追跡鶴   作:EMS-10

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 花粉症辛い。杉を一本残らず燃やそうぜ?(過激発言)

※注意※
考えるな、感じろ
お前らの嫁だろ、早くなんとかしろよ
中盤以降、若干シリアス


※この小説はフィクションです。実在する人物、施設、団体等とは一切関係ありません。
 予め、ご了承下さい。

※この小説に登場する人物は全員、特殊な訓練を受けています。
 決して真似しないで下さい。

※この小説内の季節は、11月上旬頃になっています。



第131話・世間知らずの戦闘狂

 

side 榛名

 

 

──第603鎮守府、執務室──

()開始55日目。

09:00。

 

 

「榛名、昨日使用した資材の数を纏めたファイルは何処にあるの?」

 

「少々お待ちください」

 えっと……ありました、これですね。

 

「ありがとう」

 

「どういたしまして」

 秘書艦補佐の山城さんが、微笑みながらお礼を言ってくれました。

……山城さん。お疲れのようですね。何時もより元気がありません。まぁ、無理もありません。

 

(つい先程まで、夕張さん達がやらかそうとしていたのを阻止していたのですから……)

 少し前までは真面目だったのに、五月雨さんが色々やらかそうとしたせいで、夕張さんは……その……はっちゃけるようになってしまいました。

 

 夕張さんだけでなく、野原主任も色々やらかすようになりました。

 普段の言動はアレですが、仕事に対しては真面目な方だったのに、何故……。

 

(……考え事をしている場合ではありません。お仕事をしないと!)

 提督に任されたのですから、しっかり務めを果たさないと!!

 

(えっと、これは……大本営からの通達ですね)

 複数あります。まずはこちらから見ましょう。

 一枚目の書類を見ると、()の成果が現れ始めたのか、全国的に異常に巨大化した魚介類の数が減少していると書かれてありました。

 

 確かに、ここ最近榛名達が担当する海域の魚介類の数が、()を開始した頃と比べて、明らかに減少し始めています。

 けれど、まだまだ出現するので完全に駆除(・ ・)するのに時間が掛かりそうです。

 

……さて、次の書類を見ましょう。

 えっと、内容は──

 

(最近、幻聴が聞こえる(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)艦娘が増えてきている、ですか……)

……幻聴。榛名も、2日前から聞こえるようになりました。

 現に、今も──

 

 

『───のまま───後悔───私も───』

 

 

(……一体、どうしてしまったのでしょう?)

 部屋等に1人で居る(・・ ・ ・ ・)時は聞こえないのに、誰かと一緒に居る(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)と聞こえます。

 

 自分でも気が付かないうちに、精神的に疲れているから聞こえるのでは?

 そう思い、医療妖精さんに診てもらいましたが、肉体・精神共に健康だと診断されました。なのに、何故。

 

(提督に相談して、約3週間後に大本営で詳しい検査を受ける事になりましたが、それまでに悪化しないといいのですが……)

 榛名だけでなく、瑞鶴さんや涼月さんも幻聴が聞こえる(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)と言っていましたね。何か、榛名達の知らない病気に掛かってしまったのでしょうか?

 

(……瑞鶴さん、憔悴していましたね)

 話を聞いた所、ここ最近は常に(・ ・)幻聴が聞こえるようになって辛いと言っていました。

 涼月さんも、瑞鶴さん程ではありませんが聞こえる頻度が増えてきたと言っていました。

 

(憔悴で思い出しましたが、翔鶴さんも憔悴していますね)

 榛名達と違い、翔鶴さんは聞こえていない(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)と言っていますが、あの様子──突然周りを見渡したり、手で軽く耳に触れる仕草を見るに、恐らく幻聴が聞こえていると思います。

 

「──榛名」

 

「……はい、何でしょうか?」

 

「あんた、顔色悪いわよ?大丈夫?」

 

「は、はい、榛名は大丈夫です」

 いけない、山城さんに心配されてしまいました。しっかりしないと!

 

 

『──まで──しい───かしら──』

 

 

(……また、聞こえた……)

 本当に何なんですか!?もう嫌……。

 ずっと(・ ・ ・)望んでいた事(・ ・ ・ ・ ・ ・)が。提督と結ばれた(・ ・ ・ ・)というのに、何故……?

 

「……そんな顔で大丈夫だと言われても、説得力無いわよ。ここは私がやるから、あんたは医務室に行って休みなさい」

 

「で、ですが!休んだら山城さんに迷惑を──」

 

「いいから、休みなさい。無理をして倒れられる方が迷惑よ。提督も今のあんたを見たら、私と同じ事を言うわ」

 

「……分かりました。少し、休みます」

 ごめんなさい。この恩は、必ずお返しします。

 

 

side 榛名 out

 

 

───────

────

 

 

side 提督

 

 

──某県某所、駅──

09:00。

 

 

「……雪乃(由良)

 

「はい、何ですか?」

 

「やり過ぎじゃないか?」

 かなり加減していたが、特殊な訓練(・ ・ ・ ・ ・)を受けていない相手にアレはマズいと思うぞ。

 

「いいえ、残当(・ ・)です。だって、

 盗撮と痴漢行為をしていたのですから」

 

「雪乃さん、落ち着いて?」 

 微笑んでいるけど、目が全然笑っていない。おまけに、ハイライトさんが行方不明になっている。

……何時も思っているけど、何でウチの職場(第603鎮守府)の娘達はハイライトさんを行方不明に出来るの?

 

 

 

 

 

 陽菜(陽菜)とのデートから5日が経ち、俺は今雪乃とデートをしている。

 職場(第603鎮守府)から電車に乗り、雪乃のリクエストでY浜に向かっていたのだが、途中トラブルが起きてしまった。

 

 どんなトラブルが起きたのか。さっき雪乃が言ってくれたが、痴漢に遭った。ちなみに、雪乃ではなく俺達の近くに立つ女性が被害に遭った。

 

 雪乃曰く、たまたま視界に男性が女性の身体に触れる様子が見えたそうだ。

 そこそこ混雑していた上に、電車が揺れていたから偶然触れてしまったと思っていたが、確実に身体を触っていたのを見たとの事。

 

 一応暫く様子を見たが、一向にやめる気配が無かったので、雪乃は痴漢行為をしていた人──男性に、満面の笑顔でアイアンクローをぶちかましやがった

……相当力を入れていたのか、手に血管が浮かび上がりまくっていたなぁ。

 

 最初は一般人に何やってんだよ!?って思ったけど、止めようとしたら痴漢をしていたと言われ、拘束するよう指示した。

 しかし、何故か雪乃はアイアンクローをしたままだった。俺は手とか掴んで拘束するよう指示したんだけどなぁ。

 

 そして、次の駅で被害に遭われた女性と、痴漢行為をしていた男性を連れて降り、駅員さんに突き出して色々話をした。

 ちなみに、男性は駅員室に入るまで、雪乃にアイアンクローを(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)されたまま(・ ・ ・ ・ ・)だった。

 

 余談になるが、アイアンクローをされた男性は割と本気で痛がっていて、ガチ泣きしながら悲痛な声で「やめて!」と懇願していた。

 

 閑話休題。

 

 連行し、色々調べた結果。痴漢行為をしただけでなく、盗撮までしていた事が判明。

 その後の詳細を語ると長くなるから簡潔に説明すると、お巡りさんが来て男性は連行された。

 

 そして、被害に遭われた女性や駅員さん、お巡りさん達と色々話をして解放され、今に至る。

 

「痴漢行為は犯罪です。犯罪、ダメ、絶対」

 

「確かにダメだが、だからといってアイアンクローするのはどうかと思うよ?」

 時折、鳴っちゃいけない音が聞こえていたのは気の所為だと思いたい。

 

 下手したら、この場合傷害罪……でいいのか?過剰防衛か?良く分からんが、とにかく訴えられる恐れがある。

 幸い、今回はお巡りさん達から軽く注意されるだけで済んだが。

 

「そういや、何でアイアンクローをしたんだ?」

 痴漢した男性、かなり暴れて逃げようとしたから、アイアンクローするより手を掴んだりして拘束した方が良いと思うんだけど。その事を言うと、

 

「だって……その……」

 

……顔を赤らめているぞ?何を言う気だ?

 

「腕とかを掴んだら、痴漢した野郎()()の身体が。胸が当たる恐れがあったから……。

 ()以外の人に、()の身体や胸を触れさせたくないから、アイアンクローしたの……」

 

……両手の指先だけを合わせ、上目遣いで俺を見ながらなんつー事を言うの。破壊力ヤバい。とにかくヤバい。

 

 私服姿──白いとっくり(・ ・ ・ ・)……間違えた。タートルネックに、紺色……いや、藍色?深緑色か?そんな色をしたスカートと黒タイツを穿き、シンプルな黒いジャケットを纏った雪乃の姿と相まって、可愛く見えて仕方ない。尊い。

 

 かなり気合いが入った服装をしている。パッと見、サキュバス(榛名)と同じく何処ぞの若奥様のように見えなくもない。

 とにかく、そんな姿で上目遣いをしてきたから、ただでさえ無い語彙力が消失した。

 すっげぇ嬉しい。そこまで想われているなんて。

 

……サキュバスで思い出したが、嫌な事件だったね。

 いやぁ、本当にもう少しでパパ良瀬(・ ・ ・ ・)になって、瑞稀達(瑞鶴達)に「パパになりました」と報告する事態に陥りかけた。

 

 幸い、火事場の馬鹿力が発動したのか、喰われる直前。サキュバスの拘束から逃れ、関節技かまして難を逃れたが──やめよう。忘れよう。

 

……そういや、瑞稀達で思い出したが、大丈夫かな。日に日に憔悴していってる。不安だ。

 

(瑞稀達は気にせずデートしてこいと言ってくれたが、大丈夫かな?)

 気になるが、「全員としっかりデートしなさい。じゃないと好意を寄せてくれている娘達に失礼よ」と怒られてしまった。

 薄情かもしれないが、今だけはデートに集中しよう。

 

「……ダメ、でしたか?」

 

「……ダメじゃないけど、場合によっては我慢してくれ」

 おっと、雪乃が不安そうな顔をしている。しっかり受け答えしないと。

 俺の事を想ってくれているのは凄く嬉しい。嬉しいが、それが原因で犯罪者とかを逃がす恐れがある。だから、場合によっては我慢して拘束してください。

 

「……分かりました」

 

 素直に聞いてくれた。けれど、不満なのか軽く頬を膨らませている。可愛い。

……見とれている場合じゃない。フォローしないと。

 

「──あっ」

 

「ほら、そんな顔しないでくれ」

 恋人繋ぎをしてやると、一瞬だけ驚いたがすぐに破顔した。

 頭を撫でようと思ったが、デートをする際の心構え的な物を勉強した際、雑誌やネット等で「女性は頭を撫でられるのを嫌がる」と書かれていたのを見たから、撫でずに手を繋ぐ事にした。

 何でも、せっかくセットした髪が滅茶苦茶になるから嫌がるんだと。勿論、個人差はあるが。

……今まで何かある度に頭を撫でていたから、今後気を付けよう。

 

 

『まもなく、__番線に電車が参ります。危ないですので、黄色い線の内側にお下がりください』

 

 

「おっ、来たか」

 恋人繋ぎをすると、駅員さんの放送が入った。

 田舎だと、次の電車が来るのに一時間以上待つというのに、数分で来た。

 流石都会。時刻表もスカスカじゃない。ビッシリと電車の時刻が書かれている。

 

(初めて見た時、めっちゃ驚いたっけ)

 提督の適性があると判明し、地元を出て都会に向かう時、時刻表を見て驚き、感動したなぁ。

……今は雪乃とデート中なんだ。昔を思い出している場合じゃない。

 

(沢山楽しませてあげなきゃ)

 こうして雪乃と二人きりで出掛けるのは初めてだ。それに、雪乃は艦娘になってから今まで、遊び目的で出歩いた事が1度も無いと言っていた。

 しっかりエスコートしてあげよう。

 

 電車が減速しながら、ゆっくりとホームに近付いて来るのを見ながら、俺はそんな事を考えた。

 

 

──────

 

 

──某県某所──

11:00。

 

 

「へぇ?昔より(・ ・ ・)結構お店があるわね」

 

「人が多いから、あまり余所見するなよ?」

 

「はい♪」

 

 電車に乗り、予定より遅くなったが目的地に着いた。

 そして現在。駅の改札を出て、雪乃が行きたいと言った場所に向かって手を繋ぎながら歩いている。

 

 ちなみに、俺達が居る場所から十数(・ ・)km(・・)離れた所(・ ・ ・ ・)に、大本営(・ ・ ・)がある。

 大本営(・ ・ ・)周辺は、都会!って感じだが、此処は田舎っぽさがある。語彙力無いから上手く説明出来ないが、とにかく俺達が居る所は、田舎っぽい場所だと思ってくれ。

 

 閑話休題。

 

 駅を出て歩いていると、雪乃が周りを見ながら「昔より店がある」と言い出した。

 もしかして、此処に来た事があるのか?そう思い雪乃に質問すると、

 

「……昔、()が住んでいた所なの」

 

 微笑みながらそう言ってきた。

 微笑んではいるが、その顔はどこか悲しげだ。

 

「約10年振り、かな?昔はこんなに建物は無かったの」

 

「…………」

 確か、此処はかつて大都会と呼ばれる所だったが、深海棲艦の侵攻により、甚大な被害を被った。

 その為、三十数年前までは廃墟と化していたが、少しずつ復興され、今ではかつての荒廃した面影は殆ど無い。

 流石に、深海棲艦が出現する前程の賑やかさは無いが、徐々に元に戻りつつある。

 

 余談になるが、あの日の出来事(深海棲艦の侵攻)を忘れない為に、敢えて何箇所か爪痕──砲撃や爆撃された跡を残しているそうだ。

 

 更に余談になるが、此処は昔程では無いが、反艦娘派(・ ・ ・ ・)の人が多く、そのせいで復興が他の所より遅い。

 

 何故、他の所より復興が遅いのか。

 妖精さん達がやれば、あっという間に復興出来るのだが、「得体の知れない存在(妖精さん)に任せられない」と言う人が多かったのが原因らしい。

 

 そうそう。日本には此処の他にも、何箇所か復興が遅れている所がある。理由はさっき説明した通りだ。

 

……確かに、妖精さん達は得体の知れない存在かもしれないけど、向こうはめっちゃ友好的に接して来てくれているんだぞ?悪戯が大好きという欠点はあるが。

 敵意が一切無い事を証明する為、様々な技術や知識を惜しみなく提供してくれているんだ。そのお陰で、今の生活を送れている。

 少しずつでいい。頭ごなしに否定ばかりしないで、歩み寄ってくれよ。

 

「……あっ、あの駄菓子屋さん、まだやっているんだ。懐かしい。昔、良く行ってたなぁ。おばあちゃん、元気にしてるかなぁ?」

 

「……寄るか?」

 足を止め、懐かしむように目を細めて駄菓子屋を見ている雪乃にそう声を掛ける。寄りたいのなら、喜んで付き合うぞ。

 

「……今はいいや。今日はどうしても行かなくちゃならない所があるから、そこに行った後にします」

 

「……分かった」

 そう言って、再び雪乃は歩き出した。

 途中、スーパーに寄り、花と食べ物、飲み物、線香を購入するとスーバーを後にし、再び雪乃に手を引かれ無言で歩き続けた。

 

(……線香を買った、って事は、お墓参りをするのかな?)

 さっき雪乃は、昔此処に住んでいたと言っていた。それに、彼女の両親は既に居ない(・ ・ ・ ・ ・)

 隣で歩く雪乃の顔を盗み見すると、悲しそうな顔をしている。 

 とてもじゃないが、会話出来る空気じゃない。こういう時は話し掛けず、黙っていよう。

 それから、無言で歩き続けると、

 

「……見えてきました。あそこが目的地です」

 

「……お寺?」

 雪乃がそう言って、指をさした。その先には、やや小さいお寺が見えた。

 やっぱり、お墓参りに来たみたいだ。

 

「……ごめんなさい、せっかくのデートなのに、こんな所に連れてきて」

 

「気にしなくていい。あと、こんな所なんて言うな。お寺の人達や、故人達に失礼だ」

 流石に今の言葉は流せないな。少しだけキツい口調で注意すると、

 

「……ごめんなさい」

 

 とても申し訳なさそうな顔をしながら、謝ってきた。

 ちゃんと反省している。なら、これ以上言わない。叱らない。

 恐らくだが、そこまで深く考えずに「こんな所」と言ってしまったのだろう。

 

「今後、気を付けような?」

 安心させる為、微笑みながら優しい声でそう言ってやると、雪乃は少しだけ笑顔を見せてくれた。

 

 それから俺達は年季の入った石段を上り、お寺の敷地内に入ると、水桶と柄杓を借りて水を入れた。

 そして、雪乃が先を歩き、その後を付いて行くと、一つのお墓の前で立ち止まった。

 俺は雪乃の隣に立ち、お墓を見ると、

 

(東家の墓……)

 東。雪乃の苗字だ。つまり、このお墓は──

 

「……お父さん、お母さん、ただいま。10年近く来なくて、ごめんなさい」

 

 悲しそうな顔をしながら、雪乃は目の前のお墓に向かってそう話し掛けた。

 

(……此処に、雪乃のご両親が眠っている)

 当たり前の事だが、ふざけたりするな。最大限の敬意を払え。

 

 良く見ると、丁寧に手入れがされているのか、お墓はとても綺麗だ。それに、誰かがお供え物をしてくれたのか、花や食べ物、飲み物が置かれてある。

 それだけじゃない。既に燃え尽きているが、線香もお供えされていたようだ。灰が新しいから分かる。

 雪乃の親戚の人達か、お寺の人達が掃除やお供え物をしてくれたのかな?

 

……それはそれとして。今更だが、俺は此処に居て良いのだろうか?邪魔じゃないのだろうか?

 そう思っていると、雪乃はお墓から視線を外し、俺の顔を見てきた。

 そして、何を考えているのか分かったのか、無言で俺の手を掴み、強く握り締めてきた。

……分かった。此処に居る。

 

 俺も強く握り返すと、雪乃は少しだけ微笑み、再び墓に視線を戻し、話し掛け始めた。

 

「お父さんとお母さんが、最期(・ ・)に言ってくれたよね?私達の所(お墓)に来るのは、()が幸せを見付けて、得られてからにしなさい、って」

 

「…………」

 雪乃がお墓に向かって話し掛けている。俺はそれを黙ったまま真剣な顔で見続ける。邪魔をしてはいけない。

 

「時間は掛かっちゃったけど、見付けたよ。得られたよ」

 

「…………」

 再び強く手を握ってきた。俺も強く握り返す。

 それから暫く、雪乃はお墓に話し掛け続けた。その間、手はずっと握られたままだった。

 

 それから、雪乃はお墓に話し掛け続け、俺は無言でそれを見守り続けた。

 そして、俺も雪乃のご両親に挨拶……でいいのか?挨拶をして、お供え物と線香を供え、手を合わせた。

 

 

───────

 

 

15:00。

 

 

「大丈夫ですか?」

 

「……あんまり大丈夫じゃない」

 もうね、一切の慈悲も容赦も無かったから、精神崩壊しそうです。

 

 

 

 お墓参りをしてお寺を後にした俺達は、雪乃の提案でさっきの駄菓子屋に寄る事になったんだが、そこでハプニングが起きてしまった。

 

 まず、駄菓子屋に入るとお婆さんが椅子に座って店番をしていたんだが、雪乃が声を掛けると、呆然とした顔で雪乃の顔を凝視した。

 そして、暫く雪乃がお婆さんに話し掛け続けると、椅子から急に立ち上がって雪乃に迫った。

 どうやらお婆さんは雪乃の事を覚えていて、会話した事で雪乃本人だと認識したようだ。

 

 閑話休題。

 

 約10年ぶりの再会に、お婆さんは感動していて泣いてしまった。勿論、雪乃も泣いていた。

 その様子を見て、俺も貰い泣きしそうになったのは内緒だ。

 

……ここまでは良かった。

 感動の再会を邪魔しないよう、気配を消してお店の隅で待機していたら、雪乃が「紹介したい人が居る」と言って、俺の事を紹介してくれた。

 

……ここからが色々凄かった。

 俺を見たお婆さんは、一瞬だけポカンとした顔をした……と思ったら、真剣な顔になって「お前さんは雪乃ちゃんの彼氏か?」と聞いてきた。

 なので、そうですと言おうとしたんだが、

 

 

()旦那様(・ ・ ・)です♪』

 

 

 雪乃が満面の笑みを浮かべながら、とても嬉しそうな声でそう言いやがった。

 いやまぁ、最終的には君の旦那様(・ ・ ・)になるけど、まだ正式に婚約(・ ・ ・ ・ ・)していないから、違うんじゃないの?旦那様(・ ・ ・)になってくれる人、が正解じゃないの?

 

 そう思っていると、「なら、お祝いしなきゃ!」と言って、俺達を店の奥。家の中に連行されてしまった。

 

 それから、丁度お昼時だったからお昼をご馳走してもらい、色々会話をした。

 

 最初は、お婆さんが俺に色々質問してきたから、全部正直に答えた。主に、雪乃の何処に惚れたのか。

 いやぁ、面白かった。俺がどんどん惚れた理由を話すと、雪乃の顔が熟れた林檎のように真っ赤になっていって、アタフタし始める様子を見る事が出来て楽しかった。

 

 ただ、調子に乗り過ぎて喋り過ぎたせいで、雪乃にヘッドロックされた。まぁ、そこまで強くなかったから何ともなかったけど。

 

 

 閑話休題。

 

 

 そして、暫く話をしていると、お婆さんから「どんな仕事をしている?」と聞かれてしまった。

 流石に提督をやっています、なんて言えない。言ったら、色々トラブルが起きる恐れがある。

 

 なので、何て答えようか悩んでいると、雪乃が「提督をしている」と言いやがった。更に、自分は艦娘になったと言った。

 オイオイ、暴露すんな。言葉は悪いが、このお婆さんが反艦娘派(・ ・ ・ ・)だったらどうするんだ?俺だけならともかく、雪乃まで色々言われる恐れがあるんだぞ?

 

 しかし、俺の予想に反してお婆さんは大喜びして「それなら安心だ」と言ってきた。

 どうやらこのお婆さんは艦娘肯定派(・ ・ ・ ・ ・)らしい。

 雪乃もそれを知っていて、俺達の職業を暴露したそうだ。

 

……とまぁ、冷や汗をかく出来事があったが、その後は特に何事も無く会話が続いた。

 雪乃の幼少期の話や、俺の幼少期の話。お婆さんの話。とにかく、平和な会話が続いていた。

 

 しかし、暫くすると地獄の宴が始まる事になった。

……何が起きたかって?

 

 

下ネタ満載の会話が始まった。

 

 

……何で恥じらいとか一切無くあんな事言えるんだよ。お兄さんビックリだよ。

 

……話を戻す。ある程度会話し、話のネタが尽きかけた頃。お婆さんが「お前さんはもう、雪乃ちゃんと初夜(・ ・)は済ませたのかい?」と言い出した。

 

……危うく、飲んでいたお茶を噴き出す所だったなぁ。

 何ですか、いきなり。晩御飯のおかず、何にする?位の気軽さで何を言い出すんですか。

 

……話を戻そう。それを聞かれ、俺はしどろもどろになっていると、雪乃は「今夜()ります♪」と笑顔で答えやがった。

 そしたら、お婆さんは大喜びして、お赤飯炊かなきゃ!だの、子供の名前はどうする?だの言ってきた。

 

 これが切っ掛けになり、その後は終始ピー音が付くような単語がお婆さんと雪乃の口から飛び出し続け……すまん、精神的にかなり疲弊しているから、これ以上説明したくない。思い出したくない。

 

……んでまぁ、下ネタという名の言葉の弾丸を撃ち込まれ、精神という的が蜂の巣にされた頃。

「これ以上お喋りしていたら、せっかくのデートを台無しにしてしまう」とおばあさんが言い、お開きとなった。

 そして、俺達はお婆さんにお礼を言い、駄菓子屋を後にした。

 

 駄菓子屋を出た後。雪乃はデートを再開しようと言ってきたが、俺の精神的疲労が半端なかったので、近くの海を一望出来る公園のベンチに座って休憩して今に至る。

 

「顔色悪いですよ?大丈夫ですか?今からホテルに行ってお休みします?」

 

「行きません」

 気遣ってくれてありがとう。けど、こうなった原因は君です。

 お婆さんと一緒に下ネタを。ピー音が付く単語をマシンガンの如く口から出し続けてくれたせいで、こうなりました。自重してください。

 

 あと、ホテルに行ったら、逆に体力を奪われそうな事をされそうなので行きません。

 それに、まだデートを。雪乃と二人きりで遊んだりしていない。だから、行かないと答えた。

 

「……ごめんなさい、下ネタを言いまくったりして」

 

「……気にしなくていい」

 確かに、言い過ぎかもしれない。けど、耐性の無い俺も悪い。

 既に4人と関係を持っている(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)のだから、純情ぶるな。

 

……今後、下ネタを言われてもアタフタしないぞ。俺は決意したぞ!

……さて、そろそろ行くか。ベンチから立ち、軽く背伸びをする。

 

「もういいの?」

 

「ああ。何時までもこうしていたら、時間が勿体無い」

 せっかくのデートなんだ。何時までもダウンしている暇は無い。

 

「分かりました。それじゃ、行きましょう?」

 

「おう」

 本当は俺がエスコートしたかったが、雪乃に任せる事にした。

 何故なら、さっき駄菓子屋さんで「()が生まれ育ったこの街を案内してあげたい」と言っていたからだ。

 

()のオススメスポットを教えてあげますね?ねっ?」

 

「頼む」

 オススメスポットか。一体どんな所なのだろう?

 期待に胸を膨らませながら、俺は雪乃に手を引かれて歩いた。  

 

 

side 提督 out

 

 

───────

───

 

 

Another side

 

 

──大本営・技術課、???──

01:00。

 

 

「かっ、課長(・ ・)ッ!大変ですッ!!」

 

助手ゥ(・ ・ ・)、どうしたァ?そんなに慌てて」

 何時も言っているだろ?どんな時でも。どんな事があろうと、冷静さを失うな、って。

 新人ならまだしも、お前はこの職に就いて10年近く経つんだ。しっかりしろ。

 

 とりあえず、話を聞いてやろう。何があろうと、俺は驚いたりしない。狼狽えない。冷静に、ドクペを飲みながら受け答えしてやる──

 

 

海蛇(・ ・)動きました(・ ・ ・ ・ ・)ッッッ!!!」

 

 

「なんだとォ!!?」

 冷静にドクペ飲んでる場合じゃねぇ!!流石に今の報告を聞いたんじゃ、冷静で居られねぇ!!

 つーか、アイツまだ頭無い(・ ・ ・)んだぞ!?幾ら蘇生能力(・ ・ ・ ・)異常に高い(・ ・ ・ ・ ・)とはいえ、頭が無い状態(・ ・ ・ ・ ・ ・)で動ける筈が無い!!

 

「と、とにかく来てください!!」

 

「分かった!!」

 色々疑問に思うが、今は海蛇(・ ・)の事だけを考えろ。

 急いで海蛇(・ ・)眠る(・ ・)培養槽に向かうと──

 

「……オイオイ。本当に動いている」

 非常に緩慢だが、確かに手が動いている。

……ん?培養槽の床を、指先で(・ ・ ・)叩いている(・ ・ ・ ・ ・)ぞ?

 それだけじゃない。時折、引っ掻いている(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)

 これは──

 

「も、もしかして、壊そうとしているんじゃ……」

 

「……違う、そうじゃない」

 海蛇(・ ・)の挙動を集中して見ていると、ある事が分かった。

 壊そうとするのなら、拳で叩く筈だ。なのに、床を指先で叩いたり、引っ掻いたりしている。

 何度かその音を聞いていると、ある事に気付いた。それは──

 

(モールス符号(・ ・ ・ ・ ・ ・)か?)

 何度か叩いた後、引っ掻く。そして、また叩いて引っ掻く。

 暫く聞いていると、モールス符号のような音に聞こえてきた。

 もしかしたら、俺達に何かを伝えたいのかもしれない。

 

「……今すぐモールス符号に詳しい奴を連れて来てくれ」

 確か、技術課に一人、モールス符号に詳しい奴が居たな。そいつに任せれば、分かるかもしれない。

 

「えっ!?な、何故──」

 

「いいから、連れて来い!!」

 

「──ッッ!!?了解しましたッ!!」

 

……すまんな、怒鳴ったりして。

 

 

 

 

 

 その後、モールス符号に詳しい奴に聞いてもらった結果、俺の予想通り、モールス符号を打っている事が判明した。

 

 そして、内容も判明した。その内容は────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユキノ(・ ・ ・)、オメデトウ】

 

 

 

Another side out

 

 

───────

────

 





次回予告


……瑞鶴さんと翔鶴さん、涼月ちゃん。そして、榛名さんまでこっち側(・ ・ ・ ・)に来てしまったのね。
 恐らくだけど、由良さんもこっち側(・ ・ ・ ・)に来るわね。
……マズい。非常にマズい。予想よりも覚醒(・ ・)の進行が早い。このままだと、1ヶ月以内にハッキリと読み取れる(・ ・ ・ ・ ・)ようになって、確実に一悶着起きる。主に、矢矧さんと海風さんの思考(・ ・)のせいで。
 矢矧さんと海風ちゃんだけじゃない。夕立(・ ・)ちゃんや満潮(・ ・)ちゃん、それから──
……あはっ。あはははっ。アハハハハハハッッ!!!
 沢山居る(・ ・ ・ ・)!!地雷(・ ・)抱えた(・ ・ ・)ヤッベェ娘(・ ・ ・ ・ ・)が!!沢山(・ ・)!!!
 確実に(・ ・ ・)大惨事大戦(・ ・ ・ ・ ・)が起こる(・ ・ ・ ・)わね!!あははははっ!!あはははははははッッッ!!!
……笑っている場合じゃない。何とかしないと。
……とりあえず、隼鷹(・ ・)にもう一度相談しましょう。


第132話・世間知らずの戦闘狂その2


とある事(・ ・ ・ ・)をしていない()は、妊娠しません(・ ・ ・ ・ ・ ・)。なら、

 このまま私のナカ(・ ・)ぶっ刺さして誤射(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)させても、何も問題ないですよね?ねっ?」


※次話はシリアスが一切無い、ほのぼの(・ ・ ・ ・)とした内容になる予定です。

※フラグを詰め込んだ結果、長くなったので分割しました。

※アイアンクローは、特殊な訓練を受けている人だけにやりましょう。


【補足的なナニか】

・とっくり…タートルネックの別の言い方を指す。
 お酒を入れる徳利(とっくり)の上の部分に似ている為、昔はタートルネックの事を「とっくり」と言っていたらしい。
 作者の両親や祖父母が、タートルネックの事を「とっくり」と言っていたから、未だタートルネックを見ると「とっくり」と言ってしまう……。

・由良…第603鎮守府所属、長良型軽巡洋艦四番艦、由良の適性者、東雪乃(あずまゆきの)を指す。
 とある理由で艦娘になり、一時期最前線に居た事で、常識という物を忘れてしまっている。
 最近は第603鎮守府で過ごした事により、大分常識を取り戻しているが、それでもまだまだ完全に取り戻せていない。
 その為、時折とんでもない言動を取ってしまう。ちなみに、本人に悪気等は一切無い。
 
・海蛇…解析率(・ ・ ・)、60%

以上、補足終了。


※お墓参りの描写(手順)が間違っていた場合は、お手数ですがコメント等で指摘してやって下さい。

デート編、もっと細かく描写するべき?

  • するべき
  • 簡略化しろ
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