電車に揺られ、数時間。ようやく
軍の人に案内され、建物内へ入りました。
そして、軽く面談を受けました。
内容は、本当に艦娘になるか否か。
一瞬だけ辞めようと思いましたが、艦娘になると返事をしました。
その後、艦娘の装束の採寸や、艤装と呼ばれる武器を装着したり。
色々忙しかったのを覚えています。
──5年数ヶ月前──
「艤装の調子はどう?」
「問題ありません、陸奥教官」
養成所で訓練を受けるようになってから数ヶ月が経ちました。
最初はあまり乗り気ではありませんでした。
家に帰って、御祖父様やお父様達と鍛錬をしたい。己を磨きたい。そう思っていました。しかし、何時までもこんな気持ちでいてはダメです。頭を切り替えなさい。
(
まだまだ未熟な身。どんな事があろうと乗り越えなくては。それに、同じ場所に留まっていては、視野が狭まってしまう。新たな世界を見、知る事で己を磨く事が出来るかもしれません。
ただ、近接武器が無いのが、少し……その、不満です。
時々、自由時間を利用して鍛錬をしていますが、日本刀や木刀が無いので徒手格闘の鍛錬をしています。嗚呼、日本刀を振りたい。
「それじゃ、第一砲塔と第二砲塔の砲門を開いて?」
「了解しました!」
いけない、考え事をしている場合じゃないわ。集中しなさい、私。
本日の教官は、長門型戦艦二番艦、陸奥の適性を持つ艦娘です。他の教官役の艦娘と違い、気さくでお喋りが好きみたい。けれど、とても厳しい。まぁ、今まで御祖父様から厳しく指導を受け、鍛錬をしてきましたから、そこまで苦に思いませんが。
「座学で習ったと思うけど、戦艦の一斉射撃は反動が凄まじいから、しっかり姿勢を制御しないと、倒れるわ。気を付けてね?」
「了解です、陸奥教官」
今まで沢山砲術訓練を行ってきましたが、一斉射撃をするのは今日が初めてです。まずは、第一砲塔と第二砲塔の砲門を開くよう、艤装に宿る妖精さん達に指示を出します。……準備完了。
「じゃあ、最初は二門から」
「はい!」
砲撃時の姿勢をしっかり取って──。
今まで教わった事を思い出しながら、砲撃の準備を整える。
目標、1,000m先の的。
陸奥教官曰く、戦艦娘にとって1,000mは至近距離らしいです。
始めたばかりの頃は、数十m先の的にすら当てられなかった。
でも、今は違う。
沢山勉強をし、沢山実技の訓練を受け、今では4,000mまでなら当てられるようになった。
心を落ち着けなさい。
冷静になれば、失敗しない。
今までそうだった。
だから。
(何時如何なる時も、冷静に)
己に言い聞かせる。
距離、風、波、良し。───撃てッ!!!
轟音。
爆煙と黒煙が砲塔から吐き出される。
直後、今までと比べ物にならない反動が私を襲う。
けれど、姿勢を保つ。
砲塔から放たれた弾を見る。
弾は、狙った的に直撃。
的は粉々に砕け散った。
(たった二門でこの反動)
私の艤装は、砲塔が四基もある。四基全ての砲門を開き、砲撃したらどうなるのかしら?
「命中。初めてにしてはやるわね」
「ありがとうございます」
陸奥教官が褒めてくださった。やりました。けれど、浮かれてはならない。
「もう一度、第一砲塔と第二砲塔の2つで砲撃をして?」
「了解!」
たった一度成功しただけ。何度もやって、全て確実に出来るようにならなければ、意味は無い。
それから何度か二つの砲塔から砲撃を行いました。
少しずつ反動に慣れ、余計な力を入れなくても砲撃出来るようになりました。
「へぇ、もう慣れたんだ。早いわね?それじゃ、次は第三砲塔の砲門を開いて、3つの砲塔から砲撃をして?」
少し驚いた顔をしながら、陸奥教官はそう言いました。私の砲撃時の姿勢を見て、問題がないと判断したのか、第三砲塔の砲門を開くよう指示をしてきました。
(冷静に。
目を瞑り、己に言い聞かせる。
……さぁ、始めるわよ。
妖精さん達に第三砲塔の砲門を開くよう指示を出します。
──第一砲塔、第二砲塔、第三砲塔、砲門開け。
駆動音が聞こえる。
金属が擦れる様な音が鼓膜に響く。
──準備完了。
距離、良し。
先程より風が強く、波が高い。
少し調整。
……良し、行ける。
「主砲、撃てッ!!」
轟音。黒煙が吐き出される。
先程とは比べ物にならない程の反動。
覚悟していたけど、結構強いわね。少しだけよろけてしまった。
放たれた弾は、何発か外してしまった。
「下半身に力を込め過ぎているわね。もう少し力を抜いて?」
「了解です、陸奥教官」
反動に備え、下半身に力を込めた──足を踏ん張ったのだけど、それがいけなかったみたい。
「足を踏ん張ればいいわけじゃ無いの。膝や足の付け根を上手く利用して、反動を逃すのよ」
「はい!」
成程、関節も利用して衝撃を上手く逃すのですね?
陸奥教官からのアドバイスをしっかり覚える。
それから、何度か砲撃を行いましたが、上手く行きませんでした。悔しい。
しかし、陸奥教官は上出来だと褒めてくださいました。
結局、この日は第四砲塔を開く事はありませんでした。
………………。
「扶桑さん、お疲れ様です」
「あら、榛名さん。お疲れ様」
訓練を終え、お風呂で汗を流し部屋に戻ると、ルームメイトの榛名さん──金剛型高速戦艦三番艦、榛名の適性を持つ艦娘候補生──に声をかけられました。
「今日の訓練、見ていました。凄いです!」
「ふふっ、ありがとう」
まるで自分のように喜んでいるわね。
「どうすれば、姿勢を崩さず砲撃出来るのでしょう?」
「うーん。こればかりは自分で感覚を掴むしかないわね」
申し訳ないけど、アドバイス出来ないわ。それに、私と榛名さんの艤装は砲塔の大きさが違うから、私のやり方を教えても、上手くいかない可能性がある。
「そうですか……すみません、変なことを聞いてしまって」
「気にしないで?私の方こそ、大したアドバイスが出来なくてごめんなさい」
「いえ、そんな……」
「只今戻りました」
「あら、おかえりなさい、山城」
梓……じゃなかった。山城が帰ってきたわね。ああ、髪がまだ濡れているじゃない。
「山城、髪をしっかり乾かしなさいと、いつも言っているでしょう?」
女の髪は命なのよ?お風呂から上がったら、しっかり髪を乾かさないと。私と違って
「も、申し訳ありません…」
「ほら、来なさい」
実家から持ってきた荷物からドライヤーを取り出して、コンセントに刺して。これで良し。
妹を椅子に座らせ、ドライヤーで髪を乾かす。
脱衣所にもドライヤーはあるけど、数が少ないからいつも取り合い──お風呂と脱衣所はとても大きく、艦娘候補生。駆逐艦娘から軽巡・重巡洋艦娘、戦艦娘、空母艦娘が一度に利用するからドライヤーは争奪戦──になるの。それに、長時間ドライヤーを使っていると、後ろに使いたい人が並んでいる事がある。
あの行列を見て以来、脱衣所のドライヤーは使わず、実家から持ち込んだドライヤーを部屋で使って乾かすことにしたの。
「ふあぁ〜」
気待ちよさそうな声を出してる。ふふっ、大きくなっても変わらないのね。
「姉様に頭を撫でられてるぅ〜ダメになるぅ〜」
……何を言っているの。
妹は時々、変なことを言う。それに、自分で言うのもなんですが、私に依存している気がします。早く自立してくれないかしら?
「はい、終わりよ」
温風から冷風にして仕上げる。よし、乾いた。
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
ドライヤーを片付け、明日の準備をしましょう。明日は指揮訓練と座学ね。筆記用具と教科書は……あった。
それから、消灯時間まで勉強をしました。
技術があっても、知識がなければ実力を100%発揮することは出来ません。こら、山城。復習をしなさい。榛名さんを見習いなさい?
──────────────
「主砲、副砲──撃てッ!!!」
一斉射撃の訓練を始めて1ヶ月。あれから
四つの砲塔と、幾つかの副砲から、弾が放たれる。
直後、轟音。黒煙が砲塔から吐き出される。
そして、凄まじい反動。
少し前まで、よろけていた。
けれど、今は違う。
全身の関節を上手く使い、反動を制御。
体制を一切崩さず、砲撃が出来るようになりました。
「全弾命中。お見事」
「ありがとうございます!」
本日の教官、長門教官が褒めてくださった。しかし、喜んではいけません。まだまだ動きが粗い。もっと精進しないと。
──────────────
「これより、提督候補生との合同訓練を受けてもらう」
講堂に集まり、壇上に立つ藤原准将がそう仰いました。
養成所に来て半年近くが経ちました。座学や指揮訓練、実技訓練を行い、日に日に上達していき、充実した日々を送りました。
そして、今日。事前に言われていた、提督候補生との合同訓練が開始されます。
(提督候補生。見たところ、私より歳下の子達ばかりね)
恥ずかしい話ですが、この養成所──艦娘候補生の中で私は最年長です。……えっ、私の年齢ですか?うふふふ。首の骨をへし折りますよ♪
「それでは、演習場に移動してくれ」
女性の年齢は、明かしてはいけない。そう。例えるのなら、パンドラの箱です。その箱を開けようとするのなら、全力で阻止します。勿論、この拳で。
「ふ、扶桑さん?」
それか、御祖父様直伝の鳶穿で心臓を抉り取って差し上げます。だから年齢を聞かないで。いいわね?アッ、ハイと言ってください。言いなさい。言え。
「ね、姉様?」
「……榛名さん?山城?」
どうしたの?そんな怯えた顔をして。……あら?皆さん、講堂を出ていっていますね。どうしたのかしら?
「姉様、どうされました?」
「なんでもないわ♪」
ええ、なんでもない。なんでもありません。うふふ♪
「」
「」
……何故そんな顔で私を見るの?
………………。
「……」
全弾命中。もう的が無いわね。補充しないと。
『こ、怖ぇ……』
無線から提督候補生の小さい声が聴こえた。
あの後、山城から提督候補生と訓練を行うと聞かされ、慌てて演習場に向かいました。そして、一人の提督候補生と組み、指示を受けながら航行をし、その後、砲撃訓練に移りました。
(普通に撃っただけなのに、何故怖がられたのでしょう?)
……そういえば、陸奥教官に言われたわね。砲撃をする時、顔が怖い、と。自分では普通にしていたつもりだったのですが。
──────────────
(何処を見ているの?)
私の身体ではなく、艦隊を。周りを見なさい?
提督候補生と組んで訓練を行うようになってから、数日が過ぎました。皆さん若い人ばかりで、精神もどこか幼い気がします。全員が全員ではありませんが。
それに、
(胸や足を見てくる)
自慢ではないけど、私の身体は、出る所は出て、引っ込む所は引っ込んでいます。それに、鍛えているから結構引き締まっています。それだからか、性的な目で見てくる提督候補生が多いです。
まぁ、男の子だから仕方ないのでしょうけど。
(もっと、しっかりして欲しいわね)
遊びに来ているわけじゃ、ないのよ?
───────
(……はぁ)
あれから更に数日が過ぎました。
ダメね。欲に負けている提督候補生ばかりだわ。
気持ちは分からないでもないけど、しっかりして?
(えっと、今日は……この子ね)
養成所から支給された端末を弄り、情報を確認。名前は、渡良瀬準。歳は妹と同じ。提督候補生の中では1番若い部類に入る18歳。
(やんちゃ盛りな歳頃ね)
先日組んだ、加藤提督候補生みたいな事をしてこないと良いのだけど。
さて、準備を整えて行きましょう。
艤装──異常なし。
体調は万全。
……よし、頑張りましょう。
この時の私は知らなかった。
彼、渡良瀬提督候補生に夢中になる事など。
私の中で眠る
───────
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どうして?どうして?ねぇ?
※扶桑の過去編は書き終わっているけど、このまま続けたら一万文字オーバーしてしまう為、ここで区切らせて頂きました。
※毎回、誤字脱字ばかりで申し訳ありません。アルコール入った状態で書くもんじゃないね…。
Q:山城の出番少なくね?
A:すまぬ…山城の過去編でしっかり補完するから許してください。
あっ、山城さんの
Q:何故扶桑の年齢を××歳にした
A:色っぽい歳上の女性、お姉さん枠が欲しかったから××歳にしました。反省している。後悔は一切していない。
Q:陸奥教官の年齢教えて
A:蜂の巣にされるから教えない(真顔)
……20代後半、扶桑より少しだけ歳上、という設定です(超小声)
その他、疑問に思った事がございましたら、コメント等をしてやってください。全力でお答えします。