追跡鶴   作:EMS-10

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私の実家は、代々続く古武術を教える家でした。
古武術には幾つか種類があります。
日本の伝統的な徒手(体術)、もしくは鈍器や刃物、火器などの武具の使用法や、水泳、馬術など。
私の実家では、剣術と体術を教えていました。
私は幼い頃から、師範である御祖父様に教えられ、鍛えられました。


※警告※
グロテスクな表現が含まれています。
ご覧の際は、ご注意ください




Page:FUSO
大和撫子


 

──某海域──

 

 

「うふふふ♪」

目の前には、首の無い空母棲姫と装甲空母姫。そして護衛に就いていた雑魚共(深海棲艦達)が、力なく海面に横たわっています。

……えっ?どうして首が無いか、ですか?それは。

 

「ふ、扶桑、また持ち帰るの?」

 

「はい、勿論です♪」

瑞鶴さん、そんな目をしないで。悲しくて泣いてしまいますよ?さて、日本刀で斬り落とした空母棲姫と装甲空母姫の首を回収しましょう。

妖精さん達が映像記録を残してくれていますが、念の為に持ち帰ります。それに、謎が多い深海棲艦を解析すれば、新たに生態が分かるかもしれません。だから、こうして首を狩っているのです。

ちなみに、鬼・姫級と呼称される深海棲艦以外の首に興味はありません。何故なら、大将首では無いからです。

大将首さえ取れれば、あとはどうでもいいです。

ですが、渡良瀬さんに命令して頂ければ、雑魚共の首を狩ります。絶滅するまで狩ります。

 

「首桶に仕舞うから、少しだけ待って頂戴?」

複数ある艤装の格納領域──妖精さん達曰く、スロットと呼称するそうです──の一つから、事前に仕舞っておいた首桶を取り出します。

 

「く、首桶!?」

 

「はい♪私お手製なの。どう、凄いでしょう?」

私、手先が器用なの♪

さて、首を入れましょう。うん、いい顔。恐怖に歪んでいます♪

 

「アンタは戦国武将か!」

 

「いいえ、艦娘です♪」

自分でも時々思います。産まれてくる時代を間違えたんじゃないか、と。

 

『瑞鶴、報告してくれ』

 

(渡良瀬さん!)

首桶に首を入れて母港──第603鎮守府へ向かおうとした時、無線から渡良瀬さんの声が聞こえました。

嗚呼、早く帰りたい。帰って褒めてもらいたい。

 

「空母棲姫及び装甲空母姫と、その護衛艦隊と交戦。無事、殲滅出来たわ。こっちに負傷者は居ない(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)わ」

 

『そうか。……あー、ちなみなだけど、扶桑さん、首狩った?』

 

「はい!狩りました♪」

旗艦として渡良瀬さんに報告をしていた瑞鶴さんの無線を奪って、そう答えました。私、頑張りましたよ♪褒めて♪

 

『やめろおおおぉぉぉ〜!ポイ!今すぐポイしてください!』

 

「えぇっ!?せっかく狩った首を捨てるなど、勿体ないです!」

首は素晴らしい。狩った証になりますし、深海棲艦達への威嚇にもなります。現に、首を燃やし、残った遺灰や御骨を、私の艤装に塗したり、艦娘の装束に取り付けたら、殆どの深海棲艦が私を見た途端、怯みます。

 

(嗚呼、あの顔。思い出すだけで)

たまらない。

 

「とにかく、お持ち帰りしますね!」

 

『ダメです!』

 

「そ、そんなっ!?」

たかが首なのに。何故そんなに拒絶するのですか!?

 

『本当にお願いします!ポイして!!』

 

「……分かりました」

涙声。可愛い……。いけない、トリップしていたわ。

仕方ない。捨てましょう。無線を瑞鶴さんに返し、首桶から空母棲姫と装甲空母姫の首を取り出し、海面に首を置きました。最初は漂っていましたが、やがて沈んでいき、見えなくなりました。あぁ、せっかくの首が。

 

「……捨てたわ。ちゃんと確認したから安心して」

 

『……本当だろうな?隠し持ってたりしてないよな?』

 

「安心して、本当に捨てたから」

 

瑞鶴さんが無線で報告をしています。本当に捨てましたよ?嘘ついていませんよ?だから、安心してください。

 

『……分かった。周囲を警戒しつつ、帰投せよ』

 

「了解!……それじゃ、索敵機出すわ。皆はレーダーや目視で、周囲の警戒をして」

 

「了解です」

頭を切り替えなさい、私。おっと、風。

突然、強い風が吹いてきました。慌てて髪の毛とスカートを押さえます。まぁ、ここに居るのは女性だけなので見られても問題はありませんが、反射的にスカートを押さえてしまいました。

 

(……あっ、髪飾りが!)

私が養成所に居た頃。艦娘候補生だった頃に渡良瀬さんに買って頂いた髪飾りが外れ、海面に落ちてしまいました。慌てて拾い上げると。

 

(壊れている!)

髪留めの部分が劣化により壊れていました。そんな!大切な髪飾りなのに!代えなどない、宝物が!!

 

(うぅ……空はあんなに青いのに…)

(山城)ではないけど、言いたくなる。不幸だわ。

 

 

【Page FUSO】

 

 

 

──20年前、某県某所──

 

 

「本日の鍛錬はここまでとする」

 

「はい!ありがとうございました!」

古武術の鍛錬が終わり、一対一で稽古を付けてくださった御祖父様にお礼を言う。

私の家は、昔から古武術という武術を教える家らしく、お友達のお家と比べて大きく、純和風に造られています。

 

「日に日に上達しているな、桔梗(ききょう)

 

「ありがとうございます!」

本日の鍛錬は、私が得意な徒手格闘でした。

私は4歳の頃から習い始め、5年が経ちました。まだまだ成長途中の為、他の大人の人達と同じ鍛錬を受けさせて頂く事は出来ませんが。

 

「ふむ、これなら次の段階に進んでも良いかもしれないな」

 

次の段階?つまり、他の技を教えて頂けるのですか!?

褒められて喜んでいましたが、それを聞いて益々嬉しくなってきました。一体、どのような技を教えて頂けるのですか?期待に満ちた目で御祖父様を見ると、苦笑いされました。

 

「そんなに嬉しそうな顔をするでない。今すぐ、とはいかん。もう少しだけ様子を見てからにする」

 

「……分かりました」

今すぐ教えては頂けないのですか。少し、残念です。

 

「さて、片付けをしたら、風呂に入って汗を流してきなさい。休養も立派な鍛錬だ」

 

「はい、御祖父様」

御祖父様の言う事は正しい。なら、言われたとおりにしましょう。

鍛錬で踏み込んだ時、(たたみ)を踏み抜いて壊してしまいましたから、新しい畳に替えないといけませんね。畳の仕舞ってある倉庫に行き、鍵を開けて御祖父様と畳を運ぶ。鍛錬を始めたばかりの頃は重くて一つ持つのがやっとでしたが、今では畳を四つ重ねて運べるようになりました。日々の鍛錬の賜物です!

 

 

──────────────

 

 

 

──17年前──

 

 

目の前には、畳が一(じょう)、縦に置かれている。

木刀の柄を両手で握り、上段に構え、

 

「はぁっ!!!」

気迫を込めて、右斜め上から左斜め下へと斬り下ろす!

風切り音。

木刀が畳に当たる。

硬い感触が手に伝わる。

畳は倒れた。

 

「余計な力が掛かっているな」

 

「……申し訳ございません」

私が木刀を振り終えると、御祖父様がそう言いました。また、斬れなかった。

2年前から御祖父様が剣術を教えてくださるようになりました。最初は真剣──日本刀──ではなく、木刀を使っての鍛錬。

正しい構え方。

正しい身体捌き。

正しい力の込め方。

何時如何なる時も精神()を落ち着ける。

この他にも沢山あると言われました。

私がそれらを完全に習得出来るまで、真剣は使わせないと御祖父様に言われました。なので、木刀を使っています。

 

「刀は、ただ振り回せば良いものでは無い。桔梗、お前は未だ振り回しているだけだ。精進せよ」

 

「はい!」

まだまだ私は未熟。精進しなくては。

最近、妹の梓も古武術を習い始めました。姉として、みっともない姿は見せられません。頑張らなくては。

 

「桔梗、私が見本を見せる。よく見ておけ」

 

「はい、御祖父様!」

そう言うと、御祖父様は新しい畳を一畳、縦に置きました。そして、私の使った木刀を手に持ち、構え……

 

「チェストオオオオオオオ!!!」

 

裂帛の気合が込められた声と共に、木刀を斬り下ろしました。私よりも、速い。それなのに、力は殆ど込められていません。

木刀が畳に当たり、真っ二つになりました。

 

「……」

 

「……」

畳を斬った御祖父様は残心。私はその姿に見惚れました。

なりたい。御祖父様のようになりたい。

 

「……先程も言ったが、刀はただ振り回せば良いものではない。忘れるな」

 

「はい、御祖父様!」

凄い。私が斬った畳は、中心部分が凹んでいるだけなのに、御祖父様が斬った畳は真っ二つに斬れている。

正確には、真っ二つに折られている、ですね。

 

「桔梗、今度の土日は、山篭りをするぞ!」

 

「はい!!!」

山篭り。家の近くにある山で、精神を鍛える。今まで何度かしましたが、再び行うのですね。楽しみです。

 

(何を考えているの。遊びに行くのでは無いのよ?)

修行の為に山篭りをするのに、楽しみにしてどうするの。こんな精神だから、斬れなかったのよ?心の中で己を叱責する。

余談になりますが、御祖父様は妹も連れていく事にしたようです。しかし、妹は未だ幼い。その為、夜に泣き出してしまい、あやすことになりました。お陰であまり眠ることが出来ませんでしたが、これも修行だと思えば何ともありませんでした。

 

 

………………。

 

 

学校に通い、勉強をし、家で鍛錬をする。

そんな毎日を送りました。

こんな日がずっと続く。そう思っていました。

 

 

 

 

あの事件が起きるまでは。

 

 

 

 

───────

────

 

 





Next Page「試練」
この程度、何ともありません。


※さぁ始まりました、薩人大和撫子扶桑の過去編。全部で4話〜5話を予定しています。
前半は普通です。前半は普通です。大事なことなので2回言いました。
この時は大人しかった。戦闘技術も、言葉は悪いですが、低かった。それがどうしてああなった……。
ちなみに、後半はグロテスクな描写満載です。あと、ド○フターズになります。覚悟しておいてください(深海棲艦の首がティロ・フィ○ーレしたり、敵棲地が\デデーン!/する程度なので、ご安心ください)



Q:この時の扶桑と山城は何歳?
A:女性の年齢はパンドラの箱です。決して開けてはならない。いいね?
20年前の時点で、扶桑は9歳。山城は3歳です(超小声)


Q:木刀で畳壊せるの?
A:分からん!ギャグ小説だから、細かい事気にしちゃダメです。


Q:扶桑の御祖父様以外に古武術教える人居ないの?
A:居ます。ただ、描写するのが面倒ゲフンゲフン。扶桑と山城の父親も教えています(という設定)


Q:山城の出番少なくね?
A:扶桑の過去編なので、出番は少ないです。
(言えない。山城の過去編で書くネタが無くなるので、あまり山城を登場させていないなんて、言えない……)


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