追跡鶴   作:EMS-10

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※この小説に登場する人物達及び、妖精さん達、深海棲艦は全員、特殊な訓練を受けています。
 決して真似しないでください。

※この小説内の季節は、9月中旬頃となっています。



第110話・虹が降る海

 

『アツイ!身体ゲホッ!焼けル!痛イ!』

 

 無線から、悲鳴が聞こえてきた。

 悲鳴をあげているのは、艦娘達ではなく、あの海蛇(・ ・)だ。

 さっきまでの余裕が、全く無くなっている。

 

ISKZ-C弾(・・・・・ ・)の直撃を確認!』

『直撃した右腕が、溶けている(・ ・ ・ ・ ・)わ!』

百濃(・ ・)ISKZ-C弾(・・・・・ ・)、装填急げ!』

百濃(・ ・)ISKZ-C弾(・・・・・ ・)、装填完了!撃てッ!!』

 

 千歳さんと由良、長門さん、扶桑さんの声が聞こえてきた。

 その直後、砲撃音。そして──

 

『ギャアアアアアアアアアアアアア!!!?』

 

 再び、海蛇(・ ・)の悲鳴が聞こえてきた。

 効いている!

 

『なんなんだヨ!お前ラ!一体、弾に何を詰めタ!?

 臭いし、涙が止まらなイ!身体も溶けているし!!硫酸入り催涙弾カ!!?』

 

『カレーよ!』

 

 瑞鶴、教えなくていい。敵に手の内を明かすな。

 

『嘘ダッ!!カレーってのはナ!とっテも美味しい食べ物の筈だゾ!!!』

 

『何故知っている!』

 

 瑞鶴、お喋りするな。今は戦闘に集中しろ。

 

『ニンゲン達の船を襲った際、食べたカラ知ってル!!』

 

『そこッ!!』

 

『ウボァ!!?』

 

『川内、ナイス!』

『瑞鶴こそ、足止めありがとね♪』

 

……どうやら瑞鶴は、わざと海蛇(・ ・)と会話して注意を自分に引き付け、その隙に川内に狙撃させたみたいだ。

 

『あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!゙!゙!゙顔がァ!!オイラの顔がァ!!!』

 

『お代わりは、まだまだありますよ?』

『神通さん、装填完了したよ?』

『了解しました、阿賀野さん。撃ってください』

 

『ふざけるナッッッ!!!』

 

『穴という穴に流し込んでやるネー!』

『金剛さん、前に出過ぎ』

『山風さん、あなたも突出していますよ?』

 

『やめっ──ビャアアアアアアアアアア!!辛いいいいいィィィィィィイイイイイイ!!?』

 

『金剛さん!山風ちゃん!筑摩さん!あまり奴に接近しないで!危ないわ!!……聞いていない』

 

 千歳さんが金剛達に注意をしたが、どうやら戦闘に夢中で聞こえていないようだ。大丈夫なのか?

 

『換装完了!第二次攻撃隊、発艦!!!』

『カレーのシャワーを浴びせてあげる!!!』

『虹を降らす(・ ・ ・)わよ!!!』

 

……翔鶴と瑞鶴、大鳳が艦載機を発艦させたみたいだ。それも、かなりの数を。

 

『こっちも行くよ、蒼龍!!』

『オッケー!天城、龍鳳、用意はいい?』

『いつでも行けます!』

『私も、いつでも出せます!』

 

 飛龍と蒼龍、天城、龍鳳も艦載機を発艦させた。

 レシプロエンジンの音が、凄くうるさい。無線の音量を少し下げよう。

 

『ちょっ!?は!!?まさか、アレ全部、変な弾なのカ!!?ふざけるナ!!やめロ!!こんナノ、フェアじゃネェ!!!』

 

『アンフェアの塊みたいなお前が言うな』

 

ユキノ(・ ・ ・)!?そりゃネェよ!!!』

 

『黙りなさい。さっさと沈め。

……提督さん!そろそろアレ(・ ・)を使うわ!許可を!!』

 

「ああ。許可する」

……とうとう、アレ(・ ・)を使うのか。

 正直、不安だ。だが、濃縮していないISKZ-C弾(・・・・・ ・)を十数発。

 100倍濃縮(・・・・ ・ ・)したISKZ-C弾(・・・・・ ・)を数発直撃させても、直撃させた箇所を軽く溶かした程度(・ ・ ・ ・ ・ ・)のダメージしか与えられていない。

 なら、使うしかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 磯風カレーを1000倍に濃縮(・・・・ ・ ・ ・ ・)し、そこに色々ヤベー物(・ ・ ・ ・)投入した(・ ・ ・ ・)結果、生命を宿した(・ ・ ・ ・ ・ ・)未知の物質X(・ ・ ・ ・ ・・)を詰めた、ケミカルX弾(・ ・ ・ ・・ ・)を。

 

 

『お、オイ、ユキノ(・ ・ ・)……待てヨ。お前、ホントにソレ(・ ・)をオイラにぶち込む気カ!?

 せ、せめテ、普通の弾ニしてくれヨ?ユキノ(・ ・ ・)が持ってるオモチャ(・  ・ ・ ・)遊びたい(・ ・ ・ ・)んだヨ!そんナ邪道な物なんか使──』

 

『ほら、あ~ん♡』

 

『ゴボベブフォ!!?』

 

『美味しい?ほら、もっと味わいなさい♡味わって♡味わえ♡』

 

……由良、声が怖いよ。きっと、素敵な笑顔(・ ・ ・ ・ ・)で撃ち込んでいるんだろうなぁ。

 

『ほら、悶えていないで、上を見なさい?虹色の雨(・ ・ ・ ・)降る(・ ・)から♡』

 

『オマエら、ニンゲン(・ ・ ・ ・)じゃネェ!!?』

 

 

……海蛇(・ ・)、それには俺も同意する。が、容赦はしない。

 お前は危険な存在なんだ。さっさと消えてくれ(・ ・ ・ ・ ・)

 

 そう思った直後、爆発音が無線から聞こえてきた。

 どうやらISKZ-C弾(・・・・・ ・)を詰めた爆弾が、海蛇(・ ・)に降り注いだようだ。

 

『提督!今ので私達が用意したISKZ-C弾(・・・・・ ・)を使い切ったわ!あとは、由良さんと瑞鶴が持つケミカルX弾(・ ・ ・ ・・ ・)が4発!

 向こうの艦娘達が持つ5000倍濃縮(・・・・・ ・ ・)弾が10発のみよ!』

 

「了解!全員、海蛇(・ ・)を足止めしろ!由良と瑞鶴!!皆が海蛇(・ ・)を足止めしている隙に、確実に当てろ!!撃ち切ったら、5000倍濃縮弾(・・・・・ ・ ・ ・)を持つ川内と神通を援護しろ!!!」

 

『『『『『『了解!!!』』』』』』

 

 

 ISKZ-C弾(・・・・・ ・)と、百濃(・ ・)ISKZ-C弾(・・・・・ ・)を浴びて、海蛇(・ ・)はかなり弱っているが、まだ奴は動ける。

 

……上手くいってくれよ。当てる事が出来れば、倒せるかもしれないんだ。

 

 

 

 

───────

 

 

────

 

 

 

 

 

 

 

side 提督

 

 

──第603鎮守府、執務室──

大規模反攻作戦十一日目。

10:40。

 

 

 

「……分かった。丁重に(・ ・ ・)お詰めしろ(・ ・ ・ ・ ・)

……何とかなったか。

 

「……どうだった?」

 

協力してくれる(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)そうです」

 

「……そう」

 

「……とりあえず、大本営に報告しますね」

 とても信じられない事だけど、事実だからしっかり報告しなきゃ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 1000倍濃縮(・・・・ ・ ・ ・)した磯風カレーに、フグの肝。ドクツルタケ。タミフル。メタミドホス。ペッパー・X。その他、ヤベー毒多数。

 そして、妖精さん達がこっそり自生させていた、ド○ドキノコと、これまたこっそり作成していたネ○ュラガスを投入。

 

 ただでさえ1000倍に濃縮(・・・・ ・ ・ ・ ・)されたヤベー劇物(磯風カレー)に、様々なヤベー物を投入した結果、信じられない事に、劇物に(・ ・ ・)生命が宿った(・ ・ ・ ・ ・ ・)

 

 というか、どうやってモ○ハンの○キドキノコを作ったんだ?それに、ネビュ○ガスをどうやって再現した?とツッコミを入れたいが、「妖精さんなら仕方ない」で流す事にした。

 

 マジで一々ツッコミ入れるな。流せ。じゃないと精神が持たん。

 つーか、安易に妖精さん達にアニメや漫画、ゲームといった娯楽を与えない方が良いかもしれない。武器や物質(・ ・ ・ ・ ・)とかを、再現しようとする(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)し。

 

 

……話を戻す。

 

 何を馬鹿なことを。そう思うだろ?俺もそう思ったさ。けど、事実だ。

 んでもって、装置から極一部(・ ・ ・)が這い出てきて襲われそうになった。

 

「……大本営は信じてくれるかしら?」

 

「ちゃんと記録映像があるので、そいつを送れば嫌でも認めてくれますよ、きっと」

 千歳さん、今、説明中なんで、少し静かにしてください。

 

……説明を再開するぞ。

 襲われそうになったが、こっそり濃縮作業を覗き見していた、防護服とガスマスクを着けていない(・ ・ ・ ・ ・ ・)熊野さんが颯爽と現われ、俺達を助けてくれた。

 

 何故、覗き見していたのか。

 どうやら濃縮された磯風カレーを食べたかった(・ ・ ・ ・ ・ ・)らしく、隙を伺って、こっそり拝借する為に覗き見していたらしい。

 

……ツッコミ入れないぞ。

 

……さて。どうやって助けてくれたか。

 勿体ぶらずに言うぞ。食べやがった(・ ・ ・ ・ ・ ・)

 もう一度言うぞ。食べやがった(・ ・ ・ ・ ・ ・)

 

 俺と千歳さん、野原主任に向かって飛びかかってきた、1000倍濃縮(・・・・ ・ ・ ・)+‪αを入れられた磯風カレー。以降、ケミカルX(・ ・ ・ ・・)(千歳さん命名)と呼称する。

 そのケミカルX(・ ・ ・ ・・)食べやがった(・ ・ ・ ・ ・ ・)事で、俺達は九死に一生を得た。

 

 もうね、信じられなかったよ。濃縮していない磯風カレーでさえ、食べれば約1ヶ月、生死の境をさ迷うと言われているのに。

 それの1000倍濃縮(・・・・ ・ ・ ・)+‪αを食ってピンピンしているなんて。しかも、「中々イケますわねぇ♪」って喜んでいたし。

……熊野さん、あなた、本当に人間ですか?もしかして、地球外生命体なんじゃない?

 

……やめろ。ツッコミ入れるな。流せ。考えるな。感じろ。

 

 閑話休題。

 

 まぁ、色々あったが、熊野さんが這い出てきた極一部(・ ・ ・)ケミカルX(・・・・ ・)食べた(・ ・ ・)事で、装置の中に残っていたケミカルX達(・ ・ ・ ・・ ・)は沈静化。

 

 どうやらケミカルX(・ ・ ・ ・・)は、食べてもらえず(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)オモチャ扱い(・ ・ ・ ・ ・ ・)された事に激怒し、俺達に襲いかかってきたらしい。ケミカルX(・ ・ ・ ・・)本人(・ ・)がそう言ってきた(・ ・ ・ ・ ・)

 

……ツッコミ入れないよ?入れたら負けだ。

 

 閑話休題。

 

 その後、熊野さんに頼んでケミカルX(・ ・ ・ ・・)を必死に説得・交渉してもらい、先程内線で協力してくれる事を確約してもらえた、と報告が入ってきた。

 なので、急いで弾に詰める作業を開始するよう、指示し、今に至る。

 

……これ以上考え事している暇は無い。さっさと大本営に報告しないと。

 えーと、「磯風カレーを1000倍に濃縮(・・・・ ・ ・ ・ ・)し、+‪αを入れたら意志を持った」「それを江ノ島鎮守府所属、最上型重巡洋艦四番艦、熊野の適性者は、食べる事が出来る」。

 

 他にも色々書いて……こんなんでいいか。

 あと、記録映像のデータも入れて──これで良し。どんな返事が来るのだろう?

 

(怒られたらどうしよう?)

……まぁいいや。その時はその時。頑なに認めようとしないのなら、ケミカルX(・ ・ ・ ・・)御本人の一部(・ ・ ・ ・ ・ ・)を送りつければいい。

 

 

 

 

 

 

 

 十数分後。大本営から返事が来た。

 内容は、虚偽の報告をするな、という物だった。

 なので、ケミカルX(・ ・ ・ ・・)御本人の一部(・ ・ ・ ・ ・ ・)速達(・ ・)プレゼント(・ ・ ・ ・ ・)してやった。

 御本人(・ ・ ・)を見れば、否が応でも認めるだろう。

 

 

………………。

 

 

──第603鎮守府、談話室──

13:30。

 

 

「ちくしょう……ちくしょう!」

 

「ギャハハハハハ!!少佐、やりますねぇ!!頭の固いジジイ共(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)もとい、信じようとしなかった一部のお偉いさん達に嫌がらせ(・ ・ ・ ・)するなんて」

 

「信じようとしないから、証拠を送りつけたのに。そりゃねぇよ……」

 野原主任、あんまりデカい声で笑わないでください。鼓膜が痛いです。

 

 大本営にケミカルXの一部(・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・)を送りつけて約1時間後。

 大本営から「虚偽の報告ではなく、事実と認める」と返事が来た。

 それだけなら良かったんだが、「被害が出た為、三ヶ月の減給処分とする」と言われてしまった。

……泣けるぜ。

 

「下手したら、もっと重い処分が下っていたのかもしれないのよ?」

「そうだよ。提督の資格を剥奪されなかっただけでも、良しとしようよ?」

 

「……確かにそうだな」

 談話室に設置されたテーブルに突っ伏して嘆いていると、翔鶴と瑞鶴が慰めてくれた。

 

 大本営によると、ケミカルX(・ ・ ・ ・・)を開封した建物──技術課の一部が、少しだけ溶ける被害が出てしまったそうだ。

 幸い、技術課に居る妖精さん達がすぐに封じ込めたからか、被害は拡大しなかった。

 

 余談になるが、翔鶴が言った通り、もっと重い処分が下る予定だったが、「頑なに信じようとしなかった我々(大本営)が悪い」と、お偉いさんの一人が擁護してくれた為か、三ヶ月の減給処分で済んだらしい。

 勿論、減給処分を受けるのは、俺だけだ。

 擁護して下さったお偉いさん、本当にありがとうございます。

 

 

 

 

「」

「す、鈴谷!しっかりしろ!?」

「鈴谷さん、だいじょ~ぶ?」

「文月、私も具合が悪くて元気が無いから、頭をナデナデしてくれないか?」

「長門さん、あなたは健康体そのものだから、ナデナデされる必要はありません」

「長門さん、キモいっぽい」

「とっとと捕まってください。いや、捕まれ(・ ・ ・)、ロリコン」

「(`0言0́*)<ヴェアアアアアアアアアアア!!!!」

 

 

(長門さん、叫ぶな。うるさい)

 それにしても、長門さんの声って、本当、佐○綾音さんに似ているなぁ。ラ○ットハウスに下宿する女子高生の断末魔そっくりだよ。

 

……何が起こっているか、気になるだと?いいぜ、説明してやる。

 

 実妹(・ ・)ケミカルX(・ ・ ・ ・・)を食べても、平然としている化け物と判明した事がよほどショックなのか、FXで有り金全部溶かした人みたいな顔をし、微動だにせず椅子に座った鈴谷を、那智さんと文月が励ましていた。

 

 ちなみに、現在進行形で鈴谷の実妹(・ ・)──熊野さんは、防護服とガスマスクを一切着けずに(・ ・ ・ ・ ・ ・)平然としたまま(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)、野原主任や妖精さん達と一緒にISKZ-C弾(・・・・・)を製作している。

 何も言わない。ツッコミも入れない。

 

 閑話休題。

 

 それだけなら良かったが、文月が鈴谷の頭を撫でて元気づけていたら、それを見た長門さんが、アブナイ(・ ・ ・ ・)顔で文月に自分の頭を撫でるよう、頼みだした。

 しかし、すぐさま吹雪がツッコミを入れ、夕立が追撃。

 そして、スイッチの入った(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)初霜(・ ・)がトドメを刺した。

 

……初霜。どうしてああなっちゃったんだ?君はとっても良い子(・ ・ ・)で、暴言なんて吐かなかったのに。

 

(原因は分かっている。海蛇(・ ・)のせいだ)

 奴に顔の一部を吹き飛ばされた事で、ハジケ(・ ・ ・)るようになってしまった。

 

 医療妖精さんの診察結果によると、言葉に出来ない程のストレスと、死の恐怖を味わったせいか、精神が壊れそうになっているそうだ。

 なので、精神を壊さない為。精神を護る為、あのような言動を取るようになってしまった。

 

……無事、大規模反攻作戦が終わったら、大本営のカウンセリング課に連れて行って、橿原(かしわばら)先生に診てもらおう。

 あの先生なら、きっと何とかしてくれる。今のうちに予約取っておこう。

 

(おのれ、海蛇(・ ・)ウチ(第603鎮守府)の天使を堕天させやがって)

 覚悟しろ。お前に嫌という程、ケミカルX(・ ・ ・ ・・)を食わせてやる。

 泣き喚こうが、命乞いしようが、慈悲も容赦もなく食わせてやる。

 今のうちに祈っておけ。

 

 

 

………………。

 

 

 

──第603鎮守府、会議室──

大規模反攻作戦十二日目。

01:00。

 

 

 本日の天気、雨のち晴れ。気温26℃。湿度80%超え。

 現在、雨が降っているが、昨日と比べれば明らかに雨足が弱まっている。

 予報では、05:00頃には晴れると言っていた。

 

(……そろそろだな)

 時計を見ると、予定時刻になった。

 

「……時間だ。全員、準備にかかってくれ」

 

「「「「「「了解!!」」」」」」

 

 

 全員が真剣な表情で返事をしてくれた。

 昨日までの、だらけた雰囲気は一切無い。

 

 

(いよいよ始まる。しっかりしろよ、俺)

 皆に緊張している事を悟られないよう、ゆっくりと息を吸い、吐いて心を落ち着ける。

……よし。行くぞ。

 

 

…………。

 

 

──第603鎮守府、執務室──

 

 

「……分かった。予定通り、出撃してくれ」

 艤装の状態と武器・弾薬、燃料。ガスマスク(・ ・ ・ ・ ・)の用意と、艦娘達のバイタルチェックが完了し、異常は無かったと内線で報告を受けた俺は、そう指示した。

 

 そして、全員が向こうの艦娘達と合流する為、__海域へ向けて出撃するのを、執務室の窓から確認。

……全員、無事に帰ってきてくれ。

 

 

 

 

 

 

 今回の作戦は、__海域に居る覚醒種(・ ・ ・)。レ級flagship改。別名、海蛇(・ ・)を殲滅する事が目的だ。

 

 昨日、小嶋提督から報告を受けたが、向こう(第8492離島鎮守府)の偵察部隊が偵察した所、__海域周辺に深海棲艦は海蛇(・ ・)を除いて、1体も確認されていないそうだ。

 これなら横槍を入れられず、海蛇(・ ・)に集中する事が出来る。

 

(けど、増援が絶対に来ないという保証は無い)

 それに、運良く海蛇(・ ・)お片付け(・ ・ ・ ・)されずに生き残った深海棲艦達が、鎮守府に攻めてくる恐れがある。

 

(防衛・警戒も疎かに出来ない)

 文字通り、何が起こるか分からない。警戒しなければ。……ノックされた。

 

「誰だ?」

 

『野原です。例の件(・ ・ ・)を伝えに参りました』

 

「入ってください」

 入室を促すと、野原主任が入室してきて、内線では話せなかった、Code:N(・・・・・)と接続した由良の詳細なデータ──バイタルデータが記録された端末を見せてきた。

 報告で聞いたが、何も異常は起きていない。良かった。

 

「肩に力が必要以上に入っていますよ、少佐。リラックスしてください」

 

「……分かりました」

 確認を終えて一息ついていると、野原主任に注意されてしまった。自分じゃ、リラックスしているつもりだったんだが。

 

「緊張するのは仕方ない事ですが、必要以上に緊張すると、いざという時、しっかり反応して行動出来ません。大丈夫、出撃してくれた艦娘達を信じましょう?」

 

 普段のふざけた雰囲気は一切無い、真剣な顔と声でそう言ってきた。

 

 

……何故、野原主任がまだ第603鎮守府に居るかって?Code:N(・・・・・)があるからだ。

 アレは、機密の塊みたいな存在(・ ・)だから、届けてはい終わり、という訳にはいかないそうだ。それだから、無事海蛇(・ ・)を殲滅させるまで、第603鎮守府に居続けるそうだ。

 

 

 閑話休題。

 

 さて。今更だが、今回海蛇(・ ・)を殲滅する為に出撃してくれたメンバーを紹介しようと思う。

 

 まず、海蛇(・ ・)と近~中距離で砲雷撃戦を行う第一艦隊。

 旗艦・長門さん、扶桑さん、那智さん、熊野さん、由良、夕立。

 

 次に、海蛇(・ ・)の艦載機を抑える第二艦隊。

 旗艦・千歳さん、翔鶴、瑞鶴、大鳳、吹雪、涼月。

 

 続いて、第一・第二艦隊の支援及び、負傷者の護送を行う第三艦隊。

 旗艦・能代さん、榛名、足柄、阿武隈、文月、五月雨。

 

 最後に、鎮守府の防衛を行ってくれる第四艦隊。

 旗艦・山城、鈴谷、摩耶、矢矧、秋雲、満潮。

 

 

 以上、24名だ。

……本当は初霜を第三艦隊に入れる予定だったんだけど、「海蛇(・ ・)を【自主規制】してやる!」と、極度の興奮状態に陥り、俺や皆の指示を冷静に聞いてくれなくなった為、出撃メンバーから外した。

 

 現在、自室に待機させているんだけど……うん。ハッスル(・ ・ ・ ・)しまくってて手が付けられない状態になっている。

……気は進まないけど、後で少しだけ様子を見に行こう。

 

 それと、加賀さんだが……磯風カレーの臭いにやられて、体調不良の為、自室に待機。療養してもらっている。

 なんか……すみません。後で見舞いに行きます。

 

 

 閑話休題。

 

 最初は第一~第四艦隊の24名を、海蛇(・ ・)が指定した海域に向かわせて戦ってもらう予定だったが、千歳さんと由良から「数が多ければ勝てる相手ではない」「逆に人数が多いと、海蛇(・ ・)に利用されてしまう」と言われた為、こうなった。

 

 勿論、向こう(第8492離島鎮守府)には通達済みだ。

 

 

……おっと。向こうの出撃メンバーの紹介がまだだったな。

 

 まず、第一艦隊。役割はさっき俺が説明した通りだから、割愛させてもらうぞ。

 旗艦・神通、川内、金剛、筑摩、阿賀野、山風。

 

 次に、第二艦隊。

 旗艦・飛龍、蒼龍、天城、龍鳳、朝潮、霞。

 

 最後、第三艦隊。

 旗艦・利根、高雄、愛宕、鬼怒、江風、浜風。

 

 

 以上、18名だ。

 本当は別のメンバーで出撃させる予定だったが、磯風カレーを5000倍に濃縮(・・・・・ ・ ・)した影響で、出撃予定の娘達が体調不良になった為、このメンバーになったそうだ。

 

……流石に我慢出来ないから、ツッコミ入れさせてもらう。

 

 なんだよ!5000倍に濃縮(・・・・・ ・ ・)って!!意味分かんねぇよ!!

 つーか、よくそこまで濃縮出来たな!!?流石、精鋭鎮守府。設備が充実しているから造れたのか!!?

 

……よし。ツッコミ入れるの終わり。もっとツッコミ入れたいが、これ以上は時間の無駄だからやめておこう。

 

 閑話休題。

 

(頼みの綱の一つ、ISKZ-C弾(・・・・ ・)は全部で35発)

 内、20発は濃縮していない磯風カレーを入れた弾。

 残りの10発は、100倍に濃縮した磯風カレーを入れた弾。

 そして、あとの5発は1000倍に濃縮(・・・・ ・ ・ ・ ・)+‪αを入れた、ケミカルX弾(・ ・ ・ ・・ ・)

 ウチが用意出来たのは、たったの35発。無駄撃ちは出来ない。

 

 ちなみに、向こうは濃縮していないISKZ-C弾(・・・・ ・)を150発。

 100倍濃縮したISKZ-C弾(・・・・ ・)が50発。

 そして、5000倍に濃縮(・・・・・ ・ ・)したISKZ-C弾(・・・・ ・)を10発。

 計210発も用意出来たそうだ。

 

……これなら、倒せるんじゃね?

 一応、全て当てても倒せなかった時の為に、現在進行形で妖精さん達に、ケミカルX(・ ・ ・ ・・)を造ってもらっているけど──内線だ。

 

「こちら、執務室──」

 

 

『メーデー!メーデー!メーデー!妖精さん達が!妖精さん達が10000倍濃縮(・・・・・・ ・ ・)に挑戦!!装置が──ぎぃぃぃやあああああああああッッッ!!?』

 

 

「夕張イイイイイイイイイイイイッッッ!!?」

 おィイ!!?夕張がとんでもない断末魔をあげたぞ!!?それに今、とんでもない単語が聞こえたぞ!!?何やってんのォ!!?

 

「……渡良瀬少佐。自分が様子を見に行ってきます。

 少佐はここに残ってください。今、あなたが倒れたら、指示を出せる人が居なくなってしまいます」

 

「の、野原主任……」

 すみません、お言葉に甘えさせて頂きます。

 

 俺は椅子から立ち、無言で敬礼をした。

 そして、それを見た野原主任も、敬礼を返してくれた。

……死なないでくださいね?

 

 

 

side 提督 out

 

 

───────

────

 





次回予告


 ウゲェ……ダメだ。身体が溶けていル。もう、長くないナ。
……ハハッ。沈ム……。
……ん?この気配。まさカ……イヒャヒャヒャヒャ!間違いなイ!!
 ずっと昔(・ ・ ・ ・)に、オイラが壊した(・ ・ ・)カンムスの気配にそっくりダ!!
 確か、60年近く前(・・・ ・ ・ ・)だったかナァ?また会えるなんテ。

 久しぶりじゃないカ、ズイカク(・ ・ ・ ・)
……いヤ。フカミ(・ ・ ・)、と呼ぶべきカナ?イヒャヒャヒャヒャ!!!


第111話・因縁


「お前が……私を殺した(轟沈させた)、深海棲艦……なの?」


【補足的なナニか】

・ペッパー・X…世界一辛いと言われる唐辛子。その辛さは、キャロライナ・リーパーの約2倍と言われている。
 生食すると命に関わる危険性がある。
 ちなみに、身体に掛かると、どの部位でも焼けるような激痛が走るらしい。

・ドキドキノコ…「モンスターハンター」シリーズに登場するキノコが元ネタ。アイテムの一つ。
 食べると、ランダムで様々な効果を発揮する。効果は食べる度に変わり、プラスもあればマイナスもある。

・ネビュラガス…「仮面ライダービルド」に登場する「物質」が元ネタ。

・ケミカルX…「パワーパフガールズ」に登場する「物質」が元ネタ。

以上、補足終了。
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