追跡鶴   作:EMS-10

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最低限の荷物を持ち、御祖父様と妹、私の3人で山篭りを始めました。
真夏なのに、とても涼しかったのを覚えています。
今回は精神を鍛える目的で山篭りをするので、体術や剣術の鍛錬は行いませんでした。
夜になると、明かりが全く無い為、辺りは真っ暗でした。
その為、妹は泣き出してしまいました。
まだまだ幼いから、仕方がありません。
ほら、おいで。怖くないわ。



試練

 

──17年前、某所──

 

 

「今日はここまでにしよう」

 

「はい、御祖父様」

もう終わりなの?あっという間でしたね。

もっと続けたかったのですが、御祖父様が終わりだと言ったので、大人しく従いましょう。いつまでも続ければ良いものではありませんから、明日また頑張りましょう。

 

「うん!」

 

「はい、でしょ?」

こら、梓。言葉遣いに気を付けなさい?

 

「は、はいっ!」

 

いい娘ね。私の注意を素直に聞き、返事をしてくれました。

山篭りを始めてかなりの時間が過ぎました。空は既に茜色に染まっていました。

今回の山篭りは精神を鍛えるのが主目的なので、徒手格闘や剣術の鍛錬をせず、ひたすら座禅を組みました。

途中、蛇や蜂が来ましたが、全て素手で仕留めました。

私は慣れているので平気でしたが、妹は驚き、悲鳴をあげていました。私も始めたばかりの頃は驚き、悲鳴をあげていました。だから、咎めませんでした。

少しずつ慣れていけばいい。御祖父様も私と同じ考えなのか、咎めませんでした。

 

「桔梗は大分落ち着いていたな。その調子だ」

 

「はい!ありがとうございます」

褒めて頂きました。けれど、浮かれてはダメです。

私はまだまだ未熟。もっと精進しなくては。

 

「梓、まだ怖いか?」

 

「こ、怖いです」

 

「はっはっはっ!正直でよろしい。少しずつで良い。慣れていきなさい」

 

「はいっ!」

 

「さて、寝床の準備をしよう」

 

「分かりました」

それから、私達は小さなテントを張りました。御祖父様曰く、本当ならテントなぞ張らず、木の葉等を集めて地面に敷き、そこで横になるべきだと仰っていましたが、子どもである私達には厳しいからと、テントを持ち込んでくれました。

少し苦戦しましたが、なんとかテントを張ることが出来ました。小柄なので、私と梓の2人が入っても充分な広さがあります。

 

「さて、夕餉にしよう」

 

そう言って、御祖父様は食事の用意を始めました。

これも御祖父様が言っていましたが、本当なら山で採れる食材だけで何とかするそうですが、持ち込んだりはしないそうです。しかし、私達にはまだ厳しい為、こうして家から食材を持ち込み、食べさせてくれました。

余談になりますが、御祖父様は私達に夕餉の支度を済ませると、自分の分の食材を採る為、山奥に向かって行きました。

 

「これは桔梗と梓の為の食材だ。私の分は、私が採って食べるから、気にせず食べなさい」

 

 

そう言って微笑みながら私と梓の頭を撫でてくれました。

早く、私も御祖父様と同じようになりたい。御祖父様と同じ鍛錬を行いたい。もっと。もっと精進しなくては。

 

 

………………。

 

 

 

「うぅ……グスッ…」

 

「大丈夫よ」

夜。夕餉を摂り、ウェットシートで身体を拭き身を清めた後、テントの中で眠りました。しかし、辺りは明かりが全く無く、真っ暗です。その為、梓が泣き出してしまいました。

梓は少し前に、お父様に見せられたホラー映画のせいで人一倍暗闇を怖がるようになってしまった(後日、その事実を知ったお母様に木刀で叩かれていました)。

 

「私が付いているわ」

優しく抱き締め、声をかけます。しかし、それでも怖いのか梓は泣き続けました。

 

「おねえさまぁ〜、怖いよぉ〜!」

 

「はいはい、私が居るから大丈夫よ?」

全く、世話の焼ける妹ね?ほら、しっかりしなさい。あなたは、私の妹なのだから、この位で泣くんじゃありません。

それから、梓が眠るまで抱き締めて頭を撫で続けました。

途中、少し離れた所で眠っていた御祖父様が、梓が泣いている事に気付き様子を見に来てくれましたが、私が何とかすると言い、お休みになってくださいとお願いしました。しかし、御祖父様はテントの外に立ち、私たちの様子を見守ってくれました。

結局、梓か眠りについたのは空が明るくなり始めた頃でした。

 

 

………………。

 

 

 

「さて、今日は山頂付近まで登るぞ」

 

「「はい!」」

あまり眠れず、少し頭がボッーとしている。しっかりしなさい。この程度で音をあげてはダメよ。

隣に居る妹を見ると、私と同じく少しだけ眠そうにしている。

 

「眠そうだな」

 

「あっ、いえ、その……」

いけない。御祖父様に心配されてしまいました。しっかりしないと!

 

「ふむ、登山は中止だ。家に帰るぞ」

 

「そっ、そんな!?」

私と梓の顔を見て、御祖父様はそう言いました。私なら大丈夫です!そう言おうとしましたが、

 

「無理をしては、意味が無い。また次の土日に行おう」

 

「……はい」

御祖父様は中止を宣言しました。

 

「やる気があるのは良い事だが、桔梗、梓。お前達はまだまだ成長途中だ。無理をしては、身体を痛めるだけだ」

 

「……」

御祖父様の言う通り、私達はまだまだ成長途中の身。精神だけでなく、肉体も。でも、それでも。

 

「桔梗」

 

「御祖父様?」

内心悔やんでいると、御祖父様が微笑みながら頭を撫でてくれました。

 

「焦る事は無い。ゆっくりでいい。まだまだ時間はある。少しずつ、精進していこう」

 

「……はい」

 

「梓も、次から頑張ればいい」

 

「はい」

 

「うむ。では、荷物を纏めてお家へ帰ろう」

 

それから荷物を纏めて、下山する事になりました。途中、梓が眠ってしまい、私が背負いながら帰りました。

 

(全く。まだまだね)

昔の私も、山篭り中に眠ってしまった事があり、その度、御祖父様に背負われ帰宅しました。姉妹だから似ているわね。

私の背中ですやすやと寝息をたてる妹を見て、思わず微笑んでしまいました。

もっと鍛えて、眠気に負けないようにならないと。

 

 

 

──────────────

 

 

──6年数ヶ月前──

 

 

 

「はっ!」

目の前には、縦に置かれた畳が一畳。

上段の構えから、木刀を斬り下ろす。

木刀が畳に当たる。

柄を握る両手に、硬い感触。

今までは弾かれた。

でも、今は違う。

木刀は畳を真っ二つに折った。

 

「……」

残心。

精神()を落ち着ける。

浮かれてはならない。

この程度、出来て当然でなければ、御祖父様には追いつけない。

 

「お見事」

 

「ありがとうございます」

やった。やりました。……だから、浮かれないで。己を叱責する。

 

「身体捌き。力の込め方。そして、精神。全て完璧だ」

 

「御祖父様……」

褒めてくださった。御祖父様が認めてくださった。やっと。やっと出来ました。嬉しさのあまり、涙が零れそうです。

 

「ふむ。なら、次の段階に進むとしよう」

 

「はい!」

次の段階。つまり、真剣──日本刀を使っての鍛錬になるのですね?

 

「これ、そんな嬉しそうな顔をするな」

 

「も、申し訳ございません」

いかない、浮かれてしまいました。何をやっているの、私。こんな精神では、いつまで経っても御祖父様のようにはなれないわ?しっかりしなさい。

 

「気持ちは分かるが、浮かれるな。私達がしているのは、遊びではないんだ」

 

「はい」

気を引き締めなさい。

何時如何なる時も、冷静に。この心を忘れてはダメよ。

 

「明日から、真剣を使った鍛錬を行う。今日は精神を落ち着けて休みなさい」

 

「はい、御祖父様」

素直に従います。少し前の私なら、もっと続けたいと言っていたでしょう。

さて、片付けましょう。折れた畳をゴミ捨て場に運び、木刀を点検。あら、柄の一部が少し欠けていますね。かなり分厚く、芯が硬い木刀なので、ちょっとやそっとでは欠けたりしないのに。幸い、刀身の部分に傷はありません。

 

「桔梗」

 

「はい、なんでしょうか?」

点検をしていると、御祖父様に声をかけられました。

会話をする時、聞く時は相手の目をしっかり見て話を聞く。教えられた事を思い出し、一旦木刀を置いて御祖父様の顔を見ます。その顔は、少し困ったような顔をしていました。どうされました?疑問に思っていると、御祖父様は口を開きました。

 

「実はだな、海軍が、私達の住む町で艦娘適性検査を行うそうだ」

 

「艦娘適性検査を?」

 

「ああ」

 

艦娘──今から約70年程前、海に出現した化け物。その化け物に対抗出来る唯一の存在。学校や両親から教わった事を思い出します。

 

「今週末に、近くの施設で検査を行うらしい」

 

「そうなのですか?」

数ヶ月前、隣町で検査をしたと聞きました。ついに私の住む所にも来ましたか。興味なんて無いのに。

 

「ああ。すまんが、受けてくれないか?」

 

「分かりました」

けれど、御祖父様にそう言われたのなら、受けましょう。本当は受けたくない。もし適性があると判明したら、養成所という所に行き、艦娘になる為の訓練を受ける事になってしまいます。そうなれば御祖父様から指導を受けることが出来なくなってしまいますといいますかお父様とお母様は私が検査を受ける事に対して何とも思っていないのですかアレですよ艦娘になると深海棲艦という化け物と命のやり取りをする事になるんですよ下手したら死ぬかもしれないんですよよろしいのですか跡取りは既にお兄様が居ますから問題は無いですが女である私を戦場に行かせて本当に良いのですかもしかしてアレですか鍛錬にしか興味ない私では婿を見付けられないから艦娘にさせて軍の人と婚約させる気ですかねぇどうなんですかお父様お母様教えてください。

 

 

「きっ、桔梗、お、おお落ち着くんだ」

 

 

(まだまだ未熟なのに)

先程ようやく木刀で畳を壊せたのにもっと上達して御祖父様のようになりたいのに神様仏様お願いしますどうか適性がありませんようにいえその前に検査当日隕石でも降ってきてくださいそうすれば検査を受けなくて済みます。

 

「桔梗!」

 

「──はっ!?」

御祖父様?どうかされましたか、そのような慌てた声を出して。

 

「あー……その、色々思うことがあるかもしれんが、適性検査を受けて……頂けないでしょうか?

 

御祖父様?本当にどうされました?そんなに怯えて。

しかし、御祖父様にここまで言われたのなら、受けるしかありません。そうだ、

 

「御祖父様、検査を受ける事は、お父様とお母様はご存知なのでしょうか?」

もし存じていなかったら、お父様とお母様を説得して検査を受けるのを止めてくれるようお願いしましょう。まだ、希望はあります!

 

「勿論、知っている」

 

「……」

 

「ちなみに、二人とも認めている」

 

「……」

 

「今まで言わなかったが、桔梗の父さんと母さんは昔、艦娘に助けてもらった事があってな。それ以来、艦娘や軍に対しての感謝が凄いんだ。語り出したら一日中話す程だ。今回、検査を行うと知った途端、恩返しがしたいから桔梗に受けさせよう!と騒いでいた」

 

「隕石降らないかしら」

 

「桔梗!?」

 

ふっ。ふふふっ。うふふふふ。不幸だわ。

……落ち着きなさい、私。まだ適性があると決まったわけじゃないわ。

神様、仏様、お願いします。私に適性がありませんように。

しかし、その祈りは届く事はありませんでした。

 

 

 

───────

 

 

 

扶桑型戦艦一番艦、扶桑の適性有。

 

 

御祖父様から適性検査を受けるよう言われ、数日が経ちました。

検査を行う施設に行き、名前や住所を伝え、待合室で待機していると、私の名前を呼ばれました。

軍の方に案内され、とある部屋に入るよう言われました。部屋には軍人さんが2名居り、部屋の中央に箱のようなものが机の上に置かれていました。

戸惑っていると、一人が口を開き、色々説明をしてくれました。

 

「では、その箱に触れてください」

 

「分かりました」

言われた通り、目の前に置いてある箱のような物に触れると、頭の中で不思議な光景──幾つもの巨大な砲が付いた船が海を航行する姿──が見えた直後、検査を行っていた軍人さんに艦娘の適性有り。そう言われました。

 

(そ、そんな……)

軍人さんによると、艦娘の適性を持つ女性は少ないそうです。更に、戦艦や空母と言われる艦種の適性者はもっと少ないそうです。

嗚呼。適性有りですか。神様、仏様。

 

 

 

 

 

首を洗って待ってなさい

 

 

 

 

 

 

───────

────

 

 

 

──5年10ヶ月前──

 

 

あの事件から数ヶ月が経ちました。もう、あれは事件としか言い様がないわ。誰がなんと言おうが事件よ。

普通に学校に通い。

普通に勉強をして。

普通に鍛錬をして。

そんな毎日を送るのだと信じていました。

信じていました。

信じていたのに。

なのに。何故。

 

 

「……」

目の前には、巻藁が3本、立てて置かれている。

左腰に付けた日本刀の鞘を左手で持つ。

左手の親指で鍔を押し、鞘からほんの僅かだけ刀身を抜く。

右手で柄を持ち、抜刀。

鞘から刀身全てを抜き、両手で柄を持って上段に構える。

精神を落ち着けなさい。

邪念は全て捨てるのよ。

呼吸を整え、身体から余計な力を抜く。

 

「───ぶるぁああああああッッッ!!!(CV:若○規夫)」

裂帛の気合を込め、巻藁目がけ斬り下ろす!

刀身が、巻藁を斬り裂く。

 

「……」

3本全てを斬り裂き、残心。

その後、刀を軽く振り、納刀。

 

「……」

………………。

…………。

…。

 

(…よし)

出来た。

斬り落ちた巻藁を見て、少しだけ感動してしまいました。ですが、喜んではいけません。もっと。もっと腕を磨かなくては。

ああ、そうそう。言い忘れていましたが、妹も検査を受けました。流石に適性は無いでしょう。そう思っていました。

 

 

『姉様、私にも適性がありました!扶桑型戦艦二番艦、山城という艦の適性です!』

 

 

私が適性を持つ事が判明し、別室に案内され待機していると、妹が入室してきて、嬉しそうな顔でそう言ってきました。

おのれ。神と仏。覚悟しておきなさい。私だけでなく、大切な妹にまで適性を持たせるなんて。あの世に行ったら、首を斬り落としてやる。

 

 

「わ、僅か数ヶ月でここまで出来るようになるとは。流石だな」

 

「ありがとうございます」

お褒めのお言葉、とても嬉しいです。ですが、明日から養成所に行かなければならない。御祖父様と鍛錬をする事が出来なくなります。逃走しようかしら?

 

(…何を考えているのよ)

そんな事をしたら、御祖父様や御祖母様、お父様とお母様、お兄様、妹に迷惑をかけてしまいます。駄目よ。

 

(そうよ。試練だと思えばいいのよ)

これは、試練。ならば、乗り越えてみせましょう。

それに、向こうで鍛錬をすればいいじゃない。きっと、近接武器もある(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)筈よ!

 

「さて、明日は早いから、片付けて休みなさい」

 

「はい、御祖父様」

明日は5時に起きて電車に乗って横須賀へ行かなければならない。睡眠不足で正常な判断が下せない、なんて事にならないよう、早めに休みましょう。

鍛錬で使用した物を片し、日本刀を点検。うん、異常なし。

 

(どんな鍛錬を行うのでしょう?)

少しだけ。ほんの少しだけ、期待している自分がいます。

……期待してどうするの。遊びに行くわけじゃ無いのよ?しっかりしなさい。

さて。点検も終わりましたし、お風呂で汗を流したら荷物の最終確認をしましょう。

……日本刀か木刀、持っていきたかったです。でも、許可は降りませんでした。仕方ない。我慢しましょう。

 

 

───────

────

 





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あの人と出会った事で、私は変わりました。変えられてしまいました。責任、取ってくださいね♪



※展開が急過ぎる?扶桑のキャラが壊れている?仕様です。細かいことを気にしてはいけない。

※この時の扶桑は、【まだ壊れていません】。正常です。正常なんです。
これから、少しずつぶっ壊れていきます。扶桑嫁提督の皆さん、予め謝罪しておきます。ごめんなさい。

※疑問に思った事がございましたら、コメント等をしてやってください。全力でお答えします。


Q:山城の出番少なくね?
A:山城の過去編でしっかり描写するから、許してくださいなんでもしますから(山城の過去編で書くネタが無くなるから、あえて書いていないだけ、というしょうもない理由)。

Q:扶桑のお兄様って、どんな人?
A:モブだから、特に考えていないです。
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