行くと、葛城が居た。どうやら葛城も自主トレしていたようだ。

 

(それにしても、くびれ凄いな)

養成所でも見たが、葛城は下半身がエロい。少しだけ羨ましい。

 

「よし、早速始めるぞ!」

 

「おう」

 

「あっ、私もやる!」

 

それから、3人でトレーニングをした。

……懐かしいな。養成所に居た時のことを思い出す。

 

「提督の汗だくシャツがあると聞いて」

 

「参上しました」

 

「お帰りください」

 

……おいおい、榛名、涼月、邪魔しに来たのか?

 

「ちょっと、邪魔しないでよ!」

 

葛城が二人に注意した。けど、二人は大人しく聞き入れる事は無かった。

仕方ない。

 

「相棒とのトレーニングを邪魔するなら、お仕置きだ!」

夕張から貰った、猛獣用麻酔弾をピー○ックスマッシャーに装填。狙うは、榛名と涼月。この距離なら、外さない。

 

「大人しく、おねんねしな!」

 

 

 

【Page:KISO_fin】

 

 

 

 





嘘だろ?麻酔弾が何十発も直撃したのに、何故眠らない!やめろ、来るな、来るなァァァァ〜〜!!!


※以上で木曾の過去編は終わりです。

※現在、活動報告にて過去編のアンケートを実施しています。よろしければご協力お願いします。

Q:木曾が話しかけた先輩艦娘って誰?
A:所謂、モブです。なので、明かしていません。

Q:明石の髪って、ピンク色じゃないの?
A:この小説では、適性のある人間が艦娘になる、という設定の為、同名の艦娘でも外見や性格が異なります。



【唐突な本編、第45話の嘘予告】


ついに来た!やっべぇ奴が、第603鎮守府に着任しやがった!

「扶桑型戦艦一番艦、扶桑です。よろしくお願いします、渡良瀬少佐♪」

よろしくしたくないです。でも言えない。言ったら首を撥ねられそうだから。

「提督さんから離れて!」

瑞鶴が来た!メインヒロイン来た!勝ち確定!

「五月蝿い鶴が一羽、居ますねぇ……」

あ、あの、扶桑さん?何を……

「捌いてあげます」

日本刀取り出しやがったよ!

「姉様は剣術を習っていたから、強いわよ」

山城、その情報早く教えて。

「あと、古武術も習得しているから、接近戦は滅茶苦茶強いわ」

うわぁい、知りたくなかった。

「違法建築は解体じゃオラァ!!」

おおっと、瑞鶴選手、扶桑選手にノーザンライトボムをぶちかましたァ!!!
扶桑選手、頭が床にめり込んだァ!!!

「……ふふっ、面白いじゃない」

なにィ!?扶桑選手、何事も無かったように立ち上がったァ!?

「首、持っているのでしょう?」

あ、あの、扶桑さん?

「首があるなら……」

あっ、僕の話聞いてくれない。逃げよう。

「その首置いてけえええぇぇぇぇぇ!!!」

ギャー!薩人マシーンと化しやがったァ!!!もうダメだ、逃げるんだ!

「逃がしません♪」

だがしかし、回り込まれてしまった。
瑞鶴ゥ!助けて〜!

「鶴は既に捌きました♪」

何してくれてんの君ィ!?……あっ、本当に捌かれてる。服だけ斬られてる。エロい(小並感)。

「さぁ、渡良瀬さん。邪魔者は居なくなりました。二人で【バキューン】しましょう♪」

お断りします!俺の初めては瑞鶴と決めてるの!

『やってくれたわね?』

……あっ、裏瑞鶴(仮名)だ。服は黒い道着?と、もんぺになってる。

「し、深海棲艦!?」

『いいえ、瑞鶴です』

「ウソだッ!」

うん。その気持ちは分かる。けど、本当だよ?彼女は深海棲艦じゃないよ?

「……渡良瀬さんがそう言うのなら、信じましょう」

おっ、素直に聞いてくれた。じゃあ、このまま俺の事も諦めて?

「だが断る」

クソァ!!

『今死ね!すぐ死ね!骨まで砕けろォ!!』

バ○バトス……じゃなかった、裏瑞鶴(仮名)が仕掛けたァ!?

「それを決めるのは、あなたじゃないのよ!」

やめてくれ、ミカァ!……じゃない、扶桑さん!

「『ぶるrrっrrrああああaaaaaあぁぁぁああああ!!!』」

二人とも、女性が出しちゃいけない声出してるゥ!どうすんの、これ!?どうなるの!?


追跡鶴第45話・薩人大和撫子、近日公開!


「心を手にしなきゃ、無意味よ」

ち、千歳さん?

「今だけ1番になっても、後々奪われるかもしれないわ」

何でハイライト消えてるの?ねぇ、ねぇ!?

※予告内容と本編は、異なる場合があります。ご了承ください。
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