追跡鶴   作:EMS-10

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 明日から社会人になる皆様。楽しい楽しい社畜生活が始まるぞォ!なぁに、最初は戸惑うかもしれんが、そのうち慣れて楽しくなるぞォ?多分。
 扶桑の胸に押し潰されて、窒息死したい(挨拶)


※注意※
R17.9描写が含まれています
序盤、グロテスクな表現有り



※この小説はフィクションです。実在する人物、施設、団体等とは一切関係ありません。
 予め、ご了承下さい。

※この小説に登場する人物は全員、特殊な訓練を受けています。
 決して真似しないで下さい。

※この小説内の季節は、11月中旬頃になっています。



第137話・お茶目な大和撫子

 

side 阿武隈

 

 

──第603鎮守府、演習海域──

()開始70日目。

08:30。

 

 

『──そこっ!』

 

「きゃっ!?嘘でしょ!?」

 被弾した!?そ、そんな……フェイント掛けていたのに!

 

『阿武隈さん!動きがバレバレですよ!』

 

「そ、そんなぁ!?」

 うぅ……結構不規則な動きをしているんだけどなぁ。

 流石、横須賀鎮守府所属の艦娘。かなり強い。

 

 何度も砲雷や雷撃、甲標的、瑞雲を使って攻撃しても、尽く回避されちゃう。

 あたしは回避していても、次々に被弾しちゃった。現在、大破寄りの中破寄状態。

 そのせいで、主砲や副砲といった飛び道具は全滅。

 それだけじゃない。甲標的は爆雷で破壊されちゃった。瑞雲も、殆ど撃ち落とされて残り一機しか無い。

 

 対して、演習相手の吹雪ちゃんはほぼ無傷。弾薬も、強化された視力で見た所、予備弾倉を所持しているから未だ未だ余裕がある。

 

 明らかに劣勢。このままだと、あたしは──

 

 

 

 

 

 

 提督(せんぱい)とデートをしてから4日が経った。

 抱かれた(・ ・ ・ ・)事で、漫画やアニメのように何かが劇的に変わると思っていたけど、驚く程何時もと変わらない日常が続いてる。

 そのせいで、最初はちょっとショックを受けちゃった。

 

 けど、その何時もと変わらない日常を、たった4日だけど送っていて「大切」だと気付く事が出来た。

 

 今までは好きな人(提督)や皆と共に過ごせる事が「当たり前」だと思っていたけど、なんて言えばいいのかな?「かけがえのないもの」だと思えるようになった。

 

 それに、今までは常に焦りや不安といったモノがあったのに、提督に抱かれた(・ ・ ・ ・)事で精神的に余裕が生まれて、視野が広くなった気がする。

 それだけじゃない。今は以前のように、直ぐ弱音を吐いたり弱気にならなくなった。

 

 だから──

 

(弱気になるな!まだまだやれる!まだ、勝負は終わってない!あたしはまだ、戦えるッ!)

 吹雪ちゃんにボコボコにされても、戦意を喪失していない。

 

 今までのあたしだったら、とっくに心が折れていた。でも、今は違う。

 今は、こんなにボコボコにされても諦めず、前を向いて戦い続けてやる!と自分に活を入れて挑み、抗い続けてる。

 

「負けないんだからッ!」

 声帯を震わせて、口から言葉を吐き出す。

 吹雪ちゃんはあたしより強い。明らかに格上の相手。

 けど、だからって負けて良い理由は無い。やってやる!

 

 主砲を回避しながら吹雪ちゃんに向かって航行し、何度も被弾した事で砲身がひしゃげた主砲を投げ捨てて、艤装に取り付けた副砲をパージ。

 こうすれば、デッドウェイトが無くなって身体を軽くする事が出来る。

 現に、さっきよりも航行速度が数ノットだけ上がった。

 

 お陰でギリギリだけど、さっきまで回避出来なかった攻撃を回避する事が出来てる。

 

飛び道具(主砲と副砲)を捨てましたか……近接戦闘をする気ですね?いいですよ、阿武隈さんがどれ程近接戦闘が出来るか、見せてください!』

 

 あたしが飛び道具を捨てながら接近していると、吹雪ちゃんが無線でそう言ってきた。

 どうやらあたしが何をするのか気付いたみたい。吹雪ちゃんも飛び道具を捨てて、艤装のギミックを作動させてる。

 

 もう、弾は飛んで来ない。蛇行をやめ、吹雪ちゃん目掛けて一直線に航行する。

 

 距離、約1,000m。そろそろね。

 素早く飛行甲板を構えて、残り一機の瑞雲をセット。

 幸い、飛行甲板だけは無事だから、こうして使用出来る。

 

 少しずつ距離を縮めながら、あたしは此処(第603鎮守府)脳筋達(・ ・ ・)が何時も言っている言葉を吐き出す。

 

 

 

「攻撃が当たらないのなら、

 

 当たるようにすればいい!!」

 日本語がかなりおかしいけど、気にしない。

 

『阿武隈さん、気を付けてくださいね?私の近接攻撃は、当たると死ぬ程痛いですよ?』

 

「忠告、ありがとう!」

 確かに痛いでしょうね……良く五月雨ちゃんにぶちかましているのを見たから、どんな物かは知ってる。

 怖い。けど、逃げない。気持ちだけは、絶対に負けるな!

 

 自分を奮い立たせ、飛行甲板を構えながら吹雪ちゃんに向かい続ける。

 吹雪ちゃんもギミック──(もり)を構えながら、接近してくる。

 

 不思議と恐怖は感じない。

 

 距離、約500m。250m。100m。

 

 あと10mの所まで接近したら、吹雪ちゃんが銛を射出してきた。このままじゃ、当たる!

 

(回避──間に合わない!)

 急いで回避しようとしたけど、勢いよく前に向かって航行しているから、回避出来ない。

 出来たとしても、体制を大きく崩しちゃう。そうしたら、崩した所に追撃されて、ハリネズミ(・ ・ ・ ・ ・)になっちゃう!

 

(つ、掴むしか無い!)

 けど、銛の弾速は非常に速い。このままじゃ、刺さる──

 

 

 そう思った瞬間だった。頭にノイズ(・ ・ ・)が走った。

 

 それとほぼ同時に、視界に入るありとあらゆる存在の色彩が消え(・ ・ ・ ・ ・)モノトーン色(・ ・ ・ ・ ・ ・)になった。

 

 それだけじゃない。あたしに迫って来る銛の速度が遅くなった(・ ・ ・ ・ ・)

 

(……あ、あれ?なんで?)

 戸惑っている間にも、銛はあたしに向かってゆっくりと(・ ・ ・ ・ ・)飛んで来る。

 

 この速さなら、掴める!

 

 色々疑問に思うけど、今は目の前の驚異を排除する事に集中しなきゃ!

 

 多少焦りながら、右手を伸ばし、銛を掴む。

 

 そして、それを投げ捨てると、二発目の銛を放とうと構える吹雪ちゃんの姿が見えた。

 

 何故か吹雪ちゃんの動きも、さっき放たれた銛のようにスローだ。

 

 

………………。

 

 

「…………あ、あれ?」

 気が付くと、吹雪ちゃんが中破した状態で海上に横たわる姿が視界に入ってきた。

 

……え?あれ?吹雪ちゃん?……気絶してる。

 何?何が起きたの!?

 

 

side 阿武隈 out

 

 

───────

────

 

 

side 提督

 

 

──某県某所──

09:00。

 

 

「はい、あ〜ん♪」

 

「あ、あ〜ん……」

……うん。美味しい。丁度旬だから甘みと香りが強い。

 さっきから何度も口にしているが、飽きが来ない。幾らでも食べられそうだ。

 

「美味しいですか?」

 

「はい、美味しいです」

 俺がそう答えると、慈愛に充ちた微笑みを見せてくれた。

………………なんか、ママ(・ ・)みたいな謎の安心感がある。バブみを感じてオギャりそう。

 

……じゃなくて。あの、さっきから差し出す度に「美味しいですか?」と聞いていますよ?けど、言わない。言えない。

 何故なら、少し前……と言っても、一時間近く前になるが、ツッコミを入れたら物凄い落ち込んだから言えない。

 

「うふふっ♪まだまだありますからね♪」

 

「ソウデスカ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ごきげんよう、俺です。電車のボックス席から失礼します。

 えー、唐突ですが、語らせてもらいます。

 今回はですねぇ、今までのデートとは違い、関東地方ではなく東北地方──M城県に向かっています。

 

 何故M城県に向かっているのか、って?旅館──温泉宿へ向かう為です。

 関東地方にも温泉宿はあるだろって?うん、あるね。俺や瑞稀達(瑞鶴達)の地元に。

 他にも幾つかあるが、語ると長くなるから割愛させてもらうよ。

 

 話を戻そう。けど、それらはウチの職場(第603鎮守府)からは距離がある為、日帰りとなると時間が足りない。

 だから、ウチの職場から比較的近くにあるM城県に向かっています。

 

 何故M城県の温泉宿に向かっているのか。

 それはだな、2ヶ月以上前に扶桑さん──じゃなかった。桔梗(ききょう)さんに「温泉宿に行きたいです」とリクエストされたからです。

 ちなみに、予約は山城──(あずさ)が入れてくれた。

 

 閑話休題。

 

 そして、電車に乗り目的地へ向かっているんだけど、数時間掛かる為、桔梗さんとボックス席に向かい合うように座って会話──主に、お互いの幼少期の話をしたり、景色を見たりして時間を潰していたんだが──

 

「剥き終わりました♪はい、あ〜ん♪」

 

「……あーん」

 あーん攻撃、再び。うん。美味しい──じゃなくて。

 あの、そろそろお腹が一杯になり始めています。

 心苦しいが、やめてくれるようにお願いしよう。

 

……おっと。話を脱線させてすまん。説明を再開させてもらうぞ。

 

 何が起きているのか。いや、さっきから何をされているのか簡単に説明するとだな、デート前日、桔梗さんは電車に乗っている間や、温泉宿に着いてから食べる用にと、大量の栗や果物を購入。

 それらを剥いて俺に食べさせてくれているんだけど、かれこれ一時間近くあーん攻撃をされています。

 

 ちなみに、桔梗さんも何度か口にしているけど、俺と比べると遥かに少ない──

 

(イカン、また剥き始めてる)

 すっげぇ手際よく栗を剥いている。何度も見たけど、早いなぁ。しかも、早いだけじゃない。身をしっかり残して剥いている。

 

(ただ栗を剥いているだけなのに、格好(・ ・)格好(・ ・)だから、すっげぇ絵になる……)

 何処か恐ろしさを感じる程の黒髪長髪の美人が、慈愛に充ちた微笑みを浮かべているから、なんつーか……見惚れてしまう。これしか言えん。語彙力が来い。

 

 説明が遅くなったが、桔梗さんは青紫色をした小紋(こもん)という和服を纏っている。

 ちなみに、その小紋には桔梗の花(・ ・ ・ ・)の刺繍?模様?が入れられている。

……あ、和服の名前──小紋だけど、桔梗さんに教えてもらった。

 

 余談になるが、小紋を着ている理由は「私の勝負服だから」との事。あと、青紫色なのは桔梗さんの名前が理由だから、その色を選んだんだと。

 

 そうそう。勝負服なら、もっと豪華そうな奴を着れば良いのでは?ほら、成人式とかで女性が着ているような奴とかあるじゃん。

 その事を聞くと、「それらの着物は着るべき時が決められているので、小紋を着た(意訳)」と説明してくれた。

……俺、知らない事多過ぎだろ。もっと勉強して知識を蓄えないと。

 

 閑話休題。

 

 更に余談になるが、休養状態の時は普通の服を着ていたが、アレは桔梗さん曰く「和服だと目立つ上に暑いから、普通の服にしてください!と(山城)あまぞん(・ ・ ・ ・)で買ってくれた」そうだ。

 

 Am○zonのイントネーションがめっちゃおかしかったが、桔梗さんは一部を除く、横文字のイントネーションがアレな事になっているから仕方ない。気にしたら負けだ。

 

 閑話休題。

 

 最初は桔梗さんの格好を見て「何故和服!?」と思ったけど、凄く似合っているからすぐに違和感は消えた。

 

 今じゃ、気が付けばボーッと桔梗さんを見てしまう──だから、見惚れている場合じゃないって。桔梗さんを止めなきゃ。

 

「あ、あの、桔梗さん」

 

「はい、なんでしょう?」

 

 おーい、こっちを向いて返事をしながら剥かないで?というか、良く剥けますね?器用過ぎない?

……じゃなくて。

 

「その、お腹が膨れてきたので、そろそろ剥くのをやめて欲しいなぁ、なんて……」

……そんな悲しそうな顔しないでください。

 

「……分かりました」

 

 良かった、やめてくれた。とりあえず、今剥いた奴を頂こう。

 そう思った時だった。

 

 

『次は〜、__。__。』

 

 

「あら?__って、私達が降りる駅ですよね?」

 

「えぇ、そうです」

 停車した電車が再び走り出して暫くすると、駅員さんの車内放送が流れた。

 どうやらあーん攻撃をされている間に、目的の駅の近くまで来ていたようだ。

 

「い、急いで片さないと!」

 

「落ち着いて下さい。まだ余裕はあります」

 確か、俺達が乗っている電車は駅と駅の間隔がかなり長く、到着するのに10分近く掛かる。

 目的地の駅の一つ前の駅を出たのは、ついさっきだ。充分間に合う。

 

 この事を話すと、桔梗さんは落ち着きを取り戻し、片付けを始めてくれた。

 

「俺はゴミを纏めます。桔梗さんは剥いていない果実や栗を仕舞ってください。あ、剥いた奴は俺がもらいます。いいですよね?」

 

「了解しました。勿論です!召し上がって下さい♪」

 

 さて、お片付けしますか。とりあえず、先に剥き終わった栗を胃袋に仕舞うか。

 

 

 

 

 この後、急いで片付けて降りる準備をした。

 最初、桔梗さんは焦っていたが直ぐに冷静になってくれたから、駅に着くまで余裕を持って片付けて降りる準備を整える事が出来たと言っておく。

 

 

───────

 

 

10:00。

 

 

 駅に着き、タクシーに乗って約数十分後。俺達は目的地──旅館に到着した。

 受付で手続きを済ませ、部屋に入ると、い草の香りが鼻腔を刺激してきた。

 こういった旅館に来ると、学生時代に修学旅行とかで枕投げをした記憶が蘇る。

……アホな事考えるのやめよう。

 

「い草の香り……まるで、実家に居るようで落ち着きます」

 

「分かります」

 俺の実家も、客間だけにい草の畳が敷かれているから、この香りを嗅ぐと謎の安心感と懐かしさに包まれる。

 まぁ、俺の実家では安心出来た事なんて殆ど無いが。

 

 例えば、爺ちゃんに悪戯して手拭いでぶっ飛ばされて、壁や畳にめり込んだり。

 例えば、遊びに来た瑞稀(瑞鶴)を放置してゲームしてたら、ノーザンライトボムぶちかまされて畳に頭をめり込まされたり。

 例えば、カチコミに来た静流(翔鶴)に、壁に頭を叩き付けられてめり込んだり。

 

 とにかく、安心して過ごせた記憶が殆ど無い。 

……改めて思い出すと、壁や畳にめり込んでばっかりだったなぁ。

 それなのに、骨折や内臓破裂とか一切しなかった。良く生きていたな、俺。

 

……実家の事を思い出していないで、荷物を置こう。

 そんで、近くを桔梗さんと散歩がてら見て周ろう。

 思い出すのは、桔梗さんと会話して実家の話が出た時だけにしろ。ボーッとしていたら、時間だけが過ぎるぞ?

 

(よーし、頭を切り替えろ。……切り替えた。えっと、荷物を置く場所は──)

 部屋を見渡すと、奥に荷物を置く為の専用スペースがあった。あそこに置こう。

 

「それじゃあ、貴重品だけ持って近くを歩きましょう」

 荷物を置き、俺は桔梗さんにそう言った。すると、

 

「はい、喜んで♪」

 

 満面の笑みを浮かべながら、返事してくれた。 

 美しいなぁ。俺はそんな事を考えながら、桔梗さんの笑顔に見惚れてしまった。

 

(色気のある笑顔というか、落ち着きのある笑顔というか……)

 なんつーの?今までデートしてきた娘達が見せてくれた笑顔と違う。

 

「どうかされましたか?」

 

「いえ、その……桔梗さんの笑顔に見惚れていました」

 見惚れていると、桔梗さんにそう声を掛けられてしまった。

 なので、誤魔化さず正直に答えた。

 

「あら♪うふふっ、ありがとうございます♪」

 

……嬉しそうな声を出しながら、再び満面の笑みを浮かべてくれた。やっぱり美しい。

 他の娘達の笑顔だと「可愛い」と思うが、桔梗さんの笑顔は何故か「美しい」と思えてしまう。

 

(……だから、見惚れていないで、さっさと貴重品持って出掛けよう)

 軽くかぶりを振って気持ちを切り替える。

 さっきも言ったが、時間は有限なんだ。今は余計な事を考えないで、デートに集中しろ。

 

 

────

 

 

15:00。

 

 

「──それが切っ掛けで、私は生まれて初めて恋をしました」

 

「そうだったんですか!?」

 まさか、俺と出会うまで、一度も異性を好きになった事が。恋をした事が無いなんて。

 いやまぁ、別に悪い事じゃないけど、驚いたよ。結構遅め(・ ・ ・ ・)の初恋なんだ。

 

「その時まで。渡良瀬さんに出逢う(・ ・ ・)まで、恋愛というモノに一切興味を示さなかったので、どのように接すれば良いか全く分からず、勢いに任せてあのような事をしてしまいました……」

 

「な、成程……」

 そういう理由があったんだ。だからあんな事をしたのね。

 

 

 

 旅館を出て、近くを散歩がてら散策を開始してから数時間後。俺達は温泉街を見て周り、のんびりとした時間を過ごした。

 

 途中、地元の人達や観光客に人気の蕎麦屋で昼食を摂り、その後再び温泉街を見て周り、そして今。喫茶店に入ってのんびりと会話をしている。

 ちなみに、会話の内容だが、桔梗さんが学生時代の頃の話と、何故俺を好きになってくれたのかという物だ。

 お陰で、どんな人なのか深く知る事が出来た。

 

(……にしても、桔梗さんって本当、ストイックな性格をしているなぁ)

 研修所(養成所)で出会った時と、ウチの職場(第603鎮守府)に来てから色々話をしてある程度知っていたけど、桔梗さんの学生時代の話を聞いて改めてそう思った。

 

 詳細を語るとエラく長くなるから割愛するが、毎日早起きして、道場を掃除して、鍛錬をして、学校に行って、休み時間等も軽く鍛錬をして、帰ったら鍛錬。

 

 これを、今の仕事をする(艦娘になる)までずっと続けてきたという。

 勿論、今も空き時間を見付けては鍛錬をしていると言うのだ。

 

(俺だったら、途中で嫌になって投げ出して逃げるのに、桔梗さんは決して投げ出さない。逃げずに向き合い続けるなんて……)

 娯楽には一切目もくれず、鍛練に明け暮れる。

 本当に凄い人だ。そこまで一途に。真剣に取り組み続けるなんて。見習おう。

 

……だだ、まぁ、その一途な性格が原因で、一度とんでもない事をやらかしてしまったそうだ。

……首を狩ったり、狩った首をお待ち帰りしたり。その他にも色々あるが、何時もやらかしているだろ、って?言うな。言ったら負けだぞ。

 

……話を戻すぞ。何をやらかしたか、だが、覚えていないか?何時だかウチの職場にカチコミ(・ ・ ・ ・)してきた事を。

 アレなんだが、桔梗さんが言うには初めて恋をして、その想い人。つまり、俺だが、想いを告げる方法が分からず、あんな事をしたそうだ。

 

 何故カチコミして俺を拉致しようとしたのか。その事を聞くと、

 

 

以前居た職場(佐世保鎮守府)(駆逐艦娘)が読んでいた恋愛漫画に、想い人は拉致る物!と書かれてあったので、真に受けて実践してしまいました……』

 

 

 と言われた。

 とりあえず、一言。なんつーモンを読んでんだよ、その娘ォ!!しかも、読んでいたのは当時10代前半の娘ときた。

 オマケに、桔梗さんの話を聞くにその娘は好きな男の子が居るらしく、参考にする為、愛読しているそうだ。

 

……お兄さん、その娘の将来が心配だよ。あと、その娘に好意を向けられている男の子。大丈夫?拉致られたりしていないよね?

 

 あと、桔梗さん。あなた、何故真に受けて実践したんですか?あなたの倫理観なら、やっちゃダメな事だと分かる筈ですよ?

 

 その事を聞くと、普段の精神状態なら真に受けず、「二次元特有の過激な表現」と流していたそうだが、当時は色々あって精神的に余裕が全く無くなり、判断能力がアレな事になっていたせいで、実行してしまったそうだ。

 

 勿論、今はそんな事は全く考えていないとの事。

 もし今も考えていたら、悪いけど俺、考えを改めるまで全力で説得(ノーザンライトボム)するよ?

 

……とにかく、俺は何故、桔梗さんがカチコミをしてきたのかを知る事が出来た。

 

(それにしても、桔梗さんのような人にそこまで想われているなんて……)

 俺、そんなに魅力のある人間なのかな?

 学生時代は、瑞稀(瑞鶴)以外の女性に好かれた事無かったし。

……自分で言って悲しくなってきた。まぁいいや。今は桔梗さんとの会話に集中しよう。

 

 

 その後、暫く桔梗さんの話を聞かせてもらったんだけど、今まで俺の知らなかった事を沢山話して教えてくれた

 桔梗さんの実家の事。桔梗さんが生まれ育った街の事。etc...。

 

 話を聞く度、どんどん桔梗さんについて知る事が出来た。そのお陰で、なんだか嬉しくなってしまった。

 

 ある程度桔梗さんの話を聞くと、粗方話し終わったのか、今度は俺の話を聞きたいと言われたので語る事にした。しかし、

 

「あ、あの、何でそんなに嬉しそうなんですか?」

 俺が語っている間、桔梗さんはとても嬉しそうに話を聞いてくれた。

 だが、なんというか、俺の話を聞く前よりも嬉しそうにしている。何故、そんなに嬉しそうなのか疑問に思い、質問すると、

 

「貴方が。渡良瀬さんが嬉しそうにしているから、私も嬉しいのです」

 

「………………」

 慈愛に充ちた微笑みを浮かべながら、そう言ってきた。

 なんつー殺し文句を言ってくるんですか。

 

 確かに、俺が生まれ育った地元には愛着があるから、それを真剣に聞いてくれて嬉しく思っていたけど……あーあ、顔が熱い。今の俺、顔真っ赤なんだろうなぁ。

 

「ふふっ♪もっと、渡良瀬さんについて教えてください♪」

 

…………なんだろう。今まで桔梗さん=首を見付けると薩人マシーンと化すヤッベェ人、って認識しか無かったから、こうして慈愛に充ちた顔で微笑んでくるのを見ていると、ギャップが凄まじくてドキッとしちまう。

 

「いや、その…………」

 

「うふふっ♪」

 

(まただ。また、慈愛に充ちた微笑みを見せてくれた……) 

 桔梗さんの微笑みを見た俺は見惚れてしまい、暫くまともに語る事が出来なくなり、時間だけが過ぎてしまった。

 その間桔梗さんは静かに微笑み続け、俺が語るのを待ってくれた。

 

(他の娘達なら戸惑ったりすると揶揄ってくるのに、桔梗さんは一切揶揄ってこない)

 ただ静かに微笑んで待つ。落ち着きがあるなぁ。

……なんか、いい。癒される。甘えたい(・ ・ ・ ・)

 ふと、そんな事を考えてしまった。

 

 

 

 結局、まともに語れるようになるまで10分以上掛かってしまった、と言っておく。

 しかし、それでも桔梗さんはその事に対して何も言ってこなかった。

 静かに微笑みながら一切揶揄わず、俺が語るのを待ち続けてくれた。

 それだけじゃない。さり気なくフォローも入れてくれた。

 

 今までのデートと違い、とても落ち着いた時間を過ごす事が出来た気がする。

 さっきから何回も言っているが、いい。とてもいい。

 

 

───────

 

 

21:00。

 

 

 

「…………」

 

「…………あの、桔梗さん」

 

「はい」

 

「…………電気、消しますね」

 

「はい」

 

(…………めっちゃ落ち着いている)

 布団を敷き、その上で正座している桔梗さんの顔を見ると、静かに微笑んでいる。

 様子を見る限り、緊張していないようだ。

 

 

 

 

 数時間前。喫茶店でお互いの過去話をし、どんな人間なのか深く知る事が出来た。

 お陰で、前よりも仲良くなれた気がする。

 

 その後、再び温泉街を軽く見て周り、旅館に戻って温泉に浸かり、汗を流した。

 

 余談になるが、残念ながら温泉は混浴が無かったので、それぞれ男湯と女湯に入った、と言っておく。

 混浴出来ない事に対し、桔梗さんは少しだけ残念そうな顔をしていたなぁ。

 

 閑話休題。

 

 温泉を出た後は部屋に戻って一緒に夕食を摂り、部屋に備え付けられているテレビを見ながら小休止をした。

 

 そして、良い時間になったので、俺がそろそろ始めないか(・ ・ ・ ・ ・)提案し、今に至るわけだが、

 

(桔梗さん、冷静だなぁ……)

 さっきも説明したが、全く緊張せず、寧ろリラックスした状態で正座をしている。

 

 今までのパターンだと、緊張していない娘は確実にやらかしてきた。サキュバス(榛名)とか。

……いや、緊張していても、中盤。若しくは後半辺りからやらかしてきた娘も居たな。これは該当者が多過ぎるから、割愛する。

 

 閑話休題。

 

 しかし、桔梗さんはやらかそうとする雰囲気というか、気配というか、そういった素振(そぶ)りが一切無い。

 ただ静かに、その時(・ ・ ・)を待っている。

 恐らく、コト(・ ・)を始めても、ナニ(・ ・)もしてこない。

 何故か、確信出来る。

 

……とりあえず、電気を消そう。

 ゆっくりと室内灯のスイッチがある壁へ向かい、電気を消す。

 すると、明るく照らされていた部屋が暗闇に包まれた。

 しかし、今日は満月の為、窓から月明かりが差し込んでいるから完全な暗闇ではない。

 

「……桔梗さん」

 足元に注意しながら桔梗さんの所へ向かい、隣に正座して声を掛ける。

 

「はい」

 

「これから、貴女を抱き(・ ・)ます」

 

「はい」

 

 まだ暗闇に目が慣れていないから、桔梗さんの顔を見る事は出来ない。

 しかし、声を聞く限り、緊張や不安は無いようだ。

 

「念の為、もう一度聞きます。本当にいいですね?」

 くどいようだが、そう声を掛ける。

 

「はい。構いません。私は、貴方に。渡良瀬さんに、()を捧げます」

 

「……分かりました」

 合意してくれた。なら、遠慮なく桔梗さんの()を頂きます。

 勿論、精一杯優しく()る。

 

「渡良瀬さん」

 

「何でしょうか?」

 桔梗さんが纏っている浴衣に手を掛けようとした時だった。不安そうな声で俺の名前を呼んできた。

 

「私は、こういったコト(・ ・)に関して、無知です。どのようにすれば良いか、全く分かりません。

 なので、渡良瀬さんにご迷惑をお掛けしてしまうかもしれません……」

 

「大丈夫ですよ。俺がしっかりリードします。だから、安心してください」

 

「……ありがとうございます」

 

 

 

 

 

 俺は浴衣に手を伸ばすのをやめ、桔梗さんを抱きしめ、優しく頭を撫でてあげた。

 

 抱きしめると、予想通り身体が強ばっていて、若干震えていた。

 

 やっぱりな。さっき、どうすれば良いか分からない、と言った時、声が震えていたし。

 

 その事について、一切揶揄わず真剣な声で聞くと、どうやら俺に迷惑を掛けないよう、虚勢を張っていたそうだ。

 

 なので、虚勢を張らないでくれと頼んだ。

 

 すると、「迷惑を掛けるわけにはいかない」等と言ってきたが、優しく抱きしめ、頭を撫でながら何度も「気にしなくていい」と説得した。

 

 最終的には俺の言う事を素直に聞いてくれた。

 

 暫く抱きしめ、頭を撫でていると桔梗さんの強ばっていた身体は落ち着いたのか、解れてきた。

 

 その後、何度かキスをし、互いに生まれたままの姿になり、準備運動(・ ・ ・ ・)をした。

 

 そうそう。準備運動(・ ・ ・ ・)をした際、桔梗さんはかなり乱れ(・ ・)てしまった。

 

 しかも、一切抵抗せず、されるがままになっていた。

 

……正直に言う。かなり興奮した。

 

 そのせいで俺の理性が少し壊れてしまい、調子に乗って色々意地悪をしてしまった。

 

 意地悪した内容については、割愛させてもらう。

 

……まぁ、色々あったが、お互い限界まで高まった(・ ・ ・ ・)頃、俺は桔梗さんのハジメテ(・ ・ ・ ・)を奪った。

 

 奪った瞬間は痛みに顔を顰め、身体を強ばらせていたが、慣れていったのか、徐々に落ち着いてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、現在。

 

 

「よしよし♡」

 

「………………」

 俺は今、桔梗さんに頭を抱えるように抱きしめられ、横になっています。

 しかも、慈愛に充ちた微笑みを浮かべながら抱きしめてくるから、本能的に甘えたくなってしまう。

 どうしてこうなった!?

 

「こーら。何も考えないの♡」

 

「………………はい」

 イカン。考え事をしていたのがバレたのか、注意されちゃった。

 結構時間が経ったから暗闇に目が慣れ、今じゃお互いの顔をしっかり見る事が出来る。

 それだから、俺の顔を見て考え事をしている事に気付いたみたいだ。

 

「よしよし♡」

 

 頭撫でられちゃった。癒されるぅ〜…………じゃないよ。正気に戻れ、俺。

 

 桔梗さんは性的な目的ではなく、純粋に俺を甘やかす為に抱きしめて来るから、油断するとさっきみたいに顔を胸に埋め、堪能してしまう──

 

「何も、考えなくていいんです。遠慮せず、甘えてください。ほら……」

 

「お゙お゙お゙ぉ゙ぉ゙ぅ゙…゙…゙…゙…゙」

 わーい、顔が沈むゥ!柔かァい!温かァい!

…………だから、正直に戻れって。早く抜け出さないと、ダメになっちまうぞ?

 

 

……何が起きてるか説明しろ、だと?いいぜ、今北産業(・ ・ ・ ・)で説明してやる。

 

 

行為(・ ・)が終わる

・桔梗さん、何故か母性に目覚める

・俺、バブみを感じて桔梗さんの胸に顔を埋める

 

 

 以上。

 

……詳細を話せ?分かった。話してやる──

 

 

「うふふっ♡ぎゅ〜♡」

 

「あぁ〜^」

 やわらかぁ〜い!あったか〜い!きもちいい〜!

 あぁ〜^、らくえん、は、ここに、あったんだね……。

 

……だから、マジで正気に戻れって。

 つーか、さっきから考え事をする度に、桔梗さんが抱きしめて胸に溺れさせて来るから、まともに思考が働かない──

 

 

「ふふっ♡考え事をしているの?悪い子ね♡」

 

「ぁ……ぁぁ……ぁ…………」

 やっ、やめてェ!?これ以上、溺れさせないでェ!?

 ちゃんと呼吸出来るようにしてくれてるから、窒息はしそうにないけど、このままだと──あっ、あのっ!あのあのあのっ!ギュッとしちゃらめェ!?

……やわらけぇ……あったけぇ……ダメ、だ。何も……考え……ら……れな……。

 

……あ、ぷっくりしたモノ(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)が目の前にある。吸いたくなって(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)きちゃった。

 

……待て。やめろ。それをしたら、色々終わりだぞ?正気を保て。

 

 冷静に。素数を数えて冷静に──

 

 

「渡良瀬さん♡」

 

 

…………桔梗さん、なんつー色っぽい声を出すんですか。耳元で囁かないで?俺、今、必死に本能と戦っているんです。

 危うく桔梗さんのウィスパーボイスに理性を破壊されそうになりましたが、辛うじて持ち堪えています──

 

 

吸って(・ ・ ・)いいですよ♡」

 

 

…………俺の視線の先に何があるのか気付いているね、コレ。めっちゃ悪戯っぽい笑みを浮かべてるし。

 

…………じゃなくて。これ以上耳元で色気ムンムンのウィスパーボイスで囁かないでください。誘惑しないでください──

 

 

 

 

「お・い・で♡」

 

 

 

 いただきま〜す(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)

 

 

 

side 提督 out

 

 

───────

────

 





次回予告


 幻聴が……うぅ、どうして……?最近、益々悪化している……。そのせいで、準に気付かれて心配掛けちゃった。お姉ちゃん失格ね……。
……それにしても、私だけでなく瑞鶴や涼月さん、榛名さん、由良さんまで幻聴が聞こえて苦しんでいるし、どうなっているの?
……そういえば、葛城さんと阿武隈さんは幻聴()聞こえない、と言っていたわね。
 それと、他の人達も。どうしてかしら──ぐっ!?ま、また、聞こえた……。
 こ、こうなったら、初霜さんに頼んで、激しい曲を聴かせてもらって気を紛らわせましょう!
 

第138話・脳筋お転婆なクラスメイト


「くぁwせdrftgyふじこlp!!?」


※扶桑編は純愛でお送りしました。ちょっと限界に挑戦してみた。
 とある方から頂いたコメントを見て、授○プレイを大急ぎで追加した。反省している。後悔は一切していない。

※次話から大鳳とのデート編になります。
……平和に終わるといいね。


【補足的なナニか】

・小紋…上下無関係に模様が入った、女性用の着物を指す。
 普段着用の着物として着用する。

・今北産業…「今来た。3行で説明してくれ」を略した言い方を指す。

・扶桑…第603鎮守府所属、扶桑型戦艦一番艦、扶桑の適性者、神谷桔梗(かみやききょう)を指す。
 彼女の実家は深海棲艦出現以前から代々続く、古武術を教える家らしい。
 幼少期から祖父に剣術を教わった為か、かなりの腕を持つ。
 ストイックで、一度決めたら成し遂げるまで決して妥協しない性格の持ち主。
 その為、学生時代は鍛錬にしか興味を持たなかったせいで恋愛をした事が無かった。
 その為、どう想い人に接すれば良いか分からず、暴走してしまった事がある。
 余談になるが、横文字に弱いのか、イントネーションがアレな事になっている。

・吹雪の艤装ギミック…彼女の艤装には、銛を射出するギミックが仕込まれている。
 銛の最大威力を出すには、標的から約1m以内に放たなければならないが、その代わり驚異的な破壊力を持つ。
 噂では、無傷の戦艦棲姫を艤装ごとブチ抜けるらしい。
 尚、1m以上飛ぶと威力は極端に減衰するが、ある程度のダメージを与える事が可能。吹雪曰く、「威嚇や牽制の為に撃つ事がある」との事。
 深海棲艦に撃つよりも、同じ横須賀鎮守府所属、白露型駆逐艦六番艦、五月雨の適性者に撃つ事の方が多いとか……。


【特殊補足】

・桔梗…キキョウ科の多年生草本植物を指す。山野の日当たりの良い所に育つと言われている。
 桔梗の花は、蕾の状態では花びら同士が風船のようにピタリと繋がっている。
 蕾は徐々に緑から青紫に変わり、裂けて星型の花を咲かせるという特徴を持つ。

・桔梗の花言葉…「誠実(・ ・)」、「清楚(・ ・)」、「従順(・ ・)」。
 そして、永遠の愛(・ ・ ・ ・)


以上、補足終了。

デート編、もっと細かく描写するべき?

  • するべき
  • 簡略化しろ
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