追跡鶴   作:EMS-10

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佐世保鎮守府での生活は、悪くない。
けれど、彼が居ないから物足りない。
そうだ、異動すればいい。
けれど、浅田提督は首を縦に振ってくれませんでした。
なら、戦果を挙げればいい。
ふふっ。うふふふふっ。あははははは♪


※警告※

首だッ!首を寄越せええええぇぇぇぇっっっ!!!
カ○ロット、まずお前から、血祭りにあげてやる
グロテスク及び暴力描写が含まれています。
ご覧の際は、充分ご注意ください。

扶桑さんが、ブ○リーの如く深海棲艦を血祭りにあげるお話です。肩の力を抜いてご覧下さい。
扶桑嫁提督の皆さん、ごめんなさい。



扶桑

 

──4年数ヶ月前──

 

「ふっ!はっ!」

佐世保鎮守府に着任してから、数ヶ月が経ちました。

最初は落ち込みましたが、何時までもそうしているわけにはいきません。

此処の皆さんは優しく、気さくに接してくれます。

訓練や演習、遠征の時、殺気を出しながら砲撃を(おこな)っても、引かれませんでした。むしろ、良い殺気だと褒めてくれました。

 

「ズェアッ!!!」

艦娘になった事で、以前より遥かに早く、重く日本刀を振れるようになりました。ここまで身体能力が上がるとは、驚きです。けれど、ダメね。これじゃ、力任せに振っているだけ。余計な力を込めずに振れるようにならなくては。

 

「……ふぅ」

全然ダメね。御祖父様から教わった剣術じゃない。ただ振り回してるだけ。もっと鍛錬しなきゃ。

 

 

 

──────────────

 

 

──4年前──

 

 

「主砲、撃てッ!!」

砲声。直後、反動が襲ってきた。けれど、よろけない。もう慣れた。

本日の砲撃訓練は、20,000m先の的を撃ち抜く訓練。養成所では5,000mがやっとでしたが、今では10,000mまでなら確実に撃ち抜けるようになりました。…よし、当たった。

 

(でも、まだまだ)

先輩艦娘達──戦艦娘は25,000m先の動く的を撃ち抜ける。私も、ああならなくては。

砲撃だけでなく、剣術も腕を磨かなくては。やる事が多い。時間が足りないわね。

 

 

 

──────────────

 

 

──3年数ヶ月前、某海域──

 

 

「ぶるあああぁぁぁああああああ!!!(CV:若○規夫)」

日本刀を振る。

刃は重巡リ級の首を撥ねた。

……ダメね。刃こぼれしている。

刀身を確認すると、所々欠けていた。これで何本目?何をしているの?こんなんじゃダメよ?御祖父様は力なんて込めていなかった。何がいけないの?

……はぁ。また明石さんに作ってもらわないと。

 

 

──────────────

 

 

 

──3年前、某海域──

 

 

 

『榛名、扶桑、山城、もういい!援軍が到着したから、下がりなさい!』

 

無線から浅田提督の焦った声が聞こえてきました。

周りを見ると、弾薬を全て撃ち尽くした榛名さんと山城()が居ます。私も弾を撃ち尽くしてしまいました。

 

「フンッ。ソノ程度カ?」

 

「……」

目の前には、重巡棲姫が無傷で私達を見ている。

私達は近頃、この海域に出現した敵空母機動部隊を叩きに来たのだけど、殲滅した直後、重巡棲姫とその護衛艦隊が奇襲を仕掛けてきました。その奇襲により、先輩艦娘達──空母艦娘と駆逐艦娘達が損傷し、撤退を余儀なくされました。私達は時間を稼ぐ為、重巡棲姫と戦闘に入りました。

何とか敵護衛艦隊を殲滅出来ましたが、重巡棲姫は強く、砲撃をしても有効打を与えられず、弾を撃ち尽くしてしまった。ならばと、日本刀を使いましたが、重巡棲姫の艤装を斬った際、根元からポッキリと折れてしまいました。嗚呼、ダメダメね。もっと鍛錬しないと。

 

「弾が無いなら」

もう武器は無い──いいえ。まだあるじゃない。親から頂いた、この肉体がある。拳で仕留めればいい。

山城と榛名さんも、私と同じ考えに至ったのか、肉弾戦の準備を始めました。

 

『ちょっ!アンタら正気!?』

 

無線で私達のしようとしている事に気付き、浅田提督が引き返すよう指示してきました。ごめんなさい、引き返さないわ。だって。

 

(こいつ(重巡棲姫)を仕留めれば、異動出来るかもしれない)

命令違反をしているのは、充分承知しています。それでも、引き下がれない!

 

「山城、肉弾戦よ。準備はいい?」

引き返すなら、今よ。言外に含めて聞いたけど、

 

「はい、姉様。山城、いつでも行けます!」

 

やる気満々みたい。安心したわ。もし撤退する、なんて抜かしたら、母港に帰還後、全身の関節を外してやる所だったわ。

 

「そう。榛名さんは大丈夫?」

日々鍛錬していて強くなっているけど、私や山城と違い、武術等を嗜んでいない。心配だから聞いてみた。

 

「はい、榛名は大丈夫です!」

 

『アンタらぁ!戻ってぇ!お願い!』

 

ごめんなさい、浅田提督。そのお願いは聞けないわ。

ふふっ。肉弾戦。血湧き肉躍るわ。

ふふふふ……うふふふふふふふふ♪

 

「ナ、ナンナンダ、オ前達ハ!?ヤ、ヤメロ、クルナ!クルナ!!ア……ア……アア……

 

 

 

 

(`0言0́*)<ヴェアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

 

 

──────────────

 

 

──2年数ヶ月前──

 

 

「第二次改装、ですか?」

 

「そうにゃ」

 

重巡棲姫を素手で血祭りにあげ、数ヶ月後。どうやら私は第二次改装を受けられるようになったみたい。

詳しい条件は説明すると長くなるから、割愛させてもらうわ。

 

「砲塔を五基十門にして、更に足回りを第一次改装の時よりも向上させるにゃ。勿論、飛行甲板はそのままで、瑞雲を飛ばせるにゃ。ただ、純正だと扶桑の近接戦闘を阻害する恐れがあるから、一部だけ軽量・簡略化するにゃ」

 

「へぇ、凄いわね」

おまけに、艤装の加護が高まり、身体能力も向上するみたいね。明石さんから端末を受け取り、確認しながら説明を聞いた。

これなら、更に戦果を挙げられる。ふふっ、いいわね。

そして、私は第二次改装を受けた。

 

 

──────────────

 

 

──2年前──

 

 

「トゥ!ヘアッ!ヌヴォオオオオオオオオオオオ!!!!(CV:石○彰)」

─斬る。

──斬る。

───斬る!

目の前に置かれた巻藁を斬りまくる。

第二次改装を受けてから、上手く言葉に出来ないけど、感覚が鋭くなった気がする。おかげで、今まで出来なかった事が出来るようになった。

例えば、相手の殺気を以前より簡単に感じ取れるようになったり。

例えば、相手の鼓動を聞き取れるようになったり。

例えば───

 

 

「ふ、扶桑?」

 

「はい、何でしょうか?」

おや、明石さん。どうかされましたか?日本刀を鞘に納めて、お顔を見ます。……何故そんな怯えた顔をしているの?私はただ、日本刀を振っていただけよ?そうそう、日本刀で思い出したけど、以前より簡単に物を斬り裂けるようになりました。力も込めずに。今では刃こぼれしたり、折れたりしなくなりました。

 

「た、頼まれてた日本刀が出来たにゃ」

 

「本当ですか!?」

やっと出来たのですか!?嗚呼、嬉しい。

今までは艦娘の艤装に使う資材で日本刀を作って頂いていましたが、今度のは違います。

先日倒した戦艦棲姫の艤装を解体し、その資材で作って頂きました。

話は変わりますが、深海棲艦の艤装に使われる資材は、艦娘達の艤装に使用している資材と違い、点の衝撃に対して非常に強い、という特徴があります。

 

「ただ、今までの日本刀と違って、無理な力が加わると、簡単に砕けるにゃ」

 

「そうですか……」

それから、明石さんから色々説明を受けました。

この日本刀は、今までの物と比べ物にならないほど斬れ味が鋭い事。

深海棲艦の艤装から武器を作ったのは初めてだから、色々不完全な事。

現在、横須賀鎮守府から技術提供を受けて鍛え直す予定──横須賀鎮守府は、殲滅した深海棲艦を解体し、様々な武具を開発している為、ノウハウがある事。

一通り説明を受けました。

使用者の腕に左右される、か。

ふふ。やってやろうじゃない。使いこなしてみせます。

その為には、

 

 

「斬って、斬って、斬りまくる必要がありますね♪」

 

 

何処かで見聞きしました。剣術は、ヒトを斬って覚えるモノだ、と。

今の御時世、人斬りなんてすれば、即豚箱送りにされてしまいます。しかし。

 

 

深海棲艦なら、斬っても問題ありませんね?

 

 

 

 

──────────────

 

 

 

──1年数ヶ月前、某海域──

 

 

 

 

「〜〜〜〜〜〜ッ!!?」

 

 

嗚呼、素晴らしい。とても素晴らしい。こんなにも素晴らしいなんて。

 

「この日本刀凄いですよォ!流石、明石さん最高傑作の日本刀ォォォォ!!!」

ふはははははははは!!闘争本能の赴くままにィ!!!!

どうも、扶桑です。私は今、ついに完成した日本刀の試し斬りをしています。試し斬りをしているモノは何か、ですか?それは──

 

 

「首を置いていけえええええええぇぇぇぇぇええええ!!!!」

 

「〜〜〜〜〜〜!!!」

 

戦艦タ級改flagshipの首を撥ねる。

嗚呼、スパーンと行きました。まるで、熱したバターナイフでバターを切っているようです。

……おっと、もう()が無いですね。

さっきまで耳障りな雑音──深海棲艦達の悲鳴が聞こえていましたが、今は風と波の音、艤装の駆動音しか聞こえません。

 

「」

「」

「」

「」

 

「……どうかしましたか?」

一緒に出撃している先輩艦娘達が白目を剥いています。具合でも悪いのでしょうか?

 

「扶桑、やり過ぎ」

 

旗艦の瑞鶴さん──赤髪ショートヘアの、寡黙な正規空母がボソリと呟きました。やり過ぎましたか?

 

 

………………。

 

 

「アンタは薩人マシーンか!!?」

 

「いいえ、扶桑です」

母港に帰還し、浅田提督に本日の戦果を報告すると、開口一番そう言われました。薩人マシーン?何ですか、それ。

 

「マジでヤベー奴だよ、コイツ……」

 

ヤベー奴?酷いですね。私はただ、深海棲艦を普通に(・ ・ ・)殲滅しただけなのに。

 

「瑞鶴もヤベー奴だけど、扶桑。アンタの方がもっとヤベーわ……」

 

「そうでしょうか?」

矢を飛ばし──艦載機にせず、矢のまま飛ばす──、目玉にぶっ刺して怯んだ隙に接近し、弓の弦を深海棲艦の首に掛けて撥ねる瑞鶴さんの方がヤベー奴だと思いますが。

 

 

──────────────

 

 

 

──1年前──

 

 

「提督、何時になれば私は第603鎮守府に異動出来るのでしょうか?」

 

「目のハイライト消して瞳孔カッ広げて日本刀に手をかけながら迫るな!」

 

「提督?」

 

「やめて!迫らないで!お願いします!!」

 

「扶桑に落ち度でも?」

 

「それ不知火の台詞!」

 

 

 

──────────────

 

 

──数ヶ月前──

 

 

「…………」

異動願いを書く。

ひたすら書く。

無心で書く。

書く。

書く。

書く。

書く。

……そうだ、縦読みすると「お前を殺す」になるよう書きましょう。

筆記体も、呪いの手紙のような物にしましょう。

 

「……山城さん、何枚目ですか?」

 

「……これで114514枚目」

 

「……私は、364364枚目です」

あら、少ないわね、山城。異動する気あるの?ねぇ?そんな程度の気持ちで異動したいの?ねぇ?ねぇ?全身の骨を砕くわよ?

 

「……榛名は、1919810枚目です」

 

へぇ、私より多いわね。まぁ、私より出撃する回数が少ないから書く時間があるのでしょう。それに比べて山城。あなた、榛名さんと同じ位の出撃回数でしょ?私より時間に余裕あるでしょ?なのに何で私より少ないの?ねぇ?どうして?内臓をスムージーにしてやろうかしら?

 

「これだけ異動願いを書いているのに、受理されないなんて。…はぁ。空はあんなに青いのに」

嗚呼、深海棲艦の首を狩りたくなってきた。

先日、菊月さんから借りたマンガを読んだけど、とても面白かった。確か、ド○フターズだったわね。試してみたい技があったから、明日出撃した時にやってみようかしら。

 

「ふっ…ふふふ…何故受理されないの…不幸だわ…」

 

「…榛名、大丈夫じゃない…です…」

 

「……はぁ」

とりあえず、今は異動願いを書く事に集中しましょう。

 

 

…………。

 

 

「寝ましょう」

 

「はい、姉様」

 

「ふぅ。……準」

ハンカチで作った人形に呼びかける。この人形を彼だと思いながら抱き締めることで、荒んだ心が癒される。

最近、私の髪の毛を巻き付けてあげた。ふふっ、逃がしませんよ?一生一緒ですよ♪

 

 

 

 

──────────────

 

 

──5ヶ月前──

 

 

「胃潰瘍になりたくなければ、私を第603鎮守府に異動させなさい。OK?」

 

「KAR○SAWAMK-2を突き付けられたんじゃ、ビビって会話出来ないわ。とりあえず落ち着きなさい、扶桑。OK?」

 

「OK!」カァオ!

 

「撃つな!!!」

 

「……チッ、避けたか」

 

「聞こえてるわよ!つーか、そんな物騒なモン、どっから調達した!」

 

「明石さんからお借りしました♪」

 

「明石ァ!今すぐ執務室に出頭しろやァ!!!」

 

 

 

──────────────

 

 

 

──4ヶ月前──

 

 

「Heyテートク、私は何時になれば第603鎮守府に異動出来るノ?」

 

「キャラ!キャラぶっ壊れてる!お前は第8492離島鎮守府の高速戦艦(金剛)かッ!?」

 

「そろそろ壊れそうです」

 

「とっくに壊れてる気が……」

 

「テートク?」

 

「迫らないで!」

 

 

 

──────────────

 

 

──3ヶ月前、某海域──

 

 

分かりました。分かってしまいました。

 

「深海棲艦が居るから、異動出来ないのですね?」

そうです。きっとそうです。なら、やるべき事は1つ。

 

 

 

佐世保鎮守府近海に出現する深海棲艦を絶滅させればいい。

 

 

 

「扶桑、何処へ行く?」

 

「ちょっと、深海棲艦狩りに行ってきます」

瑞鶴さん、少しの間別行動を取らせていただきます。

 

「了解。此処で待つ」

 

「ありがとうございます♪」

さて、行きますか。スロット全部にタービンを積んでいますから、直ぐに終わりそうですね。燃料、弾薬は未だ未だ余裕がある。

 

 

 

………………。

 

 

 

「レーダーニ反応アリ!」

「単独行動ヲシテイル模様!」

「ハグレタノカ?」

「丁度イイ!狩ロウ!」

「ヒャッハー!艦娘狩リダァ!」

「イクゾッ!!」

 

 

……。

 

 

「ナッ、ナンダ、コイツハッ!」

「ニッ、ニゲロッ!」

「タッ、助ケ──」スパーン

「リ級〜!」

「ヤロー、ブックラッシャアアアアッッッ!!!」

「ヤメロ!逃ゲルンダ!」

 

 

……。

 

 

「ア……アアア…」

 

 

 

首だ……

 

 

 

「イ、イヤ……嫌ダ……」

 

 

 

 

 

首を寄越せ……

 

 

 

 

 

「ウ、ウワアアアアアアア!!!!」

 

 

 

 

「首を置いていけえええええええぇぇぇぇぇええええええええええええええええええええええええ!!!!」

 

 

 

 

「コチラ、戦艦ル級!化物ダ!化物ガ出タ!!全員、逃ゲ─────」

 

 

 

 

 

スパーン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あはっ♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

敵泊地。

 

 

「通信ガ途絶エタ。増援ヲ送ロウ……ン?ナンダ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見ぃつけたァ♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────

 

 

──2ヶ月前──

 

 

「どうして?ねぇ、どうして?」

佐世保鎮守府近海に出現する深海棲艦を絶滅させたけど、浅田提督は異動を認めてくれませんでした。

 

「いや、ウチ(佐世保鎮守府)は規模の割に戦艦娘が少なくて。今、練度を上げている所なの。もう少しだけ!もう少しだけ待って!」

 

「……分かりました」

 

 

──────────────

 

 

──審判の日2週間前、埠頭──

 

 

 

「……」

 

「扶桑、大丈夫?」

 

「……」

 

「べっこう飴、食べる?」

 

「……頂きます」

瑞鶴さんからべっこう飴を頂き、口に含みました。

美味しい。

……山城と榛名さんが、第603鎮守府に異動する。

昨日、浅田提督にそう言われました。

私は?私は!?

問い詰めました。

結果は。

 

「扶桑、可哀想」

 

佐世保鎮守府に残れ。

そう言われました。

……ふふっ。

ふふふふっ。

 

 

 

「あははははははは♪」

 

 

 

 

 

………………。

 

 

「……あれ?瑞鶴、扶桑は?」

 

「日本刀担いでお出かけ」

 

「は?」

 

 

………………。

 

 

や、やばいよ。過去最高にキレてるよ。

…あ、どうも、扶桑型戦艦一番艦、扶桑の艤装に宿る妖精です。今、私達は何処に居るでしょうか?

答えは─────

 

 

 

「キイイィィィィエエエアアアアアァァァアアアアアアアッッッ!!!!!」

 

 

……敵陣のド真ん中です。周りを見渡す限り、敵、敵、敵。敵しか居ねぇ!?

オイオイオイ、死ぬわ。流石に死ぬわ。色々規格外な艦娘だけど、今回ばかりは死んだわ。

 

 

 

「クビダァ!クビガイッパイダァ♪」

 

 

 

扶桑ォ!声!声が深海棲艦っぽくなってるよ!!!というか、やめてぇ!死んじゃう!死んじゃうからやめてぇ!!!

 

 

「あら、もう居ないの?なら、もっと奥に進んで、

 

 

 

 

沢山狩らなきゃ♪」

 

 

 

 

…ダメみたいですね(諦観)

 

 

 

 

──────────────

 

 

 

──1週間前、佐世保鎮守府埠頭──

 

 

「こちらが、駆逐棲姫。こちらが、軽巡棲鬼。飛行場姫、戦艦棲姫、集積地棲姫の首です。それから…」

 

「ふ、ふそ、う、さん?」

 

「うふふ。うふふふふっ。あはははははは!!!」

 

「」

 

「これだけ戦果を挙げれば、私も、異動させてくれますよね♪」

うふふふ♪

 

 

 

 

 

──────────────

 

 

 

──山城、榛名、異動前日──

 

 

「髪を切って、艦橋髪飾りを左から右にして……」

えっと、この位かしら?日本刀でバッサリ切って……うん、これで良し♪

 

「ね、姉様?」

 

「目をツリ目に……上手くいかないわね。アロ○アルファで固定しましょう」

タレ目だから、このままだと(扶桑)だとバレてしまう。気を付けないと。

 

「姉様!?」

 

「扶桑型戦艦、妹のほう、山城です。あの、扶桑姉様、見ませんでした?」

ハキハキと喋って……うん、完璧♪

 

「扶桑姉様!?」

 

「姉様!扶桑姉様!!」

目の前に扶桑姉様(山城)が居る!姉様だ!

 

「」

 

「何故ショートヘアなんですか!?ほら、このウィッグを被ってください、扶桑姉様!」

扶桑姉様は黒髪ロングヘアーですよ?ショートヘアは山城です!ほら、早くこのウィッグを被ってください!

 

「」

 

「……これで良し。あとはお願いね」

うふふ♪待っててくださいね、渡良瀬さん♪

 

「ちょっ、待ってください、扶桑姉様!」

 

「扶桑姉様は貴女よ!私は山城よ!」

私は山城!誰がなんと言おうが山城よ!

 

「姉様が壊れた!提督!提督〜〜!!!」

 

 

 

──────────────

 

 

「……」

ダメだった。

山城に成りすまして第603鎮守府に行こうとしたけど、止められてしまった。

なら、来てもらいましょう。

渡良瀬さんを1ヶ月以内に此処(佐世保)に連れてくるよう、山城を脅──お願いしておいた。これで良し。

余談だけど、入渠したら切った髪が一瞬で元の長さに戻り、ア○ンアルファでツリ目にした箇所も、元の垂れ目に戻ってしまった。不幸だわ。

何故元に戻ったかって?どうやら艦娘になった瞬間の形──髪型から体型まで──を艤装が覚えているらしく、その情報を(もと)に最初の形に戻してくれたみたい。余計な事を……。

 

 

───────

 

 

遅い。何時まで待たせるの?

 

 

───────

 

 

早くしなさい。

 

 

───────

 

 

もう我慢できない。休みを取って行きましょう。

 

 

───────

 

 

 

……何やってるの。彼を怖がらせてしまったじゃない。

昔からの悪い癖ね。余裕が無いとやらかしてしまう。

……はぁ。

 

 

───────

 

 

 

………………。

…………。

……。

 

 

───────

 

 

 

あはっ♪

うふふっ♪

うへへへへへへへっ♪

 

 

 

───────

 

 

 

──────────────

 

 

「提督、報告」

 

「どうしたの、瑞鶴」

 

「扶桑、お出かけ(・ ・ ・ ・)した」

 

「…………は?」

 

 

──────────────

 

 

 

これは悪い夢だ。

そうだ。そうに決まっている。

此処は、とある深海棲艦の棲地。

そこの総指揮官である中枢棲姫──人間がそう呼称しているだけで、本名は違う──は、冷や汗を滝のように流しながら震えていた。

 

 

艦娘の襲撃

 

 

 

つい数分前、哨戒をしていた空母機動部隊から報告が入ってきた。

規模は?そう聞くと、一人だけだと報告された。

たった一人。

馬鹿か。

鼻で笑った。

すぐ終わる。

そう思っていた。

思っていた。

 

 

「えぇい、此処を放棄する!総員、逃げろ!」

 

 

基地のあちこちが崩壊している。

更に、火災も発生している。

このままでは、爆発する。

資材を山ほど貯めたのが仇となった。

 

 

「__様!退避準備、整いました!」

 

「よし、分かった!」

 

部下の重巡ネ級がそう言ってきた。急いで逃げよう。

緊急脱出用に作られたエレベーターに乗り込む。念の為、武器を携帯。

全員──とは言っても、6名だけだが──エレベーターに乗り、扉が閉じる。

……助かった。

 

(あれは、化け物だ)

 

日本刀を持ち、次々に同胞を斬り裂いた悪魔を思い出す。

砲弾を斬り裂き、笑いながら首を撥ねる。思い出すだけで震えてしまう。

でも、もう大丈夫。そう思った瞬間だった。

 

 

 

 

 

エレベーターの扉の隙間に、一本の鈍く光る鉄が差し込まれた。

 

 

 

 

 

「んなっ!?」

 

 

ま、まさか。

まさか。

まさか。

まさか。

 

うそ、でしょ……?

 

 

 

異物(日本刀)が差し込まれた事により、エレベーターは緊急停止。

金属が擦れる音がする。

嘘だ。

嘘だ。

嘘だ。

嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Open Sesame」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゆっくりと扉が開かれる。

悪魔が扉の前に立っていた。

満面の笑みを浮かべて立っていた。

真っ白だった装束を、返り血で真っ黒にして立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「深海棲艦諸君。お勤め、ご苦労様です♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の瞬間、エレベーター内に居た深海棲艦達は首と胴体に離婚届を叩き付けられていた。

武器を構える暇も無かった。

信じられないかもしれないが、悪魔はエレベーターごと深海棲艦達の首を斬った。

こうして、中枢棲姫と呼ばれる深海棲艦の棲地は壊滅した。

たった一人の艦娘によって、壊滅させられた。

 

 

 

 

 

──────────────

 

 

 

 

 

──佐世保鎮守府、執務室──

 

 

 

「─────以上です♪」

ふふふふ。あはははははははは♪

やりました。やってやりましたよ。あはっ♪

 

 

「」

 

 

……浅田提督?どうされました?あら、息をしていない。医務室に運びましょう。

 

 

 

──────────────

───────

───

 

 

 

そして。

 

 

「扶桑型戦艦一番艦、扶桑。あなたを第603鎮守府に異動させるわ。荷物を纏めて。今すぐに!」

 

「はい♪」

 

こうして、想い人の元へ向かう為に頑張った乙女の戦いは終わった。

 

 

 

──────────────

 

 

 

 

──第603鎮守府、現在──

 

 

「……」

壊れてしまった。彼が買ってくれた、大切な髪飾りが。

あの後、警戒しながら母港に帰還。幸い、帰還中に敵と遭遇しなかった。

 

「どうしました、扶桑さん?」

 

「渡良瀬少佐……」

声を掛けられ振り向くと、彼が心配そうに私を見ていました。嗚呼、そんな顔をしないで?

 

「あ、それ…」

 

「……」

私の掌を見て、そう言ってきました。ごめんなさい。あなたに買ってもらった髪飾りが───

 

「壊れてしまったんですか?」

 

「……えぇ」

壊れてしまいました。

 

「うーん……そうだ、今度の休み、買いに行きましょう」

 

「……えっ?」

本当?

 

「とは言っても、まだ先になりますけど」

 

「……」

まだ先?そんな。待ち遠しい。そうだ!

深海棲艦を絶滅させれば、休めますよね?

 

「ふ、扶桑さん?」

 

そうと決まれば、首を狩りに行かなければ。

 

「ちょっ、何処に行く気!?」

 

外用に出て、首狩りしてきます♪

 

「待って、ねぇ、待って!誰か!誰か扶桑さんを止めてぇ〜!!!」

 

止まりません♪

私は、私は決して止まりません!

 

「山城ォ!君の姉様を止めてええええぇぇぇぇ〜!!!」

 

うふふ♪

うふふふふふふふふ♪

 

【Page FUSO_fin】

 





彼の為なら何でもします。えぇ、文字通り、何でも。


※……はい、扶桑の過去編、終わりです。途中駆け足なのは仕様です。
まず謝罪させてください。ごめんなさい。
色々やり過ぎた。反省している。後悔は一切していない。



【唐突な本編、49話の嘘予告】


お買い物終了。皆の水着と(下着)を選び終えた提督達はフードコートへ行き、昼食を摂る事に。

「はい、あーん♪」
「ど、どうぞ!」
「榛名のをどうぞ!」

しかし、平和に食事を摂ろうとする提督に試練が!

「モノを食べる時はね、誰にも邪魔されず、自由でなんというか救われてなきゃあダメなんだ。独りで静かで豊かで……」

孤○のグルメで○ローさんが言ってた。だから、静かにしてくれ。俺は大人しく、ラーメンを食べたいんだ!
だが、その願いは叶わなかった。

「顎の関節を外せば、3人の料理を食べさせられるんじゃない?」

ねぇ瑞鶴、バイオレンス過ぎない?やめようね?

「あっ、分かった!口移しを望んでるんだね?待ってて♪」

やめろォ!ここ、フードコート!他のお客さんが居るんだよ!そんな事してみろ、練乳を丸ごと一本飲み干すような甘い空間が出来ちまう!

「昼食後、マタニティグッズを見に行きませんか?」

涼月、気が早すぎませんか?

「行きましょう!今すぐ行きましょう!」

うん、榛名、落ち着いて?今お昼ご飯を食べているんだよ?後にしよう?
一方、鎮守府では提督不在をいい事に、艦娘達は、やりたい放題。

「出来ました!対深海棲艦用兵器、N○LIS-TXPです!」

夕張ァ!テメェなんてモン作りやがったァ!ニュード争奪戦争をする気か貴様ァ!?

「凄い武器です。小嶋提督と明石に感謝しなきゃ!」

第8492離島鎮守府は今すぐ解体されるべきだと思います。それか、隕石でも降って消滅してくれ。

「扶桑さんに試し撃ちしてもらいましょう!」

バッキャロー!世界を滅ぼす気かァァァ!!!
やめろ、マジでやめてください。洒落抜きで世界が終わる。
……はぁ。まともな艦娘は居ないのか?

「〜〜♪」

お、アレは初霜!天使じゃないですか!彼女は天使だから癒される。勝った。勝ったぞ!さて、彼女の様子を見て癒され────

「ようやく買えます♪」

……あ、あれ?どうしたの、初霜。カタログなんか見て。んん?スピーカーのカタログ?意外だ。音楽でも聴くの?

「今使ってるスピーカー、重低音がイマイチなんですよねぇ…」

重低音?へ?どゆこと?

「デスメタルは、最高です!」

えっ?は?デスメタル?

「うふふ♪」

……嘘だ。
ウソダドンドコドーン!

「……」

……あ、海風。か、彼女なら。彼女なら大丈夫だ。きっと大丈夫。姉のような包容力のある彼女に癒してもらおう。

「睡眠薬と媚薬は、これだけあれば大丈夫そうですね」

神は死んだ。

追跡鶴第49話・休養その3、近日公開!



「……見ぃつけた♪」



……あ、あの、千歳さん?どうしたの?パソコンの前ですっごくイイ笑顔浮かべて。見つけた?何を?



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