追跡鶴   作:EMS-10

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 磯風。君をネタにした事は謝る。だから、4人もドロップしないで……許して……。



※警告※
グロテスクな描写有り


※この小説内の季節は、9月中旬頃となっています。



第111話・因縁

 

side 提督

 

 

──第603鎮守府、執務室──

大規模反攻作戦十二日目。

03:30。

 

 

「……野原主任、大丈夫ですか?」

 内線で報告してきた野原主任にそう声をかけた。すると、

 

『……州子(・ ・)さん──あー、秋津洲の適性者に襲われるのと比べれば、まだまだ楽(・ ・ ・ ・ ・)だったけど、疲れました……』

 

「……本当にお疲れ様です」

 うわぁ。めっちゃ声が掠れてて今にも死にそうだ。

 

 

 

 内線で夕張から救助要請(メーデー!)を受けて、俺の代わりに工廠に野原主任が向かってくれてから、約2時間が経過した。

 

 野原主任の報告によると、工廠へ向かうと、妖精さん達によって夕張は気絶させられていた。

 

 何故気絶させられたのかって?俺に救助要請をしたかららしい。

 なんでも妖精さん達は、「俺に内緒で限界に挑戦し、驚かせたかったから」秘密にする為、救助要請した夕張を工具で殴って気絶させたそうだ。

 

……ツッコミ入れないぞ。

 

 閑話休題。

 

 気絶した夕張を救助した後、野原主任は10000倍(・・・・・ ・)に濃縮した磯風カレーの精製を止める為、暴走した妖精さん達と死闘を繰り広げたそうだ。

 その際、妖精さん達にタコ殴りにされたが、常に持ち歩いている折り畳み式万能バール(・ ・ ・ ・ ・)で応戦。見事、精製を止める事に成功した。

 

 そして現在。野原主任は万能バール(・ ・ ・ ・ ・)を構えながら、妖精さん達がバカな真似をしないよう、監視をしてくれている。

 

……あなた、本当に人間(・ ・)ですか?あの妖精さん達に勝てるなんて、すげぇよ。

 とりあえず、妖精さん達には、暫く甘味抜きの罰を与えよう。慈悲は無い。

 

『それにしても、此処(第603鎮守府)の妖精さん達、強いっスねぇ……。それに、ノリが非常に良い。

 何人かスカウトして、技術課にお招きしたい位です』

 

「やりませんよ?」

 トラブル起こしまくるけど、ウチ(第603鎮守府)を支えてくれている存在なんだ。幾ら頼まれようが、金を積まれようが、渡しませんよ?

 

『冗談ですよ、冗談──おいコラ!そこ!何しようとしてんだ!?やめろ!!』

 

 冗談に聞こえなかったぞ。そう思っていたら、突然野原主任が叫んだ。何か起きたんだな。

 

『くそっ!少し目を離した隙に、また万濃(・ ・)を始めようとしやがった!すみません、少佐!失礼します──うおッ!?』

 

「野原主任!?」

 大丈夫ですか!?

 

<チッ、気付かれた!

<囲め囲め!

<数で攻めろ!

<もらったァ!!

 

 

ところが(・ ・ ・ ・)ぎっちょん(・ ・ ・ ・ ・)!!!』

 

 

……妖精さん達の物騒な言葉と、野原主任が何処ぞの戦争屋みたいな奇声(・ ・)をあげたのとほぼ同時に、金属同士がぶつかり合う音が聞こえてきた。戦っているみたいだ。

 

<貴様のその歪み、俺が断ち切る!

 

『ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!ま、やるんなら本気でやろうか!その方が楽しいだろ!

……見せてみな、お前達の力をさ』

 

……あ、内線が切れた。

 気になるが、今執務室から離れる事は出来ない。ここは野原主任を信じて、任せよう──無線が入った!

 

「こちら、提督だ」

 慌てて無線を取り、時計を見ると、向こう(第8492離島鎮守府)の娘達と合流する__海域に到達していい時間になっていた。

 しかし、もしかしたら、深海棲艦と遭遇した報告かもしれない。

 

『こちら、長門だ。道中、深海棲艦とは遭遇せず、__海域にて第8492離島鎮守府の艦娘達と合流した』

 

「了解しました。予定通り、__海域へ向かって下さい」

 どうやら、道中で深海棲艦とは遭遇せず、無事合流地点に到達したようだ。

 

 長門さんからの報告を聞き、指示を出すと無線は切られ、執務室は静寂に包まれた。

 

(……次に無線が入るのは、深海棲艦と遭遇した時か、目標地点に到達した時だ)

 緊張してきた。

 

 幾ら、以前海蛇(・ ・)を倒せたCode:N(・・・・・)と、覚醒種(・ ・ ・)を溶かせるISKZ-C弾(・・・・・ ・)があっても、倒せない可能性がある。

 

……信じろ。Code:N(・・・・・)と、ISKZ-C弾(・・・・・ ・)を。そして、皆を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 約2時間後。再び無線が入り、長門さんから目標地点である__海域に到達したと、報告を受けた。

 いよいよ始まる。

 

 ふと、窓から外を見ると、何時の間にか雨は止んでいた。

 

 

 

side 提督 out

 

 

───────

────

 

 

side ?????

 

 

──__海域──

05:30。

 

 

 

『……こちら、千歳。敵を発見。座標、__。距離、約70,000m。

 艦種は、戦艦レ級flagship改。敵の数は1。

……()よ。既に気付かれているわ。

 総員、戦闘用意!空母艦娘は、ありったけの艦戦を出して!』

 

 千歳(・ ・)の指示が、無線から瑞稀を通して(・ ・ ・ ・ ・ ・)聞こえてきた。

 それを聞いた瑞稀(・ ・)は指示通り、艦戦の発艦準備を始めた。

 他の艦娘達も、ブリーフィングで決めた通り、行動を開始した。

……いよいよ始まる。

 

 ブリーフィングで何度も()や、()と戦った艦娘達から聞かされた、砲雷撃・航空攻撃、近接攻撃が効かなかった、規格外の化け物。

 

 最初聞いた時、信じられなかった。

 けど、皆から話を聞き、記録映像を見て、事実と認めざるを得なかった。

 

 何故そんな深海棲艦が存在するのか。

 色々知りたい事が山ほどあるけど、機密らしく、詳しく教えてもらえなかった。

 

……釈然としないけど、機密なら仕方ない。好奇心は猫を殺す。必要以上に首を突っ込むのは、やめておこう。

 

 閑話休題。

 

 そんな相手と戦う。間違いなく激戦になる。

 正直言って、戦いたくない。逃げたい。けど、逃げるわけにはいかない。

 だって、逃げたら()に攻められ、私の。ううん。私達の(・ ・ ・)居場所(第603鎮守府)を失う恐れがある。

 だから、戦う。私達の居場所を護る為に!

 

 

 

………………。

 

 

 

「本当に、攻撃が効いていない!?」

 

 

瑞稀(・ ・)、怯んでいる暇は無いわ。

 とにかく今は通常の爆弾(・ ・ ・ ・ ・)で牽制をして、第一艦隊の皆がISKZ-C弾(・・・・・ ・)を確実に当てられるよう、隙を作りなさい》

 

(了解よ!)

 

 心の中で瑞稀(・ ・)に語りかけると、冷静になってくれた。

 

……それにしても、ブリーフィングで聞かされたけど、こうして実際に目にすると、結構ショック受けるわね。

 

 今までの深海棲艦なら、あっさり沈んでいるのに、目の前のレ級は、何十発も航空攻撃による爆撃・雷撃を受けているにも関わらず、傷一つ付いていない。どんだけ頑丈なのよ!

 

『艦載機を出してきたわ!迎撃用意!』

 

 無線から千歳(・ ・)の怒鳴り声が聞こえてきた。また?

 

《どんだけ搭載しているのよ!?》

 もう200機以上墜としているのに、まだ出すの!?

……愚痴っている暇は無い。

 

 こちらには空母艦娘が8人も居るのに、制空権は未だ確保出来ていない。

 ()は艦載機の搭載数だけでなく、操作技術も非常に高い。

 そのせいで、戦闘開始から十数分で、半分以上も撃墜されてしまった。このままじゃ、こちらの艦載機が全滅してしまう!

 

《第一艦隊は──良し!射程圏内に入った!》

 

 レーダーで位置を確認すると、第一艦隊の皆が()の航空攻撃を掻い潜りながら、射程圏内に入った。

 

ISKZ-C弾(・・・・・ ・)、装填完了!総員、ガスマスクを装着しろ!!』

 

「了解!」

 

 長門から指示が来た。いよいよアレ(・ ・)を使うのね?

 瑞稀(・ ・)や他の艦娘達は、熊野を除いて(・ ・ ・ ・ ・ ・)急いでガスマスクを装着し、劇物の放つガス(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)に備えた。

 

『ン~?どうした、どうしたァ?お面(・ ・)ナンカ被っちゃっテ。仮装パーティー(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)でも始める気かァ?』

 

 私達がガスマスクを装着すると、()は小馬鹿にするように、ニタニタ笑いながらそう言ってきた。

 余裕をかませるのは、今のうちよ。

……もし、効かなかったら、どうしよう?

……いいえ、信じましょう。磯風カレーの力を。

 

『距離、速度、風速、湿度、良し。主砲、斉射!!』

 

 無線から長門の勇ましい声が聞こえてきた。それと同時に、轟音。更に、発砲炎と爆煙が主砲から吐き出されたのが見えた。

 長門だけじゃない。扶桑と金剛も発砲した。

 

()は私達の艦載機が上手く足止めしている。あれなら、当たる!!》

 

『イヒャヒャヒャヒャ!無駄無駄ァ!オイラにゃ効かない──フゴッ!!?』

 

 長門が撃った主砲の弾を見た()は、余裕の笑みを浮かべて、回避せずに仁王立ちして受けた。

 どうやら自分の装甲に、かなりの自信があるみたい。 けど、今長門が撃ったのは、ただの弾じゃない(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)

 

 

「な、なンじゃこりゃアアアアアアアア!!?」

 

 

 直撃を受けた()の胸部が、少しだけ溶けた。

 予想外の出来事に、()は立ち止まった。

 そうしている間に、扶桑が撃った弾が()の尻尾に直撃。

 こちらも、長門が当てた弾同様、少しだけ溶かした。

……効いている!

 

『こちら、長門!ISKZ-C弾(・・・・・ ・)の直撃を確認!直撃させた箇所が溶けている。効果があるぞ!!』

 

『了解!全員、隙を見てISKZ-C弾(・・・・・ ・)を叩き込め!!!』

 

 長門が無線で()に報告すると、すぐに()がそう指示してきた。

 

『ぐぅゥ……なんダ、これハ!?オイラの身体が、溶けてイル──ブフォ!?くっせェ!目が!目ガァ!!?』

 

 あらあら。磯風カレーの放つガスにやられて、苦しんでいるわ。

 

『目標地点到達!総員、砲撃開始!!』

 

 ()が怯んでいる隙に、第一艦隊はどんどん接近し、戦艦娘以外の艦娘達の射程圏内に入った。

 それと同時に、神通が指示を出し、一斉に砲撃を開始。……艦娘の力で鼓膜を護っているけど、発砲音が凄くうるさい。

 

『ちょっ、ま、まさカ、アレ全部くっせぇ弾ナノカ!?冗談じゃネェ!こんな所に居られるカ!オイラ、帰る──』

 

『何処へ行くっぽい?海蛇(・ ・)

 

『なっ!いつの間ニ!?』

 

 ()は踵を返し、弾着地点から逃れようとしたけど、先回りした夕立が行く手を阻み、獰猛な笑みを浮かべながら、()の顔面目掛けて魚雷を投げ付けた。

 

 ただ、夕立が投げ付けたのは通常の魚雷だから、効果は無い。けれど、爆発でノックバックさせる事は出来る。

 

『グオッ!?』

 

『お前の為に、ご馳走(・ ・ ・)を用意したの。逃げずに、しっかり味わえ(・ ・ ・)!!』

 

 夕立、ナイス。

 上手く足止めをしてくれたお陰で、直撃させられる。ただ、そこに居ると夕立まで被害を受けるぞ。早く逃げなさい!!

 

『夕立!早く離脱しなさい!!』

 

『了解っぽい!』

 

 扶桑が叫ぶと、夕立は()の反撃──主砲や副砲の弾を回避しながら、ありったけの酸素魚雷を発射。

 全ての魚雷(・ ・ ・ ・ ・)正確に(・ ・ ・)()へ当てて、すぐさまその場から離脱を始めた。

 

《弾着するギリギリまで足止めをして、冷静に離脱。凄い判断力と胆力ね》

 流石、元横須賀鎮守府所属の艦娘。

 

『ギャアアアアアアアアアアアアア!!!?』

 

『全弾直撃!艤装が溶け始めています!!』

『このISKZ-C弾(・・・・・ ・)凄いよォ!流石、磯風カレー!!』

『マーマイト混ぜたら、もっと強烈になるんじゃないノ?』

『姉さん、金剛さん、ふざけないでください』

 

 神通、良く言った。今は戦闘中。しかも、相手はとんでもない化け物なんだ。油断するな。

 

 

………………。

 

 

『オマエら、ニンゲン(・ ・ ・ ・)じゃネェ!!?』

 

 

 戦闘開始から、どれ程時間が経ったのだろう?

 あれだけ余裕だった()は、ISKZ-C弾(・・・・・ ・)を何十発も受け、全身のあちこちや艤装が溶けて、かなり焦っている。

 

 ただ、こちら側も()の反撃で何名か負傷し、離脱しているから、あまり余裕は無い。早く決着をつけないと──

 

『とっとと……くたばれ!!!』

 

『──ッッッ!!?』

 

 

 由良が発砲した。

 彼女が装備している特殊な艤装(・ ・ ・ ・ ・)から、まるで咆哮のような(・ ・ ・ ・ ・ ・)発砲音が轟いた。

 

《由良……》

 数日前の弱々しい彼女ではない。何時もの彼女になっている。

 

 数日前、()と戦闘し、帰還した彼女はとてもじゃないけど、戦えない状態だった。

 けど、私と瑞稀(・ ・)発破をかけた(・ ・ ・ ・ ・ ・)事で、再び立ち上がり、()に立ち向かうと言ってくれた。

……どんな風に発破をかけたか説明したいけど、今はそれどころじゃないから、機会があれば話すわ。

 

 

『ちっくしょオオオオオオ!!!』

 

「逃がさないわ!」

《逃がすかよ!》

 

 ()は避けようとしたが、私達が攻撃して足止めを行っているから、動けない。

 

 

『グオォォォッッッ!!?』

 

 

 当たった!それと同時に、今までとは比べ物にならない程濃いガスと、粘性の高い虹色の液体が()を包んだ。

 

 

『ウ゛ワ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!゛?゛身゛体゛ガ゛!゛溶゛け゛ル゛!゛!゛?゛』

 

 

《……グロテスクな光景ね》

 千濃(・ ・)+‪αが入ったISKZ-C弾(・・・・・ ・)が直撃すると、みるみる皮膚が溶け、骨が露出し始めた。

 

(確か、アレ(・ ・)を熊野は食べた(・ ・ ・)んだよね?)

 

《……えぇ。()が言っていたわね》

 瑞稀(・ ・)が私に語りかけてきた。

 アレを食べて平然としている熊野って、本当に人間なのかしら?

 

(……今は戦闘に集中しましょう?)

 

《……そうね》

 色々言いたい事があるけど、今はその時じゃない。気持ちを切り替えなきゃ。

 

『瑞鶴さん、準備はいい?』

 

「はい!何時でも行けます!!」

 

 おっと、千歳から指示が来た。

 瑞稀(・ ・)は、私と会話しながら千濃(・ ・)+‪α弾の用意をしていたから、あとは艦載機を飛ばして()に撃ち込むだけ。

 

《私達が撃ち込んだら、ISKZ-C弾(・・・・・ ・)は品切れになる》

 一応、第8492離島鎮守府の艦娘達が五千濃弾(・ ・ ・ ・)を持っているけど、なるべくなら、これで決まって欲しい。……いいえ、決める!

 

「全機、爆装!目標、海蛇(・ ・)!やっちゃって!!」

 

 瑞稀(・ ・)が艦載機を発艦させた。けど、戦闘で大分撃墜されてしまったから、6機しか出せない。

 内、千濃弾(・ ・ ・)を搭載しているのは2機。墜とされないよう、注意しないと。

 

『ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ゥ゛ゥ゛ゥ゛ゥ゛…゛…゛』

 

……かなり弱っているわね。けど、()はまだ動く。どんだけタフなのよ!?さっさとくたばりなさい!!

 

『ありったけの弾を撃ち込め!』

『主砲、斉射!!』

『とぉ↓おおお↑う!!』 

 

 皆が、通常弾で牽制して動きを止めてくれている。これなら、行ける!!!

 

 

 ()まで、約5,000m。

 2本(・・)ある尻尾の内、未だ無事な方の1本(・・)を構えて、艦載機を墜とそうとしてきた。

 けれど、長門達の牽制射撃で正確に狙いを付けられないのか、私達の艦載機には掠りもしない。

 

 ()まで、約3,000m。

 あちこち溶けて、骨の露出しているボロボロの身体を無理矢理動かし、回避しようとしている。

 けれど、長門達の牽制射撃でまともに動けない。

 

ホンモノ(・ ・ ・ ・)の砲撃を……教えてやる!!!』

 

 そこへ、由良が砲撃。

 弾は千濃弾(・ ・ ・)らしく、砲弾から虹色の光を放っている。

 

……脚部に弾着。

 撃ち込まれた箇所は、みるみる溶けて、骨が丸見えになった。あれじゃ、もうまともに動けない。

 

 

 ()まで、約1,000m。

 

『──ヒャヒャヒャ♪』

 

 突然、奴が笑った。死を悟って笑ったのかしら?

……油断するな。トドメを刺すまで。いいえ、トドメを刺しても、警戒を解いてはダメ。

 

 ()まで、約500m。

 艦載機達に指示を出し、散開させる。

 諦めたのか、()は動きを止めた。

……油断するな。警戒しなさい。

 

 ()まで、約100m。

 もう間もなく爆撃を開始する。

 確実に、当てる。そして、トドメを──

 

 

 

 

 

 

 

 

『──やっぱり、ナ。この気配……懐かしい……ナァ……』

 

 

 

……気配?懐かしい?何を言っている? 

 艦娘の力で強化された視力が、私達の方を見て笑う()の姿を捉えた。

 こちらを、真っ直ぐ見つめている。

 

 

ユキノ(・ ・ ・)に……夢中……だった……か……ラ……気付くの……遅──ゴボッ!?』

 

 

 ()が吐血したのが見えた。それでも、視線は私達から逸らしていない。

 ()が向けている視線の先には、私達しか居ない。

 

 

 艦載機は既に爆弾を投下した。

 爆弾の落下する風切り音や、長門達が発砲する音が、私達の鼓膜に響く。かなりうるさい。

 それなのに、()の声は、ハッキリと聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『昔……オイ……ラ……壊した(・ ・ ・)……カン……ム……ス……ひさ……し……ぶ……ヒャヒャ……ズイカク(・ ・ ・ ・)

……いヤ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フカミ(・ ・ ・)……イヒャヒャヒャヒャ──』

 

 

 

 

 

 

 

 

 ()が私達の目を真っ直ぐ見つめたまま、そう言ってきた。

 そして、ほぼ同時に爆弾が直撃し、()は爆炎に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────

 

 

 

───────

 

 

 

 

 

 

 

 

──第603鎮守府、工廠──

15:00。

 

 

「──これで良し、と。瑞鶴さん、艤装の修理、完了しました」

 

「ありがとね、夕張」

 

 あまり被弾しなかったからか、私達の艤装はすぐに直った。

 けど、艦載機を殆ど撃墜されたから、その補充にはまだまだ時間が掛かるらしい。

 

 

 

 

 

 

 数時間前。海蛇(・ ・)と呼ばれる特殊な深海棲艦(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)を無事、殲滅する事に成功した。

 

 どうやら私達の爆撃が決め手だったらしく、爆撃された海蛇(・ ・)は頭部を完全に溶かされ、死亡した。

 

 もっと苦戦すると思ったのだけど、磯風カレーのお陰か、結構すんなりと倒せた。正直、未だに信じられない。

 ()や野原主任、小嶋提督。そして、海蛇(・ ・)の事を詳しく(・ ・ ・)知っている(・ ・ ・ ・ ・)千歳と由良も、あまりにもアッサリ倒せた事に疑問を持っているみたい。

 

 一応、野原主任からの指示で、遺体を持ち帰ってきたけど、今にも動き出しそうで怖い。

 

 

 閑話休題。

 

 

 そうそう。1つ、気になる事がある。

 私達の爆撃が直撃する際、海蛇(・ ・)が言い放った言葉。

 途切れ途切れだったけど、ハッキリ聞こえた。

 

「懐かしい気配」

「久しぶり」

「昔、壊した(・ ・ ・)

 

 そして、「フカミ(・ ・ ・)」。

 

()は、私を知っているような口ぶりだった……》

 疑問に思うが、海蛇(・ ・)は既に死んでいるから、聞き出す事は出来ない。

 

……フカミ(・ ・ ・)。確かに海蛇(・ ・)は、死ぬ間際にそう言ってきた。

 フカミ(・ ・ ・)。もしかしたら、それが私の名前(・ ・ ・ ・)──

 

《……ウッ!?》

 あ、頭が……痛い!!?

 

(だ、大丈夫?)

 

《……大丈夫よ》

 いけない。私の思考が瑞稀(・ ・)に流れてしまったせいで、心配をかけてしまった。

 

……今は、何も考えないでおこう。

 私はともかく、瑞稀(・ ・)は肉体と精神を酷使して疲れている。私が色々思考すると、彼女に負担が掛かってしまう──あ、放送が入った。

 

『こちら、提督だ。まずは皆、良くやってくれた。礼を言う。

 全員、疲れているだろうから、休んでくれ、と言いたいが、本日19:00までに報告書を纏め、提出してくれ。

 繰り返す──』

 

「……仕方ない。部屋に戻って、報告書纏めよう」

 

……()、少しくらい休ませてあげなさいよ。

 けど、喚いた所で結果は変わらない。

 

「それじゃ、夕張。また後で」

 

「はい!」

 

 瑞稀(・ ・)は夕張にそう言って、自室に向かった。

 その途中、海蛇(・ ・)の遺体を保管している倉庫の前を通った。

……海蛇(・ ・)。お前は──

 

 

《お前が……私を殺した(轟沈させた)、深海棲艦……なの?》

 瑞稀(・ ・)に悟られないよう、小さく呟く。

 

 記憶の殆どを失っているから、自分が何故沈んだのか。どんな深海棲艦に沈められたのか、覚えていない。思い出せない。

 

……私は、どんな存在だったのだろう?

 唯一覚えているのは、私は艦娘──瑞鶴の適性者だった事のみ。

 

……気になる。

 

……そうだ。後処理が終わって落ち着いたら、()に頼んで調べてもらおう。

 

 確か、データベースに、艦娘が誕生した約70年前から、今現在までの間に轟沈(死亡)した艦娘のリストがあった筈。

 以前、何度か調べてもらったけど、瑞鶴の適性者って、結構(・ ・)轟沈(死亡)しているらしいから、絞れなかった。

 

 けど、海蛇(・ ・)が言ったフカミ(・ ・ ・)。この名前で検索をしてくれれば、もしかしたら──

 

 

side ????? out

 

 

───────

────

 





次回予告


……あの海蛇(・ ・)を、こうもアッサリ倒せるなんて。未だに信じられん。
 磯風カレーか?磯風カレーがあったからか?怖過ぎだろ。もう封印した方が良いんじゃね?
……ボヤいてないで、報告書確認しよう。
……あれ?Code:N(・・・・・)の出番、殆ど無かったの?えぇ……。何の為に用意したんだよ。噛ませ犬みたいじゃん。
……すみません、野原主任。撤回します。撤回させて頂きますから、無言で銃を突き付けないで下さい。
……ん?大本営から書類が届いた。なんだろう?
……えっ?各海域で、異常に巨大化(・ ・ ・ ・ ・ ・)した()が、艦娘達を襲っている!?


第112話・後処理


「……環境には問題は無い、って大本営は言ってなかった?」


※何時もの、頭の悪い日常回に戻る予定。


【補足的なナニか】

・秋津州…大本営技術課所属、秋津洲型水上機母艦一番艦、秋津州の適性者を指す。
 とある事情により、鎮守府ではなく、大本営技術課に所属している。
 適性者の名前は、秋山州子(あきやまくにこ)
 野原主任曰く、「面倒を見ていたら懐かれた」らしく、彼に熱烈なアプローチをかけている。
 しかし、色々ヤバい(・ ・ ・ ・ ・)娘らしく、事ある毎に二式大艇を飛ばしてくる(・ ・ ・ ・ ・ ・)

・ところがぎっちょん!…「機動戦士ガンダムOO」に登場する、「焼け野原ひろしアリー・アル・サーシェス」が言い放った奇声(?)が元ネタ。
 「アリー・アル・サーシェス」の中の人は、「藤原啓治」さんが演じている。


以上、補足終了。



※Code:Nの出番は、まだまだあります。
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