下ネタ満載
勢いしかない
糖分多め
お前らの嫁だろ、早くなんとかしろよ
※この小説内の季節は3月上旬頃となっています
※この小説に登場する人物は全員、特殊な訓練を受けています。決して真似しないでください
side 提督
──第603鎮守府、談話室──
14:30
「ねぇ
「そこら辺にあるクッションを使いなさい。あとみっちー言うな」
「お姉ちゃんの柔らかい膝じゃなきゃヤダー!」
「ちょ、抱きつくな!離れなさい、この
(嗚呼。
口ではなんやかんや言っても、嬉しそうな顔で構ってあげているお姉ちゃんもとい満潮。
仕事中は真面目で厳しい言動を取るが、休憩中の今は年相応の無邪気さを見せてお姉ちゃんに甘える妹もとい
他にも語れば沢山あるが、一言で纏めると……イイ!以上。
(ウチには満潮と霞以外の姉妹──翔鶴と瑞鶴。扶桑さんと山城。時雨と夕立が居るが、満潮と霞のようにじゃれあったりはしないから新鮮味がある)
やっぱ10代の娘はエネルギッシュというか、無邪気さがあっていい。
時雨と夕立も10代だけど、この二人は満潮と霞みたいにじゃれあったりはしない……いや、しているな。ヤらかす時雨に夕立がプロレス技をブチかますというじゃれあいを。最近時雨は大人しくなったから見かけなくなったけど。
長く感じた2月が終わり、3月に入って数日が過ぎた。
プリンツが覚醒者になってから仕事量や電話対応をする頻度が倍以上に増え、オマケに深海棲艦の出現頻度が増えたことで毎日激務続きで肉体・精神共にボロボロだが、最近は慣れたのか以前ほど奇行に走らなくなった。
それはそれとして。数日前、ようやく
内2名──霞と大淀さんとは面識があるからどんな娘なのかは知っているが、残りの2名──朝霜と清霜は初対面だから知らない。数日前の時点では、だぞ。
なので、異動のお報せが届いた日に小嶋提督から電話で教えてもらったり。
4人とは旧知の仲だという足柄や、元
余談になるが、この4人が異動して来ることをウチの娘達に話した際、足柄のテンションがぶっ壊れた。あんなにはしゃいだ足柄を見るの、初めてかもしれない。
閑話休題。
そして数日前。ついに艦娘達が異動してきて、挨拶をしたんだけど……うん、凄まじかった。
何がどう凄まじかったのか。語るとエラく長くなるから簡潔に纏めると、霞は苦労人ポジで、残りの3人はトラブルメーカー。以上。
もうね、霞が可哀想に思えてきたよ。朝霜と清霜、大淀さんがボケた言動を取って。すかさず霞がツッコミ(物理)を入れて、俺に頭を下げて謝罪して。
それを見ても3人はフルスロットルでボケ倒し、霞が涙目になりながらツッコミ(物理)を入れていた。
ちなみに、4人のやり取りを見ていた際、霞がビ○ティに。残りの3人がボー○ボと首領パ○チ、と○ろ天の助に見えてきたのは内緒だ。
閑話休題。
挨拶の際、色々と凄まじいモノを見せられたせいで先行きが不安だったが、予想に反して仕事中は全員真面目で特にトラブルを起こさなかった。
4人ともかなりの戦闘力を持ち、書類を捌くスピードもかなり早い。特に大淀さんは抜きん出てる。
流石、元大本営・事務課所属。赤くないのに3倍近くのスピードで捌ける。毎日大淀さんに秘書艦を務めてもらいたいほどだ。
しかし、ウチは人数不足で出撃や哨戒、漁をしてもらう必要があるせいでソレは叶わないが。
閑話休題。
ただ、休憩中はとことん
……これ以上回想すると俺の胃にオゾンホール並みの穴が空くか、幼児退行しかねないからこの辺でやめよう──
「お姉ちゃーん!」
「だー!離れなさい!」
「お姉ちゃん成分が足りないから補充させてよー」
「ウザいのよ!このバ霞!」
霞と満潮がじゃれ合っている。イイ。
異動して来てから何度も2人がじゃれ合う様子を見ているが、一向に見飽きない。
嗚呼、ずっと見ていたい。こんな時間がずっと続いて欲しい──
「ふむ。やはり霞ちゃんが年相応の笑顔を見せながら無邪気に姉に甘える姿は素晴らしい」
「同意するわ。やはり
「いいえ。時代は
「は?」
「は?」
はい、癒しの時間終了。
そしてソレは満潮と霞も理解しているのか、空気扱いして完全に無視している。
ただ、録画されたビデオカメラは今夜辺り、満潮と霞の手によって破壊されるだろう──
「司令官、助けて!この不審者、私の太ももを触ってきた!」
「触ってないわよ!冤罪よ!信じて司令官!あと私は不審者じゃない!私は
おっと。満潮が俺の背後にやってきて、半べそかきながら助けを求めてきた。
それから霞が焦ったような顔をしながら正面に立ち、弁明を始めた。最後辺りに何か呟いてたけど、声が小さ過ぎて聞き取れなかったが、霞の事だ。変なことは言ってないだろう。多分。
二人とも、落ち着け。とにかく二人からしっかり事情を聞いて判断する──
「百合に
「どうする?処す?処す?」
不審者二名が物騒なことを言いながら、格納領域からスパークロッドとハリセンを取り出しやがった。あかん、このままだとシバかれる。
足柄のハリセンはともかく、大淀さん。あなたの持つ得物は火力が高過ぎるのでもう少し平和なモノにして頂けませんかねぇ?
とりあえず満潮、霞。悪いが一旦離れてくれ。今ならまだ間に合うが、これ以上くっつかれていたらギルティ認定されて処されちまう──
「おーい霞ぃ!小腹が空いたからお握り作ってくれー!」
「霞ちゃーん!私も小腹空いちゃった!お願い!」
あーあ。哨戒を終えた
「あー!司令が霞とイチャついてる!」
「ズルい!私も霞ちゃんとイチャつく!」
「百合に挟まる男、死すべし。慈悲は無い」
「ハイクを詠め、カイシャクしてやる」
うん、無理。
前門はともかく、後門の二人は理性がお亡くなりかつ殺意が高いから、話し合いによる平和的解決は無理そうだ。
しゃーねぇ、奥の手を使うっきゃない。
「時雨ェ!初霜ォ!榛名ァ!助けてェ!!」
待機組の娘の中で、ヘイズ隊に対抗可能な戦闘力を持つ娘に助けを求める。
少し前まではヤらかしていたが、今は俺の負担になるような事をしない良い娘になってくれたから、召喚しても俺の胃と精神にダメージを与える事はして来ない──
「呼ばれて」
「飛び出て」
「じゃ、ジャンジャジャーン!」
早いな。助けを求めてから10秒も経たずに救助に来てくれた。
有難いけど、なんで床下から出て来た?秘密の通路を造るな。あとで妖精さんに頼んで埋めてもらわなきゃ。
それから登場した際に決め台詞的なモノを言ったけど、ネタが古くない?別にいいけど。
それから榛名、恥ずかしなら無理にやらなくていいぞ。というか、今まで恥ずかしい事を山ほどやってきたんだ、この程度で恥ずかしがるな──
瞳孔カッ広げながらハイライトの消えた目でこっち見んな。事実だろ?
……読み取ったのか、しょんぼりしてる。なんか、ゴメン。
あとで抱きしめながら頭ナデナデしてあげるから元気出しな──急に元気になった。相変わらずチョロい……ハイライトさんを消した目でこっち見んな。いいから、助けてくれ。
「提督、ここは僕達に任せて」
「ご安心下さい。必ず提督をお護りします!」
「さぁ、早く行ってください!」
「あぁ、頼んだ」
さて。まだ休憩時間は残っていたけど、ここに居たら休めないのは確定的に明らかだ。三人に任せて、執務室に戻って仕事しよう。
━━━
──第603鎮守府、執務室──
17:30
「お疲れ様。はいお茶」
「ありがとう……美味い」
仕事が片付き、座りっぱなしで凝り固まった身体を解すため伸びをしていると、本日の秘書艦・山城がお茶──レモンジンジャーティーを淹れてくれた。
あー、身体が温まる。三月になったとはいえ、
その為、室内に居て暖房を付けても寒い。早く気温上がらないかな。あと雪降らないでくれ。雪掻きが辛い。
「どういたしまして。今日も頑張ったわね」
「ありがとよ。……にしても、相変わらず電話が掛かってくる頻度がヤベェな」
約3時間の間に2桁は確実に掛かってきた。プリンツが覚醒者になる前は、一日の間に数回掛かってくれば多い方だったのに。
……あ、右肩の筋肉が強ばってきた。揉んで解そう。
「私が揉んで上げるから、じっとしていなさい」
「お、おう……」
カップを置いて左手で右肩を揉んでいると、山城は俺の背後に立って肩を揉み始めた。ありがたい──あの、山城?
指摘?しない。コイツの事だ、わざと乗っけて反応したら弄る気だろう。無視だ無視。
「どう?気持ちいい?力加減は大丈夫?」
「うん、気持ちいい。そのままで頼む」
頭に胸を乗せても無反応だったから、今度は耳元で妖艶な声で囁いてきやがった。勿論ツッコミ入れない。無視。
(俺に告白してから、こういったイタズラをするようになった。まぁ、俺が嫌がる
ただ、少し。ほんの少しだが、日に日にこういったイタズラをする頻度が増えてきている。早く一緒にお出掛けして山城の
(予定だと、プリンツとデートして。短期交換派遣の娘達を見送って。大本営に短期交換派遣組の娘達との交流内容とかを纏めて、報告書を提出したら一緒にお出掛けする筈だった)
しかし、プリンツが覚醒者になった事で忙しくなり、山城と二人きりでお出掛けする事が未だ出来ていない。
あと、初霜とも。初霜は俺の疲労困憊した様子を見て、以前のとても真面目で良い娘に戻ってくれたけど、時折寂しそうな顔をするから、山城同様早くお出掛けをしてあげよう。
(それから、摩耶。彼女が抱えているモノをどうにかしないと)
阿武隈と話をした日から今日まで。不審に思われないようさり気なく様子を見ていたが、何故か笑顔が増えた。
(阿武隈と木曾、足柄にも頼んでさり気なく様子を見てもらっているが、俺同様笑顔を浮かべる頻度が増え、思い詰めた表情やため息を吐かなくなったと報告してきた)
いったい、どうしちまったんだ?精神的に余裕が無くなりすぎて笑うようになった……それは無い。あの笑顔は無理したモノではなく、自然な笑顔だった──
<ぐわああああああ!
<ギャアアアアアア!
廊下から足柄と大淀さんの断末魔の叫びが聞こえ、間髪入れずに何かを地面に叩き付けるような音と振動が発生した。なんだ?何が起きた?
<足柄さん、大淀さん、いい加減にしてください
今度は加賀さんの呆れたような声が聞こえた。あーはいはい、分かっちゃった。
ほぼ確実に足柄と大淀さんが何か──十中八九、霞絡みの事だろうけど、やらかして。
それを加賀さんが発見して、ツームストンパイルドライバーをブチかましたんだろう。 最近、二人同時に出来るようになった、と言ってたし。
「今日も足柄達はやらかしてるわね。全く、何をしているのだか」
「だな。早く落ち着いて欲しい」
まぁ、とても仲の良かった娘達と再会出来たんだ。気持ちは分からんでもないが。
今ははしゃいでいても、少しずつ落ち着いてくれればいい。
閑話休題。
(摩耶……本当にどうしたんだよ)
何を抱えているのか知らんが、俺に相談してくれよ。例えどんな事だろうと決して笑わないし、馬鹿にしない。ちゃんと聞く。
自惚れかもしれないが、摩耶とは7年近くの付き合いがあり。その間たくさん喧嘩したけど、気の置けない仲になり、俺の事を信頼してくれていると思っている。
それなのに相談してくれない。どうしてだ?
……山城が心配そうな顔でこちらを見ている。頭を切り替えろ。
今だけは摩耶のことを考えるのをやめて、山城とのコミュニケーションをとることに集中しよう。
それから暫く、俺は山城に肩を揉まれながら雑談をした。
そして、話題が無くなってきた頃。山城が
「そういえば、昨夜。由良からちょっと気になる話を聞いたのだけど……」
「由良から気になる話?なんだ?」
心做しか、声に圧が含まれた気がする。あと、俺の肩を揉む手にさっきより若干力が込められた。どうしたんだ?
「大淀さん達が此処に来た日。執務室で挨拶をした際、
「違う、押し倒してない。あれは事故だ」
誰がどう見ても事故だった。目撃した由良もそれを分かっている。
「例え事故でも押し倒したのよね?」
「……はい、押し倒しました。もう一度言うが、事故だ。故意にやってないぞ」
確かに、例え事故でも押し倒したのは事実だから認めよう。
「そう、信じるわ」
「お、おう……」
なら、何でさっきよりも肩を揉む手が。いや、これは掴んでいると言うべきだな。掴んでいる手に力が込められているんですかねぇ?
ツッコミは……入れない方がいいな。入れたら火に油を注ぐことになりかねない。
「ちなみに、どんな風に押し倒したの?」
「なんで教える必要があるんですかねぇ……オーケー、教える。教えるから肩を握り潰そうとしないでくれ。えーと、確かアレは……──」
◻️□◻️
「──では、各自荷物を部屋に起き次第、案内役の指示に従って
良し、噛んだりどもったりせず挨拶出来た。あとは加賀さんに案内してもらって、何処に何があるのか知ってもらおう。
「「「「了解!」」」」
いい返事と敬礼だ。さっき色々と凄まじいモノを見せられたから不安だったけど、オンオフがしっかりしている──やべっ、目眩が!
突然目眩に襲われふらつく。急いで足を踏ん張って転倒を阻止しようとするも、力が入らない。
ただでさえ激務続きの日々を送り疲労が溜まっているのに、昨日凄い量の書類が届いて久々に徹夜したから、そのせいで目眩がしたのだろう。
あー、これ倒れる奴だ。異動してきた娘達に情けない姿を見せちまうな。やっちまった。
「司令官!?」
「提督さん!?」
しかし、倒れる直前。俺の一番近くに居た、本日第8492離島鎮守府から異動してきた霞と、秘書艦の由良が俺に駆け寄り倒れるのを阻止しようとしてくれた。
しかし、由良は秘書艦の机を飛び越えて助けに向かおうとしたが、間に合わない。
霞は足をもつらせたのかバランスを崩し、俺の胸に飛び込むようにぶつかって来た。
衝撃。霞の頭が鳩尾に直撃し、軽く息が止まり視界が白く染まる。
そして、気が付けば俺は霞を押し倒したような体勢をしていた。
◻️□◻️
「──というわけだ」
「そうだったのね。大丈夫だったの?」
「大丈夫じゃなかった。俺のせいで霞は背中を強打したのか、痛そうな顔をしていた」
すぐに普段通りの顔をして“平気よ!気にしなくていいわ”と言ってくれたけど、あの顔を見る限り我慢していた。本当に悪いことをしてしまった。
勿論、あとでちゃんとお礼と謝罪をした。
「いえ、霞もそうだけど、あんたは大丈夫だったの?」
「俺なら大丈夫だった」
霞が下になってクッションの役割を果たしてくれたから、無傷で済んだ。
「そう……私も押し倒されたいな。そうだ、コイツを押し倒して
小声だったが聞こえてるぞ。勿論指摘しないが。したらトラブルが発生するのは確定的に明らか。俺は何も聞いていない。聞いてないったら聞いてない。
「……そろそろ夕食の時間ね。今夜は瑞鶴が担当だから、きっと豪華ね」
「だな。何が出るんだろ……山城、離れてくれ」
話を切り上げて立とうとしたけど、山城は俺の頭に胸を乗せたまま肩を揉み続けている。
「…………」
「あのー、山城?」
声を掛けるも、山城は離れようとしない。それどころか、あすなろ抱きをしてきた。お陰で密着度が増して、俺の頭に胸が強く押し付けられる。
「ごめんなさい。もう少し……もう少しだけ、こうさせて……お願い……」
今にも泣き出しそうな声で懇願された。
恐らく、ここ最近事務的な会話しか出来ず。こうして俺に甘えることが出来ていない。その為、我慢が出来なくなったのだろう。
「ぁ…………♪」
少し強引に離れ、山城を抱きしめる。
離れた瞬間とても悲しそうな顔をしたが、抱きしめられるとすぐに嬉しそうな顔で胸に顔を埋め、甘えてきた。
本当にすまない、山城。寂しい思いをさせて。だが、必ず。近日中には必ずお前の望みを叶えさせてもらう。だから、もう少しだけ我慢してくれ。
「…………渡良瀬」
「なんだ?」
熱に浮かされたような顔をしながら、潤んだ瞳で俺を見つめてくる。
一応まだ仕事中だから、提督と呼べ。そう言いたかったがやめた。
「ん……」
目を閉じ、顔を近付けて来た。これはキスをねだっている顔だ。いいぞ、叶えさせてもらう──
「提督さん、山城、そろそろ夕飯が出来……る……お邪魔しました〜」
俺と山城の距離がゼロになる直前、瑞鶴が執務室のドアを開けて夕食が出来たと告げてきた。
そして、俺と山城を見てそそくと退室。残された俺と山城は硬直し、なんとも言えない空気に包まれた。
瑞鶴、せめてノックしてくれ。めっちゃ気まずい──
「んっ……」
「ッ!?」
「…………行きましょう?」
「あ、あぁ……」
キスを中断され、どうするか思考していると山城は俺の両頬に手を添え、強引にキスをしてきた。
そして顔と耳を真っ赤にしながら俺の手を握り、食堂に向けて歩き始めた。
「本当は舌を入れたかったけど、次の楽しみに取っておくわ。覚悟しておきなさい♪」
「アッハイ」
相変わらず顔と耳が赤いままだが、嬉しそうにはにかみながらそう告げてきた。可愛いなぁちきしょう!
……顔が熱い。俺も顔が真っ赤なんだろうな。
このまま食堂に行けば、皆にイジられる。さっさと顔色を元に戻せ。
side 提督 out
───────
────
─
side 摩耶
──第603鎮守府、執務室──
10:05
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙…゙…゙」
「オッサン臭い声出してんなぁ」
妖精さん特製のマッサージ機を肩に当てて、緩んだ顔をしながら変な声出すなよ。笑いそうになるだろ。
「オッサンじゃねぇよ、こちとらまだ20代だ」
「いま25だっけ?」
「あぁ、25だ」
「世間じゃ、オッサンに片足突っ込んでる年齢だぞ。知らんけど」
「知らんのかい。……ん゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙ゔ…゙…゙」
だからその顔と声やめろ。笑いそうになるだろうが。
────ははっ、覚悟決めたら全然苦しくならないや
あの日。提督と阿武隈があたしの話をしているのを盗み聞きし。
大本営や外国のお偉いさんからの対応が一段落したら告白すると決めてから、提督の。渡良瀬のことを考えたり、渡良瀬の顔や声を見聞きしても苦しくなくなった。
(悩んでいたのがアホらしい)
もっと早く覚悟決めときゃ良かった……だから、その顔と声をやめろって。笑って手元が震えて、書類に必要事項を書き込めなくなるだろうが。
(……あ、欠伸した)
自惚れかもしれないけど、あたしに対して気を許しているから、こうして無防備な姿を見せてくれる。そう思うと幸せな気分になる。
「……あんだよ」
「もっかいさっきのアホ面してくれ、動画に撮ってみんなに見せるからさ。ほら、あくしろよ」
「やめーや。スマホを向けるな、仕舞え。仕舞いなさい」
渡良瀬を見つめていたら気付かれた。けど、すぐに適当なことを言って誤魔化す。
(見ていて飽きない。もっと見ていたい──やべっ、顔が熱い。オマケに
この感覚はマズい。発情してる。
もし発情してる事がバレてみろ。確実にヤベー奴認定されて距離を置かれる。落ち着け、冷静になれ。
(そうだ、足柄の奇行を思い出して発情を抑えよう)
昨日は破棄予定のドラム缶を工廠から引っ張り出してきたと思ったら、そのドラムを叩きながら、
『霞ちゃんを讃えよ!!』
って叫び出して。
そしたら、それを聞いた霞が鬼の形相で全力疾走して足柄にドロップキックをぶちかまして。
その際、ドラム缶が壊れて。
それを見た春雨が“ドラム缶を粗末に扱わないでください!”とキレかけて、ドッタンバッタン大騒ぎ!になって。
(それを見た渡良瀬が、頭と胃のある辺りを手で抑えてシクシク泣いてたっけ……やっべ、疼いてきた!)
渡良瀬がシクシク泣く顔を思い出したら、下腹部が更に熱くなった。このままだと
それだけじゃない。顔がもっと熱くなって瞳が潤み始めた。こんな顔を見られたら確実に変に思われる。外に出て頭を冷やそう。
「提督、ちょっくら席外すわ!」
「ん?おう、了解」
━━━
「…………寒い」
3月に入ったというのに、気温が低く空気が冷たい。
幸い、ほとんど無風だからこうして陽の当たる所に居れば、身体が震えたり手が
閑話休題。
(絶対不審に思われただろうな。どう言い訳しよう?)
執務室を出る前のあたしは、顔と耳が真っ赤になって瞳が潤んでいた。勘違いされたらどうしよう?
今のあたしは覚悟を決めたから、渡良瀬のことを考えても苦しくならない。逆に……うん。発情する。
けど、提督はその事を知らない。あたしは未だ何かを抱え込んでいると思われている筈。どう説明する?
(正直に答える?無いな。今あたしの想いを告げたら、渡良瀬を益々追い込んでしまう)
かといって誤魔化せば、余計に心配させてしまう。マジでどうすりゃいいんだよ──
「あれ、摩耶さん?」
「──ん?
解決方法を必死に考えていると阿武隈に声を掛けられた。その顔は心做しか疲れている。
確か、今朝から足柄たちの奇行を止めるのに奔走していたんだっけ。そら疲れるわな……待てよ?
(阿武隈に相談すればいいんじゃないか?)
あの日、阿武隈は提督とあたしの事を話していた。丁度いい!
「なぁ、阿武隈。いま時間あるか?ちょっくら
本当は誰にも知られず、渡良瀬に想いを伝えてから皆に知られたかったけど、やむを得ない。阿武隈に暴露しよう。
言葉は悪いけど、阿武隈はドジで抜けている所がある。
しかし、本当に言ってはならないことは何があろうと絶対に口に出さない奴だ。
「──っ!?わ、分かりました!なんでも言ってください!」
「ん?いま、何でもするって……」
「んんっ!言ってません!!」
「ははは!冗談だって。……おふざけはこの辺にして。阿武隈、聞いてくれるか?」
「は、はい!」
「実はな──」
━━━
「あっはははは!見ろよ摩耶、俺の提督服で紙鉄砲作ったぞ!自信作なんだ!そーれ、パーン!ヒャッホウ!イイ音だ!!」
「提督服は布製だから、紙鉄砲じゃなくて布鉄砲なんじゃねぇか?……じゃなくて、落ち着け。仕事しよう?な?」
外国のお偉いさんから電話が掛かってきたから、退室。数分後、電話対応が終わったから執務室に入ると、渡良瀬が壊れていた。どうしてこうなった。
「ぼくのおしごとは、かみでっぽうをつくることです!」
「IQを低下させるな。現実に戻ってこい」
瞳をキラキラさせながら舌っ足らずに言うな。キモい……いや、何故か可愛く見える。もっと聞きたい──何考えてんだ、しっかりしろ。
「現実はクソゲーって、それ1番言われてるから!」
「それには同意するけど、そんな事しても何も解決しないぞ?しっかりサポートするから、仕事を──」
「うーん……イイ音が鳴るけど、提督服は大きいから折りづらいし鳴らしづらいな。そうだ、パンツで紙鉄砲を作ろう!大きさは手頃だし、強度も申し分ないからきっと最高の紙鉄砲が出来る!」
「よーし一旦落ち着け、仕事はしなくていい。あたしがやっておく。だから外に出て頭を冷やしてこい……脱ごうとするな!!」
「流行らせ!流行らせコラ!俺はパンツで紙鉄砲を作るんだッ!!」
「千歳さんを呼ぶぞ?」
「…………すまん、どうかしていた」
千歳さんの名前を出した途端、正気に戻ってくれた。よっぽど怖いんだな。気持ちは分からんでもないけど。
……ちゃんと提督服を着て、仕事を再開してくれた。大丈夫そうだな。あたしも椅子に座って仕事しよう。
閑話休題。
(阿武隈、上手く説明してくれるかな……)
今から数時間前。偶然会った阿武隈に
暴露した内容は以下の通り。
・先日、渡良瀬と阿武隈があたしの事を話していたのを盗み聞きした事
・あたしは渡良瀬に異性として好意を寄せ、色々拗らせていた事
・渡良瀬に負担を掛けたくないから、想いを告げるのは仕事が落ち着いた頃にする事
・阿武隈から渡良瀬に、あたしは大丈夫だと上手く伝えてほしい
・伝える際は、あたしの想いを。好意を寄せている事を秘密にしておいてくれ
・好意を寄せている事をバラしたら、あたしは海上で自爆する
……とまぁ、こんな事を暴露した。
最後のは冗談で言ったけど、阿武隈は真に受けたのか凄い顔をしてた。
ちなみに、阿武隈があたしに心無いことを言って傷付けてしまった云々に関しては、全く気にしていないと告げてしっかり誤解を解いておいた。
これで、渡良瀬はあたしの事でアレコレ頭を悩ませなくて済む。……済むよな?
もし、万が一。阿武隈の説明を受けて、渡良瀬があたしの想いに気付いたらどうする?その時はその時だ、思い切って告げる。
まぁ、鈍い渡良瀬の事だ。気付かないだろう。
(…………仕事しよう)
今は思考している時じゃない。さっさと終わらせないと、渡良瀬の負担が増える。集中しよう。
(…………渡良瀬から柔軟剤の香りと汗の匂いが微かにする)
しかし、気持ちを切り替えた直後。あたしの鼻腔が柔軟剤の香りと、渡良瀬の汗の匂いを捉えた。さっきドタバタしたから、汗をかいたんだろう。
それはそれとして。柔軟剤の香りはともかく、普通、汗の匂いを嗅げば不快な気分になる。
でも、あたしは違った。何故か分からないけど、こう……満たされる。いいや、正直に言う。興奮する。
(もっと嗅ぎたい)
渡良瀬に抱きつき、顔を胸に埋めて嗅ぎたい……何考えてんだ?変態かよ。
「どうした?俺の承認印が必要なのか──顔が赤いぞ、大丈夫か?」
「大丈夫だ、少しボーッとしてた」
いけね、渡良瀬に不審に思われた。
「そうか。暖房の温度はどうだ?暑くないか?」
「調度良いからこのままでいいぞ」
「そっか。暑かったら遠慮なく言えよ」
「おーう」
勘違いしてくれたお陰で、事なきを得た。けど、これ以上ボーッとしたら確実に心配される。気を付けよう。
(……あー、ダメだ。意識したら、渡良瀬の汗の匂いが気になって仕方ない)
仕事に集中するよう自分に言い聞かせても、あたしの鼻は渡良瀬の汗の匂いを捉えることに夢中になってしまった。
────もっと嗅ぎたい
熱に浮かされたような感覚。
約2m弱離れた所からコレだと、密着した状態で嗅いだらどうなるんだ?
────もっと嗅ぎたい
胸元で嗅いだら、どうなるんだ?
汗の匂いが強く出る脇なんて嗅いだら、どうなるんだ?
────もっと嗅ぎたい
渡良瀬の
知識では知っているけど、実物を見たり嗅いだことは無い。どんな形をしていて、どんな匂いがするんだ?
────もっと嗅ぎたい!
そもそも、渡良瀬の
瑞鶴達に聞いてみるか?
………………。
………………。
………………ヤバい、
このままだと、
そうなれば、匂いが溢れて渡良瀬に気付かれる。
渡良瀬はその匂いを知っている。
………………良し。退室しよう。
けど、あたしは今日何度も退室している。
そのせいで仕事は少し滞っている。
これ以上渡良瀬に迷惑を掛けたくない。
ただでさえ、あたしが色々拗らせていたせいで迷惑を掛けているのに、これ以上渡良瀬の負担になるような事はしたくない。
けど、
「…………なぁ、摩耶」
「な、なんだ?」
退室するか否か悩んでいると、声を掛けられてしまった。
ヤバい。
「その…………非常に言い辛いんだが…………あー……」
「な、なんだよ」
「………………これから、非常にデリカシーの無い事を言うが……その……」
物凄く気まずそうな顔をしている。も、もしかして、バレた?
「………………俺の勘違いだったら、罵るなり殴るなり好きにしていい」
あ…………バレた。あたしには分かる。確実にバレた。終わった。
「………………
良し、死のう。今すぐ死のう。海上でありったけの弾薬と魚雷を起爆して、海に還ろう。
「ま、摩耶?無言で立ち上がってどうした……あ、殴るんですね分かりました。けど、返り血とか付いたりしたらマズいから書類をキャビネットに……いっぱいだな。仮眠室に置くから、それまで待ってくれ。すぐに終わらせるからほんの少しだけ猶予をくれ──」
「渡良瀬」
せめて、死ぬ前にあたしの想いを。好きだったと告げてから死のう。
「はい、なんでございましょうか」
「あたし、お前のことが。渡良瀬のことが好きだ。愛していると言ってもいい」
「──えっ?」
「ビジネスライクじゃなく、一人の異性として好きだ」
言えた。これでもう心残りは無い。
「は??え???」
呆けた顔をしている。まぁ、そうなるな。今まで悪友だと思っていた奴に告白されたんだから。
…………さて。これでもう心残りは無い。
本当は二人で
「うおおぉぉぉぉおおおおあああああああああああああああああああああッッッ!!!」
「ちょ、摩耶!?」
執務室の窓を開け、工廠へ全力疾走。
工廠に着いたら、あたしの艤装を装着。
ありったけの弾薬と魚雷を抱えて海上へ行き、沖に向かう。
第603鎮守府を巻き込まない距離まで離れたら、起爆。
プランは完璧。ははっ、身体が軽い。
あはは。あはははは。あっははははは!
side 摩耶 out
───────
────
─
次回予告
ま、摩耶さん、元気出してください!
それはそれとして、驚きました。まさか摩耶さんが提督のことを好きだったなんて──揶揄ってごめんなさい!謝罪するから死のうとしないでください!?
……そ、そうだ!摩耶さんってどんな私服を持っていますか?アタシ、気になります。いいから、教えてください!
……殆ど持っていない?なら、アタシがチョイスしてあげます!任せてください!
第194話・対空番長、乙女心と童貞を殺す服を添えて
「
乙女なヤンキーも居るに決まってんダルルォ!!」
【補足的なナニか】
・霞…元第8492離島鎮守府所属の艦娘。第603鎮守府が人数不足だと知った小嶋提督と榊原大将が、裏で上手くやって件の鎮守府に異動させた。第二次特殊改装済。
艦娘になり初めて所属した鎮守府がブラックだった為、一時期荒んでいたが、第8492離島鎮守府に引き取られ、そこで過ごしていくうちに多少穏やかになった。
第603鎮守府を運営する渡良瀬準少佐に対しては、姉の満潮や小嶋提督から色々聞いており、異動する前から信頼に値する人物だと認定している。
満潮が元気に過ごせているのは主人公のお陰だと知っている為、当たりが優しく殆どクズと言わない。
朝霜と清霜、大淀、足柄とは同期で、初めて所属した鎮守府(ブラック)で出会ったらしい。
・朝霜…霞と同じ理由で第603鎮守府に異動した。性格はほぼ原作通り。第二次特殊改装済。
彼女については、徐々に掘り下げる予定。
最初は主人公に警戒心を抱いていたが、霞が主人公に対して優しい言動を取り、足柄がタメ口で絡んでいる姿を見たことで少しだけ信用し、警戒を解いた。現在様子見中。
・清霜…霞と同じ理由(ry
性格はほぼ原作通り。第一次特殊改装済。
朝霜同様、徐々に掘り下げる予定。
最初は主人公に対して警戒心を抱いていたが、霞や足柄の様子を見て警戒を解いた。
自分が戦艦になりたいと語っても全く馬鹿にしてこなかった為、懐いている。
最近、野原主任が開発した主任砲などを装着して戦艦ごっこをしているらしい。
・大淀…霞と同じ理由で大本営・事務課から異動してきた。
性格はほぼ原作通り。第一次特殊改装済。
こちらも徐々に掘り下げる予定。
主人公に対しては、霞とその姉である満潮、悪友の足柄からも慕われているのを見て、信頼に値する人物だと認定した模様。ヘイズ隊に入隊させようと考えているらしい。
・ヘイズ隊…霞ちゃん親衛隊。隊員は朝霜と清霜、大淀、足柄の4人。
この4人が集まると、「ボボボーボ・ボーボボ」と同等の頭がおかしくなるような言動を取って様々な事をやらかす。ツッコミ?入れた所で無駄だから諦めろ。
今後の活躍にご期待ください(なお、活躍したら主人公の胃袋と精神が破壊される)。
・満潮…妹がやって来て、内心大喜び。しかしツンデレだから表にはあまり出さない。
なお、妹に甘えられる度に嬉しそうな顔をしているが、その事には気付いていない模様。周りも敢えて指摘しない。
最近の悩みは、妹のスキンシップが日に日に激しくなっている事。
・小嶋提督…第8492離島鎮守府を運営する、声が子安武人さんに激似の提督。階級は准将。ロリコンらしく、駆逐艦娘を見ると暴走する。
なお、その度に嫁さん達や
・摩耶…恥ずかしさのあまり、IQが極端に低下して奇行に走った。
なお、主人公から連絡を受けた千歳と阿武隈によって工廠で取り押さえられた為、自爆に失敗した模様。
以上、補足終了
※例え最下位だろうと、笑顔で観客に手を振り「次こそは勝つぞ!」と気持ちを切り替えられる、ポジティブで健気なハルウララに父性本能を刺激されたのでハルウララのパパになります