追跡鶴   作:EMS-10

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※注意※
考えるな、感じろ
一部、汚い表現が含まれています
お前らの嫁だろ、早くなんとかしろよ


※この小説はフィクションです。実在する人物、施設、団体等とは一切関係ありません。
 予め、ご了承下さい。

※この小説に登場する人物は全員、特殊な訓練を受けています。
 決して真似しないで下さい。

※この小説内の季節は、11月中旬頃になっています。

※この小説は、特定の人物・団体等を批判する意図は、一切含まれていません。
 予め、ご了承下さい。



第135話・一途な後輩

 

side 葛城

 

 

──第603鎮守府、工廠──

()開始66日目。

09:00。

 

 

「この位、普通(・ ・)だって」

 

普通(・ ・)じゃないわよ!明らか変よ!!」

 少なくとも、私には普通(・ ・)に見えない。

……何故、夕張は「コイツは何を言っているんだ?」みたいな顔をしているの?

 

「変ですか?他の人達は普通(・ ・)だ!って言うのに」

 

「他の人達と私を一緒にしないで!」

 自分で言うのもなんだけど、私は未だ(・ ・)まともな感覚(・ ・ ・ ・ ・ ・)を持っている。

 だから、目の前のモノ(・ ・)を見て、普通(・ ・)じゃないと言える。

 

……最近、此処(第603鎮守府)や派遣されてきた人達の言動や思考のせいで、徐々にアッチ側(ヤベー奴側)染まりかけている(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)

 そのせいで、多少おかしい事を目の当たりにしても動揺しなくなって、普通(・ ・)だと受け入れられるようになっちゃった。

 けど、これはおかしい!断言出来る!普通(・ ・)じゃない!!

 

「葛城さんの矢筒に、千歳さんの艦載機格納庫と同じギミックを仕込んだだけなのに……」 

 

「何故仕込んだのよ……」

 何?私に千歳さんのように担いで敵を殴れ、と言うの?やらないわよ?

 

 

 

 

 

 提督とのデートから5日経ったけど、未だあの時の事を。ガチガチに緊張してしまって、迷惑を掛けてしまい、更に勢いに任せて行動してしまった事を後悔(・ ・)している。

 

 覚悟を決めていたのに、いざコト(・ ・)に及ぼうとしたら、あそこまで何も出来なくなるなんて……。

 絶対、面倒臭い女だと思われた……。

 

 それだけじゃない。余裕が無くなってテンパっちゃって、自ら退路を断つ為、ふ、服を脱ぎ捨てて、せ、迫るなんて……。絶対、痴女と思われた……。

 

 提督は「本当に気にしていない」って言うだけでなく、行動でも示してくれたけど、内心呆れているかもしれない。ドン引きしているかもしれない──

 

「葛城さん?」

 

「──ぁ……え?」

 

「どうかされました?お顔が真っ赤ですよ?」 

 

「な、なんでもない!私なら大丈夫!」

 あの時の事を考えていたせいで、ボーッとしていたみたい。そのせいで夕張に心配されちゃった。

 しっかりしなさい、葛城!今は初体験(・ ・ ・)失敗(・ ・)した事を考えないで、夕張に艦載機格納庫を元に戻すよう言わなきゃ。

 

 幸い、目の前にある矢筒は普段使っている奴や、複数ある予備の奴じゃなく、廃材を利用して新たに造った奴だから大丈夫──全然大丈夫じゃないわ。

 

「と、とにかく!私は使わないわ!だから、廃棄して!」

 私はアッチ側の人達みたいに、近接戦闘なんてしない。いいえ、したくない。だから、必要無い。

 

「いやでも、万が一深海棲艦や、演習相手の艦娘に接近された時、持っていれば対応出来て生存率を上げる事が出来ますよ?野原主任の言葉を借りるなら、転ばぬ先の杖。備えあれば憂いなし、って奴です!」

 

「接近される前に仕留めるし、万が一接近されたら、標準装備している機銃(・ ・)で対応するわ。だから、いらない」

 今までそうしてきて、何とかなった。だから、廃棄して。

 

「えぇ〜ッ!?せめて一回位使ってくださいよ!そして、感想を聞かせて!!」

 

「嫌よ!!」

 やりたくない!恥ずかしい!それに、私はアッチ側の人達みたいに動けないわ!!あんな化け物染みた動き、私には無理よ!!

 

「それじゃあ、飛行甲板!今ならスパイクでもブレードでも付けますよ!?」

 

「飛行甲板でもダメ!というか、飛行甲板は近接武器じゃないわ!」

 

「それじゃ、何か近接武器を携行──」

 

「近接戦闘から頭を離しなさい!!」

 何でそこまで近接戦闘をさせたいの!?意味が分からないんだけど!?

 

「……何をされているのですか?」

 

「す、涼月!?」

 夕張に迫られていると、端末を手に持った涼月に声を掛けられた。

 涼月だけじゃない。連装砲ちゃん達も居る。

……あ、手を振ってくれた。可愛い──今は癒されている場合じゃないわよ。

 

「夕張さんに頼まれていた艤装の稼働データをお持ちしたのですが……もう一度お聞きします。何をされているのですか?」

 

 涼月に視線を向けると、呆れたような顔をしながら聞いてきた。何があったのか説明しなきゃ。

 

「……葛城さんが嫌がっているのに、無理矢理勧めるのは良くありませんよ?」

 

 私の説明を聞くと、涼月は私に味方してくれた。

 この娘、少し前のトラブルメーカーっぷりが鳴りをひそめ、最近は──提督とデートしてからは、養成所の時のようなお淑やかで真面目な娘に。まとも(・ ・ ・)になってくれた。だから、こうして夕張に注意をしてくれた。

 もし涼月が以前のまま(ゾンビ)だったら、きっと夕張に味方していたかもしれない。

 

「うーん……普通(・ ・)だと思うんだけどなぁ……」

 

「涼月達の普通(・ ・)と葛城さんの普通(・ ・)は全然違います。涼月達の価値観を押し付けるのはやめましょう?」

 

……失礼な事を言われた気がするけど、ツッコミ入れるのはやめよう。

 

「はぁ〜い。やめるわ。あーあ、葛城さんに近接戦闘デビューさせたかったのになぁ……」

 

……絶対デビューしないわよ、絶対に。

 夕張は愚痴をこぼしながら涼月から端末を受け取り、解析を開始した。

 とりあえず、何とかなった……のかしら?

 

「葛城さん、大丈夫ですか?」

 

「えぇ。涼月が止めてくれたから、大丈夫よ。ありがとね」

 もし涼月が来てくれなかったら、今頃夕張にオモチャ(・ ・ ・ ・)にされていたかもしれない。

 涼月の目を見て(・ ・ ・ ・)お礼を言うと、

 

「…………」

 

「だ、大丈夫?」

 まただ。また(・ ・)辛そうな顔(・ ・ ・ ・ ・)をしてる。

 

 ここ最近、瑞鶴(・ ・)さんや翔鶴(・ ・)さん、榛名(・ ・)由良(・ ・)さんも、目の前の涼月(・ ・)のように辛そうな顔をするようになった。

 こんな顔をする時は、決まって幻聴が聞こえた(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)と言ってくる。

……そういえば、

 

(提督に「幻聴(・ ・)は聞こえないか?」って聞かれたっけ)

 デートをした翌日、提督に呼び出されて執務室に行くと、真剣な顔でそう聞かれたっけ。

 

 提督によると、「俺とデートした人は、翌日から幻聴(・ ・)聞こえる(・ ・ ・ ・)ようになる」らしいけど、何故か私だけ(・ ・ ・)全く聞こえない(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)

 

(何が原因なのかしら?)

 デートした皆は聞こえる(・ ・ ・ ・)のに、私だけ(・ ・ ・)聞こえない(・ ・ ・ ・ ・)

……なんか、逆に不安になってきた。

 一応、医療妖精さんに診てもらったけど、異常は一切見当たらないと言われちゃった。だから、今度大本営のカウンセリング課に行って精密検査を──

 

「……すみません、気分が優れないので、医務室に行って少し休みます」

 

「──分かったわ。付き添ってあげる」

 本当に具合が悪いのか、涼月は青白い顔をしてる。このままだと倒れる恐れがあるから、医務室まで付き添ってあげましょう。

 

「お手数お掛けしてすみませんが、お願いします……」

 

「気にしないで?ほら、掴まって?」

 涼月の事だから迷惑をかけないよう断わってくると思ったけど、頼まれちゃった。

 つまり、それ程余裕が無い状態なのかもしれない。

……考え事をしていないで、涼月を医務室に連れて行かなきゃ。

 

 

side 葛城 out

 

 

───────

────

 

 

side 提督

 

 

──某都某所──

07:50。

 

 

「……せんぱい、返してください」

 

「断る。絶対に返さん。絶対に、だ」

 返したら使うだろ?というか、

 

「お前、コレ(・ ・)ソレ(・ ・)と一緒に服用(・ ・)するのか?」

 正気か?ヤバいだろ。言葉は悪いが、流石の俺も引くわ。

 

「はい!一発で目が覚めますよ?」

 

「ドヤ顔で何言ってんだよオメーは……。その言い方からして、何度かやっているな?」

 

「は、はい。やっています……」

 

「……何時からだ?」

 

「……今の仕事(艦娘)を始めた時からです」

 

 おいおい、マジかよ。それじゃあ、6年近くもやっているのか!?

 向こうの職場(第8492離島鎮守府)居た時(所属していた時)だけでなく、仁美がウチの職場(第603鎮守府)に来てからもやっていたというのか?全然気付けなかったぞ!?

 いや、時々モ○エナ(青)を飲んでいるのは知っていたが、コレ(・ ・)と一緒に服用しているのは知らなかった。

 明日からもっと部下の動向に気を配ろう(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)

 

「……いいか、もう二度とコレ(・ ・)ソレ(・ ・)服用(・ ・)しないと誓え。じゃないと、デートを中止するぞ?あと、今後二度とお前とデートに行かない」

 卑怯かもしれないが、切り札(・ ・ ・)を切らせてもらう。

 真剣な顔で警告すると、

 

「んぅ……わ、分かりました。今後二度と、エスタロンモカ(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)をモ○エナで服用しません……」

 

「よーし、言質取ったぞ。ス○ホのボイスレコーダーにしっかり録音したからな?二度とやるなよ?」

 素直に言う事を聞いてくれた。素直な子は好きだぞ。

 

「はい……二度としません……」

 

「……意地悪する為に脅しているわけじゃない。お前の事が心配だからやめて欲しいんだ」

 幾ら特殊な訓練を受けている存在(艦娘)だからって、限度がある。

 

 

 

 

 

 

 

……いきなりお前は何をしているんだ、だって?

 阿武隈──じゃない。仁美の奴が狂行(・ ・)に走ろうとしたから、それを阻止する為に切り札を切ったんだ。俺は悪くない。

 

……詳細を話せ?いいぜ、話してやる。

 仁美の奴、俺とのデートが楽しみ過ぎて、昨夜まともに眠れなかったそうだ。

 そのせいで目的地に着いても仁美は眠気に襲われていて、このままだとダメだと判断したのか、近くの自販機に寄りモ○エナ(青)を購入。飲んで眠気を吹き飛ばそうとした。

 

 それだけなら良かった。だが、仁美は何を血迷ったのか、バッグからエスタロンモカ(錠剤)を取り出して、それをモン○ナ(青)で飲もうとしやがったんだ。

 

 少し話を脱線させるが、エスタロンモカについて説明させてもらう。

 コイツは薬局等で売っている薬で、服用すると眠気や眠気による倦怠感を吹き飛ばす事が出来る。

 

 詳細を語ると長くなるから簡単に言うとだな、エスタロンモカにはカフェインが大量に含まれている。

 水で服用するべき薬なのに、仁美の奴はカフェインが大量に含まれているモ○エナ(青)で服用しようとしやがった。

 

 そんな事をすれば、一日で摂取して良いカフェインの量を大幅に超える。つまり、身体に負担が掛かってしまう。

 それを阻止する為、俺はエスタロンモカを没収し、今後二度と○ンエナで服用しないよう注意し、今に至る。

 

 以上、説明終了。

 

「ごめんなさい……失望しました?」

 

「失望なんかしていない。さっきも言ったが、仁美の事が心配なんだ」

 あんな事をすれば、身体──特に心臓に強烈な負担が掛かる。

 今は大丈夫でも、繰り返していれば何れ必ず症状が現れる。

 だから、卑怯な手を使ってでも止めさせたかった。

 この事を話すと、

 

「もう二度としません。誓います」

 

 真剣な顔でそう言ってくれた。様子を見る限り、しっかり反省している。

 なら、これ以上この事でグダグダ言わない。

 

「なら、信じる。これはお前に返す」

 そう言って、俺は仁美にエスタロンモカ(錠剤)を返した。

 

「えっ!?で、でも──」

 

「用法用量を正しく守るのなら、今後も服用して構わない。だから返す」

 

「……ありがとうございます」

 

「ん。それじゃ、気を取り直してデートすっか」

 

「はい!……あっ、コレ飲んでからでいいですか?」

 

「……いいぞ。ゆっくり飲みな」

 いけね、まだ仁美はモン○ナ(青)を飲んでいなかった。流石に歩きながら飲むのは行儀が悪い。

 それに、人が多いからぶつかって零す恐れがある。

 とりあえず、飲み終わるまで周囲を見て時間を潰そう──

 

「お待たせしました!」

 

「早ッ!?5秒も掛かってないぞ!?」

 俺、言ったよね?ゆっくり飲みな、って。

 

「はい!せっかくのデートだから、時間を掛けるわけにはいかないので急いで飲みました!」

 

「本当に飲み終わったの?側溝とかに流していないよな?」

 もしそうだったら、環境破壊をしただけでなく、飲み物を粗末に扱ったから、口じゃなくて肉体言語でお説教してやる。

 

「本当に飲みましたよ?」

 

「いや、でも、炭酸飲料じゃん。絶対5秒じゃ飲み切れないって」

 俺が研修生(提督候補生)の時、研修所(養成所)で浦樹と悪ふざけでモ○エナを一気飲みした事あるけど、半分飲むか飲まないかの所でヤバい事になった記憶がある。

 

 コーラ等の炭酸飲料と比べれば、モ○エナの炭酸は弱めだ。しかし、確実に喉にダメージが入る。

 それを、5秒掛かるか掛からないかで飲み干せるって……。

 

「……あたし、以前居た職場(第8492離島鎮守府)で宴会の度に、炭酸飲料の一気飲みをさせられていたから、身体が慣れちゃって……あはははっ……」

 

「……嫌な事思い出させちまったな。ごめん」

 仁美さん、しっかりして?虚ろな目をして乾いた笑い声出さないで?心に()る。

 

「1.5ℓのコーラ……一気飲み……あははっ……」

 

「思い出すな……もういい……思い出すな……」

 アカン。ダークサイドに堕ちかけている。と、とりあえず、慰めてあげよう。

 仁美の髪を崩さないよう優しく抱きしめ、これまた優しく声を掛けてあげた。

 周囲の人達に好奇の視線を向けられているが、気にしない。

……おっ、抱きしめ返してくれた。

 

「……せんぱい」

 

「……なんだ?」

 あら、お目目が大変な事になっちゃってる。ハイライトさんが職務放棄しちゃっています。ハイライトさん、仕事して?

 

「疑っているのなら、実演しますよ?

 1.5ℓのコーラを買って、目の前で飲み干しますよ?」

 

 

「しなくていい。俺、信じる。超信じる。だから、やらなくていいよ?」

 迫真と付きそうな顔で何を言い出すの、君は。

 ガッツリお洒落──黒いタートルネックに、クリーム色のショートスカート、フード付きの白いモッズコート。そして、黒タイツを穿いたパツキン(金髪)美少女が、1.5ℓのコーラを一気飲みするなんて……絵面がシュールというか、ある意味凶悪過ぎる。

 

……あっ、服の名前だけど、まだまだ完璧に覚えきれていないから、間違っていたら指摘してやってくれ。

 

 閑話休題。

 

 もしそんな事をやったら、動画や写真を撮られてT○itterとかに投稿されちゃうよ?絶対数万リツイートやお気に入りされちゃう。

 そんな見世物になろうとしなくていい。やるのは俺だけでいい。だから、近くのコンビニに行こうとするな。

 

「大丈夫です。火傷する(・ ・ ・ ・)のに慣れています。だから、実演しま──ガフッッ!!?」

 

「……………………」

 仁美が、喋っている途中で()を出した。

 これって、もしかしなくてもゲッ──やめよう。何も考えるな。

 

「……………………」

 

「……………………今日は気温が低いから、暖かい所に行こう。じゃないとけっくり(・ ・ ・ ・)が出ちまう」

 今、仁美が変な()を出したが、あれはけっくり(・ ・ ・ ・)──しゃっくりだから。

 決して、炭酸ガスが口から出た()じゃない。誰がなんと言おうが、しゃっくりだ。

 お前らはしゃっくりの()を聞いた。いいね?(迫真)

 

「…………………………」

 

 仁美さん、お顔。美少女がしちゃいけない顔してるよ?

 

「………………あ、そうだ、ちょっとトラックに轢かれてこなきゃ」

 

「いきなり何を言い出すの?」

 幾ら特殊な訓練を受けているとはいえ、大惨事になっちゃうよ?あと、トラックのドライバーさんに迷惑を掛けちゃうからやめなさい。

 

 

 この後、滅茶苦茶説得(チョークスリーパー)した。

 幸い、俺達の居る周辺は賑やかだったから、周囲の人達は仁美がしゃっくりした()を聞いていなかった。

 

……仁美、安心しろ。この事は墓場まで持っていく。

 だから──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もうあたしに失う物はありません!仁美、行っき(一気)ま〜す!」

 

「行かなくていい!!」

 俺にけっくり(・ ・ ・ ・)を聞かれた事で仁美の中の何かが壊れたのか、自販機に売っていた強炭酸飲料を買って一気飲みしようとしている。

 

 なんだよ、「中途半端なけっくり(・ ・ ・ ・)だったから、全力全壊(・ ・ ・ ・)けっくり(・ ・ ・ ・)を聞かせてあげます!」って!!

 

……あっ、こら!買うな!やめなさい!!チョークスリーパーされたまま、飲み物を購入しようとするな!!

……買いやがった。これは没収!俺が飲む!!

 いいか、俺が見本を見せてやる。本当のけっくり(・ ・ ・ ・)って奴を聞かせてやる!!聞いとけよ聞いとけよ〜?

 

 

───────

 

 

10:50。

 

 

「──だから、こう言ってやりました。あたしは死にましぇ〜ん!って」

 

「何処の武○鉄矢さんだよ」

 コイツ、おもしれーわ。外見は劇的に変化したけど、こういう所は学生時代の頃から全くと言っていい程変わっていない。

 

「まぁ、見事に大当たりを引いて死にましたけど……」

 

「死亡フラグの回収早過ぎない?」

 言った直後に大当たり引くって、運悪いな。

 

 

 

 

 

 

 はい、説明タイムに突入するぞ〜。投げやりになっているが、気にしないでくれ。

 

 今から数時間前。自販機で仁美が強炭酸飲料を買って一気飲みしようとしたから、俺が飲んで阻止した。

 

 いやー、キツかった。炭酸飲料は好きなんだけど、今まで飲んできた物とは比べられない程に炭酸が強烈だった。

 お陰で、やらかした(・ ・ ・ ・ ・)

……詳細を語ると、あまりにも汚い話になるから割愛するが、やらかした(・ ・ ・ ・ ・)俺を見た事で仁美は正気に戻ってくれた。

 

 そして、その後空き缶をゴミ箱に捨て、本日の目的地の一つ──仁美が行きたいと言っていた、テレビや雑誌等で何度も紹介された事のある、某有名パンケーキ店に向かった。

 

 なんでも、そのお店はお洒落なパンケーキを提供してくれる事で有名で、日本全国から足を運ぶ人が多い。

 勿論、見た目も美しいが、味も抜群に良いそうだ。

 

 その為、開店数時間前でも長蛇の列が出来る程の人気店だから、早起きして電車に乗って来たんだが……08:10頃にお店の前へ行くと、既に10人以上並んでいた。

 尚、並んでいる人達は全員女性だった、と言っておく。

 

 急いで俺達も列に並んだんだが、数分しないうちにどんどん俺達の後ろに人が並び出して、あっという間に長蛇の列が形成された。

 あと少し並ぶのが遅かったら、開店後も数時間近く並ぶハメになっていたかもしれない。

 

 どうでもいい事かもしれないが、俺達の後ろに並んだ人達は殆どが女性で、男性は数人しか居ない。

……なんか、上手く言えないけど、俺はここに居ていいのか不安になってきた。

 

 閑話休題。

 

 開店を待つ間、俺達は時間を潰す為に仁美と色々会話──主に、学校を卒業し、再会するまでの間の事を話して今に至る。

 

 ちなみに、今は仁美が以前居た職場(第8492離島鎮守府)の話を聞かせてもらっているんだが……もうね、想像以上にぶっ飛んだ所だね。

 瑞稀(瑞鶴)静流(翔鶴)から何度か話を聞いた事はあるが、ここまで詳しく聞いた事が無いから、改めてヤベー所だと認識した。

 

 詳細を語るとエラい長くなるから、どんだけぶっ飛んでいるか分かりやすく一言に纏めるとだな、アレだ、ヤ○チャ視点。もう、そうとしか言えねぇ。

 

 ウチの職場もヤベー奴らばかりしか居ないけど、アレでも未だ未だ大人しい方だったのね。お兄さんびっくりだ──

 

「それ以来、ロシアンルーレットが苦手になっちゃって……うぅ……思い出したら、口の中が辛くなってきた気がする……あはっ……あははははっ……」

 

「お、落ち着け。今はパンケーキの事だけを考えようぜ?仁美はどれを食べたい?」

 イカン、仁美がロシアンルーレット──激辛おはぎの犠牲者になった事を思い出して、ダークサイドに堕ちかけている。

 かなり強引だが、パンケーキの話題を振って逸らそう。

 

「……ボリュームある奴がいいです」

 

「ボリュームある奴……これかな?」

 少し前、店員さんに手渡されたメニュー表を見て、一つのパンケーキの写真を指さす。

 

……なんか、こいつだけ他のパンケーキと比べて迫力と言うか、オーラが違う。語彙力無いからこうとしか言えない。許して?

 

 話を戻そう。俺が指さした写真には、かなり大きめの分厚いパンケーキに、これでもかっ!って位にクリームと様々なフルーツが乗せられている。見ただけで胸焼けを起こしそうだ。

 

「コレがいいです!」

 

「そ、そうか……」

 わーお、お目目がキラキラしていらっしゃる。

……いやいや、待て。

 

「食べ切れるか?」

 食べたい気持ちは分かる。だが、説明文を見る限り、かなりのボリュームがあるみたいだぞ。

 現に、シェアして食べる人が多い、って書かれてるし。

 勿論、食べ切れないのなら俺も手伝う。だが、もしかしたら仁美は途中でギブアップし、大量に残す可能性がある。不安だ。

 なので、確認したが──

 

「余裕です!」

 

 超ドヤ顔で返事してきやがった。本当に大丈夫なのか──いや、待て。大丈夫かもしれない。

 

(コイツは。仁美は、こってりした食べ物が大好きだったな)

 最近忘れかけているが、学生時代、仁美はそういったカロリーの高い物を好んで食べていた。

 現在も、ウチの食堂で時々、ゴテゴテした料理を作って一人で食べたりしている位だ。

 

 閑話休題。

 

(もしかしなくても、完食するだろう)

 かなり細身の体型をしているが、仁美はウチの職場の「大食いトップ3」と呼ばれる程の大食いだ。

 ちなみに、その大食いトップ3は麻子さん(加賀さん)(大鳳)仁美(阿武隈)で構成されています。

 

……大食いな女性に対して、何も思わないのかって?

 食材を粗末に扱う──残したり、汚く食べたり。自分の限界を超えて、無理して食べたりしないなら、どれだけ食べても構わないという考えだから、何も思わん──

 

「せんぱい、オープンしましたよ?」

 

「──ん?そうか」

 考え事をしていたら、仁美に声を掛けられた。どうやら開店したようだ。一旦思考を中断しよう。

 

 

───────

 

 

「まだかな?まだかなぁ〜?」

 

「気持ちは分かるが、落ち着け」

 まぁ、俺もワクワクしてるから仁美の事を言えないが。

……あ、隣の席の人達がパンケーキにス○ホを向けて、様々な角度から写真を撮りまくってる。

 それに、「イ○スタに投稿しよう!」とか言ってる。

 確かに、芸術品のような美しさがあるから、写真を撮ってインス○に投稿したくなるわな。

 

(仁美の奴も、写真を撮ってインス○に投稿するのかな?)

 ちょっと気になる。仁美は可愛い物やお洒落な物が好きだから、きっと写真を撮るだろう。

 どんな風にはしゃぎながら写真を撮るのだろう?なんか、楽しみだ。

 

「はぁ〜い……にしても、直ぐに座れてラッキーでしたね」

 

「だな。早起きした甲斐があったよ」 

 お陰で少しだけ眠気があるが、黙っておこう。じゃないと、仁美に余計な心配を掛けてデートを台無しにしちまうからな。

 

(……にしても、落ち着かない)

 ふと店内を見ていると、待っている間にも思ったが本当に男が居ていいのか?と思ってしまう。

 まぁ、仁美と居るから大丈夫だと思うが、それでも不安になる。

 

「……どうしました?せんぱい。そんな不安そうな顔をして」

 

「……いや、その、お店の雰囲気というか、なんというか……男がここに居ていいのかなぁ、って思っちまって……」

 

「気にしなくていいと思いますよ?別に女性専用店、ってわけじゃないんですから」

 

「そ、そうか……」

 けどなぁ……上手く言葉に出来ないが、居心地の悪さがあるというか……うーん、ダメだ。説明出来ん。誰か、語彙力をくれ。

 

「……それにしても、せんぱいはアプリコット(・ ・ ・ ・ ・ ・)のパンケーキを頼みましたかぁ……」

 

「なんだ?ダメだったか?」

 自分の語彙力の無さに軽く絶望していると、仁美がそう言ってきた。

 なんだよ、似合わないってか?仕方ないだろ?久々にアプリコット(・ ・ ・ ・ ・ ・)を食べたくなったんだから。

 

「いいえ、ダメじゃないです。ただ……」

 

「ただ?」

 

「昔の事を。あたしとせんぱいが学生時代だった頃の事を思い出しちゃって……。

 あの頃、あたしがせんぱいに会う度に、せんぱいはアプリコット(・ ・ ・ ・ ・ ・)を食べていましたから……」

 

「あー……確かに食べていたなぁ」

 懐かしいなぁ。

 

「けど、あたしがせんぱいの職場に行ってからは、全くと言っていい程アプリコット(・ ・ ・ ・ ・ ・)を食べなくなりましたよね?どうしてですか?」

 

「あー……それはだな……」

 なんて説明すりゃいいんだ?

 俺がアプリコット(・ ・ ・ ・ ・ ・)を食べるようになったのは、瑞稀が狂い始めた(・ ・ ・ ・ ・)頃。

 俺が高校1年の秋頃、瑞稀を放置して公園に散歩しに行った時に偶然出会った、泣きボクロが(・ ・ ・ ・ ・ ・)特徴的(・ ・ ・)な、小学生の高学年から中学生位の年齢の、薄い青色の髪(・ ・ ・ ・ ・ ・)をした少女(・ ・)が切っ掛けだった。

 

……最初、服装が男の子(・ ・ ・ ・ ・ ・)っぽかった(・ ・ ・ ・ ・)のと、フードを目深に被っていて、顔が少しだけしか見えなかったから男の子かと(・ ・ ・ ・ ・)思った(・ ・ ・)んだが、女の子(・ ・ ・)だと分かって驚いた(・ ・ ・)記憶がある。

 

「……あたしから話を振っておいてなんですけど、言い辛いなら、言わなくても大丈夫ですよ?」

 

「……いや、大丈夫だ。ただ、何処から話せばいいか分からなくてな」

 俺が一時期、狂ったようにアプリコットを食べるようになったのには、色々と理由がある。

 その事を一から説明するとなると、かなり時間が掛かってしまう。

 だから、

 

「話すと長くなるから簡単に説明するとだな、俺がアプリコットを食べていた理由は──」

 

 

 

 

「お待たせしました。こちら、アプリコットのパンケーキです」

 

「あ、はい!」

……タイミングが良いのか悪いのか、注文したパンケーキが届いた。

 俺の注文した物だけでなく、仁美が頼んだ物も届いている。

 俺のと比べると、明らかに破壊力がありそうな見た目をしている。スゲーな、オイ……じゃなくて。

 

「……話すのは、食べ終わってからにするか」

 そう提案すると、

 

「……いえ、食べ終わったらすぐに出た方がいいです。じゃないと、外で待っている人達に視線で射殺(・ ・ ・ ・ ・)されます」

 

「……分かった」

 確かに。俺達が居るのは、カフェといったのんびり過ごせる場所じゃない。

 のんびりしていたら、順番待ちしている人達を苛立たせてしまう恐れがある。

 ここは仁美の言った通り、さっさと食べて、食べ終えたらさっさと会計を済ませて退店した方が良さそうだ。

 

……つーか、なんだよ、視線で射殺って。例え方が物騒過ぎない?

……まぁいいや。ツッコミ入れるのやめよう。

 

 さて。気持ちを切り替えて、パンケーキを食べるとするか。

 俺は甘い物が好きだから、この位だったら直ぐに平らげる事が出来そうだ。

 

(にしても、お洒落だなぁ)

 ナイフとフォークを持ち、食べようとしたんだが、思わず食べるのを躊躇ってしまった。それ程見た目が良い。まるで芸術品のようだ。

 なんか、写真を撮りたくなってきた。そう思っていた時だった。

 

「それじゃあ、いただきます♪」

 

「……えっ?」

 仁美がご機嫌そうな声で、いただきますと言うのが聞こえた。

 あ、あの、仁美?写真は?インス○に投稿しないの?

 てっきりス○ホを──あ、コイツはiP○oneだったな。

 iPh○neを取り出して写真を撮りまくると思ったんだけど、そんな素振(そぶ)りは一切見せず、ナイフとフォークを持ってパンケーキを切っている。

 

「ん?なんですか?」

 

「い、いや、その……写真は撮らないのか?インス○とかに投稿しなくていいのか?」

 なので、疑問に思った事を聞いた。

……あの、仁美……さん?何ですか、そのお顔。さっきまでの笑顔は何処に行ったの?頭にヤの付く人がカチコミする時みたいな、おっかないお顔をしていらっしゃいますよ?

 今の君のお顔を見ていると、仁義なき戦いが脳内再生されちゃう。ほら、そんなお顔しないで、何時もの可愛いお顔に元に戻そう?

 

「…………せんぱい」

 

「な、なんでしょう?」

 お顔だけじゃない。声もおっかなくなっています。一体どうしちゃったの?

 

「何がイン○タ映えですか。確かに、このパンケーキは芸術品のような美しさがあります。ですが、写真なんか撮っていたら、出来たてを食べる事が出来なくなります。

 なので、あたしは写真なんか撮りません。さっさと食べます」

 

「そ、そうか……」

 仁美さん、落ち着いてください。威圧感出さないで?

 

「とにかく、注文した料理が届いたら……」

 

「と、届いたら?」

 あ、威圧感増した。仁美の身体から、黒いオーラが吹き出しているように見える。ついでに、ゴゴゴゴゴ……って擬音が聞こえる気がしてきた。

 

「写真なんか撮ってないで──

 

 

さっさと食えッッ!!!」

 

 

 

 

…………何でだろう?仁美の顔に集中線が付いて、「さっさと食え!」の言葉にエコーが掛かったような気がする。

 誰かが映像と音声を編集したのかな?

 

「ほら、早く食べましょう?」

 

「……ハイ、ワカリマシタ」

……ここは写真を撮らず、食べる事にしよう。じゃないと、仁美に怒られる気がする。

……なんか、周囲の人達がこっちを睨んでるけど、気の所為だね。うん。

……あ、おいしい。

 

 

side 提督 out

 

 

───────

────

 





次回予告


……提督は吹っ切れたのか、好意を寄せる人達と次々にデートをして、抱いて(・ ・ ・)いる。
 もう、逃げたりしなくなった。迷わなくなった。覚悟を決めてしまった。
……はっ。ははっ。あはははっ!!あはははははっ!!!
……落ち着け。落ち着くのよ、矢矧。まだ、全部終わったわけじゃない。
 チャンスは、まだある。だから、焦らずに行きましょう。


第136話・一途な後輩その2


「絵面を気にしていたら、何も出来なくなるって一番言われてますから、それ!」


【補足的なナニか】

・エスタロンモカ…眠気を防止する医薬品を指す。薬局等で購入可能。
 カフェイン等が大量に含まれており、服用すると眠気や眠気による倦怠感を吹き飛ばす事が出来る。
 モンエナやレッドブル等のエナジードリンクと一緒に服用すると、エラい事になる。
 身体。特に心臓に強烈な負担が掛かる為、決して真似しないでください。下手したら死にます。

・けっくり…しゃっくりの方言。地域によって、言い方が異なる。

・あたしは死にましぇ〜ん!…ドラマ、「101回目のプロポーズ」で、「武田鉄矢さん」演じる「星野達郎」が言い放った迷台詞、「僕は死にましぇん!」が元ネタ。
 本当は「死にません」と言うべき所だったが、「死にましぇん!」と言ってしまったらしい……。

・ヤムチャ視点…一体、皆何と戦っているんだ……?動きが速過ぎて、常人には理解できない・見えない状態を表す。
 詳細は「ヤムチャ視点」で検索!

・阿武隈…第603鎮守府所属、長良型軽巡洋艦六番艦、阿武隈の適性者、鈴木仁美(すずきひとみ)を指す。
 第603鎮守府を運営する提督、渡良瀬準少佐の学生時代──高校の後輩。
 学生時代は今と違い、体格はふくよかで、髪はボサボサの黒髪、視力が悪くメガネをしていた地味な子だった。
 しかし、当時の渡良瀬少佐と出会い、恋をした事で色々努力し、大幅にイメチェンした。
 恋をした理由は、当時いじめに遭っていた所を救われ、色々ケアしてくれたかららしい。

・アプリコット…渡良瀬準少佐が学生時代、常にと言っていい程食べていた。
 それには、とある理由があるらしい……。


【特殊補足】

・アプリコットの花言葉…「乙女のはにかみ(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)」、「遠慮」、「不屈の精神(・ ・ ・ ・ ・)」、「気後れ」、「疑い(・ ・)」。
 そして、誘惑(・ ・)


以上、補足終了。


※フラグ立てました。

デート編、もっと細かく描写するべき?

  • するべき
  • 簡略化しろ
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