追跡鶴   作:EMS-10

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 大鳳のケツは安産型。異論は認めない(挨拶)


※第137話の後書きの一部を修正しました。
 この小説をご覧頂いている皆様にご迷惑をお掛けしてしまい、誠に申し訳ございません。


※警告※
序盤、頭の悪い内容
後半、若干のシリアス
考えるな、感じろ
お前らの嫁だろ、早くなんとかしろよ


※この小説はフィクションです。実在する人物、施設、団体等とは一切関係ありません。
 予め、ご了承下さい。

※この小説に登場する人物は全員、特殊な訓練を受けています。
 決して真似しないで下さい。

※この小説内の季節は、11月下旬頃になっています。



第138話・お転婆なクラスメイト

 

side 扶桑

 

 

──第603鎮守府、母港──

()開始77日目。

04:30。

 

 

「──997、──998、──999!」

……やっぱり違う。

 

「──1000!」

……もう、終わってしまった。近くに置いた時計を見て時間を確認すると、04:30を指している。開始から30分しか経っていない。

 今までと全く同じようにやっていたのに、ここ数日速さが増しているわね。

 速さだけじゃない。一撃一撃の重さも、狙った箇所へ確実に振り抜く正確さも増している。

 更に、

 

(ここ数日、やけに身体が軽くなった(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)気がするわね……)

 体重は毎日必ず計っている。多少増減するけど、身体が軽く感じる程減っていない。

 筋力も毎日、妖精さん達に造って頂いた特殊な機械で測っているけど、ほぼ変わらず。

 それなのに、一体何故?

 

 日課となった朝の(・ ・)鍛錬の一つ──真剣を使っての居合斬りを終え、一息つきながらそんな事を考える。

 

(体調、精神共に異常なし)

 ほんの少しだけ乱れた息を整えて、己のこんでぃしょん(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)を確認。

 何処にも異常は見当たりません。寧ろ、調子が良過ぎる位。

 

(渡良瀬さんに()を捧げてから、少しずつ変わっていっている気がします)

 今までは焦り(・ ・)不安(・ ・)といったモノが私の中に在り続けていた。

 しかし、一週間前。渡良瀬さんに。想い人に()を捧げてからは、そういったモノは跡形も無く消えてしまい、今では安心感(・ ・ ・)が──

 

(今は鍛錬中よ。()を捧げた時のコト(・ ・)を思い出している場合じゃ無いわ)

 まだ、全ての鍛錬を終えたわけではない。乱れた息を整える為、小休止をしているだけ。

 だから、今だけは鍛錬に集中しなさい。

 思い出すのは、全てを終えてからにしなさい。

 息はとっくに整っている。再開しなければ。

 

(ここ最近、鍛錬中に雑念を抱くようになってしまったわ。しっかりしないと)

 幾ら大切な思い出(・ ・ ・ ・ ・ ・)でも、鍛錬中に思い出して惚けるのはやめなさい。気持ちを切り替えなさい。

 しかし、中々頭を切り替える事は出来なかった。

 寧ろ、どんどんあの時のコト(・ ・)を思い出してしまった。

 

 渡良瀬さんに余計な心配や迷惑をお掛けないよう、冷静に振舞っていた事。

 

 でも、ハジメテ(・ ・ ・ ・)コト(・ ・)だから、緊張してしまった事。

 

 結局、緊張している事がバレてしまい、迷惑をお掛けしてしまった事。

 

 準備運動(・ ・ ・ ・)をして頂いた際、はしたなく乱れ(・ ・)てしまった事。

 

 そして──

 

 

(……ダメ!思い出しては、ダメ!)

 目を固く瞑り、頭を振ってあの時のコト(・ ・)を思い出さないようにする。

 でも、無駄だった。逆に、どんどん思い出してしまう。

 

 

 ()を捧げ、○宮を【自主規制】で突っつかれた(・ ・ ・ ・ ・ ・)際、私の中のオンナ(・ ・ ・)目醒め(・ ・ ・)てしまった事。

 

 私の○房に夢中になっていた渡良瀬さんを見て、翔鶴さんから「渡良瀬さんは甘えたがっている」事を聞いたのを思い出し、甘やかす為に──

 

 

「ぁ……ぁぁ……ぁぁぁあああああああああッッ!!」

 ダメ!やめなさい!思い出さないの!

 忘れなさい!忘れたくないけど、今だけは忘れなさい!忘れるの!鍛錬に集中するの!

 

 しかし、忘れる事は出来なかった。

 

 

 渡良瀬さんの頭を抱き抱え、甘い声で囁き続けて彼の理性を壊し、私の乳○に顔を埋めさせた事。

 

 誘惑し、○首を吸わせ(・ ・ ・)ようとした事。

 

 しかし、吸う(・ ・)直前。本当にあと少しの所だったのに、渡良瀬さんは理性を取り戻してしまい、失敗に終わった事。

 

 再び誘惑し、吸わせ(・ ・ ・)ようとしたら、突然真剣な顔をしながら私の目を見て、名前を呼び捨て(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)にしてきた事。

 

 それにより、私の中のナニか(・ ・ ・)が壊れ、鼻血を噴き出して気絶してしまった事。

 

 

…………私の名前を呼び捨てにしてきた時、とても良かった。

 

 私を強く求められていると、感じる(・ ・ ・)事が出来た──

 

「フゴッ!?」

……マズい!思い出したら、鼻血が!

 それだけじゃない。私のオンナの部分(・ ・ ・ ・ ・ ・)が熱く疼き出し、大変な事(・ ・ ・ ・)になってしまった!

 

(ダメ……ダメ!これ以上思い出してはダメよ!しっかりしなさい!気持ちを切り替えないと!!)

 しかし、切り替えられない。逆にどんどん思い出してしまう。

 

(ぁ……ダ……メ……オンナの部分(・ ・ ・ ・ ・ ・)から、()が……溢れ出て(・ ・ ・ ・)来ちゃっ……た……)

 薄布(・ ・)が受け止められる限界を超えてしまったのか、太股に()垂れ落ちて(・ ・ ・ ・ ・)きた。

 あぁ……私……なんて事を……──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふ、扶桑さん?大丈夫ですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────えっ?」

 頭を抱え、悶えていると声を掛けられた。

 恐る恐る声の主を見ると──とれーにんぐ(・ ・ ・ ・ ・ ・)うぇあ(・ ・ ・)を着た大鳳さんの姿が、視界に入ってきた。

 

……大鳳さん?何故ここに?あなたは今日、渡良瀬さんとデートをするのでは──そういえば、大鳳さんは毎朝必ずジョギングをしていたわね。

 

 大鳳さんは私と似て、すといっく(・ ・ ・ ・ ・)な所があるから、デート当日でもこうして日課のじょぎんぐ(・ ・ ・ ・ ・)を──あ、あら?でも、大鳳さんがじょぎんぐ(・ ・ ・ ・ ・)をするのは、何時も05:30頃から。開始時間は決して変わらない筈。

 

(さっき私が鍛錬の一つ、居合斬りを終えたのは04:30頃だったわ)

 一時間近くも余裕がある。私があの時のコト(・・)を思い出し、悶えていたのは精々数分の筈。

 

 恐る恐る時計を確認すると、05:30を指しているのが視界に入ってきた。

……どうやら、私は結構な時間、悶えていたようね。

 ダメじゃない。精神を乱して、日課の鍛錬をサボってしまうなんて──じゃないわ。

  

 

 

「扶桑さん、お顔が真っ赤ですよ?おまけに、顔中汗まみれで、鼻血が出ています」

 

……見られた。

 

「それに、息が荒いです」

 

……見らレた。

 

「あ、あと……その……凄く色っぽい声を出していましたよ?私は気にしませんが、その……TPOを弁えた方が──」

 

 

……見ラレた。

 

 

 大鳳=サンガ、何カ言ッテイル。ケド、何ヲ言ッテイルノカ、分カラナイ。

 

 

 分カル事ハ、タダ一ツ。

 

 

 私ノ乱レタ(・ ・ ・)姿ヲ──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見ラレタ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あの、扶桑……さん?何故、抜刀したのでしょうか?それ、真剣ですよね?扶桑さんが普段使用している日本刀ですよね?

 ソレ、巨大化した魚介類だけでなく、深海棲艦も斬れるモノですよね?何故ソレを抜刀したのでしょうか?そして何故私ににじり寄ってくるのでしょうか?

 あ、あの、扶桑さん?扶桑さん!?私の声、聞こえていますか?聞こえていましたら、返事を──いいえ!返事はしなくていいです!とにかく、その日本刀を鞘に仕舞ってください!

 私、何も見ていません!何も聞いていません!体調の悪そうな(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)扶桑さんを見掛け、声を掛けただけです!

 だから!落ち着いて!くださ……ちょっ!?扶桑さん!目!!血が!!血涙が出ていますよ!?あと、鼻血も勢い良く出てます!!早く医務室に……いいえ!!入渠室へ行きましょう──」

 

 

 

 

 

首ダ…………

 

 

 

首ヲ狩レ…………

 

 

 

首ヲ狩レバ…………

 

 

 

 

 

 

全テ片付ク!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でゅるわぁあああああぶるわっひゃあひゃひゃひゃひゃどぅるわっはあああああああああぎゃあああああゔわ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ッ゙ッ゙ッ゙ッ゙!゙!゙!゙!゙」

 

 

 

 

「くぁwせdrftgyふじこlp!!?」

 

 

 

 

 

サァ……

 

首狩リノ時間ダ…………!!!

 

 

嗚呼…………

 

 

身体ガ(・ ・ ・)軽イ(・ ・)…………

 

 

 

side 扶桑 out

 

 

───────

────

 

 

side 提督

 

 

──某県某所──

09:50。

 

 

 目的地に到着っと。時間は……予定より10分早く着けた。暫く周りでも見て時間を潰すか。

 

(休日だから人が多いな)

 言葉は悪いが、(大鳳)は小柄だ。こんなに人が多いと、見付けるのに時間が掛かりそうだ。

 まぁ、その時はL○NEやメール、通話とかすればいいか。

 

 

 

 

 某日本最大級の、ショッピングモールの最寄り駅からおはょぅι゛ょ!俺です!

……挨拶がおかしい?気の所為だ。

 

……話が脱線したな。戻します。

 はい、今日は(大鳳)とのデートです。

 今回は瑞稀(瑞鶴)の時のように、職場(第603鎮守府)から一緒に出掛けず、目的地で待ち合わせをする事にしています。

 

 ちなみに、鳳からのリクエストでそうなった。あと、瑞稀とデートした所と同じ場所でデートします。

 理由は話すと長くなるから割愛するぞ。

 

 集合時間は10:00。予定より10分程前に到着する事が出来たんだが、どうやら鳳は未だ到着していないようだ。 

 

(今朝、あんな目に遭った(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)けど、幼児退行(・ ・ ・ ・)しなくて良かった……)

 てっきり幼児退行(・ ・ ・ ・)してデートを中止する事態になる、と思ったけど、杞憂に終わった。

 

 念の為大丈夫か聞いたんだが、本人曰く「慣れちゃったから、なんともない」そうだ。

……慣れちゃったんだね。なんか、その、ごめんね?

 

……今朝、何が起きたか教えろ?分かった、教える。

 ウチの職場(第603鎮守府)で鳳が日課のジョギングをしようとしたら、桔梗さん(扶桑さん)に襲われた。以上。

 

……もっとしっかり説明しろ?やだよ。思い出したくない。

……分かったよ。説明してやる。

 

 鳳が日課のジョギングをしようとしたら、桔梗さんが具合悪そう(・ ・ ・ ・ ・)にしていたから、声を掛けた。

 そしたら、突然桔梗さんは薩人マシーン(絶対首狩るウーマン)と化して襲って来たそうだ。

 

 尚、桔梗さんは何故、薩人マシーン(妖怪首置いて逝け)化したのか。それについての詳しい理由は、悪いが説明出来ない。

 何故説明出来ないのか。それは、薩人マシーン(バイオレンス大和撫子)の名誉というか、なんというか……と、とにかく!説明出来ん!ご了承下さい!

 

……にしても、すんっげぇ怖かったなぁ。俺とデートした時の、お淑やかで落ち着きのある桔梗さんは何処に行っちまったんだよ……。

 

 閑話休題。

 

 外が騒がしかったから、急いで起きて現場に向かうと、俺だけでなく騒ぎを聞き付けた部下達(艦娘達)も来ていた。

 

 そして、現場に向かうと、目を疑うような光景が俺達の視界に入ってきた。

 どのような光景が視界に入ってきたか、って?

 

 

 薩人マシーン(首狩り族長)が瞳孔をカッ広げ。

 口を三日月のように吊り上げて笑いながら、目と鼻から血を垂れ流し。

 日本刀を抜刀した状態で、残像を残す(・ ・ ・ ・ ・)速さで動き回りながら、鳳を追っ掛け回していた。

 

 

……最初見た時、寝惚けてて夢を見ているんじゃね?と現実逃避したけど、鳳がガチ泣きしながら助けを求めてきたから、急いで助けた。

 

 どうやって助けたかって?まず、俺が鳳と薩人マシーンの間に立った。

 そんで、俺を見た薩人マシーンは動きを止めてくれた。

 すかさず俺は薩人マシーンに歩み寄って抱きしめ、薩人マシーンの耳元で役職名(艦名)ではなく、彼女の名前を呼び捨てにしてやった。

 すると、身体を震わせ、鼻から噴水の如く鼻血を噴き出し、大人しくなってくれた。

 

 桔梗さんとデートした際に確信したんだが、どうやら桔梗さんは俺に名前を呼び捨てにされると、鼻血を噴き出してフリーズするみたいだ。

 今後、桔梗さんが暴走したらこうやって止めよう。

 

 閑話休題。

 

 その後桔梗さんは正気に戻ったのか、鳳と俺達土下座して謝罪してきた。

 

……以上。

……あ、桔梗さんは医務室に運んで、治療を受けさせた。医師(医療妖精さん)が診た所、何も異常は無かったそうだ。

 

……ツッコミは入れない。一々入れていたら、精神が持たない。

 

……とまぁ、数時間前にそんな事が起きた、と理解してくれ。

 んで、被害に遭った鳳は、最初取り乱していたが、さっきも言った通り慣れてしまったのか、直ぐに復活。普段の鳳に戻ってくれた。

 

 その後、俺は眠気が完全に吹っ飛んじまったから二度寝せず適当に時間を潰し、デート開始時間になり、目的地──待ち合わせ場所の、某日本最大級のショッピングモールのオブジェ前に来た。

 

 そして、予定より少しだけ早く到着し、今に至る──

 

 

「渡良瀬く〜ん!」

 

 

……ん?今、俺の名前を。正確には苗字だが、呼ばれた気がする。

 思考を中断し、耳を澄ませる。確か、駅の方から聞こえてきたな。

 

(もしかしたら、鳳かもしれない)

 そう思って声の聞こえた方を見ると、駅から小柄な少女が早歩きで俺の方へ向かって来るのが見えた。鳳だ。

……やっべぇ、めっちゃおめかししている。可愛い。

 

(かなり気合い入っているなぁ……)

 普段、職場の制服(艦娘の装束)とトレーニングウェア姿しか見ていないから、ギャップに驚いている。

 学生時代に何度か私服姿の鳳を見た事はあるが、言っちゃ悪いけどあそこまでお洒落な服では無かった。

 

……それはそれとして、鳳。君、凄いね。速度を一切落とさずに、人混みをヒョイヒョイ避けて進めるなんて。

 しかも、ぶつかったり、足を止めたりしていない。

 

(なんつーか、動きに無駄がないというか、予測能力がずば抜けて高いというか……とにかく凄い。そうとしか言えん)

 そんな事を考えている間にも、鳳はどんどんこちらに向かってきて、十数秒後には俺の目の前に到着した。

 そして、

 

「遅くなってごめんなさい──あっ!」

 

 鳳は申し訳なさそうな顔をしながら頭を下げ、謝罪してきた。そのせいで、頭に被っていた紺色のベレー帽がずり落ちてしまった。

 慌ててベレー帽を掴もうと手を伸ばしたが、俺よりも先に鳳が掴み、再び頭に被った。

 相変わらず凄い反射神経してるね。……じゃなくて、

 

「いや、大丈夫だ。俺も丁度今来たばかりなんだ。だから、謝らないでくれ」

 安心させる為、鳳にそう言ってあげた。

 

「……ありがとう」

 

 すると、はにかみながらそう言ってきた。

……いい。

 

「どうしたの?」

 

「お洒落な格好をしているなぁ、と思って見惚れてた(可愛い)」

 

「えっ?えぇっ!?」

 

……本音と建前が逆だよ!あーあ。鳳の奴、赤面してあたふたし始めてらぁ。可愛い。

 

……さて。鳳がどんな服装をしているか、解説しようと思う。

 

 まず、ダークレッドのA○Cマント──じゃない。ポンチョを纏い、その下には黒いタートルネックを着て、ダークグレーのショートスカートを穿き、さっきも言ったが紺色のベレー帽を被っている。

 更に!黒タイツを穿いていて!たまりません!黒タイツ最高!もしレギンスだったら、俺はキレ散らかすかもしれん。分かるか?黒タイツだと思ったらレギンスだった時の絶望感レギンス派の人達には悪いが俺はキレる全力でキレる愛と怒りと悲しみを背負って慟哭する自信が──

 

……すんません、暴走しました。正気に戻ります。

……あ、靴はダークブルーのスニーカーを穿いているみたいです。

 以上、渡良瀬準の服装解説でした。

 まだまだ完全に服や靴の名前を覚えていないから、間違っているかもしれない。その時は指摘してくれ。

 

「あ、ありがとう……」

 

 あらまぁ、耳まで真っ赤にして俯いちゃったよ。

……周囲の人達の視線が痛い。とりあえず、逃げよう。

 

 

───────

 

 

10:20。

 

 

「映画の時間は……1時間以上あるわね」

 

「服屋にでも行って時間を潰すか?」

 

「うーん……お洋服かぁ……」

 

(反応が悪いな……)

 そういや学生時代、鳳は「服に興味無い」みたいな事を言っていたっけ。

 数年経った今も、昔程じゃないが興味が無いと話してくれたな。

 それだから、服屋に行かないか提案しても反応が悪い。失敗したな。

 そう思っていたら、

 

「そ、その……」

 

「ん?」

 なんだ?モジモジして。おまけに顔が赤くなってるし。

 何を言う気だ?

 

「わ、渡良瀬くんが私に着てほしい服とか知りたいから、その……良かったら、行ってもいい……かな?」

 

…………何この可愛い生き物。大事なことなので、もう一度言います。可愛い。

 

(顔を赤らめ、モジモジしながら両手の指の指先を合わせ、潤んだ瞳で上目遣いしてきやがった……)

 破壊力高過ぎない?いや、高過ぎる(迫真)

 

「……私、知りたいな。渡良瀬くんはどんな服装が好きなのか──」

 

「良し行こう今すぐ行こう」

 

「わ、渡良瀬くん!?」

 

「えーと、女性用の服屋は……此処か。行こう」

 素早くインフォメーションで店の位置を確認。……良し、道を覚えた。

 さぁて、俺の好きな服を選んで着てもらうぞ。覚悟しろ。

 

 

 

 

 この後、服屋に行って鳳に着てもらいたい服を選びまくった。

 いやぁ、最高だった。俺の予想通り、ホットパンツが似合うのなんの。

 最初、鳳は恥ずかしがっていたが、最終的にはホットパンツを穿いてくれて、「動きやすいし、お洒落でいいわね」と気に入ってくれた。しかも、次にデートする時穿いてくれると確約してくれた。

……俺、生きる理由がまた一つ増えた。仕事頑張ろう。仕事だけでなく、職場の人間関係とかの改善も頑張ろう。

 

 

───────

 

 

14:30。

 

 

「相変わらず、マ○レーン刑事は不幸だったわね……」

 

「日本に来て、お祓いしてもらった方が良いんじゃね?」

 

「お祓いしてもらっても、改善しないと思うわ……」

 

「確かに……」

 あの刑事の事だから、逆に悪化しそうな気がする。

 にしても、凄かったなぁ。アクションとかシナリオもそうだけど、やっぱり一番は──

 

「それにしても、撮影にお金掛かったでしょうね。カーチェイスのシーンだけで、超が付く程の高級車をあんなに壊して……。何億。いいえ、何十億掛かったのかしら?」

 

 鳳が言ってくれたが、マジで撮影に幾ら掛けたんだろう?

 映画の中で、マク○ーン刑事がフェラーリやランボルギーニ、ポルシェ、ベンツ。その他、超が付く程の高級車を次々にぶっ壊していく様を見たせいで、別の意味で鳥肌立っちまった。

 

 もし現実であんな事をしたら、確実に借金地獄に陥る。マクレー○刑事、大丈夫かなぁ?

 まぁ、フィクションだから気にしない方がいいな。

 

「確か、パンフレットに書かれてあったわね。えっと……カーチェイスの撮影で使われた車の総額は、約1100万ドル。日本円にして、約10億円も掛かっている。10億……」

 

「カーチェイスのシーンだけで、約10億も使うって……」

 カーチェイス以外にも、色々なシーンで高そうなモノ──建物やヘリ等をぶっ壊しまくっていたから、総額はもっと掛かっているだろうなぁ。

 流石アメリカ。やる事が豪快だ。

 

 

 

 

 

 

 服を選び終えた後。鳳のリクエストで映画を観た俺達は、モール内にあるお洒落なカフェで映画の感想を語り合い、のんびりとした時間を過ごしている。

 

(……なんか、こうして映画について語り合っていると、学生時代の事を思い出すなぁ)

 あの頃は瑞稀(瑞鶴)が日に日に狂って(・ ・ ・)いき、その対応で精神的に余裕が無くなっていたっけ。

 

 そんな俺を見た鳳が、俺を励まして支えてくれたんだよなぁ……。

 最初は筋トレ用具──ダンベルとか、握力グリップとかを貸してきた。何故筋トレ用具?と思い聞いたら、

 

『筋肉は全てを解決してくれるわ!』

 

 って、超ドヤ顔で言われたっけ。今ならツッコミを入れていたけど、当時はそんな余裕は無かった。

 それから、鳳は筋トレ用具以外にもオススメの映画──DVDやBluRayを貸してくれたり。

 それらを返す際、感想を聞かれて語り合ったり。

……懐かしいなぁ。

 

 余談になるが、貸してくれた映画──ダ○・ハードシリーズを見た事で元気が出て、それ以来ファンになった、と言っておく。

 

 閑話休題。

 

 お陰で、心が壊れずに済んだ。そういや、その事に対して未だお礼を言っていなかったな。

 

「……なぁ、鳳」

 

「何かしら?」

 

「その……お礼を言わせてくれ」

 

「お礼?」

 

「あぁ。学生時代、俺の事を励まし、支えてくれた。当時は精神的に余裕が無かったから、お礼を言う事が出来なかった。だから、今、言わせてくれ。

 あの時は俺を助けてくれて、ありがとう」

 

「……どういたしまして」

 

 お礼を言うと、鳳は少しだけ恥ずかしそうに微笑みながらそう言ってくれた。

 

「でも、どうして今、あの時の事を?」

 

「あー……その、だな……」

 何故、あの時の事を話したのか。俺は正直に説明した。

 すると、

 

「確かに。こうして映画の感想を語り合っていると、あの頃を思い出すわね……」

 

 鳳の顔が、少しだけ険しい物になった。

 

「あの頃の渡良瀬くん、本当に酷かったわ。日に日に憔悴していって。物凄く心配したんだから」

 

「……」

 

「高校を卒業した後も時々連絡を取って、会ったりして様子を見ようと思ったけど、ス○ホが壊れちゃって連絡を取れなくなったから、元気でやっているか不安だったの」

 

 卒業した後も心配してくれていたのかよ。申し訳なくなってきた。

 そう思っている間にも、鳳は話を続けている。今は思考を中断し、聞く事に集中しよう。

 

「けど、今は出会った時のように元気そうで安心しているわ」

 

「……その、申し訳ございません」 

 卒業してから約6年間。ずっと心配を。いや、迷惑を掛けていた。本当にすまない。

 深く反省し、誠心誠意謝罪をする。

 

「謝らないで?寧ろ、謝るのは私の方よ」

 

「えっ?」

 何故?

 疑問に思っていると、俺の顔を見て何を考えているのか分かったのか、

 

「……今だから言うわね。実は私、渡良瀬くんの事、狙っていたの」

 

「狙っていた?」

 聞き返してしまったが、意味は分かる。

 何時だか、鳳がウチの職場に来て歓迎会を開いた際。酔っ払い共に尋問され白状してくれたが、鳳は学生時代、俺に淡い想いを抱いていたらしい。

 当時の俺は、精神的に余裕が無かったから全く気付けなかったが。

 

「えぇ。当時、渡良瀬くんは瑞稀さんに振り回されて憔悴していた。だから、優しく接して渡良瀬くんの心を私に向けようとしたわ」

 

「……」

 マジかぁ。打算あっての行動だったのね。何時も思っているけど、女性ってコワイ……。

 

「打算もあったけど、勿論心の底から心配して助けようとしたわ。本当よ?」

 

 うん。信じる。疑わない。本当ダヨ?

 

「話を戻すけど、色々アプローチを掛けたわ。結局失敗に終わっちゃったけど……」

 

「ソウナンダ」

 俺、考エナイ。(こま)ケェコタァ、イインダヨー。

 

「……幻滅した?」

 

「シテナイヨ?」

 我、狭量否。我、寛容。 

 

「……目が大変な事になっているわよ?」

 

「ドウナッテルノ?」

 

「ハイライトが消えているわ」

 

「マジで!?鏡貸してくれない?」

 ついに俺もハイライトさんを職務放棄させる事が出来たのか!?見なきゃ!

 確か、鳳は手鏡を持っていたな──

 

「あ、元に戻った」

 

 嘘ぉ……見たかったのに──じゃなくて。

 

「あの、さっき俺の事を狙っていた、って言ったけど、その……何で狙ったの?」

 疑問に思った事を聞こう。一応、好意を抱いていたというのは知っているが、そこに至るまでの過程が気になる。

 

「……怒らない?」

 

「絶対に怒らない」

 何を言われようと怒らん。だから、安心して話してくれ。

 

「……高校に入学して授業が開始された日。休み時間に、私が通っていた中学時代の同級生達に、体格の事で揶揄われていたんだけど、他の男の子達が笑っていたのに渡良瀬くんだけは全く笑わず、逆に揶揄ってきたり、笑っている奴らを注意してくれた。

 それが、最初の切っ掛けだったわ」

 

「あー……あったなぁ」

 今でも覚えている。俺の隣の席の子──鳳が、クラスメイトの男達に「通う学校を間違えている」「小学生が高校に通うな」みたいな事を言われていた。

 それを聞いた他の男共は笑っていたっけ。

 んで、それを見た俺は腹が立って注意した記憶がある。

 

 当時の俺は今以上に落ち着きが無くて、おまけに特撮──某仮面のライダーにハマっていた為、正義感に燃えていた。

……今思い出すと恥ずかしい。黒歴史だから、忘れたい。

 

「それ以来、その男の子。渡良瀬くんの事が気になり始めたの。けど、男の子=私の体格を揶揄ってくる、という図式が出来上がっていたから、中々信じる事が出来なかった。

 でも、半年近く見ていて、渡良瀬くんだけは違う、って確信出来たわ」

 

 あー、うん。見てきていたね。最初は疑り深い感じだったけど、半年経つ頃には普通の視線になっていたね。

 

「中々普通に会話をする事が出来なかったけど、文化祭が切っ掛けで普通に会話出来る仲になれた。

 そのお陰で、渡良瀬くんは私という存在を(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)ちゃんと見てくれる(・ ・ ・ ・ ・)。他の人達の評価なんて気にせず、接してくれる。

 その事を知ってからは、好きになるのに時間は掛からなかった。気が付けば、渡良瀬君の事を目で追っていたわ」

 

「そう……だったのか……」

 うん。覚えてる。文化祭が終わった頃から、微笑みながら俺に視線を送ってきていたね。

 俺も微笑み返したんだけど、それをやると瑞稀にチョークスリーパーをぶちかまされるから、微笑まずに軽く手を振るだけにしたんだよなぁ。

 

「でも……」

 

 そこで言葉を切ると、鳳は悔しそうな、悲しそうな顔をして俯いてしまった。

 しかし、直ぐに顔を上げて話を再開してくれた。

 

「……渡良瀬くんには、彼女が。瑞稀さんが居た」

 

「……」

 

「だから、悔しいけど諦める事にしたの。私の我儘で渡良瀬くんを困らせたくないから。瑞稀さんの幸せを奪いたく無かったから……」

 

……そう、だったのか。

 まさか、そんなに早くから俺に好意を抱いてくれていたなんて。てっきり高校3年になってからだと思っていたよ。

 

 

 

 それから、俺は鳳から色々話を聞かせてもらった。

 

 恋心を封じ込めて、クラスメイトとして接し続けた事。

 

 徐々に瑞稀が豹変(・ ・)──狂い始めた(・ ・ ・ ・ ・)事に、とても驚いた事。

 

 瑞稀が豹変(・ ・)した原因は俺にある。そう言われながら、静流(翔鶴)に暴力を振るわれている所を見てしまった事。

 

 日に日に憔悴していく俺を見て、心の底から心配してくれた事。

 

 やがて、先程言ってくれたが、瑞稀から鳳に心を向けようとした事。

 

 結局は失敗に終わり、無理に迫るよりも友人として接し続けた方が良いと判断した事。

 

 他にもあるが、長くなるから割愛させてもらう。

 

 

 

「────最初は警戒していたけど、今は信じているわ」

 

「…………そう、か」

 俺の事を好きになってくれた経緯を話し終えた鳳は、今現在、瑞稀と静流に対し、どんな感情を抱いているのか話してくれた。

 話を聞くに、どうやら悪感情は抱いていないようだ。

 

「ただ、ね。その……色々はっちゃけているなぁ、と思うわ……」

 

「……それには激しく同意する」

 最近は俺に抱かれた(・ ・ ・ ・)事で、かなり落ち着いた言動を取るようになってくれた。以前はもう……アレだ。酷いってレベルじゃなかったなぁ。

 しかし、代わりに幻聴が聞こえる(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)ようになり、とても苦しんでいる。

 

 瑞稀と静流だけじゃない。俺とデートしてくれた娘達──祀利(葛城)仁美(阿武隈)桔梗さん(扶桑さん)を除く全員が、幻聴が聞こえる(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)と言っている。

 

(本部(大本営)で診察を受けるのは、来週。麻子さん(加賀さん)とデートした翌日だ)

 日に日に悪化しているから、早く診察を受けさせてやりたい。

 一体、何が原因なんだ──

 

「……一度。たった一度だけ、私も便乗して襲おうと思った事があったわ……」

 

「そうか……ん?」

 今、なんつった?考え事をしていたから、鳳がなんて言ったのか聞こえなかった。

 えっと、確か……私も便乗してー、って言っていたような。何に便乗する気だったんだ?

 

「すまん。ボーッとしていたから、聞いてなかった。悪いけど、もう一回言ってくれないか?」

 流すとマズい気がする。何故かそう思えた。なので、鳳にそう頼むと、

 

「だ、だから……その……たった一度だけ、私も便乗して襲おうと思った事があったわ、と言ったの……」

 

「便乗して襲おうと思った」

 そうなんだー。へぇー。そうなんだぁー。

 

………………。

 

………………。

 

………………。

 

………………とりあえず、一言。

 

「俺、鳳の事、心の底から信じていた。鳳は、ウチの職場のヤベー奴らみたいに、本能に任せて行動しないと、心の底から信じていた。大事なことだから、二回言ったぞ」

 マジかぁ……便乗して襲おうと思った事があるのかぁ……。

 

「あぅ…………」

 

「ちなみに、どうしてそう思ったの?正直に言って?怒らないから」

 

「ほ、本当に怒らない?」

 

「うん。怒らないよ?約束する」

 

「……お仕事が忙しくなる(大規模反攻作戦)前日に、渡良瀬くんが黒咲さん(加賀さん)に女装させられた姿を見た時に、渡良瀬くんが余りにも可愛くて……」

 

「」

 

「その……下品なんだけど……フフ……興奮(・ ・)……しちゃって……瑞稀さん達が襲っているのを見ていたら、私も──」

 

「鳳、やめよう。その話はやめよう」

 男の娘(準にゃん)にされた悪夢を。一部の変態(・ ・)共が編隊(・ ・)を組んで吶喊して来た悪夢を蘇らせないでください。

 

 

 

 とりあえず、鳳はヤベー奴リスト入り確定だな。

 その事を伝えたら半べそかいて謝罪してきたけど、確定した。

 大丈夫、怒ってないよ。失望してないよ。幻滅してないよ。

 ただ、警戒心が増しただけだよ。だから、安心して?

 

 

side 提督 out

 

 

───────

────

 





次回予告


 今日も五月雨は吹雪にシバかれているわね。全く、懲りないんだから。
……いいなぁ、あの艤装。私の。満潮の艤装にも、あんなギミック搭載されないかしら。
……野原主任、夕張さん、何ですか?ニヤニヤして──えっ!?き、聞いていたの!?わ、忘れなさい!忘れて!
 あぁもう!揶揄うな!ウザイのよ!!
……えっ?試作品になるけど、搭載してくれる?ほ、本当っ!?


第139話・お転婆なクラスメイトその2


「2×歳、社会人です(真顔)」


【補足的なナニか】

・ABCマント…「機動戦士クロスボーン・ガンダム」に登場する「マント状」の「対ビーム兵器用追加装甲」を指す。
 正式名称、「Anti Beam Coating Mantle」。頭文字を取って、「ABCマント」と呼称する。
 ポンチョを見ると、ABCマントだと考えてしまう病を抱えているガンダムオタクは多い筈。……多いよね?

・マクレーン刑事…映画、「ダイ・ハード」シリーズに登場する主人公、「ジョン・マクレーン」を指す。
 世界一不運な男と言われており……。詳細は、映画を見れば分かる(ダイマ)

・大鳳…第603鎮守府所属、大鳳型装甲空母一番艦、大鳳の適性者、鳳綾(おおとりあや)を指す。
 非常に小柄な女性で、それが原因で虐められていた事がある。
 虐めてくる奴らに対抗する為、身体を鍛え始めた。その結果、筋トレマニアになったらしい。
 高校時代、自分の体格を一切馬鹿にせず、自分自身を見てくれた渡良瀬準に淡い想いを抱くようになった。
 とても真面目な性格だが、親の影響を受けたせいか、下ネタが大好きという欠点を持つ。

以上、補足終了。

デート編、もっと細かく描写するべき?

  • するべき
  • 簡略化しろ
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