追跡鶴   作:EMS-10

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 社畜戦士と化していた為、投稿が遅くなりました(挨拶)
 ネタを増やす為、シ○フォギアを一気見したのが原因で遅くなった、なんて言えない……

【作者から一言】
 最近、とても暑い日が続いています。小まめに水分補給をしたり、身体を冷やして脱水症状や熱中症にならないよう、充分注意して下さい。
 そして、夜。寝る時気温が高い場合は、迷わずクーラーをつけてください。眠っている間に脱水症状と熱中症を併発する恐れがあります(実体験済)。

※注意※
若干のシリアス
下ネタ及びR17.9描写有り


※この小説に登場する人物は全員、特殊な訓練を受けています。
 決して真似しないでください。

※この小説内の季節は、1月上旬頃となっています。



第6章・混沌編
第165話・お姉ちゃんの本気


 

side 翔鶴

 

 

──第603鎮守府、食堂──

漁(・)開始126日目。

19:30。

 

 

「今日の夕ご飯は、僕が作ったんだよ。食べて食べて!あ、勿論何も入れてない、驚く程健全な夕ご飯だよ?」

『僕(・)の(・)遺(・)伝(・)子(・)なんて、切一入れていないよ。代わりに、僕の愛情を沢山入れたけど!』

 

「驚く程健全な夕ご飯って、何?」

『パワーワード過ぎない?……やめよう。ツッコミ入れるな。流そう』

 

「…………」

 本日の夕食担当の時雨さんが、小皿に牛肉のし(・)ぐ(・)れ(・)煮(・)を盛り付け、提督に差し出している。

 そして、小皿を受け取りながら提督がツッコミを入れた。

 

(一応、私の艦載機妖精さんに頼んで監視させたけど、本当に何も入れていなかった)

 提督が本(・)気(・)で(・)自(・)殺(・)し(・)よ(・)う(・)と(・)し(・)た(・)のを見た事で、私や榛名さん同様、正気に戻ったのかまともになっているみたい。けれど、完全にまともになった、とは言えない。

 

 閑話休題。

 

(言葉と思(・)考(・)通り、健全な夕ご飯ね)

 ただ、

 

「今日も寒いから、身体を温める為に生姜を沢山入れたんだ。さぁ、早く食べてよ!し(・)ぐ(・)れ(・)煮(・)を食べて?食べるんだ!僕の適性艦と同じ名前の料理を食べれば僕自身が提督に食(・)べ(・)ら(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)という事と同じだ勿論カニバリズ的な意味ではなく性的な意味ださぁ早く食べるんだ提督食べて僕を味わって一つになろうさぁ早く早く早く!!」

『これなら合法的に提督と一(・)つ(・)に(・)な(・)れ(・)る(・)!!』

 

…………流石、時雨さん。色々凄まじい。しかも、考(・)え(・)る(・)のではなく言葉に出している。

 人の事言えないけど、良くそんなア(・)ブ(・)ナ(・)イ(・)発言が出来るわね。私ですら言わないわよ。

 

『ムッツリスケベのレベルが上がっている……』

『時雨さん、自重してください……』

『自分の名前に纏わる物を提督に食べさせれば、それ即ち提督と一(・)つ(・)になっている事と同じ……閃きました!!』

 

 時雨さんの発言を聞いた瑞鶴と涼月さん。そして、榛名さんの思(・)考(・)が私に流(・)れ(・)込(・)ん(・)で(・)来(・)た(・)。

 あの、榛名さん?何を閃いたのですか?とりあえず碌でもない事だと思うので、通報……もとい、提督に伝えておきます。

 

 

────

 

 

──第603鎮守府、翔鶴・瑞鶴私室──

漁(・)開始127日目。

01:30。

 

 

「………………」

 眠れない。目を閉じてお布団に入り横たわっていても、目が冴えているのか一向に眠気がやって来ない。

 普段なら、お布団に横になれば直ぐに眠りに就いている。しかし、今日に限っては眠れそうにない。

 原因なら、分かっている。

 

 数時間前。夕食を摂っていた際に、準(・)が一瞬だけ真剣な顔をしたのを見てしまった。

 どうしたの?と聞くと、何でもないと言って教えてくれなかった。

 

 悪い事だと分かっていたけど、心配だからこっそり読(・)み(・)取(・)っ(・)て(・)みた。けど、暈されていて何も分からなかった。

 

(隠し事されちゃった……)

 今まで色々ヤ(・)ら(・)か(・)し(・)て(・)き(・)た(・)から、警戒されて教えてくれなかったのかもしれない。

 

「スゥ……スゥ……」

 

 隣から、瑞稀(瑞鶴)の規則正しい寝息が聞こえてくる。

 目を開けて瑞稀を見ると、布団がはだけている光景が視界に入ってきた。

 部屋は暖房が効いているけれど、このままだと体調を崩してしまう恐れがある。

 

(仕方ないわね)

 一旦起き上がり、瑞稀の傍に寄って布団を掛け直してあげた。これなら、大丈夫でしょう。

 そう思って自分の布団に戻ろうとした時だった。突然瑞稀が私の腕を掴んできた。もしかして、起きてしまったのかしら?

 

「うぅん……じゅ……ん……」

 

 どうやら寝惚けて掴んできたみたい。残念ながら私は準じゃないわ。

 とりあえず、掴んでいる手を外して──ダメね。外そうとしたら、強く掴まれてしまった。

 無理矢理外そうと思ったけど、そうしたら瑞稀を起こしてしまう恐れがある。仕方ない、瑞稀の布団の中に入りましょう。

 お布団はそこそこ大き目だから、二人で入っても充分な広さがある。 

 

(……昔は良くこうして一つのお布団に、二人一緒になって眠ったわね)

 懐かしいなぁ。そう思っていると、瑞稀は再び寝言を言い出した。

 

「えへへ……じゅん……あったかい……」

 

「…………」

 瑞稀の顔(・)を(・)見(・)な(・)が(・)ら(・)寝言を聞いていると、瑞稀の思(・)考(・)と(・)感(・)情(・)が流れ込んで来た。

 その流れ込んで来た情報を視(・)る(・)と、薄暗い部屋で瑞稀が準に抱(・)か(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)モノだった。

 

(ま(・)た(・)、クリスマス・イブの日に抱(・)か(・)れ(・)た(・)時の夢を見ているのね……)

 しかも、一週間以上前からほぼ毎日。

 最初は瑞稀の願望だと思ったけど、視(・)る(・)限り妄想ではなく、実(・)際(・)に(・)体(・)験(・)し(・)た(・)モ(・)ノ(・)ね。

 上手く言葉で言い表せないけど、断言出来る。

 

(いいなぁ……)

 私もまた、準に愛(・)し(・)て(・)もらいたい。けど、それは難しい。

 何故なら、私は散々ヤ(・)ら(・)か(・)し(・)て(・)いる。

 それだから、カ(・)バ(・)ー(・)な(・)し(・)の(・)本(・)番(・)に突入されるのでは?と警戒されて、手(・)を(・)出(・)し(・)て(・)くれない。

 そして、例えカ(・)バ(・)ー(・)有(・)り(・)でも受(・)け(・)入(・)れ(・)て(・)く(・)れ(・)な(・)い(・)可能性が非常に高い。

 

(襲っているのは、私(・)の(・)意(・)思(・)じ(・)ゃ(・)無(・)い(・)のに……)

 本当は普(・)通(・)に接しようと思っている。それなのに、気(・)が(・)付(・)け(・)ば(・)襲(・)お(・)う(・)と(・)し(・)た(・)り(・)、(・)奇(・)行(・)に(・)走(・)っ(・)た(・)り(・)し(・)て(・)い(・)る(・)。一体何故?

 

(繋(・)が(・)る(・)前(・)も、似たような事をした。そして、繋(・)が(・)ろ(・)う(・)と(・)し(・)て(・)い(・)る(・)時と、繋(・)が(・)っ(・)て(・)い(・)た(・)時(・)も)

 部屋で準がアレなテレビを見ていたのを目撃したら、気(・)が(・)付(・)く(・)と(・)襲って縛ってしまった。 

 

 繋(・)が(・)っ(・)て(・)から暫くは襲おうと考えたり、行動に移さず普(・)通(・)に接する事が出来た。

 でも、今は──

 

(──そういえば、何時だか私が準に盗聴器を仕掛けていた時、聞いたのよね)

 ふと、思い出す。

 大鳳さんが幼児退行してしまい、大本営のカウンセリング課に連れて行った際。

 野原主任に技術課の応接室に招かれ、艦娘になった女性は、稀(・)に(・)艤(・)装(・)の(・)影(・)響(・)を(・)受(・)け(・)て(・)性(・)欲(・)が(・)高(・)ま(・)り(・)、(・)暴(・)走(・)し(・)た(・)り(・)す(・)る(・)、と言われていた。

 

(盗聴器を起動したのは、話の途中からだった)

 それに、話の内容が衝撃的過ぎたから、途中で会話の内容が頭に入ってこなかった。

 更に、盗聴器を誤って壊してしまい、最後まで話を聞く事が出来なかった。

 

(もしかしたら、私の今までの奇(・)行(・)は(・)艤(・)装(・)の(・)せ(・)い(・)なのかもしれない……)

 それに、私のこの想いは偽りのモノ──艤装の影響で、彼(準)に好意を抱くようになったのかもしれない──

 

(──いいえ。違う。違うわ)

 この想いは、偽りなんかじゃない。正真正銘、私の意思よ。けど、もしかしたら──

 

(──聞いてみましょう)

 奇しくも、明日の。いいえ、今日の秘書艦は私だ。

 けれど、聞いても教えてくれない可能性がある。それでも、聞かなきゃ。

 

(盗聴した事を知ったら、嫌われるかもしれない。幻滅されて距離を置かれるかもしれない。それに、この想いが偽りのモノだと言われるかもしれない。それでも、私は──)

 

「あああぁぁぁぁ……♡」

 

──瑞稀、痛いわ。強く握らないで?手を離して。

 あと、変な声出さないで?夢の中で準にド(・)突(・)か(・)れ(・)ているみたいだけど──痛い痛い!離して!離しなさい!!

 

 

side 翔鶴 out

 

 

───────

────

─

 

 

side 提督

 

 

──第603鎮守府、談話室──

漁(・)開始127日目。

15:00。

 

 

「…………」

 

(…………静か過ぎる)

 翔鶴が無言で書類に必要事項を書き込む音と、時折風が吹いて窓が揺れる音。そして、加湿器が稼働する音以外、何も聞こえない。

 しかも、これが今朝からずっと続いている。そのお陰か、予定より早く仕事を終わらせる事が出来そうだ。

 

(引き出しから時雨や加(・)賀(・)さ(・)ん(・)は出現していないし、壁や天井に榛名や早霜は張り付いていない。更に、秘書艦の翔鶴はずっと大人しい……)

 今朝から何度も思っているが、静か過ぎる。嵐の前の静けさって奴じゃないよね?

 何時もなら、こんなにも静かだと直ぐに何かしらトラブルが起きて賑やかになるんだけどなぁ。なんか、物足りない──物足りないって何?そんなにトラブルが起きて欲しいのか?嫌だよ。お断りだ。アホな事考えるな。フラグが回収されちまうぞ。

 

 閑話休題。 

 

 こっそり翔鶴を盗み見すると、真剣な顔で書類を捌いている。

 てっきり瞳孔をカッ広げて、視(・)姦(・)してくると思っていた。

 しかし、執務を開始してから今までずっと一、度たりともそういった事をしてこない。

 

……気付かない間にされていたのかもしれない?翔鶴が視(・)姦(・)してくれば、確実に独特の感覚がする。

 例えるなら、ねっとりしたような視線というか、なんというか。とにかく、ヤバい感覚がしなかったから、それは無い……と思う。

 

 閑話休題。

 

(何度か翔鶴を貶す……でいいのか?貶すような事を考えても、読(・)み(・)取(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)筈なのにナ(・)ニ(・)や何。そして、ア(・)ブ(・)ナ(・)イ(・)発言を一切してこない。マジでどうしたんだ?)

 申し訳ないけど、今まで翔鶴がヤ(・)ら(・)か(・)し(・)て(・)き(・)た(・)実(・)績(・)のせいで、安心するよりも警戒心が上がってしまう。

……もしかしたら、読(・)み(・)取(・)れ(・)な(・)く(・)な(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)のかな?ちょっと試してみよう。

 

(……きこえますか……執務中の翔鶴よ。今、貴女の心の中に直接呼びかけています。何故……今日は大人しいのですか……ナ(・)ニ(・)かヤ(・)ら(・)か(・)そ(・)う(・)と(・)企んでいるのですか?)

 視線は書類に向け、書き込みながら語り掛けてみる。これで無反応だったら、読(・)み(・)取(・)れ(・)な(・)く(・)な(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)──

 

「何も企んでいませんよ」

 

──あ、読(・)み(・)取(・)れ(・)て(・)る(・)。

 慌てて翔鶴を見ると、相変わらず真剣な顔のまま。そして、真面目な声で返答しながら書類に視線を向けて捌いている。

……本当にどうしたの?失礼を承知で言わせてもらうけど、頭でも打ったか?

 

「…………いいえ。私は至ってノーマルよ」

 

 あ、頬を膨らませ怒ってる。可愛い……じゃなくて。

 すまん、説得力皆無だ。信じたいけど、何時もそう言って数行後には襲ってくるから、信じられない。数行後って何?今日も快調に謎電波受信してんなぁ。

 

「…………ねぇ、提督。いいえ、準(・)。貴方に聞きたい事があるの」

 

「…………なんだ?」

 仕事中だから、名前ではなく提(・)督(・)と呼べ、と注意しようと思った。しかし、翔鶴はとても真剣な顔と声で言ってきたから、訂正させずに話を聞く事にした。

 

「実は──」

 

 

 

───────

 

────

 

─

 

 

 

──第603鎮守府、提督私室──

21:50。

 

 

「…………ごめんなさい」

 

「念の為に聞くが、もう盗聴器を仕込んではいないんだよな?」

 

「はい。提督服や、貴方の部屋。どちらにも仕込んでいません。全て撤去しました」

 

「…………そうか。もうやらないでくれよ?」

 深く反省している。なら、これ以上追求しないでおこう。

 

「はい。誓います。申し訳ございません」

 

 今にも泣きそうな顔をして。いや、泣いている。泣きながら、静流(翔鶴)は頭を下げて謝罪してきた。

 

 まさか、去年の夏頃まで提督服のボタンに盗聴器を仕込まれていたとは。全然気付かなかった。

 流石、妖精さん特製の盗聴器だ。そこそこ良い値段のする市販の盗聴器発見機を使ったのに、見付けられないとは──感心している場合じゃない。

 

 初めて野原主任と出会い。その際に技術課の応接室に案内され、そこで艤装の秘密の一つ──深海棲艦出現により激減した人口を増やす為、艤装の核(コア)が適性者(艦娘)の生存本能を刺激し、子孫を残そうとする為に性欲が強くなる──を聞かれていたとは。

 

 そして、もしかしなくても自分がヤ(・)ら(・)か(・)し(・)て(・)い(・)る(・)原因は、艤装のせいではないのか?と疑問に思った静(・)流(・)に聞かれるとは。

 

(執務室では話せないから、こうして仕事が終わってから部屋に招いて説明をしたけど……)

 こりゃ、マズい。もし野原主任にこの事を知られたら、知らない内に盗聴器を仕込まれていたとはいえ、“機密をバラした”と判断され、消(・)さ(・)れ(・)る(・)恐れがある。マジでどうしよう?

 

……バレなきゃ犯罪じゃない、という言葉があるんだ。黙っとけばいいや。最低過ぎる事をやるけど、気にしない。気にしたら負けだ。

 最近、俺の性格がどんどんゲスくなってきているが、知ったこっちゃねぇ。とにかく、バレないように気を付けよう。

……あ、そうだ。

 

「静(・)流(・)。分かっているとは思うが、この事は他言無用だ。いいな?」

 念には念を入れて、釘を刺しておこう。

 色々ヤ(・)ら(・)か(・)し(・)て(・)いるから忘れられがちだけど、静(・)流(・)は口がかなり堅い。

 本当に言ってはならない事は、絶対に言わない奴だ。そこは信じる事が出来る。

……そうでない事だと、アッサリと周りの人達に暴露するけど。

 

「はい。承知致しました」

 

 真剣な顔で承知した、と言ってきた。なら、信じる。

 

「…………」

 

「…………」

 一通り静(・)流(・)に艤装の秘密の一つ──ヤ(・)ら(・)か(・)し(・)て(・)い(・)る(・)原因は艤装のせいかもしれない事──を伝えると、無言になってしまった。

 

 俺の話を聞いた時はショックを受けていたが、ヤ(・)ら(・)か(・)す(・)ようになるのは、相手が誰でも良いのではなく、

 

 

 “心の底から好意を寄せる相(・)手(・)に。心の底から「愛したい」と思った相(・)手(・)が居た時のみ、積(・)極(・)的(・)に(・)な(・)る(・)”

 

 

 という事を伝えると、落ち着きを取り戻してくれた。現に、安心したような顔をしている。

 それもそうだ。今まで俺に向けていた気持ちは、偽りのモノでは無いのか?と思っていたが、違うのだと否定されたのだから。

 

「…………」

 

「…………」

 無言。マジでどうしよう?話す事は話したから、話題が無い。

 

 時計を見ると、消灯時間まであと数分だ。とりあえず、部屋に帰すか──あの、静(・)流(・)。突然俺の手を掴んでどうしたんだ?

 

「…………」

 

……あのー、静(・)流(・)さん?無言で俺の手を引いて何を──ヘーイ、ストップ。ストップだ。それ以上引いたら、君のたわわに実った果(・)実(・)に触れちゃう──触れちゃった。あったかい。柔らかい。あと、心臓が物凄いバクバク言っているよ?大丈夫?心臓破裂しない?

……じゃなくて。もしかして、襲おうとしている?

 

「…………これは、私(・)の(・)意(・)思(・)」

 

「…………」

 とても真剣な顔をしている。声も真剣だ。襲おうとするならこんな顔はしないし、こんな声を出さない。

 演技の可能性も考えたが、それは違うと断言出来る。上手く言えないけど、雰囲気で分かる。

 

「艤(・)装(・)の(・)影(・)響(・)なんかじゃない。間違いなく、この想いは私(静流)の意思」

 

「…………」

 突然、掴んでいた手を離した──と思ったら、今度は俺の胸に顔を埋め、抱き着いてきた。 

 

「貴方に向けているこの想いは、私の意思……」

 

 俺の胸に顔を埋めながら、まるで呪詛のように同じ言葉を繰り返し呟いている。

 

「絶対に、違う。偽りの想いなんかじゃない……絶対に……絶対に違う……」

 

……ごめん、静流。ちょっと怖い。普段より数オクターブ低い声で。しかも小声で何度も繰り替えし同じ言葉を呟き続けているから、恐怖を感じちゃう──

 

「これは、私の意思……これは、私の意思……これは、私の意思……」

 

──静流さん、何その顔。さっきまで不安と悲しみが綯い交ぜになったような顔をしていたのに、今はめっちゃ妖艶な顔になっていますよ?

 

「ふふっ……うふふっ……♡」

 

 おーう。妖艶な顔をしたと思ったら、今度は慈愛に充ちたような顔をしてらァ。語彙力が消失しているから上手く説明出来ないけど、見ているだけで何故か落ち着くというか、すんげぇ甘(・)え(・)た(・)く(・)な(・)っ(・)き(・)た(・)。何でだろう?

 

(なんか、ヤバそう。逃げる──のは、抱き着かれているから無理だな。助けを呼ぶにも、同じく無理そうだ。詰んでるね……静流〜、痛いよ?強く抱き着かないで?いや、別に抱き着くのは構わないんだけどもう少しだけ力を弱めてくれないかな?)

……うん。逆に力込めてきやがった。逆だよ?強めるんじゃなくて、弱めて?弱める。日本語分かる?ねぇ?ねぇ?ねぇ!?あっ、離れた──ちょ、こら!抱き寄せるな!──あったかい。柔らかい。

 

……頭を撫でてきた。落ち着く──ちゃう!!落ち着いてどうする!というか、何その顔。めっちゃ母(・)性(・)を(・)感(・)じ(・)る(・)んですけど。やめて?それ以上母(・)性(・)を(・)醸(・)し(・)出(・)さ(・)れ(・)た(・)ら(・)、襲いたくなっちゃう──

 

 

 

 

───────

 

────

 

─

 

 

──第603鎮守府、執務室──

漁(・)開始128日目。

08:05。

 

 

「随分、首周りを虫(・)に(・)刺(・)さ(・)れ(・)た(・)みたいだな」

 

「いいから仕事しろ」

 ニヤニヤすんな。揶揄うな。

 

「この色の濃さ……相当強く吸(・)わ(・)れ(・)た(・)んじゃねーの?」

 

「やかましい。近寄って覗き込むな。離れろ。自分の席に着け」

……ダメだ。摩耶の奴、戻りそうにない。寧ろ、揶揄う気満々で益々近寄って──突っつくな。

 

(くそっ。翔鶴の奴、わざと目立つ所に思いっきり痕(・)を付けやがって)

 食堂で瑞鶴に指摘されるまで気付かなかったせいで、エラい目に遭ったぞ。

 具体的には、犬(・)とダ(・)イ(・)ジ(・)ョ(・)ー(・)ブ(・)戦(・)艦(・)の目からハイライトがログアウトして──やめよう。思い出したら、胃袋と精神にダメージが入る。

……そういや、山(・)城(・)の目からハイライトが消えていたように見えたけど……気のせいだな、うん。

 

 閑話休題。

 

(翔(・)鶴(・)に抱き寄せられて、頭を撫でられながら甘(・)や(・)か(・)さ(・)れ(・)て(・)。更に、謎の母性を発揮されて。その結果、俺の理性を破壊されて、気が付けば俺から手(・)を(・)出(・)し(・)て(・)し(・)ま(・)っ(・)た(・)んだよなぁ……)

 手(・)を(・)出(・)し(・)て(・)い(・)る(・)間、無抵抗で一切襲って来なかったから、夢中になって……その……うん。色々やって──そういや、夢中になっていた時、時々首周りにキスされたような気がする。

 もしかしなくても、その時に……やめよう。今は仕事中だ。しっかりしろ。

 

「正確には虫(・)に(・)刺(・)さ(・)れ(・)た(・)んじゃなくて、鶴(・)に(・)啄(・)ま(・)れ(・)た(・)、と言うべきか?」

 

「やかましい」

 

「ちゃんとカ(・)バ(・)ー(・)付けたか?」

 

「やかましいって言ってんだろ」

 おう摩耶。これ以上揶揄うなら、口じゃなくて物理的に注意すんぞ。

 あと、ちゃんとカ(・)バ(・)ー(・)を付けました。

……カ(・)バ(・)ー(・)を付けていた時。翔(・)鶴(・)の奴、すんげぇ切なそうな顔をしていたなぁ。

 

『何時か。何時か、カ(・)バ(・)ー(・)無(・)し(・)でシて欲しいな……』

 

……イカン。夜戦(意味深)に突入する際の出来事を思い出しちまった。忘れろ。今は。今だけは忘れるんだ。頭を仕事モードに切り替えろ──

 

『何年後になるか分からなくても。どんな事があろうと、私は待ち続けます。何時までも、ずっと……』

 

──儚い笑みを浮かべていたなぁ……じゃなくて!マジでしっかりしろ!

 

「勢い余って、提督の遺(・)伝(・)子(・)を(・)注(・)ぎ(・)込(・)ん(・)だ(・)か?」

 

「注(・)ぎ(・)込(・)ん(・)で(・)いない。いいから黙れ」

 俺の理性が尽く破壊されて、あわや注(・)ぎ(・)込(・)み(・)か(・)け(・)た(・)けど、言わない。言ったら確実に揶揄われて、暫く話のネタにされる。

 

「あいよ。黙りますよっと」

 

 俺の顔と声を見聞きし、これ以上揶揄うと物理的に止められると判断したのか、摩耶は揶揄うのをやめた。

 コイツ、足柄と同じ位察しが良いからなぁ。

 

(……気持ちを切り替えて仕事しよう。やるべき事が山のようにあるんだ。さっさと取り掛かって終わらせないと)

 何時も通り、消費した資材の数を書類に纏めて。

 次に、特(・)殊(・)改(・)装(・)を施された足柄と満潮の艤装の稼動データを纏めて。

 それから、海(・)風(・)の艤装の特(・)殊(・)改(・)装(・)が本(・)日(・)中(・)に(・)完(・)了(・)す(・)る(・)から、装着・接続に立(・)ち(・)会(・)っ(・)て(・)。

……他にも色々ある。とにかく多い。焦らず、慌てずに一つずつ確実に片していこう。

 

 

side 提督 out

 

 

───────

────

─

 





次回予告


 海風さんの艤装に特(・)殊(・)改(・)装(・)を施して、接続してもらったんだけど……うん。凄(・)い(・)事(・)になってるわね。
 何時だか、時雨さんの艤装に第二次改装を施して接続してもらった時みたいに、海風さんの髪の毛が犬耳みたいに撥ねているし、肉(・)体(・)が(・)急(・)成(・)長(・)しちゃってる。
……それにしても、成(・)長(・)し(・)過(・)ぎ(・)じゃない?特に胸(・)が。目測だけど、夕立ちゃんと同等──いえ、夕立ちゃんより大(・)き(・)い(・)かもしれない。あと、形もいい。
……提督が見たら、どんな反応をするかな?


第166話・乙(・)女(・)の(・)は(・)に(・)か(・)み(・)と誘(・)惑(・)


「姉より優れた体型をした妹(夕立)と従姉妹(海風)なんて存在しないッ!!存在しないったら存在しないッ!!」


※次話は、ムッツリスケベ(時雨)が狂気本(・)気(・)の(・)暴(・)走(・)をする予定。

※先に謝罪します。時雨嫁提督の皆様、ごめんなさい。

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