追跡鶴   作:EMS-10

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 待たせたな!(CV.大○明夫)
 気が付けばこの小説を投稿してから2年が経ちました。
 ここまで続けられたのは、ひとえに皆様のお陰です。この場をお借りして、御礼申し上げます。本当にありがとうございます。
 諸事情により投稿頻度がH○NTER×HU○TER並に低下しますが、失踪せず完結させます(鋼の意思)
 宜しければ、今後もお付き合い頂ければと思います。


※前話のあらすじ※
・初霜、堕天
・ヴィクトリアンメイド服はいいぞ
・手段を選ばなくなったプリンツ
・長門はいつも通り

 

※警告※
とにかく頭の悪い内容
頭を空っぽにしてください
お前らの嫁だろ、早くなんとかしろよ



※この小説に登場する人物は全員、特殊な訓練を受けています。
 決して真似しないでください。

※この小説内の季節は、2月中旬頃となっています。



第186話・バレンタイン・クライシスその3

side 夕立

 

 

──第603鎮守府、談話室──

()開始164日目

15:00

 

 

 

 今現在、私が居るのは第603鎮守府。更に言うと、その中にある談話室だ。

 鎮守府とは何か。大雑把に言うと軍の施設。

 けど、少し前まで談話室は秋○原等にあるメイドカフェみたいな事になっていた。

……何があったのか、勿体ぶらずに言うね。

 

 

 午前中に初霜がメイド服を着て提督さんに()()()しようとした事が皆に知られ。

 一部の人達……榛名さんと涼月、由良、矢矧さん、プリンツさんが真似をし、談話室で休憩していた提督さんに()()()しようとした──

 

 

 

 

 

 

「良し、決めた。夕張と野原主任に頼んでスク水を量産してもらおう。そんで、それを皆に着てもらうんだ。

 艦娘は海上を航行するから波を被ったりして濡れる。

 艦娘の装束は妖精さんの素敵技術により濡れても直ぐに乾く。

 それに対しパンツやブラといった下着は違う吸汗速乾性に優れた素材で造られたモノを穿いているのならともかく綿製のモノを穿いていたら中々乾かないしかしスク水は違う濡れても直ぐに乾く。

 つまり艦娘達は装束の下にスク水を着れば濡れても不快な思いをしなくて済むそれに被弾して装束が破けても破けた箇所から見えるのは水着だからパンツやブラのように隠す必要が無くなる羞恥心を軽減出来るあとスカートが捲れた際もパンツじゃないから恥ずかしくないもん!になる──」

 

「──提督さん、ココアでも飲んで落ち着くっぽい。今用意してあげる」

 それ以上言わせないよ?誰かに聞かれたら、量産しなくてもヤベェ人達がこっそり妖精さん達に造らせて着るようになっちゃう。

 

……提督さんが白目剥いて危ない笑みを浮かべてる。しっかりするっぽい。

 

(さっき()()()()()()に色々()()()されたせいで提督さんのメンタルがボロボロになってしまい、思考と言動がアレな事になっちゃってる)

 無理もない。私が談話室で休憩していると、少し疲れたような顔をした提督さんが談話室にやって来て。

 二人きりで他愛ない会話をしていると、何処からともなく榛名さんや涼月、由良、矢矧さん、プリンツさんがメイド服を着て出現。()()()しようとして、提督さんのメンタルを破壊したのだから。

 

 幸い、騒ぎを聞き付けて山城さんと千歳さん、瑞鶴さんが来てメイド達を冥土に送った事で、提督さんのメンタルは完全崩壊せずに済んだけど、若干崩壊してしまったのか変な事を口走るようになってしまった。

 

(普段の。メンタルが安定している提督さんなら、こんな事──スク水を云々なんて絶対に言わない)

 まぁ、提督さんが本当に心の底から望むのなら着てあげるよ。

 

(……あ、お湯が沸いた)

 思考していると、電気ケトルからお湯が湧いたことを知らせるブザーが鳴った。

 これ以上ボーッとしていたら、提督さんに不審に思われちゃう。思考するのは一旦やめて飲み物を用意しよう。

 

 

───初霜が渡良瀬さんにアプローチを掛けまくるようになった

 

 

───羨ましい

 

 

───私も初霜みたいに、(股間)に素直になって渡良瀬さんにアプローチを掛けたい

 

 

───今日はバレンタインデーだから、特別な事をしたい

 

 

───でも、そんな事を。何もしくはナニをすれば渡良瀬さんに嫌われちゃう

 

 

───だから、我慢よ

 

 

───私は。私だけは提督さんにとって安らげる存在(居場所)で居なきゃ

 

 

 

…………いけない。ボッーとしていたから、お湯の分量を間違えちゃった。こんなに多いと味が薄過ぎて不味い。作り直さなきゃ。

 捨てるのは……食べ物を。正確には飲み物だけど、粗末に扱う事になるからダメ。これは私が飲んで、新しく作ろう。

 

……うん、とっても不味い。

……私が口を付けたコップを使って、新しく作り直そうかな?それで提督さんと間接キスを──ダメダメ。別のコップを使おう。

 

 

──

 

 

「はい、夕立特製・生クリーム乗せホットココアをどうぞ」

 

「ありがとう。……うん、美味い。生クリームは甘く、濃厚。それに対し、ココアはほろ苦くコクがある。いいな、これ。いくらでも飲める」

 

「おかわり、まだあるよ?飲む?」

 喜んでくれた。良かった、今日の為にこっそり練習した甲斐があった。独学だったけど、何とかなるものね。

 

「本当か?なら、もう一杯貰えないか?」

 

「良いよ、待ってて♪」

 気に入ってくれたのか、おかわりしてくれた。嬉しいな。

 

(さっきまで目は死んでいて、声も落ち込んだモノだった)

 でも、私が用意したココアを飲んだらメンタルが回復してくれたみたい。

 それに、私に甘えたさそうな雰囲気を醸し出している。

 ふふっ、良いんだよ?何時だかみたいに、私に抱きついて胸に顔を埋めても。

 勿論、提督さんが求めるまで私は何もしない。求めて来たら、喜んで応えてあげる──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「飲み物を御所望なら、私にお任せ下さいッ!!」

 

 

 

 

 

「………………」

 お代わりを用意しようとしたら、初霜がソファの下から這い出てきた。チッ、邪魔が入った。

 

 約一時間前。提督さんに()()()しようとしたから、ネックブリーカードロップからのノーザンライトボムをぶちかまして強制ダウンを奪い、入渠槽に叩き込んだのに。もう復活したの?予定だとあと数時間掛かる筈なのに。

 あと、何時からそこに居た?どうやってそこから出てきた?明らかに人が入れるスペース無いよ?幾ら初霜は小柄でも、無理があるよ。

 

 それと、気配を消すの上手ね。這い出てくるまで気付けなかった……感心している場合じゃない。初霜が出現したということは、提督さんのメンタルに被害が及んでしまう。

 

 

「おぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ゙ッ゙ッ゙!゙!゙?゙」

 

 

 予想通り、初霜を見た提督さんが幼児退行してしまった。さっき少しだけ回復したのに、よくも……。

 

 おかわりを用意するのを一旦やめて、初霜を退()()させなきゃ。

 

 せっかく提督さんと二人きりで過ごせて、甘やかせると思ったのに。許さない。手加減無しのジャーマンスープレックスをぶちかましてやる!

 

……ん?天井裏から気配を感じる。人数は……一人だ。誰だろう?

 とにかく、初霜だけでなく天井裏に居る人も警戒しないと──

 

 

「来るなッ!来るなぁッッ!!」

「ご安心下さい!ナニもしません!ただ()()()するだけです!」

「そう言ってナニかする気だろッ!俺は詳しいんだッ!」

「よく分かりましたね?その通りです!最終的にはシます!」

 

 

 

「渡良瀬少佐ばかりずるいぞ!初霜、私にも()()()してくれッッ!!」

 

 

 

──天井裏から長門さんが飛び降りてきた。また長門さんか……。

 確か、午前中にやらかして初霜に()()──キモいと言われて、精神的ショックを受けて心肺停止したのにまた初霜に迫るの?懲りないね。

……呆れていないで止めないと、提督さんが危ない。待ってて、今助けるから。

 

 

「長門さん♪」

「なんだい?初霜。言っておくが、今の私は一味も二味も違うぞ?例えどんな罵倒を受けようと、午前中に死にかけた事で新たな境地に。我々の業界ではご褒美です!の境地に至ったから寧ろ喜ぶぞ!」

「キモいです、この変態ロリコン戦艦♪」

「最高の褒め言葉だ!」

 

 

……初霜、虫も殺さないような笑みを浮かべて可愛らしい声で罵倒しないで?なんか怖い。

 あと、長門さん。鼻息荒くしながら喜ばないで?物凄くキモいっぽい。

 

 

「こんな所に居られるか!俺は逃げるぞッッ!!」

「逃がすかああああああああッッッ!!!」

 

 

 長門さんが初霜に罵倒され喜んでいる隙をついて、提督さんが逃げた。

 けど、逃げた先は談話室の出入口じゃなくて、談話室内にあるゲームや雑誌等を仕舞う小部屋だった。

 どうしてそこに逃げ込んだの?初霜と長門さんのせいで正常な思考・判断が下せなくなって小部屋に逃げ込んだの?それか、小部屋に隠し通路があってそこから逃げる為に入ったの?

 

 

()()()()()()()出ておいで

出ないと

キ○タマ

もぎ取るぞ」

 

 

 

……思考している場合じゃない。長門さんが叫びながら小部屋のドアをタックルしている。

 このままだとドアが壊されるのは時間の問題だ。急いで止めなきゃ──あ、ドアが開いた。そして、提督さんが手に何かを持って出てきた。

 

……提督さんが手に持っているの、もしかして昨日野原主任と秋津洲さんが悪ふざけで造ったメ○ルギア仕様のフルトン回収装置じゃない?何であそこにあるの?

 

 

「長門さん、これ、なーんだ?」

「なんだ、それは?まさか、そんなモノで私をどうにか出来ると思っているのか?」

「それが出来るんだなぁ」

「ほぅ?面白い。なら、それで私を何とかしてみろ」

「いいぜ……その前に、一つだけ言わせてくれ」

「何だ?命乞いか?」

「いいや、違う。警告だ。後ろで初霜がスカートたくし上げて、アーム付き連装砲を長門さんに向けているぞ」

「何ッ!?初霜がスカートをたくし上げているだとッ!?」

「…………こっち見ないでください、ロリコン戦艦」

「我々の業界ではご褒美です!もっとお願いしますッ!!」

 

 

 提督さんが警告すると、長門さんは素早く後ろを振り返った。

 そして、スカートをたくし上げてアーム付き連装砲を展開する初霜を凝視し、初霜に毒を吐かれ喜んだ。

 もうダメだ、この人。救いようがない。私が横須賀に居た頃よりも悪化している。

 

 それはそれとして、初霜が連装砲?を構える事に気付けなかった。

 気配を。殺気等を一切放たず、私に悟られずに展開出来るって……厄介ね。

 今回は長門さんに向けられていたから良かったけど、もし私に向けられていたら、撃たれるまで気付けなかったかもしれない。

 

……あ、提督さんがフルトン回収装置を装備した。

 もしかして、飛ぶ気?ここ、屋内だよ?天井にぶつかっちゃうよ?

 そう思っている間に、提督さんはフルトン回収装置を装着し、起動させた。

 

 

 

「そおおぉぉぉおおおらを自由にいイイぃぃぃぃ飛ぉぉぉおおおおびたああああああいなあああああああああッッ!!ハイッ!フルトン回収装置ッッッ!!!」

 

 

「なっ、しまった!!」

「提督!?」

 

 

「諸君、()()()()()ッ!ハーハッハッハッハ!!」

 

 

……天井をブチ破って飛んでっちゃった。あーあ、天井に大きな穴が空いてる。そのせいで冷たい空気が入り込んで、暖かかった談話室が急に寒くなっちゃった。家具職人妖精さんを呼んで直してもらおう。

 

(……もうあんなに高い所まで行ってる。流石野原主任と夕張さんの造った代物ね。無駄に高性能だ)

 ブチ破られた天井から提督さんが何処まで飛んだのか艦娘の力で強化された視力で見ると、僅か数秒で推定500m以上の高さにまで到達していた。

 

 

「くそっ、逃げられた。許さん……許さんぞー!」

「提督……どうして私を置いて行ってしまわれたんですか?どうして……どうして……?」

 

(…………長門さんと初霜が騒がしいけど、無視しよう)

 騒いでいる二人を無視して、頭の中で予定を立てる。

 えーと、まずは家具職人妖精さんを呼んで天井を直してもらって。

 私一人だと厳しいから、家具職人妖精さんを呼ぶ際に誰か援軍を呼んで長門さんと初霜を無力化して。

 安全を確保したら、提督さんを迎えに行って心のケアをしてあげよう。

 

 

side 夕立 out

 

 

───────

────

 

 

side 海風

 

 

──第603鎮守府、海風私室──

15:10

 

 

 

───中々タイミングが合わない

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()を渡したくても、初霜さんや長門さんが襲撃を掛けたり。

 初霜さんの影響を受けた榛名さん達がメイド服を着て渡良瀬さんに迫ったり。

 山城さん達が護衛に就いたりする。

 

 

 そのせいで、今朝から常に渡良瀬さんの傍に誰かが居て渡す事が出来ない。

 

 

 今朝からずっと、さり気なく様子を伺っているけど中々渡良瀬さん一人にならない。

 

 

 

───()()()

 

 

 

 別に、今日渡せなくてもいい。

 

 

 私が秘書艦の日に、さり気なくお茶請けとして出せばいい。

 

 

 でも、私の本心は今日渡したいと叫んでいる。

 

 

 今日はバレンタインデーという特別な日。

 

 

 

 

───()()()

 

 

───確かに今日は特別な日だ

 

 

───だからと言って、欲望に素直になったらダメ

 

 

───ここはぐっと堪えて、ひたすらチャンスを待ちましょう

 

 

───本能のまま行動すれば、待っているのは破滅だ

 

 

───誰か一人にでも不審に思われたら、警戒されて監視される恐れがある

 

 

───いいえ、()()()()()()()()()わね

 

 

───今までに何度か()()をすり替えられている

 

 

───幸いな事に、私が()()を持っている事はバラされていない

 

 

───だから、これ以上不審に思われる言動を取るわけにはいかない

 

 

───もし不審に思われるような言動を取れば、現段階で私を監視している()()()()の事をバラされてしまう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(………………揺れた?)

 いいえ。ほんの一瞬だったけれど、確実に揺れた。

 地震……にしては、揺れる時間が短過ぎる。それに、この揺れ方は誰かがプロレス技をかまされた際に発生するモノに似ている──

 

 

(──エンジン音?)

 揺れたと思ったら、今度はエンジン音のような物が微かに聞こえてきた。場所は外──空ね。

 何のエンジン音かしら?艦載機……違う。艦載機の音はもっと低い。

 

 疑問に思っている間に、音は次第に大きくなってきた。

 どうやら落下しているみたい。一体何が落下しているの?

 音の正体を確認する為、窓を開けて空を見上げると、球状のパラシュート?のようなモノにぶら下がる渡良瀬さんの姿が視界に入ってきた。

 

(……えっ?渡良瀬さん!?)

 見間違えかもしれない。そう思い、軽く目を擦り艦娘の力で視力を強化して見ると……間違いない、渡良瀬さんだ。

 何故渡良瀬さんが空に?……もしかしたら、先程の揺れと関係があるのかもしれない。

 

(色々疑問に思う所があるけど、これはチャンスかもしれない)

 恐らく、渡良瀬さんは誰かから逃げた。

 艦娘の力で強化された視力で渡良瀬さんの顔を見た際、誰かから逃げる時にする顔をしていた。

 

 先日、“逃げずに向き合う事にした”と言って、有言実行していた。

 それなのに逃げた。つまり、精神的に追い込まれている可能性が高い。

 

……ふふっ。あはっ♪あっははははははは♪

 

 

 

 

 

───()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 ()()()()()()()

 

 

 息が荒くなってきた。

 

 

 嗚呼……興奮してきた。

 

 

…………落ち着きなさい。深呼吸して、冷静になりなさい。

 

 

…………良し、落ち着いた。これなら、不審に思われないハズ。

 さぁ、上手いこと提督を私の部屋に招いて、調()()しちゃいましょう♪

 

 

 

 うふふ……うふふふふっ……あっははははははははは♪

 

 

 

side 海風 out

 

 

───────

────

 

 

side 提督

 

 

──第603鎮守府、海風私室──

15:25

 

 

 

 あ"〜、暖かい。生き返るわァ〜。暖房器具は人類最高の発明品。はっきりわかんだね。

……にしても、真冬の上空約500mがあんなにも寒いとは思わなかったぞ。高度が上がるにつれ気温が低くなる、というのは知っていたけど、予想よりも寒かった──現実逃避してる場合じゃないよ。

 

(やっちまった……逃げちまった……)

 午前中から変態メイド(初霜)に何度も()()()されそうになったり。

 変態メイドに御奉仕されそうになっている俺を見た長門さんが、哀と怒りと悲しみを背負って処そうとしたり。

 変態メイドにミーム汚染された榛名達がメイド服を着て、御奉仕しようとしたり。

 

 その他にも色々あるが、俺のメンタルに限界が来て、さっき談話室で変態メイドと長門さんに襲撃された際。俺のメンタルに限界が来たのか、気が付いたら小部屋に置いてあった○タルギア仕様のフルトン回収装置を使って逃げてしまった。

 

……そういや、何故小部屋に逃げ込んだ?夕立が居たんだから、彼女に助けを求めて長門さんを無力化してもらう。

 もしくは、鎮守府に残っているまともな娘達(俺基準)に助けを求めるなりすれば良かったじゃないか。

 それで、俺は変態メイドの相手をすれば良かった。

 

 それから、何故フルトン回収装置が小部屋に置いてあった?ツッコミどころ満載だなぁ、オイ。

……頭が痛くなってきたから、一旦考えるのをやめよう。

 胃袋は……うん、痛くない。大丈夫そうだ。

 

 閑話休題。

 

(確実に変態メイドは暴走するだろうな……)

 野原主任に“逃げたら暴走しするからしっかり向き合え(意訳)”と警告されたのに。やっちまったなぁ。

 海風の部屋に逃げ込んだ後、夕立達が“物理的説得をして大人しくさせた。監視するからその間にSAN値を回復させて”と報告してくれたから平和な時間を過ごせているけど……長くは続かないだろうな。

 

(今までの経験上、確実に深夜辺りに襲われるな……)

 断言出来る。

 今すぐにでも変態メイドの所に行ってケアした方が良いのだろうけど、俺のSAN値はピンチ状態だから回復させないとまた逃げて変態メイドは暴走して……を無限ループする事になりかねない──

 

「お待たせしました、()()()()()()をどうぞ。」

 

「──ありがとう」

 思考中止。今はとにかくSAN値を回復させる事に専念しよう。

 

 妖精さん特製暖房器具から発せられる温風で冷えた身体を温めながら、今後の事を考えていると()()がローテーブルにカップを置き、ハーブティーを淹れてくれた。

 ティーポットからカップに液体が注がれる際、独特な香りがしたけど……この香りはシナモンかな?

 

「シナモンティーです。冷えた身体を温める効果があるので、こちらをご用意致しました。……あっ、もしかして、シナモンは苦手でしたでしょうか?」

 

「いや、苦手じゃない。寧ろ好きなほうだ」

 シナモンで合ってた。シナモンの香りは勿論、味も好きだ。

 

 ハーブティー──シナモンの香りを嗅いでいると、苦手なのでは?と勘違いした海風が申し訳なさそうな顔をした。

 

「本当ですか?無理されていませんか?」

 

「本当本当、シナモン好きだぞ?」

 だから申し訳なさそうな顔しないで?嘘じゃないぞ?

 言葉だけだとアレだから、飲んで証明してやる……あちっ!

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

「だっ、だいじょーぶ……」

 ごめん、嘘ついた。あんま大丈夫じゃない。あっちー。もう少し息を吹きかけて冷ましてから飲むべきだった。

 舌がヒリヒリする。後で医療妖精さんに火傷していないか診てもらおう。

 あと、痛み──ヒリヒリが治まらなかったら、塗り薬でも処方してもらおう。

 

「舌を見せてください!火傷しているかもしれません!」

 

「大丈夫だから落ち着いて?」

 海風、慌てないで?あっ、あのっ?顔、近いよ?何で接近してくるの?

 

「提督、口を開けてください!火傷していないか確認します!」

 

おちふけ(落ち着け)ふみかへ(海風)

 顔ォ!近ああああいッ!強引に口を開けられてるううう!?

……あ、海風から()()()()()()の良い香りがする。なんか、()()()()()()()()()()

……海風さん、胸。当たっちゃってます。めっちゃ柔らかいし、あったかい。()()()()()()()()

 

……落ち着け。冷静になれ。相手は海風。何やナニもヤらかさない、第603鎮守府において数少ない()()()()()()な娘だ。

 そんな娘に変な感情を抱いていると知られたら、引かれる。もしくは幻滅される恐れがある。そうなったら俺は精神崩壊起こして幼児退行するぞ。

 

 閑話休題。

 

 とにかく、距離が近過ぎるから離れないと。もしこんな所を誰かに見られでもしたら、確実にどったんばったん大騒ぎ!な事になる。

 瑞鶴達がヤらかしそうな娘達をしっかり監視してくれているが、奴らの事だ。一瞬の隙を突いて俺の居る場所に出現するかもしれない。

 そして今現在の光景を見られ、どったんばったん大騒ぎ!な事に──

 

「暗くて良く見えませんね。何か明かりを……そうだ!探照灯で照らせば!」

 

──海風さん、落ち着いてください。そこまでしなくていいです。俺なら大丈夫だから。

 あと、探照灯で俺の口内を照らさなくていいです。もし照らされたら、目を閉じても眩しくて滅びの呪文を喰らったム○カ大佐状態になっちゃう。

 

……あっ、こら、格納領域から探照灯を取り出さない。仕舞いなさい。口の中を照らそうとしないの。やめなさい、やめっ──

 

 

 

───

 

 

 

「──ハーブティーにはシングルとブレンドがありまして、シングルはハーブを一種類のみ使用した物を。ブレンドは複数の種類のハーブを一緒に用いた物を指します。

 シングルでは癖が強く飲みにくくても、ブレンドする事で飲みやすい味になる事もあります。ただし、ハーブにはそれぞれ効能があるので、ブレンドする際には効能を相乗効果で高められる組み合わせを選びます」

 

「結構奥が深いんだなぁ。ただ味や香り。それから効果だけで選べばいいものだと思ってたよ」

 勉強になるな。最近ハーブティーを摂取する頻度が増えたから覚えておこう。

 

「……あの、提督。私の話、つまらなくないですか?」

 

「つまらなくなんて無いぞ?寧ろ知らない事を知る事が出来て楽しい。だから、もっと教えてくれないか?」

 

「……はいっ!」

 

 良い笑顔だ。可愛い。守りたい、この笑顔。

……おっと、海風がハーブティーについて説明を再開した。思考をやめて聞く事に集中しよう。

 

 

 

 

 

 海風に()()されそうになってから十数分後。説得の甲斐あってか海風は落ち着きを取り戻してくれた。

 落ち着いてくれた後、なんやかんやあって少し冷めたハーブティーを飲んでリラックスした。

 

 そして、お代わりを用意してくれた際、俺はふとハーブティーについて海風に聞く事にした。

 ネットとかでどのような物かは知っているが、詳しくは知らない。

 

 閑話休題。

 

 海風に質問すると、彼女は嬉嬉として説明を始めてくれた。お陰で多少ハーブティーについて詳しく知る事が出来た。

 

(……良い。とても良い。平和な内容で、ぶっ飛んでいたり下の発言が一切含まれていない)

 これが他の娘なら、物騒な単語や卑猥な単語を使ったりする。

 しかし、海風の場合はそれらが一切無く、言う素振(そぶ)りすら見せない。あと、これが一番大きいが俺を性的な意味で襲って来ない。

 もし海風以外の娘と二人きりだったら、襲われるんじゃね?と警戒してしまう。

 それが絶対に無いと断言出来るから、俺のSAN値はみるみる回復している。

 

(海風以外で、今まで一度も戦闘中や鎮守府内で何やナニもヤらかさず。尚且つ物騒な単語や卑猥な単語を使わずに話せる奴って此処に居るのか?)

 尚、派遣されて来た娘達は除く。

 ちなみに、派遣されて来た娘達の中で該当するのは、名取さんとビスマルクさんの2人だけだ。

 

……那智さんと能代さん?彼女達は比較的まともな方だけど、えげつねぇ下の発言を高頻度でするから除外。

 

……吹雪?確かに吹雪は良識人だけど、五月雨がヤらかす度に……うん……止めてくれるのは本当に有難いんだけど、グロテスクな事を平然とするから除外。これが無ければ含まれていた。

 

……文月?確かに文月は歳相応の言動や天使のような笑顔を見せてくれるけど、戦闘になると笑顔はそのままで深海棲艦絶対殺すウーマンと化すから除外。

 

 

 閑話休題。

 

 えーと、該当者……該当者……。

 

………………。

 

………………。

 

………………。

 

………………あ、居たわ、1人だけ。

 今まで一度も戦闘中や鎮守府内で何やナニもヤらかさず。物騒な単語または卑猥な単語を使わない娘が。

 

……その娘は誰かって?木曾だ。彼女だけはマジで戦闘中と鎮守府内で何やナニもせず、会話していても物騒な単語や卑猥な単語を使わずに話す。

 

 出撃や演習等の時にテンションが上がると、“お前らの指揮官は無能だな!”だの、“魚雷の特売セールだ!受け取れッ!”とか言うけど、俺の中では許容範囲だからノーカウントです──

 

 

「あの……提督?ボーッとされていますが……やはり、つまらなかったでしょうか?」

 

「──いや、違う。押し掛けておいてなんだけど、少し眠くなってボーッとしちまった。すまない」

 いけね、思考していたから海風に勘違いされてしまった。しっかりしろ。

 ここは誤魔化そう。ごめんよ、海風。嘘をついて……ッ!?

 

(な、なんだ?()()()()()()()()()?)

 海風の部屋にお邪魔してから()()()()()()()()()()()()けど、ソレが更に強くなった。

 それだけじゃない。頭がボーッとしてきた。

 

(さっきまで意識がハッキリしていたのに、風邪をひいた時みたいな浮遊感が……あ、ヤバい、めっちゃ()()()()()()()())

 おかしいな。睡眠はしっかり摂っているし、手洗いうがいも小まめにやっている。

 少し前にフルトン回収装置で空を自由に飛びたいなッ!したからか?……いやいや、そこまで俺の身体はヤワじゃない。

 

……もしかしたら、第603鎮守府で唯一、戦闘中と鎮守府内で何やナニもヤらかさない。物騒な単語や卑猥な単語を使わない、癒し枠兼良識人の海風と二人きりで居る事で心が安らぎ。

 今まで積もりに積もった精神的疲労が噴き出し、()()()()()()の効果が相まってこうして急に()()()()したりしたのかな?可能性としてはこれが高い。

 

「……提督、宜しければ()()()になられますか?」

 

 海風が心配そうに俺を見ている。そして、とても魅力的な提案をしてくれた。

 本当は“大丈夫だ”と強がって断り、自分の部屋に戻って休むべきなんだろうけど……あの、海風さん?立ち上がってどうしたの──

 

「失礼します」

 

「──ちょっ、おまっ!?」

 背後に回ったと思ったら、肩を掴んで仰向けに倒してきたぞ?何?何する気?もしかして、襲う気か!?嘘だろ!?あの海風が、俺を襲おうとしている!?嘘だ!ウソダドンドコドーン!

 

……あ、あれ?後頭部に何やら柔らかい物が当たっている。これは──

 

「ふふっ、突然このような事をして申し訳ございません」

 

──膝枕だ。俺、今、海風に膝枕されてる。

……慈愛に満ちた微笑みだ。良い。凄く良い、心が安らぐ。

 

(一瞬。ほんの一瞬だけど、襲われると考えちまった)

 なんつーこと考えたんだよ。相手はあの海風だぞ?ヤベェ奴らじゃ無いんだぞ?襲ってくるわけないだろ。

 

「遠慮なくお休みください♪」

 

「……いや、けど……海風に悪い……」

 気持ちは有難いけど、迷惑を掛けるわけにはいかない。

 それに、いい歳した野郎()が、歳下の。それも多感な時期の少女の好意に甘えて膝枕してもらうって、色々マズいよ。

……くそっ、眠くなってきた。瞼が重い。起き上がれそうにないし、あまりにも眠くて口が動かせない。なにも……かんがえ……られ……ない……。

 

「……提督?」

 

 あー……ダメだ。がまん……できない……ねち……ま……う………………。

 

 

……………………。

 

…………。

 

……。

 

 

side 提督 out

 

 

───────

────

 




次回予告


 提督……どうして……どうして逃げたのですか……私はただ、提督に尽くしたいだけなのに。
……もしかして、私が心の何処かで羞恥心を感じている事に気付いたから、()()()する資格は無いと判断して逃げたのかもしれない。
 事実、私は少し。ほんの少しだけ羞恥心を感じていました。
………………。
 覚悟を決めました。私は!今から!羞恥心を完全に捨て!全力で提督に()()()をします!
 私が入渠中に()()()()()()()()()()()()()()()()()ようですが、知ったこっちゃないです!
 待っていてください、提督!今、あなたの初霜が行きます!そして、海風さん以上の母性を醸し出してオギャらせます!
……瑞鶴さん、夕立さん、邪魔しないでください。邪魔するのなら、()()にしますよ?ふふっ……ふふふふっ……。


第187話・バレンタイン・クライシスその4


「人間って生き物はな、みんな赤ちゃんなんだよ!大人なんて存在しないんだよ!大人のフリが上手な赤ちゃんしか存在しないんだよッ!」


※海風がアップを始めたようです


【補足的なナニか】

・メタルギア仕様のフルトン回収装置…「メタルギア」シリーズに登場する「フルトン回収装置(ピースウォーカー)」が元ネタ。
 詳細については各自でお調べ下さい。ピースウォーカーは公式が病気過ぎて腹筋に悪い


以上、補足終了



※次話は多分、プ○ステ6が発売された頃に投稿します(小声)


※山風におにぎりを与えたら、角と尻尾を生やしてクスクス笑いながら夜這いを掛けられるという謎電波を受信したので、山風に餌付けしてきます
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