追跡鶴   作:EMS-10

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※注意※
今日も鎮守府は平和です
頭を空っぽにしてご覧下さい
お前らの嫁だろ、早くなんとかしろよ


※この小説内の季節は、12月上旬頃となっています



第145話・強行策

 

side 矢矧

 

 

──第603鎮守府、工廠──

()開始85日目。

11:30。

 

 

 

『榛名は大丈夫ですッッ!!!』

 

 

『いいから、入渠してきなさい』

 

 

 

「…………」

 母港の方から、榛名と加賀さんのやり取りが聞こえてきた。

 相変わらず榛名は絶好調ね。()から帰ると同時に提督の所へ行こうとして、同じく()に行った加賀さんに阻止されている。

 

 今朝の()で、榛名はあれだけ派手に暴れ回ったというのに、疲れた素振りを一切見せていない。どれだけスタミナがあるのよ。

 というか、榛名。貴女、負傷しているのだから、大人しく入渠室に行って傷を癒してきなさい──

 

 

『ズ゙ェ゙ア゙ッ゙ッ゙ッ゙!゙!゙!゙』

 

 

『ぐ゙げ゙っ゙っ゙っ゙!゙!゙?゙』

 

 

──加賀さんの気合が入った声が聞こえ、直後、地面に何かを叩き付けたような鈍い音が聞こえてきた。

 それとほぼ同時に、榛名の断末魔の叫びが聞こえた。思わず加賀さん達の方を見ると、

 

(榛名の頭が、地面に埋まっている……)

 母港の地面はコンクリート製なんだけど、何で埋まっているの?加賀さん、何をしたんですか?

 というか、榛名は大丈夫かしら?下手したら、頭蓋骨が粉砕されている恐れが──

 

 

『いきなりノーザンライトボムしないでください!!』

 

 

──自力で脱出して、加賀さんに文句を言っている。

 成程、ノーザンライトボムか。アレなら相当勢いがあるから、地面に頭が埋まる。

 

(見た所、出血していない。大丈夫みたいね)

 榛名の頭が()()()()()()か心配だったけど、様子を見る限り、大丈夫そう。

 ただ、頭部に強い衝撃を受けたからか、フラついている。

 あの様子だと、もう一撃喰らったらダウンするでしょう。

 

 

『では、次からは技名を宣言してから、ぶちかまします。

 

 次はツームストンパイルドライバーよ』

 

 

 

……加賀さんが素早く足払いをして、両足首を掴み、持ち上げ、そして、榛名の頭を地面目がけて──

 

 

「主砲──砲身と本体が完全にひしゃげている。新調する必要有りだな。

 副砲──砲身はひしゃげているけど、本体は無事。確認した所、砲身だけ取り替えれば大丈夫そうだ。

 魚雷発射管──主砲と同じく、完全にお釈迦。新調確定。

 飛行甲板──()()()()が摩耗している以外は、異常なし。()()()()を交換するだけで済む。

 主機──異常なし。海水塩等を真水で洗い流して、潤滑剤を塗って整備すれば未だ未だ使える。

…………良し、確認完了」

 

 

──加賀さん達を見ていると、私の艤装を確認し終えたのか、野原主任が破損した箇所について説明を始めてくれた。

 榛名の断末魔の叫びと、コンクリートが砕けるような音が聞こえたけど、気の所為よ。

 

 頭を切り替えて、今は自分の艤装について野原主任に聞きましょう。

 私は野原主任に、艤装はどれ位の時間で直るのか。そして、消費する資材の量について質問した。

 

「そうですね……1時間もあれば、完璧に直してみせます」

 

「相変わらず早いですね」

 ここまで壊れていると、修理にかなりの時間が掛かると思っていたけど、野原主任は1時間程で直せると言ってきた。

 流石、大本営所属の技術者。相変わらず早い。

 

「資材ですが……大体、これ位ですね」

 

 内心で感嘆していると、野原主任は端末を操作し、私に見せてくれた。……結構消費するわね。

 

(今朝の()で大破した娘が複数居るから、それの修理でかなり()()()……)

 おまけに、昨日提督が()()しようとした際、皆の艤装を結構壊したから、今回の修理で殆ど残らない。

 ただ、幸いな事に近日中に大本営から支給されるから、カツカツになる心配は無い。

 

……何故、私を含めて、大破した娘が複数居るのか。それは──

 

「にしても、()()()()()か……。確か、渡良瀬少佐の話では、第603鎮守府が担当する周辺海域は、冬になると()()()()()()()()()()()()と言っていましたね」

 

 そう。野原主任が言ってくれたけど、私達の艤装は、今朝()へ行った際、巨大化した()()()()()()()()に襲われて大破してしまった。

 

 ()()()()()()()()()()()()()は硬い殻に覆われていて、今まで出現した魚介類──秋刀魚やイワシ、サメ等と比べて、弱らせて捕獲するのに苦労した。

 

 主砲や副砲を撃ち込んでも弾かれるわ。酸素魚雷を撃ち込んでも、航空攻撃をしても、()()()()()()()()()()()()

 幸い、近接攻撃──正確には、()()()だけは効果があった。

 

 閑話休題。

 

 私の感覚では、深海棲艦の()f()l()a()g()s()h()i()p()()()()()()を持っていると感じたわ。

 お陰で、今まで出現した魚介類と同じ感覚で相手したら、痛い目に遭ってしまった。

 幸い、轟沈者(死亡者)は出なかったけど、複数の大破者が出てしまい──

 

「報告では、かなり硬いと聞きました。どれ程の硬さだったんですか?」

 

 思考していると、野原主任が質問してきた。一旦思考するのはやめましょう。

 私は野原主任に、()()()()()()()()()()()()()は、深海棲艦の()f()l()a()g()s()h()i()p()()()()()()を持っていると感じた事。

 近接攻撃(打撃技)以外、まともにダメージを与えられない事を説明すると、

 

「うげ、マジか……そりゃヤバいな……」

 

 野原主任は驚いた顔をしながらそう言った。

 無理もないわ。()()()()()()なのに、()f()l()a()g()s()h()i()p()()()()()()()()と言われたのだから。

 

 勿論、この事は既に提督に報告してある。

 ()()()()()と戦闘した際、無線で報告したら、「んなアホな!?」とか叫んでいた。

 気待ちは分かるけど、事実だから受け止めなさい?

 

「主砲や副砲、魚雷、航空攻撃といった飛び道具は、殻に弾かれるか、表面を軽く焦がす程度。近接攻撃を。打撃技をぶちかませば、効果がある、か……良し!」

 

……野原主任が、何やら思い付いたみたい。嫌な予感しかしない。

 

「少佐に話す事が出来たので、少しだけ席を外します!」

 

「あっ、ちょっ!?」

……行ってしまった。恐らく。いえ、確実に野原主任は提督に、新たな武器を造って良いか聞きに行ったわね。

 また、提督の胃袋と精神にダメージが入るでしょう。

 

(提督……か)

 大本営に行って、瑞鶴達の()()()()()()()原因が判明してから、以前のように胃痛に悩まされたり、ぶっとんだ行動を取るようになってしまった。

 

 気持ちは分かる。瑞鶴達が聞いていた()()は、()()()()()だと言われたのだから。

 

 今は未だノイズが混じっているけど、大本営の先生が()()()()()のような物を解除したから、()()6()()()()には()()()()()()()()ようになる。

 

(そうなったら、私が()()()()()()がバレてしまう)

 バレたら最後。確実に妨害されてしまう。

 今まで()()を立てて行動していたけど、全てが水の泡と化す。

 

(提督に。()()()()()()()()()になりたい。ただ、それだけなのに……)

 何故、()()()()()()()の?

 最初は恥ずかしさが上回って、つい厳しく接してしまったから、最近は()()()接しているのに、一向に()()()()()()()──

 

 

 

「矢矧、お疲れ様。艤装の方はどう?」

 

「──()()()、お疲れ様。艤装は大破してしまったから、これから直してもらう所よ」

 思考していると、能代姉さんが声を掛けてきた。

 

(姉さんは結構鋭い所があるから、ほんの少しでも表情に出ると指摘してくる)

 現に、先日()()について思い悩んでいたら、姉さんに「何か悩み事でもあるの?」と聞かれてしまった。

 これ以上思考したら、怪しまれる恐れがある。一旦()()について思考するのをやめましょう。

 

「結構派手にやられたわね。身体の方は大丈夫?」

 

「艤装は派手にやられてしまったけど、身体の方はかすり傷を負った程度よ」

 私の艤装を見ると、心配そうな顔をしながら私の身体は無事か?と聞いてきた。

 

 余談になるけど、能代姉さんは今朝私と一緒に()に行って、私よりも多くの()()()()()と戦っていた。

 複数の()()()()()に囲まれ、襲われたというのに、艤装はカスダメ(小破未満)程度の損傷に留めている。

 勿論、身体の方はかすり傷すら負っていない。

 

 一体、どう鍛えればあんな動きが出来るの?

 姉さんは「()()()()()()()()出来る!」とアドバイスしてくれたから、そのアドバイス通りにやっているけど、未だ出来ない。

 

「そう。私との演習の成果が現われたみたいね」

 

 能代姉さんが言ったけど、私の身体が軽傷で済んだのは、能代姉さんとの演習で、判断力や身体捌きの能力が上がったから。

 以前の私だったら、判断ミス等をして重症を負っていた可能性が高い。

 

「けど、ここまで艤装が壊されているから、まだまだダメね。今度私と演習する時は、もっと厳しく行くから、覚悟しなさい?」

 

「……はい」

 地獄が確定した。湿布を用意しておきましょう。

 医療妖精さんから貰った湿布は、未だ余裕がある。けど、能代姉さんとの演習で大量に消費する恐れがあるから、念の為、貰いに行っておきましょう。

 

「そもそも、矢矧は()()()()()()()()()()()()()()()()()わ!」

 

()()()()()()()()?アレで!?」

 嘘……。私の中では、相当躊躇いと羞恥心を捨てているのだけど、全然ダメだと言うの!?

 

「えぇ、全然()()()()()()()()わ!執務中や待機中。そして、オフの日ならともかく、出撃中や演習中に、スカートが捲れるのを気にし過ぎよッ!」

 

()()気にするわよッ!」

 

「戦場では、ほんの一瞬の油断や隙が命取りになるのよ?たかがスカートが捲れる程度で、一々恥じらうなッ!」

 

「ごめん、姉さん。私、姉さん程()()()()()()()()わ」

 姉さんの言う事は一理ある。あるけど、無理。

 流石に、()()()は生命の危機を感じた時は気にしない……と思うけど、そうでも無い時でも羞恥心を感じないようにしろ!と言われても、無理。

 

「何を甘ったれた事を言っているの?下着なんて、布よ?服の一部みたいな物よ?」

 

「確かにそうかもしれないけど──」

 

「良し!私と演習する際、スカートを()()()()()()()わ!!」

 

「姉さん、やめて?」

 懇願したけど、姉さんは()()()()()()()みたい。

 冗談だと思いたいけど、姉さんの顔は真剣だ。確実に実行してくる。

 

「やめないわ。というか、矢矧。貴女、艦娘になってから()()()()()()()()んじゃない?」

 

「……えっ!?」

 姉さんに指摘されて、思わずドキッとしてしまった。

 確かに、艦娘になる前と比べて、私は()()()()()()()()()

 昔は、スカートが捲れても、()()()()()()()()()

 けど、今は()()()が出来てしまった事で──

 

 

 

『提督ッ!待ってよ!!』

 

 

『待たないッ!!』

 

 

 

──時雨と提督の声が、執務室の方から聞こえてきた。

 それとほぼ同時に、強化された聴力が、走る音を捉えた。

 どうやら提督は時雨に追われているみたい。

 

(誰か、止めないのかしら?)

 派遣されてきた人達は、流石に他所の鎮守府の艦娘に手を出すのはマズいと思っている為、手伝う(シバく)事が出来ない。

 

 シバき倒せる人達──瑞鶴と夕立、大鳳は、哨戒中。

 翔鶴さんと扶桑さん、由良、阿武隈は鎮守府近海で()をしているから、不在。

 千歳さんは、現在進行形で()()()をシバき倒している。

 加賀さんは、榛名を入渠室へ連行し、見張りをするだろうから除外。

 涼月と葛城は()で負傷して、現在入渠中。

 

(残りは山城と鈴谷、摩耶、足柄、木曾、早霜、満潮のみ)

 ただ、彼女達は午後から哨戒や()に出るから、対応させると体力を消耗させてしまう恐れがあるから、除外。

 

 初霜は秘書艦をしている。

 あの娘なら本気を出せば、余裕で時雨を止められるでしょうけど、暴れると提督に精神的被害を与える恐れがあると思っているから、行動を起こす事が出来ない──

 

 

『一口!一口だけでいいから()()()よ!!!』

 

 

『さっきその皿に何か薬を入れたよね!?入れてなければ食べるよ!!』

 

 

『大丈夫!マムシとスッポンの成分が入ったお薬だから、食べても無害だよ!ただ、少しだけ提督の()()()が元気になるだけだよ!!だから、安心して食べて!!今ならサービスで睡眠薬も入れてあげるよ!!!』

 

 

『安心して食える要素が無いんですがッッッ!!?』

 

 

──時雨。貴女、なんて物を作ったのよ。今日の昼食当番は時雨だけど、まさか薬を盛った物を作るとは思わなかった。

 流石にそこまでブッ飛んだ事をしないと信用していたけど、今後暫く、時雨に食事当番を任せるのは禁止しましょう。

 

 

(股間)に素直になって、こうして提督に僕の想いを言葉だけでなく行動で示しているだけなんだ!それなのに、どうして僕から逃げるのさ!』

 

 

「今日も第603鎮守府は平和ね」

 

「何処が平和なのよ……」

 姉さん、明らか平和じゃ無いと思うんだけど。

 

「平和よ?少なくとも、私の鎮守府(有明鎮守府)と比べれば、だけど」

 

「……参考までに聞くけど、姉さんが所属している鎮守府は、どんな感じなの?」

 あんまり聞きたくないけど、気になるから聞いてみよう。

 

「んー……まず、提督を追い掛ける際は、必ず二人以上で追うわ。徒党を組んで追わないから、私からすれば平和よ」

 

「……続けて」

 

「それに、此処の人達は、提督に対して()()()()()。私の所だと、()()()()()()()()()()()()()()て──」

 

「待って。()()()()()()()()()って何?」

 とりあえず、最後まで聞いてからツッコミを入れようと思ったけど、早速聞き捨てならない事を言い出したから、ツッコミを入れる。

 

「何って、言葉通りの意味よ?()()()()()()()()といった()()()()()()()でブチ込んで、()()()を奪うの」

 

()()()()()()()でブチ込んで、()()()を奪う」

 

「それから、ネットガンやワイヤー等で拘束して、()()()()()するわ」

 

「拘束して()()()()()する」

 

「あ、勿論、妖精さん特製の特殊な()()()だから、負傷はしないわ」

 

「……そう」

 ツッコミは入れない。入れた所で無駄だから、流そう。

 

「──とまぁ、ほぼ毎日。常に爆発音やら悲鳴やら()()()が絶えないわ」

 

「第603鎮守府は平和ね」

 暫く姉さんの話を聞き、私はそう判断した。

 第603鎮守府は有明鎮守府と比べて、とても平和だ。

 何故なら、此処(第603鎮守府)は止めに入る人が居る。しかし、有明鎮守府は()()()()()()()()()()という──

 

 

『少佐ァ!ここは俺に任せて、逃げてくださいッ!!』

 

 

『野原主任!?助かりますッ!』

 

 

──どうやら野原主任が助けに入ったようね。

 あの人、()()なのに()()()()()()()()()()()()()()から、艦娘を相手にしても対等に渡り合える戦闘力を持っている。

 相手は、第603鎮守府の中では平均的な戦闘力の時雨だから、もしかしたら鎮圧出来る可能性がある。

 

「あ、こっちに逃げてきた」

 

 姉さんが工廠の外に視線を向けながら、そう言った。

 釣られて姉さんの視線の先を見ると、物凄い速さでこちらに向かって走る提督の姿が視界に入って来た。

 

「や、矢矧!助けてくれッ!!」

 

「ちょっ!?」

 そして、今にも泣きそうな顔をしながら、提督が私に抱き着き、懇願してきた。

 その瞬間、私の中で、()()()()()()ような気がした。

 

 

()()()()()()

 

 

 ()に泣きついて、()()()()()()()()

 

 普段、()()()()()()()()提督が、()()()()()

 

 恐らく、瑞鶴達がニュータ○プのような能力に目覚めた事を知り、精神的に弱り、更に時雨がやらかすようになった。

 

 その為、心が安らぎを求めるようになり、普段は決して()()()()()()()私にすがり付いて、助けを求めている。

 

 瑞鶴達に頼ろうにも、彼女達は()()()()()()ようになるから、()()()()()()事が出来ない。

 

 

これは、チャンスかもしれない。

 

 

 今までは()()()が上回ってしまい、突き放してしまった。

 

 しっかりした人になって欲しい、という()()()()が出てしまい、厳しく接してしまった。

 

 今ここで突き放さず、甘やかしてあげれば、今後も提督から()()()()()()。いいえ、()()()()()ようになるかもしれない。

 

 そうなれば、本来の()()とはやり方が違うけど、()()()()()出来る。

 

……さぁ、やるわよ。()()()を捨てて、()()()()のよ。

 

 ゆっくりと、手を提督の頭に伸ばし、優しく抱き締めて──ッ!?殺気!!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(<(((⚫)))><(((⚫)))>)」

 

 

 

 

 殺気を感じた方を見ると、瞳孔をカッ広げ、血走った目で私と提督を凝視する時雨が視界に入って来た。

 

 野原主任が足止めしていた筈だけど、何故時雨が居るの?

 もしかしなくても、時雨は野原主任を倒してしまったの?

 

 疑問に思っている間にも、時雨は無言でこちらに向かって、ゆっくりと歩いて来る。

 

 

 

「おぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ゛ッ゛ッ゛!゛!゛!゛」

 

 

 提督が()()退()()したのか、私に強くしがみついて泣き出した。

 

 

……()()()

 

 

 泣きながら必死に()()()()()()顔を見て、何故かそう思ってしまった。

 

 

もっと、この顔を見たい。

 

 

 今まで何度か、提督の泣き顔を見た事がある。

 

 けれど、今までは見ても特に何も思わなかった。

 

 正確には“苦労している”とは思った。

 

 でも、今だけは何故か、()()()()()()()()()()と思ってしまった。

 

 この顔を、他の人達には決して見せず、()()()()()()()()()()

 

 その為なら、()()()()()()()()()

 

 嗚呼。()()()()

 

 ずっと、()()()()()()

 

 提督にとって。いいえ。()()()にとって、()()()()()()になってあげたい。

 

 気が付けば、私は()を自分の胸に抱き寄せて、頭を撫でていた。

 

 ()の吐息が私の胸に当たって、熱を感じる。

 

 嗚呼。()()()()()──

 

 

「なんで提督は僕に抱き着いてくれないの?

 僕じゃダメなの?ねぇ、提督。答えてよ?」

 

 

──このままだとマズい。

 時雨の狂気に満ちた声を聞き、正気に戻る。

 何時の間にか、パイルバンカーを装備し、構えている。

 

(一先ず、ここは逃げましょう)

 このままここに居たら、()()()にパイルバンカーを打ち込まれてしまう。

 素早く提督を抱きかかえて、目の前の()()()から逃げる。

 

 今朝の()で体力をかなり消耗している筈なのに、何故か()()()()()

 これなら、充分逃げ切れる。何故か確信出来る。

 

 背後から能代姉さんの焦ったような声と、()()()()()が聞こえた気がするけど、無視。

 

 せっかくのチャンスを、ふいにするわけにはいかない。

 

 焦るな。今までずっと()()()()()()()()()()()

 

 時雨のように、()()()()()()()()を取らなければ、()()()の心を私に向ける事が出来る。

 

 落ち着け。落ち着くのよ、私。

 

 何時ものように接すれば。厳しさを捨てて、不自然にならない程度に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 ふふっ。あはははは!あははははははは!!

 

 

 

あははははははははははは!!!

 

 

side 矢矧 out

 

 

───────

────

 

 

side 提督

 

 

──第603鎮守府、提督私室──

21:30。

 

 

「次、これをお願い」

 

「あいよ」

 同人誌制作、楽しいです。

 嗚呼、癒される。同人誌制作は良い。同人誌を制作していると、なんつーか、心が満たされる。

 夏と違って、今回は余裕を持って完成させられそうだ。

……にしても、

 

(ア○ールレーン本か。しかも、赤城と大鳳の二人が主役と来た)

 何で重桜のヤベー奴らをチョイスしたの?内容を見たけど……うん。色々凄まじい。もっと、こう、平和なキャラを選ぼうよ?

 例えば、イラストリアスとか。ベルファストとか。ユニコーンちゃんとか。

 

(まぁ、秋雲が前から描きたい!と言っていたから、別に良いんだけど──)

 

「提督、ボッーとしないで、誤字脱字の確認して?」

 

「──わりぃ」

 いけね、注意されちった。集中しよう。

 

 それから暫く、俺は無言で誤字脱字が無いか、確認を続けた。

 そして、一段落したので一息ついていると、

 

「ね〜ね〜、提督」

 

「ん〜?なんだ〜?」

 秋雲が話し掛けてきた。

 

「今日のお昼頃、時雨に襲われて逃走したみたいだけど、何処に逃げたの?」

 

「あ〜……矢矧と一緒に営倉に逃げ込んで、落ち着くまでそこでじっとしていた」

 

「営倉かぁ〜。此処にもあったんだね。どうりで見付からなかったわけだ。

 ()()()()()()のに見付からなかったから、()()()()()()のかと思って、()()()()()()()()()よ」

 

「……すまん、心配掛けて」

 まさか、あそこまで騒ぎになるとは思わなかった。深く反省しています。

……秋雲の目から、()()()()()()()()()()()()()()()()()()ように見えるんだけど……うん。気の所為だね。

 

 

 

 

 本日の昼頃。俺は()()()に襲われ、何時ものように逃走した。

 何度も言うが、もう逃げない!と心に誓ったんだけど、()()()()から聞かされた事が思いの外ショックだったのか、未だ俺の精神は弱っているみたいだ。

 その為、執務中に()()()の襲撃を受けた際、精神()を守る為、本能に任せて行動──逃走をしてしまった。

 

 途中、野原主任が助けに入ってくれたが、()()()はアッサリといなし、再び俺を追い掛けてきた。

 んで、工廠に逃げ込んだら、矢矧と能代さんの姿が視界に入って、気が付けば矢矧に泣き付いて助けを求めた。

 

 俺が矢矧に泣き付くと、お説教をしてくるのではなく、なんと俺の逃走を手助けしてくれた。

 それから暫く()()()から逃げ続けたが、矢矧は今朝の()で体力を消耗していたらしく、すぐにバテてしまった。

 なので、営倉に逃げ込み、そこで息を整える事にした。

 

 余談になるが、営倉の入口は()()()()()()()()()()()()()()()()

 その為、営倉に逃げ込み、落ち着くまでそこに居続けていたら、俺と矢矧が行方不明になった!と大騒ぎになってしまったんだが……これについては説明すると長くなるので、割愛する。

 

 閑話休題。

 

(逃げ込んだ後、暫く矢矧と会話をしたが、()()()()()()()なぁ)

 それに、何時もと違い、あの時の矢矧はなんというか……一緒に居て、()()()()()()()()()

 普段は()()()のように厳しく、少しでもだらしない言動を取ると叱ってくる。その為、気が休まらなかった。

 

 しかし、あの時は全然そういった事をせず、寧ろ、()()()()()()()()()()()

 瑞鶴達()()()()()だったら、()()か企んでいる!と警戒したけど、相手は第603鎮守府の()()()と呼ばれている矢矧だ。

 少し不気味に思ったが、矢矧は()()()そういった事──俺を()()()()()()()()()()()()()()

 それだから、思わず()()()()()()()

 

……どんな風に()()()のかって?

 思わず矢矧に抱き着いて、()()()()()になってしまいました。

 

(流石に怒られると思ったけど、まさか()()()()()()()とは……)

 ビンタ、もしくは回し蹴りをぶちかまされると思っていたら、予想に反して矢矧は優しく抱き締め、頭を撫でてくれた。

 

 しかも、それだけじゃない。()()()()()になって()()()いると、矢矧はとんでもない事を言いやがった。

 

 

 

『提督が。……いいえ。()()()が望むのなら、()()になってあげるわ』

 

 

 

……最初は何かの聞き間違いかと思った。けど、俺が驚いた顔をしていると、もう一度「()()になってあげるわ」と言ってきた。

 

 信じられるか?あの矢矧が、慈愛に充ちた顔をしながら、()()になってあげる、と言ってきたんだぞ?

 

 ()()()()()()んじゃないか?と一瞬だけ疑ったけど、相手はあの矢矧。

 きっと、厳しく接したら、精神的に弱っている俺に追い打ちをかける事になりかねないから、気を遣って()()()()()()()()のだろう──

 

 

「──督!──督ッ!──提督ッ!!」

 

 

「──なんだ?大声出して」

 突然、秋雲が大声を出した。一応、防音仕様の部屋だから大声を出しても大丈夫だが、夜遅いんだから、あまり大声を出すのはやめな──

 

「窓ッ!ヤバいッッ!!」

 

「窓ぉ?なんだ?何がヤバいんだ──ヤバいね」

 秋雲に言われ、窓に視線を向けると、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(<(((⚫)))><(((⚫)))>)」
「(<(((⚫)))><(((⚫)))>)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 窓に張り付き、瞳孔をカッ広げてこちらを見つめる()()()サキュバス(榛名)が視界に入ってきた。

 

 君ら、全く懲りていないね。

 ()()()。オメー、昼間、夕立にフルボッコにされていたでしょ?

 ()()()()()。オメーも昼間、加賀さんにシバき倒されていたでしょ?

 何で反省していないの?ねぇ、何で?

 

……おいおい、窓ガラス割って侵入しようとすんな。

 あー、これ、侵入されるパターンだ。誰かに助けを求めよう。

 とりあえず、

 

「秋雲、原稿を仕舞って、避難する準備をしてくれ」

 あと少しで完成する所まで来たんだ。破かれたりしたら、今までの苦労が水の泡と化す。

 

「もう仕舞ってあるよ。あとは逃げるだけ」

 

「おっ、そうか」

 何時の間にか秋雲は原稿を仕舞い、逃走準備を整えていた。早いねぇ。

 

……さて。逃げるか。これ以上此処に居たらマズい──あーあー、窓ガラスにヒビが入り始めてる。おかしいなぁ?家具職人妖精さんに頼んで作ってもらった、特殊な窓ガラスなのに。もっと頑丈な窓ガラスを作ってもらおうかな?

 

 

side 提督 out

 

 

───────

────

 





次回予告


 俺、気付いた。
 襲われるという事は、襲っても良いんだと。
 今までは襲われて逃げ回っていたが、今日から襲う側になれば良い。
 だから、襲ってやる。泣き喚こうが、懇願しようが、

 失神するまで犯してやる!!!

……なんだ?木曾。俺はマジだ。マジで()ってやる。
 俺は今から、本能に忠実になる!!もう誰にも止められないッッ!!


 襲ってくる奴は全員、もれなく()()にしてやんよォォォォ!!!


第146話・その欲望、解放しろ


「理性?()()()()()()()()()()()()()ッ!瑞鶴ッ!!()()()()()()なァッッッ!!!」


【補足的なナニか】

・アズールレーン…ソーシャルゲーム、「アズールレーン」を指す。略称は「アズレン」。

・アズレンの赤城と大鳳…とにかくヤベー奴ら。どんな風にヤベー奴なのかは、各自でお調べ下さい。但し、自己責任で(ry

・重桜…上記の「アズールレーン」に登場する、日本をモチーフにした陣営を指す。

・矢矧の計画…coming soon

以上、補足終了。
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