追跡鶴   作:EMS-10

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電車に揺られ、数時間。ようやく目的地(養成所)に着きました。
軍の人に案内され、建物内へ入りました。
そして、軽く面談を受けました。
内容は、本当に艦娘になるか否か。
一瞬だけ辞めようと思いましたが、艦娘になると返事をしました。
その後、艦娘の装束の採寸や、艤装と呼ばれる武器を装着したり。
色々忙しかったのを覚えています。



壊れ始める大和撫子

 

──5年数ヶ月前──

 

 

「艤装の調子はどう?」

 

「問題ありません、陸奥教官」

養成所で訓練を受けるようになってから数ヶ月が経ちました。

最初はあまり乗り気ではありませんでした。

家に帰って、御祖父様やお父様達と鍛錬をしたい。己を磨きたい。そう思っていました。しかし、何時までもこんな気持ちでいてはダメです。頭を切り替えなさい。

 

(此処(養成所)に来る前、これは試練だと思いなさいと言い聞かせたでしょう?)

まだまだ未熟な身。どんな事があろうと乗り越えなくては。それに、同じ場所に留まっていては、視野が狭まってしまう。新たな世界を見、知る事で己を磨く事が出来るかもしれません。

ただ、近接武器が無いのが、少し……その、不満です。

時々、自由時間を利用して鍛錬をしていますが、日本刀や木刀が無いので徒手格闘の鍛錬をしています。嗚呼、日本刀を振りたい。

 

「それじゃ、第一砲塔と第二砲塔の砲門を開いて?」

 

「了解しました!」

いけない、考え事をしている場合じゃないわ。集中しなさい、私。

本日の教官は、長門型戦艦二番艦、陸奥の適性を持つ艦娘です。他の教官役の艦娘と違い、気さくでお喋りが好きみたい。けれど、とても厳しい。まぁ、今まで御祖父様から厳しく指導を受け、鍛錬をしてきましたから、そこまで苦に思いませんが。

 

「座学で習ったと思うけど、戦艦の一斉射撃は反動が凄まじいから、しっかり姿勢を制御しないと、倒れるわ。気を付けてね?」

 

「了解です、陸奥教官」

今まで沢山砲術訓練を行ってきましたが、一斉射撃をするのは今日が初めてです。まずは、第一砲塔と第二砲塔の砲門を開くよう、艤装に宿る妖精さん達に指示を出します。……準備完了。

 

「じゃあ、最初は二門から」

 

「はい!」

砲撃時の姿勢をしっかり取って──。

今まで教わった事を思い出しながら、砲撃の準備を整える。

目標、1,000m先の的。

陸奥教官曰く、戦艦娘にとって1,000mは至近距離らしいです。

始めたばかりの頃は、数十m先の的にすら当てられなかった。

でも、今は違う。

沢山勉強をし、沢山実技の訓練を受け、今では4,000mまでなら当てられるようになった。

心を落ち着けなさい。

冷静になれば、失敗しない。

今までそうだった。

だから。

 

(何時如何なる時も、冷静に)

己に言い聞かせる。

距離、風、波、良し。───撃てッ!!!

轟音。

爆煙と黒煙が砲塔から吐き出される。

直後、今までと比べ物にならない反動が私を襲う。

けれど、姿勢を保つ。

砲塔から放たれた弾を見る。

弾は、狙った的に直撃。

的は粉々に砕け散った。

 

(たった二門でこの反動)

私の艤装は、砲塔が四基もある。四基全ての砲門を開き、砲撃したらどうなるのかしら?

 

「命中。初めてにしてはやるわね」

 

「ありがとうございます」

陸奥教官が褒めてくださった。やりました。けれど、浮かれてはならない。

 

「もう一度、第一砲塔と第二砲塔の2つで砲撃をして?」

 

「了解!」

たった一度成功しただけ。何度もやって、全て確実に出来るようにならなければ、意味は無い。

それから何度か二つの砲塔から砲撃を行いました。

少しずつ反動に慣れ、余計な力を入れなくても砲撃出来るようになりました。

 

「へぇ、もう慣れたんだ。早いわね?それじゃ、次は第三砲塔の砲門を開いて、3つの砲塔から砲撃をして?」

 

少し驚いた顔をしながら、陸奥教官はそう言いました。私の砲撃時の姿勢を見て、問題がないと判断したのか、第三砲塔の砲門を開くよう指示をしてきました。

 

(冷静に。精神()を落ち着けなさい)

目を瞑り、己に言い聞かせる。

……さぁ、始めるわよ。

妖精さん達に第三砲塔の砲門を開くよう指示を出します。

──第一砲塔、第二砲塔、第三砲塔、砲門開け。

駆動音が聞こえる。

金属が擦れる様な音が鼓膜に響く。

──準備完了。

距離、良し。

先程より風が強く、波が高い。

少し調整。

……良し、行ける。

 

「主砲、撃てッ!!」

轟音。黒煙が吐き出される。

先程とは比べ物にならない程の反動。

覚悟していたけど、結構強いわね。少しだけよろけてしまった。

放たれた弾は、何発か外してしまった。

 

「下半身に力を込め過ぎているわね。もう少し力を抜いて?」

 

「了解です、陸奥教官」

反動に備え、下半身に力を込めた──足を踏ん張ったのだけど、それがいけなかったみたい。

 

「足を踏ん張ればいいわけじゃ無いの。膝や足の付け根を上手く利用して、反動を逃すのよ」

 

「はい!」

成程、関節も利用して衝撃を上手く逃すのですね?

陸奥教官からのアドバイスをしっかり覚える。

それから、何度か砲撃を行いましたが、上手く行きませんでした。悔しい。

しかし、陸奥教官は上出来だと褒めてくださいました。

結局、この日は第四砲塔を開く事はありませんでした。

 

 

………………。

 

 

「扶桑さん、お疲れ様です」

 

「あら、榛名さん。お疲れ様」

訓練を終え、お風呂で汗を流し部屋に戻ると、ルームメイトの榛名さん──金剛型高速戦艦三番艦、榛名の適性を持つ艦娘候補生──に声をかけられました。

 

「今日の訓練、見ていました。凄いです!」

 

「ふふっ、ありがとう」

まるで自分のように喜んでいるわね。

 

「どうすれば、姿勢を崩さず砲撃出来るのでしょう?」

 

「うーん。こればかりは自分で感覚を掴むしかないわね」

申し訳ないけど、アドバイス出来ないわ。それに、私と榛名さんの艤装は砲塔の大きさが違うから、私のやり方を教えても、上手くいかない可能性がある。

 

「そうですか……すみません、変なことを聞いてしまって」

 

「気にしないで?私の方こそ、大したアドバイスが出来なくてごめんなさい」

 

「いえ、そんな……」

 

「只今戻りました」

 

「あら、おかえりなさい、山城」

梓……じゃなかった。山城が帰ってきたわね。ああ、髪がまだ濡れているじゃない。

 

「山城、髪をしっかり乾かしなさいと、いつも言っているでしょう?」

女の髪は命なのよ?お風呂から上がったら、しっかり髪を乾かさないと。私と違って(山城)は少しズボラな所があるから、完全に乾く前に部屋に戻ってきたみたいね。

 

「も、申し訳ありません…」

 

「ほら、来なさい」

実家から持ってきた荷物からドライヤーを取り出して、コンセントに刺して。これで良し。

妹を椅子に座らせ、ドライヤーで髪を乾かす。

脱衣所にもドライヤーはあるけど、数が少ないからいつも取り合い──お風呂と脱衣所はとても大きく、艦娘候補生。駆逐艦娘から軽巡・重巡洋艦娘、戦艦娘、空母艦娘が一度に利用するからドライヤーは争奪戦──になるの。それに、長時間ドライヤーを使っていると、後ろに使いたい人が並んでいる事がある。

あの行列を見て以来、脱衣所のドライヤーは使わず、実家から持ち込んだドライヤーを部屋で使って乾かすことにしたの。

 

「ふあぁ〜」

 

気待ちよさそうな声を出してる。ふふっ、大きくなっても変わらないのね。

 

「姉様に頭を撫でられてるぅ〜ダメになるぅ〜」

 

……何を言っているの。

妹は時々、変なことを言う。それに、自分で言うのもなんですが、私に依存している気がします。早く自立してくれないかしら?

 

「はい、終わりよ」

温風から冷風にして仕上げる。よし、乾いた。

 

「ありがとうございます」

 

「どういたしまして」

ドライヤーを片付け、明日の準備をしましょう。明日は指揮訓練と座学ね。筆記用具と教科書は……あった。

それから、消灯時間まで勉強をしました。

技術があっても、知識がなければ実力を100%発揮することは出来ません。こら、山城。復習をしなさい。榛名さんを見習いなさい?

 

 

 

──────────────

 

 

 

「主砲、副砲──撃てッ!!!」

一斉射撃の訓練を始めて1ヶ月。あれから

四つの砲塔と、幾つかの副砲から、弾が放たれる。

直後、轟音。黒煙が砲塔から吐き出される。

そして、凄まじい反動。

少し前まで、よろけていた。

けれど、今は違う。

全身の関節を上手く使い、反動を制御。

体制を一切崩さず、砲撃が出来るようになりました。

 

「全弾命中。お見事」

 

「ありがとうございます!」

本日の教官、長門教官が褒めてくださった。しかし、喜んではいけません。まだまだ動きが粗い。もっと精進しないと。

 

 

──────────────

 

 

「これより、提督候補生との合同訓練を受けてもらう」

 

講堂に集まり、壇上に立つ藤原准将がそう仰いました。

養成所に来て半年近くが経ちました。座学や指揮訓練、実技訓練を行い、日に日に上達していき、充実した日々を送りました。

そして、今日。事前に言われていた、提督候補生との合同訓練が開始されます。

 

(提督候補生。見たところ、私より歳下の子達ばかりね)

恥ずかしい話ですが、この養成所──艦娘候補生の中で私は最年長です。……えっ、私の年齢ですか?うふふふ。首の骨をへし折りますよ♪

 

「それでは、演習場に移動してくれ」

 

女性の年齢は、明かしてはいけない。そう。例えるのなら、パンドラの箱です。その箱を開けようとするのなら、全力で阻止します。勿論、この拳で。

 

「ふ、扶桑さん?」

 

それか、御祖父様直伝の鳶穿で心臓を抉り取って差し上げます。だから年齢を聞かないで。いいわね?アッ、ハイと言ってください。言いなさい。言え。

 

「ね、姉様?」

 

「……榛名さん?山城?」

どうしたの?そんな怯えた顔をして。……あら?皆さん、講堂を出ていっていますね。どうしたのかしら?

 

「姉様、どうされました?」

 

「なんでもないわ♪」

ええ、なんでもない。なんでもありません。うふふ♪

 

「」

「」

 

……何故そんな顔で私を見るの?

 

 

………………。

 

 

「……」

全弾命中。もう的が無いわね。補充しないと。

 

こ、怖ぇ……

 

無線から提督候補生の小さい声が聴こえた。

あの後、山城から提督候補生と訓練を行うと聞かされ、慌てて演習場に向かいました。そして、一人の提督候補生と組み、指示を受けながら航行をし、その後、砲撃訓練に移りました。

 

(普通に撃っただけなのに、何故怖がられたのでしょう?)

……そういえば、陸奥教官に言われたわね。砲撃をする時、顔が怖い、と。自分では普通にしていたつもりだったのですが。

 

 

──────────────

 

 

(何処を見ているの?)

私の身体ではなく、艦隊を。周りを見なさい?

提督候補生と組んで訓練を行うようになってから、数日が過ぎました。皆さん若い人ばかりで、精神もどこか幼い気がします。全員が全員ではありませんが。

それに、

 

(胸や足を見てくる)

自慢ではないけど、私の身体は、出る所は出て、引っ込む所は引っ込んでいます。それに、鍛えているから結構引き締まっています。それだからか、性的な目で見てくる提督候補生が多いです。

まぁ、男の子だから仕方ないのでしょうけど。

 

(もっと、しっかりして欲しいわね)

遊びに来ているわけじゃ、ないのよ?

 

 

───────

 

 

(……はぁ)

あれから更に数日が過ぎました。

ダメね。欲に負けている提督候補生ばかりだわ。

気持ちは分からないでもないけど、しっかりして?

 

(えっと、今日は……この子ね)

養成所から支給された端末を弄り、情報を確認。名前は、渡良瀬準。歳は妹と同じ。提督候補生の中では1番若い部類に入る18歳。

 

(やんちゃ盛りな歳頃ね)

先日組んだ、加藤提督候補生みたいな事をしてこないと良いのだけど。

さて、準備を整えて行きましょう。

艤装──異常なし。

体調は万全。

精神()に乱れ無し。

……よし、頑張りましょう。

 

 

 

この時の私は知らなかった。

彼、渡良瀬提督候補生に夢中になる事など。

私の中で眠る怪物(欲望)が覚醒するなど。

 

 

 

───────

────

 

 





Next Page「スイッチON」
どうして?どうして?ねぇ?


※扶桑の過去編は書き終わっているけど、このまま続けたら一万文字オーバーしてしまう為、ここで区切らせて頂きました。

※毎回、誤字脱字ばかりで申し訳ありません。アルコール入った状態で書くもんじゃないね…。


Q:山城の出番少なくね?
A:すまぬ…山城の過去編でしっかり補完するから許してください。
あっ、山城さんの全力全壊(・ ・ ・ ・)箱投げは次話で開催されます。慌てふためく主人公をお楽しみに(ステマ)

Q:何故扶桑の年齢を××歳にした
A:色っぽい歳上の女性、お姉さん枠が欲しかったから××歳にしました。反省している。後悔は一切していない。

Q:陸奥教官の年齢教えて
A:蜂の巣にされるから教えない(真顔)
……20代後半、扶桑より少しだけ歳上、という設定です(超小声)


その他、疑問に思った事がございましたら、コメント等をしてやってください。全力でお答えします。
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