side 加賀
──第603鎮守府、工廠──
漁開始87日目。
13:10。
「──っと。良し!修理完了!」
「ありがとうございます」
野原主任が額に浮かんだ汗を首に掛けたタオルで拭い、やり遂げたような顔をしながらそう言った。
今朝の漁で主機を酷使したせいで、大分痛めてしまった。
けれど、今は野原主任の手で修理された事で、完全に元通りになっている。
大本営に居た頃、何度もお世話になったから知っているけど、相変わらず良い腕ね。
「どういたしまして。しっかし、珍しいですねぇ。加賀さんがここまで主機を酷使するなんて」
「皆を護る為、少々無理をしたもので……申し訳ありません。主機に過負荷を掛けてしまって」
普段ならここまで酷使しないけれど、ズワイガニに囲まれた娘達を助ける為囮になり、オーバーヒート寸前まで主機の出力を上げ、海上を疾走し続けたから、エンジンやオイルが大変な事になってしまった。
自分で言うのもなんですが、私がフォローに回り続けたからか、今朝の漁では負傷者や、艤装を破損させた娘は、私を除いて一人も出ていない。
結構。いいえ。かなり頑張りました。
「いえいえ、謝らないでください。私は技術者。直すのが仕事です」
『死なれるよりかは、艤装をぶっ壊される方が遥かにマシです』
「……ありがとうございます」
野原主任の思考がハッキリと流れ込んで来た。ノイズは一切混じっていない。
「それでは、最終確認をするので少々お待ち下さい」
『ケーブル繋いで、端末に接続して……良し!さぁて、集中してやるぞ!』
「……分かりました」
再び、ハッキリと流れ込んで来た。完全に目覚めている
今までは時々聞こえなくなったけど、提督──準に抱かれてからは、安定して読み取れるようになった。
……お陰で、知りたくなかった事を知る羽目になってしまったけど。
どんな事か。それは、
(まともだと思っていた娘が、ヤベー奴だったとはね……)
まさか、矢矧さんと海風さんがあんな事を考えていたとは、思いもしなかったわ。
ただ、矢矧さんは、海風さんと比べればとても平和。
彼女は色々計画を立てているみたいだけど、内容はとても健気で可愛らしい内容だった。
……少し前までは色々危ない計画を立てていたけど、最近準の精神的疲労が半端ないのを見て、理性を働かせて考えを改め。
更に、一昨日。提督を連れて逃走した際、準に頼られた事で今の計画に切り替えたみたい。
閑話休題。
その内容は、準から他の誰よりも頼られる存在になる為、優等生のフリをし続けて接する。
そして、不自然にならない程度に甘やかし、癒してあげる、という物。
ただ、本当の矢矧さんは真面目で規律に厳しい性格ではない。
読み取った内容を纏めると、本当の矢矧さんは悪ふざけが大好きで、アグレッシブな性格をしているらしい。
しかし、艦娘になる前。学生時代にその性格が災いし、色々あったせいで今のような性格になってしまった。
そのせいで、本当の自分を出す事が出来ず、相当ストレスが溜まっていている。
だから、時々キツイ言動で準に接してしまう。
そして、その度にもっと優しく接すれば良かったと後悔し、更にストレスが溜まり……と、悪循環を繰り返している。
他にも色々あるけれど、割愛するわ。
とにかく、矢矧さんの本当の気持ちを準に伝えられるよう、私がさり気なくフォローしてあげましょう。
最近色々溜め込み過ぎて暴走寸前だから、早急に対処しないと。
現に、漁の時、色々思い詰めていた。そして帰還し、後片付けを終えたら、体調が優れないと言って休んでいる。
(駄犬と早霜さんが、凄まじい顔をしていた、と言っていたから、そろそろ限界なのかもしれない)
野原主任の作業が終わって、稼働データを提督に提出したら、様子を見に行きましょう。
次に、海風さんだけど……正直言って、どうすれば良いか分からない。
(普段の言動と違って、腹の中は驚く程真っ黒。このままだと準だけでなく、私達も危ない目に遭う恐れがある)
矢矧さんと違って海風さんは、私や瑞稀ちゃん達を排除する事も辞さない、と考えている。
しかも、私達だけでなく、準が自分を選ばなかったら壊す、なんて考えている。
(薬を使用してまで手にしたいなんて……危険だわ)
現に、今日の秘書艦を務める際、薬──媚薬を一服盛って軽く仕掛ける、なんて考えていた。
けれど、今朝。漁に行く前に、海風さんの部屋に気配を消して侵入し、媚薬を似たような容器に入れた水とすり替えておいた。
そして、昼食時に再びすり替えておいた容器を回収し、媚薬を持たせた。
海風さんの思考を読み取った所、気付かれていない。
何故、そんな面倒な事をしたのか。
以前、中身を誰かにすり替えられた事があるらしく、それ以降警戒して肌身離さず持ち歩き、時々自分で服用して効果を確認しているみたいだから、警戒されない為にやりました。
……大本営に居た頃、龍驤姐さんに仕込まれた事が、役立つ日が来るとは思わなかった。
閑話休題。
何故、海風さんは準に対してそこまで好意を寄せているのか。
思考によると、どうやら彼女は昔。艦娘になる前に準と会った事があり、その時に──
『あっはははは♪』
『来るなッ!来るなァ!!』
──誰かの楽しそうな笑い声と、準の悲鳴にも似た懇願が聞こえてきた。
それと同時に、艦娘の力で強化された聴力が、走る足音を捉えた。
(笑い声の方は、今まで聞いた事が無い声ね)
サキュバス……の声ではない。駄犬の声でもない。瑞稀ちゃん達の声でもない。誰なの?
思考を読み取ろうと思ったけれど、範囲外に居るからか、読み取る事が出来ない。
「……加賀さん。今、渡良瀬少佐の悲鳴が聞こえたんですけど、気の所為──」
「じゃないわ。確実に提督が悲鳴をあげているわ」
私がそう言うと、野原主任は苦笑いをした。
準の悲鳴は聞き慣れているから、聞き間違えようがない。
抱かれる前まで、私は毎日のようにやらかして、その度に聞いたから分かる。
……今後二度と、やらかさないようにしましょう。
「あ、やっぱり?けど、笑い声の方は今まで聞いた事無い声だから、誰なのか分からないなぁ。誰だろ?」
『瑞鶴さん達やらかす組の誰かが、今まで出さなかった声を出したのかな?それか、考えたくないけど、新たに誰かがやらかすようになったのかな?』
「誰でもいいわ。提督を助けに行きます」
確かに、気になる。けど、今準は追い掛けられている。
声の主が誰なのか考えるより、助ける事の方が大事よ。
急いで準の元へ向かおうとした瞬間、
「加賀さん!助けてくださいっ!淫乱ブルーがッッッ!!!」
夕張さんが助けを求めてきた。顔を見ると、ガチ泣きしている。
淫乱ブルー。つまり、さ淫れさんに襲われているみたい。
ストッパー役の吹雪さんは漁に。千歳さんは、哨戒に行ってしまった。
……仕方ない。準を助けに行きたいけれど、頼られた以上、見捨てる訳にはいきません。
準は追い込まれると凄まじい力を発揮するから、恐らく暫くは持つ。
けれど、夕張さんはそうでもない。先に夕張さんを助けてから、準の所に行きましょう。
「ゆっうばっりさぁ〜ん!私の遺伝子を注ぎ込ませてくださ〜い!」
……来たわね。
さっさと沈めて、準の所に行かないと。
艤装──は調整中だから、使用出来ない。なら、己の肉体で対処しましょう。
side 加賀 out
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side 矢矧
──第603鎮守府、医務室──
12:30。
頭痛が酷い。
耳鳴りが酷い。
鼓動が早い。
身体が熱い。
視界が紅い。
(……気持ち悪い)
安静にしているけど、一向に良くならない。それどころか、段々悪化している気がする。
数時間前。執務室を覗いた際に見た光景がショックだったのか、私は体調を崩してしまった。
見た瞬間、身体中の血液が沸騰したかのように熱くなり、頭痛や耳鳴りがして、呼吸が荒くなったのを覚えている。
それだけじゃない。視界が紅く染まった。
比喩ではなく、文字通り紅く染まった。
そして、気が付けば執務室の扉をブチ破って、渡良瀬を襲ってやろう!と考え、実行に移そうとしていた。
(普段の私なら、決して考えようとすらしなかったのに……)
何故、そんな事をしようとしたのか、自分でも分からない。
幸い、寸前で理性が働いていたから、未遂に終わった。
そんな事をすれば、渡良瀬に嫌われてしまう。
それに、何時までも扉の前に居たら、不審に思われる。
だから、直ぐにその場から離れようとしたけれど、ふらついて倒れ、扉に身体をぶつけてしまった。
そのせいで、執務室に居た渡良瀬と海風に気付かれてしまった。
急いでその場から逃げようとしたけど、身体が思うように動かず、結果、廊下に蹲る私を見られてしまった。
(日頃の行いのお陰か、不審に思われなかったのが幸いだった……)
やらかす人達だったら、執務室に侵入しようとしていたのでは?と渡良瀬や海風に思われていただろうけど、私だったから、不審に思われなかった。
逆に、心配された。
(……温かかったなぁ)
蹲っている私を見た渡良瀬は、私が荒い息を吐いていたのを見聞きして、直ぐに医務室に運んでくれた。
その時の私は全身ずぶ濡れの状態だったのに、渡良瀬は一切躊躇せず、私を抱きかかえてくれた。
そのせいで提督服が濡れ、汚れてしまったのに、全く気にしていなかった──ノックされた。誰かしら?
『矢矧、起きているか?』
……渡良瀬だ。心做しか、心配そうな声をしている。
一旦、先程の出来事を思い出すのをやめましょう。
起きていると返事をし、入室しても良いか?と聞いてきたから、承諾して入室を促す。
「具合はどうだ?」
医務室に入ると、心配そうな顔をしながら私の目を見て、そう聞いてきた。
……何故、海風に頭を撫でられていたのか聞きたかったけど、それをすれば覗き見をしていた事がバレてしまう。我慢よ。
「……大丈夫よ。心配を掛けて、ごめんなさい」
本当はあんまり大丈夫じゃない。さっきから頭痛と耳鳴りがして、鼓動が早く、身体が熱い。
それに、視界が紅いままだ。本当、どうしてしまったの?
(何故、視界が紅いの?)
最初は眼球に何か異常が起きているのでは?と思い、医療妖精さんに診てもらったけど、結果は異常なし。
現に、眼球に痛みは無いし、視力も低下していない。
次に、頭痛や耳鳴り、鼓動が早い理由だけど、こちらは医療妖精さん曰く、「精神的疲労やストレスが原因」との事。
……こっちは心当たりが沢山あるから、納得出来る。
今までずっと本当の自分を殺し、真面目なフリをしてきた。
(以前居た舞鶴鎮守府では、時々発散する事が出来たけど、此処に来てからは、全くと言って良い程、発散出来ていない)
更に、計画が思い通りに行かないせいで、相当ストレスが溜まっている。
そのせいで、限界を迎えてしまったのかもしれない。
……訂正。何度か発散は出来た。
渡良瀬達と一緒に、プールに行ったり。夏○ミに参加したり。
こっそり妖精さんにナ○ティプを見せて、A装備を造らせたり。
でも、その程度では発散し切れなかった。
だから、あの光景を見た事でトドメを刺され、こうして医務室に──
「…………矢矧。いや、香苗」
「──提督。今は仕事中よ?名前ではなく、艦名で呼びなさい?」
思考していると、渡良瀬が真剣な顔をしながら、私の名前を呼んできた。
本音を言えば、とても嬉しい。もっと私の名前を呼んで欲しい。
でも、今は仕事中。だから、名前ではなく艦名で呼ぶよう注意をした。
しかし、
「……今、俺は提督としてではなく、一人の男──渡良瀬準として、香苗。お前に聞きたい事がある」
「……何かしら?」
注意しても、渡良瀬は私を香苗と呼んできた。
普段なら「公私混同してはダメよ?」と注意していたけど、今は精神的に余裕が無い為、出来なかった。
そして、
「単刀直入に聞く。香苗、無理していないか?」
「──ッ!?」
私の心を揺さぶる言葉を放ってきた。
無理していないか。渡良瀬が言った通り、私は無理をしている。
本当の自分を殺し、真面目で優等生のフリをしている。
(もしかして、バレた?)
ここ最近、色々あったせいで、自分でも気付かない間に化けの皮が剥がれて、真面目で優等生のフリをしていると気付かれてしまったの?
……落ち着きなさい、私。まだそうと決まったわけじゃない。
恐らく、医務室で休む事が初めてだから、心配して「無理していないか?」と聞いてきたのでしょう。
……能代姉さんが、本当の私をバラした可能性を考えたけど、昔、シバき倒して口外しないと誓わせたから、それは無い。
「……その顔。やっぱり無理をしていたんだな」
自分ではポーカーフェイスを保っていたつもりだったけど、顔に出てしまったみたい。
ここで変に慌てたりすると、不審に思われてしまう。
「……そう、ね。最近、色々あったせいで、少し疲れてしまったみたい」
だから、軽く溜息を吐き、軽く顔を顰めながら「疲れてしまった」と答える。
渡良瀬の中で、私は苦労人ポジションに居ると認識されているから、こうすれば誤魔化せるかもしれない。
「……すまない、苦労をかけて。そして、気付いてやれなくて」
「気にしなくていいわ」
良し!誤魔化せた!普段の行いのお陰で、疑われていない!
「いや、けど──」
「私が気にしなくていい、って言っているのだから、気にしなくていいわ」
敢えてキツめの口調で返答。こうすれば、普段の口煩い矢矧と思われて、これ以上追求されずに済む。
本当は優しい口調で「心配しなくても大丈夫」と言いたかったけど、それをしたら不審に思われる。我慢よ。
「──そう、か。分かった。ただ、本当に無理はしないでくれ。無理だと思ったら、遠慮なく言ってくれ」
「了解よ」
相変わらず優しいわね。
……その優しさを、私だけに向けて欲しいなぁ。
今までは瑞鶴達を排除して手にしよう、と考えていた。
でも、今は違う。そんな事をすれば、渡良瀬が悲しむ。
だから、正攻法で挑んで、渡良瀬の心を私に向けてみせる。
どんなに時間が掛かろうと、必ず手にしてみせる。
本当は今すぐにでも仕掛けたいけど、今はダメ。
色々あったせいで、渡良瀬の精神が弱っている。
今仕掛けると、渡良瀬の精神に甚大な被害を与えて、逆に距離を取られる恐れがある。
だから、今は我慢よ。
…………そう思っていたけど、
「──さて。俺はそろそろ仕事に戻る。矢矧はこの後も此処で休め。いいな?」
暫く渡良瀬と会話をしていたら、抑えられなくなってしまった。
……もっと、お話したい。
二人きりで、過ごしたい。
「……矢矧?」
気が付けば、医務室から去ろうとする渡良瀬の手を掴んでいた。
……離さなきゃ。じゃないと、渡良瀬は仕事に戻れない。
しかし、手を離す事は出来なかった。
「どうした?」
渡良瀬が、微笑みながら優しい声でそう言ってきた。
顔や声を見聞きするに、鬱陶しがってはいない。
無性に、襲いたくなってきた。
……何バカな事を考えているの?そんな事をすれば、嫌われるわよ?
内心で自分を叱責。
しかし、抑えられず、襲いたい衝動が膨らんできてしまった。
「お、お〜い?矢矧?どうした〜?」
渡良瀬の戸惑うような声が聞こえる。
嗚呼。襲いたい。
「ちょっ!?おまっ!?」
気が付けば、渡良瀬の手を引き、抱き寄せていた。
うふふっ。可愛い顔ね。
さっきまでは襲いたいと思ったけど、今は甘やかしたい衝動に駆られている。
「矢矧……さん?あの……何をしていらっしゃるのでございましょうか?」
渡良瀬が何か言っている。
でも、今はどうでもいい。
甘やかさなきゃ
「や、矢矧?ねぇ、聞いてる?あの、何でそんなイイ笑顔をしているの?提督さんに教えて──あっ、ちょっ!?マズい!この体勢マズいですよッ!?ねぇ、マジでどうしたの──待って!?何でベルトに手を掛けているのッ!?やめてッ?お願いしますやめてくださいッ!!」
暴れないで?ほら、もっと顔を私の胸に埋めなさい?甘えなさい?
今ならサービスしてあげるわ?
……あっ、コラ!暴れないで!?逃げるなッ!!
……逃げられちゃった。
……ふふっ。恥ずかしがり屋なのね?
……笑っていないで、追い掛けなきゃ。
追い掛けて、とっ捕まえて、甘やかしてあげなきゃッッッッ!!!
格納領域に仕舞っておいた、20mmマシンガン型麻酔銃を取り出す。
当たっても痛くないよう、威力を抑えて──良し。
「待っていなさい、渡良瀬♪」
すぐにとっ捕まえてあげる♪
嗚呼……視界が真っ赤だ。
嗚呼……気分がとても高揚している。
嗚呼……身体が軽い。
うふふっ。うふふふふっ。あはははははっ♪
「あっははははは!!あははははははははははははッッッ!!!」
side 矢矧 out
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side 提督
──第603鎮守府、母港──
13:05。
「何で……何でだ……!」
あの、オカンと呼ばれている矢矧が。
あの、真面目が服を着ている矢矧が。
あの、一切やらかさない矢矧が。
「何であんなイイ笑顔をしたんだあああああぁぁぁぁぁぁ!!?」
あの笑顔、何度も見た事があるから分かる。
瑞鶴達が、俺を襲う際に見せる笑顔だ。
瑞鶴達なら、イイ笑顔を見てきても、「何時もの事だな」と流せる。
けど、さっきそのイイ笑顔をしたのは、矢矧だ。
大事なことだから、もう一度言うぞ。
オカンと呼ばれ!
真面目が服を着ている!
今まで一度たりともやらかしていない矢矧が!
イイ笑顔で俺を抱き寄せ、ズボンのベルトを外そうとしやがったッッッ!!!
百歩譲って、抱き寄せるだけなら許せた。
けど!ベルトッ!!何故外そうとしたッッ!!
「畜生ッ!畜生ッ!!信じていたのにッッッ!!!」
矢矧は決してヤらかさないと心の底から信じていたのにッ!!
くそっ。ただでさえ色々あってSAN値ピンチ状態なのに、さっきの出来事のせいでSAN値直葬されそうだよッ!!
今すぐにでも発狂して、オギャ良瀬モードをすっ飛ばしてバブ良瀬モードに突入しちまいそうだ!
今なら、母性ランキング暫定一位の夕立を見た途端、バブ良瀬モードになって泣き付いて一瞬で赤ちゃんになれる自信があるッッッ!!!
プライドなんか全部投げ捨てて、全力でバブってやるッッッ!!!今の俺は大きな赤ちゃんだ!助けてママーーーーーーッッッ!!!
……嘆いている場合じゃない。アホな事考えている場合じゃない。
今はとにかく逃げよう。そして、誰かに助けを求めよう。
(現在、鎮守府に残っているママ……じゃねーよ!なんだよ!残っているママって!艦娘だろ!!)
しっかりしろ!
……気を取り直して。
(現在、鎮守府に残っている艦娘は、加賀さん、足柄、鈴谷、熊野さん、夕張、五月雨、時雨、海風。そして、能代さん──ッッ!?)
母港を全力疾走し、誰に助けを求めるか考えていると、背後からねっとりとした視線を感じた。
……ものすっっっごく嫌な予感しかしない。
振り返りたくない。けど、振り返らないといけない気がする。
(……一瞬だけ振り返ろう)
よーし、やるぞ。覚悟決めろ。せーの!
「(<⚫>)(<⚫>)」
「」
「(<(((⚫)))><(((⚫)))>)」
矢矧さんだァ!矢矧さんが足音を一切立てず、綺麗なフォームで走って追っ掛けて来てるゥ!
うわぁい!すんごいお目目でこっち見てますよー!
俺と目が合ったら、更に瞳孔をカッ広げやがりましたァ!
あはははっ!悪寒が走ってきちゃったよ!オカンに追っ掛けられているからかなァ?
……ふざけてる場合じゃねーよ!アホッ!逃げろッッッ!!!
あと、矢矧さん!右手に持っている物はなんですか?俺にはマシンガンにしか見えないんですけど──撃ってきやがったァァァッ!!危ねぇぇぇェェェッッ!?
「あっはははは♪」
「来るなッ!来るなァ!!」
何でッ!?何で撃ってきたのッッッ!!?
「私は面倒が嫌いなのよ。だから──
大人しくしなさい」
「やだよッッッ!!!」
大人しくしたら、襲うでしょッ!?なら、大人しくしないッッッ!!!
あと、面倒なのが嫌い、って言ったから気付いたけど、君が持っているマシンガン、ヴィ○センが装備している奴とそっくりだね?何時造ってもらったの?提督さんに教えて──撃つなッッッ!!!
あぁ、もう!
「何故だああああああああぁぁぁぁぁ!!?」
何故、矢矧は俺を襲うんだああああああああああああああ!!?
side 提督 out
───────
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─