追跡鶴   作:EMS-10

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 どけ、俺はモルモットだぞ!
 ア○ネスタ○オンのモルモットになったので初投稿です(挨拶)
 

※警告※
・勢いしかない
・鎮守府は今日も平和です
・頭を空っぽにしてご覧下さい



※小説内の季節は3月上旬頃となっています



第194話・対空番長、乙女心と童貞を殺す服を添えて

side 提督

 

 

──第603鎮守府、執務室──

10:20

 

 

(──よし、キリの良い所まで終わった。一旦小休止しよう)

 ほぼ2時間近くノンストップで書類を捌き続けたり、何度も電話対応したからか集中力が切れかけている。

 このまま続けたら、誤字脱字まみれの書類を量産してしまう。そうと決まれば休もう。

 

……若干だけど、右手首と右親指の付け根付近に違和感がある。マッサージしておこう。

 医療妖精さん特製の、手の負担を軽減するサポーターを付けていなかったら、確実に腱鞘炎になってるだろうな。

 

「お疲れ様です。お茶をどうぞ」

 

「ん、ありがとう。榛名も休みな」

 右手をマッサージしていると、秘書艦の榛名がお茶を執務机に置いてくれた。

 

「どういたしまして。お言葉に甘えて休憩しますね」

 

 礼を言ってお茶を飲んでいると、榛名は嬉しそうにニコニコと笑みを浮かべた。可愛いな。

 しかし、榛名の笑顔を見ると少しだけ恐怖を覚えてしまう。

 最近は良い娘になってくれたが、今まで色々とヤらかしていたせいで笑顔を見ると、襲われるんじゃないか?と考えてしまい、反射的に身体が強ばる。

 

「もうヤらかしたりしませんよ!」

 

「以前もそう言って、すぐにヤらかしてたじゃん」

 俺が想いを受け止めると決意して暫くはまともだったけど、すぐにヤらかすようになったじゃん。

 

「榛名はッ!提督をッ!襲いませんッ!」

 

「言質取ったぞ」

 これで襲ってきたら、暫く無視するからな。

 

「……ところで提督、一つお聞きしたいことがあります」

 

「何だ?」

 落ち着きを取り戻すと、榛名はそう言ってきた。何となくだが予想はつく。多分、摩耶の事だろうな。昨夜、めっちゃ聞きたそうな顔をしてたし。

 けど、流石にあの場で聞くと余計にカオスな事になるから自重して、二人きりの今がチャンスと思い聞いてきたのだろう。

 

「いつ頃摩耶さんの処○膜をブチ破るのですか?」

 

「言い方」

 もっとオブラートに包んで発言してください。

 

「失礼しました。では、いつ頃摩耶さんとお出掛けするのでしょうか?」

 

「お、珍しいな。ちゃんとオブラートに包んで発言出来るなんて──瞳のハイライトを消して凝視すんな。

……初霜と山城とお出掛けした後になるから、1ヶ月後くらいになると思う」

 本当は今すぐにでも有給を取ってお出掛けしたいが、大本営に相談したら2週間は頑張るよう言われた。んで、2週間経ったら週1で取って良いらしい。

 

「どうして大本営は2週間は頑張るよう言ってきたのでしょう?」

 

「さあな。多分だけど、外国のお偉いさん達に書類を送ったり、電話しないよう説得するのに2週間かかるんじゃないの?」

 

「成程。……それにしても、まさか摩耶さんが提督に好意を抱いていたなんて。今までそういった言動や思考を全くされていなかったので驚きました」

 

「本当にな。なんで好きになってくれたんだろ?」

 

「心当たりは無いのですか?」

 

「何度も思い返したが、無い」

 何が切っ掛けで好意を抱いてくれたんだ?俺、特に何もしていないのに。摩耶とお出掛けした際、様子を見て聞いてみるか。

 

 

 

 

 

 摩耶に告白されるという衝撃的な出来事から1夜明けた。

 告白した直後、摩耶は奇行に走った(自爆未遂をした)らしいが、阿武隈と千歳さんが取り押さえてくれたお陰で事なきを得た。

 

 その後、摩耶は俺にアレな事になっているのを知られたせいで、俺にヤベェ奴または変態扱いされないか不安になり、部屋に閉じこもってしまった。

 確かに驚きはしたけど、あの程度でヤベェ奴または変態扱いなんてしないって。寧ろ、指摘してごめんなさい。あれは知らないフリをするべきだった。何であの時の俺は指摘したんだろう。

 

 閑話休題。

 

 しかし、俺が誠心誠意、ドア越しだったが説得したお陰で部屋から出てくれた。

 そして、二人で執務室に向かい、仕事を再開した。

 

 最初は気持ちの整理が着くまで休んでいいぞと言ったが、摩耶は“秘書艦の仕事をほっぽり出して休んで負担を掛けたくない”と言い、最後まで秘書艦の役割を全うしてくれた。

 

 仕事を再開して暫くは気まずい空気が流れたが、摩耶から改めて告白され、あんな事(自爆未遂)をしたことを謝罪された。

 何故、改めて気持ちを伝えてきたのか。本人曰く、“あの時の告白は勢いでしたから、ちゃんと伝えたかった”らしい。勿論、俺はその想いを受け止めた。

 

……改めて告白してきた時の摩耶、めっちゃ可愛かったなぁ。

 耳まで真っ赤にして、涙目になりながら上目遣いしてくるんだもん。そんでもって、想いを受け止めたら、エヘヘって笑ってくれた。

 かれこれ7年近くの付き合いがあるが、あんな摩耶は見たこと無かったせいで、ギャップが凄まじくて鼻血出そうになったよ。

 

 閑話休題。

 

 それから、お出掛けしたいと言われ、仕事をしながらどこに行くか話し合った。

 

……ここまでは良かった。問題はこの後だ。

 

 仕事を終えて食堂に向かい、食事を摂っていると、千歳さんが徐に摩耶が告白したことを暴露しやがった。

 お陰で、食堂は一瞬で大賑わいになった。

 

 やれ、“あの摩耶が告白したのか!?”だの。

 やれ、“どんな風に告白したんだ!?”だの。

 やれ、“何が切っ掛けで好きになったの!?”だの。

 やれ、“いつお出掛けするんだ!?”だの。

 他にもあるが、多過ぎるので割愛。

 

 そうそう。補足になるが、当時、鎮守府に待機していた娘達以外──出撃や哨戒・漁に出ていた娘達は、摩耶が俺に告白したことを知らない。

 一応、知らない娘達には摩耶が落ち着いた頃に説明しようと考えていた。

 

 閑話休題。

 

 あの、千歳さん。何でこのタイミングで暴露したんですか?

 問いかけると、イタズラっぽい笑みを浮かべながら“こういうのはさっさと済ますに限る(意訳)”と言いやがった。

 いやまぁ、そうかもしれませんが、摩耶の気持ちを考えましょうよ。摩耶は普段通りに振舞っているけど、完全に立ち直ったわけじゃないんだから。

 現に、摩耶は顔を真っ赤にして俯き、震えていた。幸い、キレることは無かったが。

 

 閑話休題。

 

 それから暫く質問攻めに遭ったが、俺と摩耶はのらりくらりとかわし続けた。

 俺達の様子から、これ以上アレコレ質問しない方がいいなと皆が思い始めた頃、木曾が摩耶にこんな質問をした。

 

 

━━そういや摩耶、お前、アレ以外の私服はあるのか?

 

 

 この一言が原因で、とあるトラブルが起こるわけだが……これについては何れ語ろうと思う。

……いま話せ?思い出すと胃が痛くなるから簡潔に述べると、摩耶が阿武隈達に着せ替え人形にされた。

 

 摩耶って、所謂ライダー系の……あ、仮面ラ○ダーじゃないぞ?バイク乗りの人達が着るような服しか持っていない。

 それだからか、木曾は心配になって質問したらしい。

 

 

 ■□■ 

 

 

「いや、無いぞ?」

「はぁ!?お前、もしかしてアレで相棒(提督)とデートする気か?」

「そ、そうだけど……何か問題でもあるのか?」

「あるに決まってんだろッ!」

 

 木曾の奴、急にキレだしたぞ。どうしたんだ?

 

「……阿武隈、鈴谷、ちょっと耳を貸してくれ」

「えっ、あ、はい」

「なになに〜?」

 

 木曾が両隣りに座っている阿武隈と鈴谷に耳打ちを始めたぞ。何をしているんだ?木曾のことだから、変なことは言ってないと思うが──

 

「摩耶さん、このあとアタシの部屋に行きますよ!」

「言っとくけど、拒否権は無いからね?」

「は?いや、ちょっと待て。何でだ?」

「決まってんだろ、お前に似合う服を選ぶんだよ」

 

 あーはいはい、そういう事ね。

 恐らく木曾は阿武隈と鈴谷に、摩耶の所持している私服はライダー系のモノしか無いと告げ。

 それを聞いたオシャレ好きな二人は、それでデートするのはどうなんだ?と思い、摩耶の私服を選ぶことを決めた、って感じか。

 

 

 ■□■

 

 

 それで、食後。困惑する摩耶をよそに、阿武隈と鈴谷が両腕を掴み、木曾は後ろから監視して逃げられないようにしながら部屋に連行し。

 カタログで摩耶に似合う服を選択し、妖精さんに余っている生地を渡してサンプルを作ってもらい、着せ替え人形にされたらしい。

 

 摩耶曰く、最初は普通の服を着させられていたが、木曾と阿武隈と鈴谷が段々ヒートアップしていき、メイド服だのナース服だのを着させられそうになり、身の危険を感じたそうだ。

 何でメイド服とかナース服を着させようとしたんだ?コスプレじゃん。それらはビッ○サイト等といったコスプレOKな場所ならともかく、そうじゃない場所で着て出歩いたら問題になるぞ。

 

 閑話休題。

 

 とまぁ、そんな事があり、身の危険を感じた摩耶は俺の部屋に逃げ込んで来た。

 それから程なくして三人がやって来て、摩耶を渡すよう要求してきたが断固拒否した。何気に初めてだよ、あの三人が荒ぶるの。訂正、阿武隈は時々荒ぶるな。

 

 話を戻す。まぁ、この三人は聞き分けが良い娘だからすぐに諦めてくれたけど──電話が鳴った。はい、回想終わり。ついでに休憩も終わり。頭を仕事モードに切り替えろ。

 

「退室しますね」

 

「あぁ、頼む」

 電話が鳴ると、榛名はそう言って執務室から退室した。

……さて、電話対応しよう。誰からだろう?えーと、このナンバーディスプレイは……大本営から?

 

(おーおー、今度はどんなトラブルのお報せが来るんだ?)

 俺の中では、大本営からの封筒or電話=トラブルという図式が確立している。出る前に覚悟しておこう。じゃないとメンタルブレイクして幼児退行しかねない。

……良し、覚悟完了。出よう。

 

 

 

━━━

 

 

 

──第603鎮守府、提督私室──

20:30

 

 

 

『中佐に昇進、おめでとう!』

 

「ありがとよ、浦樹」

 突然電話してきたかと思えば、自慢するような内容──午前中に大本営から電話で昇進を告げられた事と、明日階級章が届く事──を話されたというのに、浦樹はまるで自分の事のように喜んでくれている。イイ奴だな、本当に。こいつと親友になれて良かった。

 

『それにしても、やっとかぁ。長かったね』

 

「全くだ。これで大本営に行って同期と遭遇した際、階級の事でとやかく言われなくて済む」

 俺が知る限り、同期の殆どは階級が中佐以上になっている。それだからか、同期と遭遇すると階級の事でイジられた。

 昔はイジられる度にムカついていたっけ。今は特に何とも思わなくなったが。

 

 閑話休題。

 

「そういや、調子はどうだ?そっちは昼と夜の寒暖差が激しいだろ。風邪ひいたりしていないか?」

 あと、艦娘達──主に瑞鳳さんにナニかされてメンタルブレイクしていないか心配……これは聞かない方がいいな。下手に聞くと、トラウマを刺激しかねない。

 

『こっちは大丈夫だよ。準の方はどうなんだい?そっちはまだ雪が降るんだろ?寒さで体調を崩したり、雪掻きで腰とかを痛めたりしていないかい?』

 

「こっちも大丈夫だ。雪掻きは慣れているから痛めたりしていない。ああそうだ、ちょっくらこっちに来て一緒に雪掻きしないか?最近雪が降る頻度が増えてて、大変なんだ。いい筋トレになるぞ?今なら手伝ってくれると三食にオヤツ、昼寝。それから、ガンプラの報酬を付けるぞ」

 

『あー…………うん。大変魅力的なお誘いだけど、ほぼ毎日フルマラソン並の距離をパルクールしているから遠慮するよ……』

 

「…………あいよ」

 笑いながら軽く冗談を言うと、断られてしまった。

 それはそれとして、ツッコミどころ満載なことを言いやがったぞ。けど、浦樹の今にも死にそうな声で察した。触れない方がいい。

 恐らくだが、フルマラソン云々とは瑞鳳さん達に追っ掛け回される事を指すのだと思う。相変わらず苦労してんなぁ。

 というか、42.195kmをパルクールするって……お前、どんだけ体力あるんだよ。すげぇスタミナだな、おい。俺がやったら数kmでバテるぞ。

 

『と、ところで、準はお爺さんに昇進したことを伝えたのかい?』

 

「あぁ。さっき、浦樹に電話する前に伝えた」

 気まずい空気が流れて十数秒後。話題を変える為か、浦樹は質問してきた。

 

『どうだった?喜んでくれた?』

 

「勿論、喜んでくれた」

 伝えた際、しばらく無言になって。その後、一言だけ“そうか……無理はするなよ”と告げると電話を切られた。

 これだけ聞くと無愛想だな、とか。おめでとうの一言も無いのか?と思うかもしれない。

 だが、俺には分かる。爺ちゃんは喜んでくれている。あの声、間違いなく喜んでいた。

 爺ちゃんって、あまり俺の前で喜ぶところを見せたがらないから電話ではああ言ったけど、今ごろ近くの居酒屋に行って大はしゃぎしてるだろうな──

 

『…………ごめん、準。瑞鳳達が騒ぎ始めたから失礼するよ』

 

「お、おう。なんつーか……お疲れ様です」

 爺ちゃんが居酒屋ではしゃいでいる姿を想像していると、浦樹の方が何やら騒がしくなった。

 

『ありがとう……また飲みに行こう』

 

「あぁ、行こう。それじゃ、また」

 浦樹、強く生きろ。何時でも相談しな。どんな些細なことでも喜んで聞くから。

 

……さて。昇進した事を伝えたい人達に伝えたし、この後どうすっかな?就寝時間まで余裕がある。戦術関連の勉強でもするか。

 

 

━━━━━

 

 

『くたばれ、ストーカー』

 

 

 商店街の道の真ん中で、灰色の瞳をした腰まで届く茶髪の少女が、気怠そうな顔をしながら低い声で呟いた。

 

 偶然近くを通りかかった人が少女の発言を聞き、犯罪者を見るような目でこちらを睨み付けてくる。

 

 

───これは……ここは、俺の地元?

 

 

『こいつ、ストーカーです』

 

 

 困惑していると、少女はこちらを指さしながら近くに居た人にそう告げた。

 

 それを聞いた人達は、こちらを取り囲む。

 

 通報を受けたのか、程なくしてお巡りさんが駆け足で向かってきた。

 

 

───これって確か、俺が高校2年の時の出来事か。懐かしいなぁ

 

 

『なんだ、ストーカーじゃ無かったんだ。誤解させるようなことしないでよ』

 

 

 お巡りさんに事情を説明すると、時間は掛かったが誤解を解くことが出来た。

 

 すると、話を聞いていた少女は気怠そうな顔をしながらそう告げる。

 

 

───この時の俺、生まれて初めて職質受けてテンパってたっけ

 

 

『ほら、湯葉まんじゅう。こないだのお詫び』

 

 

 場面が変わる。

 

 ここは……商店街からほど近い駅だ。

 

 先日、こちらをストーカー呼ばわりした少女が、湯葉まんじゅうを差し出している。

 

 

『話には聞いていたけど、Japanの人達って親切な人が多いんだね』

 

 

 湯葉まんじゅうを食べながら、少女と他愛ない会話をする。

 

 どうやら少女は親の仕事の都合で()()()()から来ているらしい。

 

 

───少女の日本語が堪能なお陰で、会話に困らずに済んだっけ

 

 

『この町の雰囲気、気に入ってる。とっても良いところだね』

 

『なんでだろう。あんたと話していると落ち着く』

 

『そういえば、自己紹介まだだったね。あたしは──』 

 

 

━━━━

 

 

「…………ん?」

 ふと目が覚める。俺、何をしていたんだっけ?

……そうだ、勉強していたんだ。どうやら寝落ちしてしまったようだ。今何時だ?

 

「おいおい、もうこんな時間かよ」

 時計を見ると、05:30を過ぎていた。確か、勉強を始めたのが昨日の21:00頃だった。

 そんで、23:00頃に眠気を感じたが、もう少し勉強したら寝ようと考えて……そこから先の記憶が無い。

 

(身体が。主に腰が痛い。あと腕が痺れてる……)

 軽く背伸びをすると、関節から凄い音が鳴った。そらそうだ、布団に横にならず長時間変な体勢で居たのだから。

 それはそれとして、さっさと起きて身支度を整えよう。

 

(うわぁ、デコ()に痕が残ってらァ)

 鏡を見ると、デコが見事に真っ赤になって一部が凹んでいる。この凹み、ボールペンが当たって出来たのか?

 これ、朝食までに元に戻るかな?戻らなかったら皆に笑われるぞ?

 まぁ、笑われるのはいいとして、布団で寝なかったことを叱られるかもしれん。叱られたら、素直に謝って反省しよう。

 もし謝りも反省もしなかったら、”寝落ちを防ぐ為、監視します!“とか言って、毎晩俺の部屋に来て一緒に寝る娘が現れる可能性がある。

……やめろ、考えるな。フラグが立つぞ。

 

 閑話休題。

 

(なんだか、懐かしい夢を見た気がする)

 身支度を整えながら、ふと寝落ちした際に見た夢のことを考える。

 残念ながら見た内容を覚えていないが、何故か懐かしさを感じた。どんな夢を見たんだ?

……ダメだ、思い出せん。まぁ、夢って見た内容を覚えてる事の方が珍しいと言われてるんだ。気になるけど、無理に思い出さなくていいか。

 

(…………まだ時間に余裕があるな。どうしよう?)

 時間までニュースとかを見て部屋で過ごすか。

 

 

side 提督 out

 

 

───────

────

 

 

side 海風

 

 

 

──第603鎮守府、埠頭──

09:30

 

 

 

『どうした春日丸、これで終わりか?アァ?』

『ま、まだこれからです!』

『そうこなくっちゃなァ!ほら、ガンガン来い!』

『はい!春日丸航空隊、発艦はじめッ!』

 

 

「…………」

 摩耶さんの対空砲火によって、春日丸さんの操る艦載機は目標地点に到達する前に全て墜とされた。

 これだけボコボコにされているのに、春日丸さんは決して心折れずに戦う意思を見せている。

 少し前までは艦載機を撃墜される度に涙を流し、戦意喪失していたのに、今は逆に闘志を剥き出しにして戦うようになった。確実にメンタルが強くなっている。

 

 閑話休題。

 

(摩耶さん……まさか、提督に。渡良瀬さんに好意を寄せていたなんて。予想外です)

 一昨日。哨戒を終えて帰還すると摩耶さんが渡良瀬さんに告白したことを知り、ショックを受けた。

 聞いた話だと、何かヤらかしたらしく塞ぎ込んだけど、ある程度立ち直ったのか現在は普段通りに振舞っている。

 

(今まで様子を見ていたけど、そのような素振りは一切見せていなかった)

 いつから。そして、何が切っ掛けで渡良瀬さんに好意を寄せるようになったのかしら?

 

 少しだけ気になったけど、知る必要は無い。

 

 知ったところで、私に利益は無い。

 

 

────渡良瀬さんの()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 初霜さんに告白され。

 

 プリンツさんが覚醒者になり、その結果仕事が増え。

 

 そこに摩耶さんから告白された事で、表向きは普段通りに振舞ってはいるけど渡良瀬さんのメンタルはいっぱいいっぱいになっている。

 

 今なら、弱っている渡良瀬さんを()()()()堕とせる可能性が高い。

 

 試しに、報告書を提出する際に()()()()()()()()()()()()()

 

 本日の秘書艦は矢矧さんだから、読み取られる心配は無い──

 

 

「海風さん、そろそろ休憩時間が終わりますよ?」

 

「あ、はい。今行きます!」

 大淀さんに声を掛けられてしまった。どうやら思っていたよりも長く思考していたみたい。

 現在、私の周囲に読み取れる人は居ないとはいえ、油断し過ぎね。気を付けないと。

 

 

━━

 

 

「…………」

 新人の方達との演習を終え、後片付けをし。報告書を纏めて執務室の扉の前に来た。

 周囲に人は居ない。読み取れる人達やヤベェ人達は、今も出撃や哨戒、漁に出ているから不在。私の障害になるモノは何も無い。

 

……落ち着きなさい。普段通りにすれば、決して不審に思われない。

 軽く深呼吸をして、扉をノックする。

 

『誰だ?』

 

「海風です。報告書の提出に参りました」

 

『入れ』

 

「失礼します」

 ゆっくりと扉を開けて入室すると、疲れた表情で私を見る渡良瀬さんと、真剣な顔で書類を捌く矢矧さんが視界に入ってきた。

 

……大丈夫、大丈夫よ。普段通りに振舞えば、絶対に不審に思われない。

 

「こちら、報告書になります」

 声は震えたり、上擦ったりしていない。

 

「ありがとう」

 

 報告書を差し出すと、渡良瀬さんは軽く微笑みながら受け取ってくれた。

 嗚呼、もっとこの微笑む顔を見たい。でも、それは出来ない。いま渡良瀬さんは仕事中なのだから、すぐに退室しないと不審に思われてしまう。

 その前に……。

 

「どういたしまして。……あの提督」

 さぁ、()()()()わよ。

 

「なんだ?」

 

「お顔色があまり優れませんが、大丈夫でしょうか?」

 とても心配しているような表情と声を作る。

 

「…………」

 

 黙り込んでしまった。不審に思われたのかしら?声は震えたりしていないのに。どうして?

 

「…………ううっ」

 

「ど、どうされました?」

 突然涙を流し始めた。これは……もしかしたら、上手くいったのかもしれない。

 内心ほくそ笑むも、私は驚く表情を作る。

 

「癒しの権化は、海風だった……」

「何アホなこと言っているのよ。ほら、仕事しなさい」

 

 渡良瀬さんは泣きながら私を癒しの権化だと言うと、すかさず矢矧さんがツッコミを入れた。

 成功だ。上手くいった。これで暫く執務室に留まる事が出来る。

 

「やだよ、せめてあと5分だけでいいから海風と会話させてくれ」

「ダメよ、仕事しなさい。さっきから何度も休憩しているから、予定より滞っているのよ?それに、海風は新人の娘達と演習をして疲れているのだから休ませてあげなさい」

 

「え、えっと……」

 困惑したような表情と声を作り、二人の様子をこっそり伺う。

 大丈夫だ、不審に思われていない。

 

「仕事が滞っている原因は矢矧、オメーがさっきから何度も何度も摩耶の事を色々聞いてくるからだろ!」

「そうだったかしら?」

「このやろう、とぼけやがって……」

 

 二人のやり取りを聞くに、矢矧さんは渡良瀬さんに摩耶さんが告白してきた時の事をアレコレ聞いていたようね。

 どうして矢矧さんは渡良瀬さんのメンタルにダメージを与えるような事をするのかしら?それだからヤベェ奴扱いされるんですよ?

 まぁ、私にとって都合が良いから改善しなくていいですけど。

 

「ほら、仕事する!」

「ぬわあああああん!癒しが欲しいいいいいい!」

「私が癒してあげるから、頑張りなさい」

「癒しの“い”の字が欠けらも無い存在であるお前から、どうやって癒しを感じろと?あるのはいやらしさだけだろ」

「OK、喧嘩なら喜んで買うわ」

「おいばかやめろ関節はそっちには曲がらなギャアアアアア!」

 

 渡良瀬さんの言葉にキレた矢矧さんが腕に関節技をかけ始めた。

 予想外の展開に思わず硬直してしまったが、すぐに我に返る。これはチャンスだ。

 

「矢矧さん、落ち着いてください」

 関節技をかけている矢矧さんを渡良瀬さんから引き剥がし、庇うように渡良瀬さんを抱きしめる。その際、彼の顔が私の胸に当たるようにするのを忘れない。

 

「……ごめんなさい、少しムキになり過ぎたわ」

 

「いえ、お気になさらないでください」

 私が渡良瀬さんを庇うと、矢矧さんは冷静になってくれた。

……私の胸に渡良瀬さんの吐息が当たっている。擽ったい。けれど、不快ではない。寧ろ嬉しい。

 

「ところで海風。あなた、提督のこと抱きしめているけど……」

 

「え?……あ」

 渡良瀬さんの呼吸が胸に当たる感触を堪能していると、矢矧さんが指摘してきた。

 勿論、不審に思われないようわざと指摘されるまで気付いていないフリをして、抱きしめ続けた。

 もっと堪能したいけど、これ以上続けたら不審に思われてしまう。

 

「す、すみません提督!その……あの……」

 胸から渡良瀬さんを解放し、慌てるフリをする。あとは赤面させれば完璧。

 幸い、抱きしめたことで私は興奮し、顔が暑くなっているから真っ赤になっているでしょう。

 

「…………」

「提督?」

 

 私の胸から開放された渡良瀬さんを見ると、満ち足りたような顔をしていた。

 その顔を見た矢矧さんは、少しだけ表情を険しいモノにしながら渡良瀬さんに声を掛けた。

 

「…………」

 

 あの、渡良瀬さん?無言で窓を開けてどうしました……あ、海に向かって疾走してしまった。

 

「ちょ、提督?!何処に行くの!戻りなさい!!」

 

 すかさず矢矧さんは渡良瀬さんの後を追い始めた。

 もしかして、失敗した?

 

 

━━━

 

 

「大変申し訳ございませんでした」

 

「あ、頭をあげてください!私は気にしていませんから!」

 数分後。矢矧さんは渡良瀬さんを捕まえて執務室に戻ってきた。

 そして、戻ると同時に渡良瀬さんは私に土下座をして私の胸に顔を埋めたことを謝罪してきた。どうやら私の胸に顔を埋めた事で罪悪感を覚え、海上を疾走して失踪しようとしたらしい。

 良かった。渡良瀬さんの様子を見る限り、不快に思われたり不審に思われてはいないみたい。

 

「海風、遠慮せずにハッキリ言って良いのよ?」

 

「ハッキリ言う……とは?」

 矢矧さん、空きスロットからマシンガンのような物を取り出して渡良瀬さんに向けないでください。

 

「私の胸に顔を埋められて物凄く不快だった、とか」

 

「いえ、そのような事は……」

 寧ろ最高でした。もちろん言葉や態度には出しませんが。

 

 

━━━

 

 

「失礼しました……良し!」

 執務室の扉を閉め、周囲に誰も居ないのを確認して軽くガッツポーズをする。

 上手くいった。何度か欲望に素直になって余計な事をしそうになったけど、自制して渡良瀬さんが望むモノ(母性)を与える事に成功した。

 お陰で、謝罪してきた後に甘えようとしてくれた。残念ながら矢矧さんが阻止して叶わなかったけど。

 

(あの様子を見るに、私と二人きりの時は甘えるようになるでしょう♪)

 仮に甘えてこなかったら、不自然にならない程度に母性を醸し出して、それから……あはっ、想像したら楽しくなってきました♪

 

……落ち着きなさい、私。いま居るのは執務室の前。誰かに見られでもしなさい、計画が破綻するわ。浮かれるのをやめて、普段通りに振る舞うのよ。

 

(……この後どうしましょう?)

 気持ちを切り替えて時刻を確認すると、11:35だった。昼食まで時間がある。

 艤装の整備は先程終わらせた。報告書も纏めて提出した。自室に戻って今後の計画を立てて時間を潰す……いいえ、ここは談話室に行きましょう。

 

 

───海風って時間が空くと部屋に籠るけど、何してるの?

 

 

 ふと、先程。演習を終えて艤装を整備していた際、周囲に誰も居ない時に夕立姉さんに指摘された事を思い出す。

 此処の人達は時間が空くと談話室に行き、そこで休憩することが多い。しかし、私は必ずと言って良いほど自室に戻る。

 その為、夕立姉さんは不審に思ったのか指摘してきた。

 

 指摘された際、内心とても焦ったけど、それを表に出さず普段通りの声と態度で戦術関連の勉強をしている、と答えた。

 その答えに夕立姉さんは”勉強熱心で偉いね“と褒めてくれた。どうやら今までの振る舞い──ナニや何もヤらかさず、真面目に過ごしてきたお陰で私の返答に納得してくれた。

 

(自分では完璧に立ち回っていた気でいたけど、違った。今後は気を付けよう)

 夕立姉さんは口にしなかったけど、もしかしたら他の人達も私が談話室に行かないことを不審に思っているかもしれない。

 もし指摘されたら、困ったような顔をしながら”ヤらかす人達の騒動に巻き込まれたくない“とでも答えればいい。勿論、相手を傷付けないようオブラートに包んで言う──

 

 

 

 

 

 

『離せッ!離せコラッ!』

 

 

 

 

 談話室に向かっていると、何やら叫び声が聞こえてきた。この声は……摩耶さんかしら?

 

 

『逃がしはしねぇ。ぜってぇ逃がさねぇぞッ!……白か』

『ばっ、おまっ、木曾ォ!何処見てんだッ!』

『摩耶の下着だ』

『ドヤ顔で言うな!』

『仕方ないだろ、このアングルだと視界に入るんだよッ!』

『逆ギレ!?いいから、床に寝っ転がりながら足を掴むのをやめろ!手を離せ!それからスカートの中を見るなッ!』

 

 

 今度は木曾さんの興奮したような声が聞こえてきた。

 いったい何が起きて──

 

 

『いいか、俺は何度でも言うぞ。摩耶、お前は可愛い!言動は男勝りな所があるが、根っこに乙女な部分がある!そして、胸がデカァァァいッッッ!!』

『キャアアアアアア!?やめろおおおおおおおおおお!!!』

 

 

「………………」

 私の本能が告げる。いま談話室に行かない方がいい。行ったら巻き込まれる。

 

 

『頼む、これを……この服を着てくれッ!そうすれば、俺の寿命が100年伸びる!』

『あたしがコレを着て、お前の寿命が伸びるわけ無いだろ!』

『いいや、伸びるね!断言する!』

 

 

「………………」

 木曾さんが。言動は男勝りで荒っぽい所はあるけど、根は真面目で優しい木曾さんか壊れた。

 本当に何が起きているの?気になるけど、巻き込まれたくないから、あとで情報収集しましょう。

 

 

 

『自分で言うのもアレだけど、ヤンキーみたいなあたしにこの服は似合わないって!』

『ウチには男の娘(提督)オタクに優しいギャル(鈴谷)が居るんだぞ。

 乙女なヤンキーも居るに決まってんダルルォ!!着ろ!着てくれ!頼むッ!!』

『何言ってるか分かんねーよ!それから、何度も言うが頼まれようと着る気は無……あっ、こら、やめっ──アッーーーー!!!』

 

 

「………………」

 部屋に戻ろう。私は何も聞いていない。

 

 

side 海風 out

 

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────




次回予告


 うぅ、寒い!もう3月中旬なのに、何で此処はこんなにも寒いの?関東だと桜が咲いてる所があるのに。早く暖かくならないかしら?
 それはそれとして。今日、提督と初霜はお出掛けか。私も提督とお出掛けしたいなぁ。最後にお出掛けしたの、何ヶ月も前だし。
 仮に出掛けるとしたら、何処に行こう?私の地元を案内したから、提督の地元を案内してもらおうかな?うん、それがいい。そうしよう。どんな所なんだろ、提督の地元……何やら大淀さん達が騒いでる。今度は何?また霞にちょっかい出しているの?
……大淀さんがA装備のサ○コキャプチャーを使って霞を捕獲しようとしてる。止めなきゃ!


第195話・Let's Shout!


「女は時折心にキ○タマが付いてオスになるように、男性も心に赤ちゃんの部屋(子宮)が付いてメスになります。だから大丈夫です!」


※次話は初霜とのデート編になります


【補足的なナニか】

・摩耶の私服…次話で解説する予定。

・木曾…可愛い服を着た摩耶が素晴らしくて気が付いたら暴走していた。暴走した事については、反省も後悔もしていない模様。


以上、補足終了









※投稿が遅くなったことをお詫び申し上げます。
 活動報告でもお伝えした通り、現在病院から自宅に戻り療養しています。
 艦これをして瑞鶴の声を聴いて癒されたり、ラ○ドソルトで姉を名乗る不審者の弟になったり、ト○セン学園でモルモットになる余裕があるので
 元気に過ごしているので心配しないでください(迫真)
















※ラ○スシャワーが弊トレセン学園に入学してくれない……ライ○シャワーどこ……ここ……?
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