side 提督
─医務室─
「ア゛ア゛ア゛ア゛…」
「…」
仕返しに
「ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙…」
「これはゾンビですか?」
「はい、彼の嫁です」ガバッ
「痛たた…」
「大人しく寝てろ」
昨晩、第1回鎮守府プロレス大会が涼月の部屋で行われた。選手は俺と
「というか、提督って人間なんですか?涼月ちゃんが大破相当のダメージを負ってたのに無傷って…」
「提督ってのは艦娘達を取り纏める存在だぞ?その提督が貧弱だったら鎮守府運営なんか出来ないから、提督養成所で特殊な訓練を受けさせられるんだ」
「ほぇ〜、凄いなぁ…」
ごめん、嘘です。
「畳が真っ二つになるほどの勢いで叩きつけられても無傷。どんな訓練を受けたんですか?」
「極秘につき教えられない」
そんなモン受けてないからな。
「そろそろ仕事に戻る。瑞鶴、大人しくしてろよ?」
「…はーい」
素直な子は大好きだ。
「…ねぇ、提督さん」
「何だ?」
「私のお股触った責任、絶対取ってよね♪」
「触ってない」
「詳しく」
「夕張、黙れ」
「太く逞しい腕で、私のお股を強く触ってきたじゃない♪」
「瑞鶴さん、その話、詳しく」
「夕張、黙ろうね」
いや、触ったには触ったが、決して卑猥な意味じゃないぞ。コイツに
「首に手を回して、私を強く抱き締めて、それからゆっくりとお股に腕を…」
「もう1回喰らうか?」
「調子に乗りすぎましたすいません」
「今日の女子トークのネタ頂きましたありがとうごさいます」
「夕張、ノーザンライトボム」
「すんませんでした」
あぁ、そうそう。一つ言っておく。ノーザンライトボムは頭を地面に叩き付ける大変危険な技だ。決して真似をするなよ。俺との約束だぞ。いいな?
──────────────
─資材置場─
「そんな事があったんだ」
「あぁ。すまないな、休暇返上させてしまって」
「気にしなくていいさ」
資材の確認をしながら時雨に事情を説明した。
本当は
「それにしても提督は凄いね。艤装の加護で肉体強化されてる涼月がああなってるのに無傷なんて。ひょっとして提督はサイボーグなのかな?」
「そうだ。実は
「ターンX?」
「違う、そっちじゃない」
冗談を言い合いながら確認を続ける。秋雲の影響で
「…よし、あとは書類に纏めて提出するだけだ。お疲れ様」
「お疲れ様」
「手伝ってくれたお礼、ってわけじゃないが、この後買出しに行くから一緒に来ないか?何か奢るぞ」
「本当?それじゃ、お言葉に甘えさせてもらうよ」
「分かった。車用意するから私服に着替えて門の前で待っててくれ」
今日の夕食は奮発するか。隣県の大型ショッピングモールまで行くから少し時間がかかるが、まぁいい。あいつらが喜ぶなら苦じゃない。
───────
「…ひでぇ目に遭った」
「あ、あはは…」
何があったかって?時雨と買出しに行こうとした所を瑞鶴が窓から見ていたらしく、デートと勘違いして襲撃してきやがった。
「平日の昼過ぎだから、人が少ないね」
「そうだな。さて、少し遅いが何か食べてから買物しよう。何がいい?」
有名な大型ショッピングモールだから、いろんなお店がある。財布の中身は余裕だから何でも奢ってやろう。
「牛丼が食べたいな」
「そんなんでいいのか?もっと豪華な物でもいいんだぞ?海鮮丼とか、ステーキとか…」
「牛丼は素晴らしい食べ物だよ提督。安くて早くて美味しいそれだけじゃなく24時間営業だから
「お、落ち着け時雨。分かった、分かったから牛丼食べよう」
一体時雨に何があった。何故こうも牛丼を推すんだ?俺も牛丼好きだけど。
───────
「今日は厄日だ…」
「本当にお疲れ様」
牛丼を食べて腹を満たした後、時雨と一緒に買出しをしていたらお巡りさん達に幼女誘拐の容疑をかけられ
「女性の年齢を明かすのはタブーだよ、提督」
ハイライトさん仕事してください。あと時雨、俺の考えてる事を的確に当てないでください。ウチの鎮守府、読心術使える奴らばかりで怖いよ。
「提督は単純だからね。何を考えているか分かるよ」
「…」
癒しをください。
───────
「………」
「だ、大丈夫?」
大丈夫じゃない、問題だ。
説明するのが嫌になるが、盗聴器で
「もう嫌だ。癒しが欲しい。癒しが欲しいよぉ…」
「な、泣かないで。ぼ、僕が癒しキャラになってあげるから」
「時雨…」
嬉しい事言ってくれるじゃないか。けどよ…
「お前、時々怖いから癒しキャラにはならな」
「提督?」
だからハイライトさん職務放棄しないでください。
───────
「この鎮守府、ヤンデレだらけな件」
「ヤンデレ?」
本日の仕事を全て終え、夕食後に俺の部屋で秋雲とゲームをしていると唐突に言い出した。
「そう、あのヤンデレ。前からその兆候があったけど、瑞鶴さんが来てから顕著になったよ。約1名覚醒しちゃったし」
「言わないでくれ…」
まさか
「自分で言うのもなんだけど、俺ってモテるか?」
「ぶっちゃけ提督の外見は普通なんだけど、性格がいいからモテると思うよ?」
「結構暴言吐くぞ?バカ野郎とか、黙れとか。つーか性格いいか俺?」
「なんて言うの?声のトーンで本気じゃないって分かると言うか…」
「声のトーン?」
「そう。例えるなら…お笑い芸人がツッコミ入れる時の様な…」
「続けてくれ」
「うーん…うまく言えないけど、大丈夫だよ、うん」
「本当に大丈夫なのか?」
物凄い不安だ。
「性格だけど、提督って決して他人の評価をアテにしないで自分が直接見聞きしてから評価するじゃん」
「まぁ、そうだが」
爺ちゃんによく言われたからな。自分の目と耳で直接確かめてから評価しろ!って。
「その性格のお陰で時雨や早霜、涼月は救われたんだよ」
「…」
確かに。あいつらは艦娘養成所で提督候補生達や艦娘候補生達から色々と言われていた。
「…当たり前の事をしただけなんだがなぁ」
「それが出来る人って少ないよ?誇りなよ」
「やなこった。あーあ、平和が欲しい。無害な奴が少なくて辛い」
「無害なのは、今の所足柄さんと摩耶さん、私と夕張さんにアノ人かな」
「辛うじて半分以上は安全か…」
「あ〜、時雨と早霜は大丈夫な方に入るよ」
「嘘だッ!」
あの2人、明らか俺を見る目が危ないぞ?
「あの2人は瑞鶴さんや涼月と違って見てるだけで満足してるって言ってたから大丈夫だよ」
「…そうならいいんだが」
言われてみれば、見てるだけで何もしてこない。大丈夫…なのか?いやいや、
「そろそろいい時間だから帰るね〜」
「おう、おやすみ 」
「おやすみ〜」
───────
────
─
Another side
「その通りだよ」
貴方は決して他人の評価を鵜呑みにしない。参考にしない。だからあの時私に声をかけて接して来た。
「最初は
あの頃の自分を殴ってやりたい。あんな…あんなに酷い事をしてしまった。彼は全く気にしていないと言ってくれたけど、私は決して忘れない。忘れてはならない。
「…もうすぐ完治する。動ける様になったら沢山甘えよう♪」
…それにしても最近、他の女がうっとおしくなってきたわね。けど慌てちゃダメ。焦らず、慌てず、確実に
「あはっ♪楽しくなってキタなぁ♪」
うふふっ。あはははははっ♪
Another side out
───────
────
─
side 提督
─執務室─
「……」
「……」
無言。圧倒的無言。書類に万年筆を走らせる音以外は何も聴こえない。
「…提督、確認をお願いします」
「…ああ」
「…お茶をお持ちしますね」
「…頼む」
癒しが欲しい…誰か癒してください。…ん?涼月が懐から何か取り出してお茶に入れてる…オイコラ!
「何入れてんだ!」
「チッ…いえ、何でもありませんよ♪」
「見たぞ!俺は見たぞ!」
「アレです。疲労回復薬です♪」
「嘘を言うな!」
どうして変わっちゃったんだろうね。
「提督ったら、ワガママをいってはいけませんよ?はい、どうぞ♪」
「目の前で大量に薬入れた茶を出さないでください」
「口移しをご所望ですか?分かりました、ご期待に添えますね♪」
「望んでない期待に添えなくていい」
癒しが欲しいいいぃぃ!!!
───────
「…やれやれ」
気分転換に散歩をしよう。
「…ん?何だコレ」
玄関に向かう途中、廊下に黒い布が落ちていた。思わず手に取ると…く、黒い布の正体は女性物のおパンツだった!いやいやいや、マズいって。俺が持ってたら変態扱いされる。元の位置に戻そう。
「何してんだ?提督」
「アォン!?」
誰だっ!あ、しまった、咄嗟にポケットに入れちゃった。
「どうしたんだよ、急に奇声出して飛び跳ねるなんて。何してたんだ?」
「あ、あぁ、目眩がしてな、そしたら摩耶に声をかけられて驚いたんだ」
すまん、摩耶。嘘をつかせてもらう。
「なんか、すまん…」
「い、いや、気にしなくていい」
あっっっぶねー!危うく見られる所だったよ。どうしよう。とりあえず部屋に持ち帰ろう。
side 提督 out
───────
────
─
Another side
「あはは♪」
洗濯物を仕舞っている時、僕の下着が一枚足りない事に気付いて元来た道を辿っていたら見てしまった。まさか、彼が拾ってポケットに入れて持ち帰るなんて。
「やっと僕に興味を持ってくれたね。ずっと待っていたんだよ?」
僕のパンツだと知って拾ったのだから、チャンスはある。
Another side out
───────
────
─
side 提督
─夜、提督私室─
「あーあ。癒しがなくて辛いぜ」
嘆いていも仕方ない。気分転換に録り溜めたドラマでも見るか。…ん?ノック?
「誰だ?」
『僕だよ、提督』
時雨?珍しいな。
「入っていいぞ」
とりあえず部屋に入れるか。
「お邪魔するね」
寝る前だからか、髪を解いている。三つ編み解いたストレートヘアーの時雨なんて、久々に見たな。
「突然ごめんね?」
「いや、大丈夫だ気にすんな」
「ありがとね。早速だけど提督、聞きたい事があるんだ」
「聞きたい事?」
「うん。僕のパンツを持っていないかい?」
side 提督 out
───────
────
─
side 時雨
「僕のパンツを持っていないかい?」
さぁ、どう答えるのかな。しらばっくれても無駄だよ提督。
「え、あれ、時雨のだったのか?」
「…えっ?」
「ん?」
「あ、あの提督?」
「なんだ?」
「僕のパンツだから拾ったんじゃないの?」
「は?」
「…んん?」
もしかして、僕の勘違い?
「なぁ、時雨」
「…何も言わないで」
「お、おう…とりあえず、返すわ」
「…ありがとう」
紙袋に入れてくれたんだ。相変わらず気配りが上手だね。
「色々ごめんね」
「いや、気にすんな」
「それじゃ、おやすみ」
「おう、おやすみ」
……。
「…はぁ」
なんだ。僕に興味を持ってくれたわけじゃないんだ。
なら、興味を持ってくれるよう頑張るだけだ。誰かさん達みたいに迫ったりしない。彼から来てくれなきゃ意味が無い。
「そうだ、癒しキャラになってあげなきゃ」
怖がられているから、無害だとしっかりアピールしなきゃ。
side 時雨 out
───────
────
─
side 提督
─執務室─
「…今日、か」
「ん?何が〜?」
「アイツが今日来るんだよ。
「うへぇ、マジですか…」
偶然なのか分からんが、今日の秘書官は秋雲だ。
「まぁ、反省してるみたいだしあまりキツくは当たらないでおくよ」
「すまん…」
「それにしても、何でウチに異動してくるの?」
「ウチの正規空母は瑞鶴1人だけだろ?他の奴らはローテ組めても瑞鶴は組む事が出来ない。負担を軽減する為送ってくれるんだとさ」
「なるほど」
こんな小規模な鎮守府に正規空母、しかも適性者の少ない翔鶴型が姉妹揃って着任しているなんて、まず有り得ない。けど、
「そろそろ来るな」
出迎えは足柄に頼んである。
「パーティー用クラッカー持ってくればよかった」
「掃除が大変になるからやめなさい」
side 提督 out
───────
────
─
次回予告
司令官、怖がってる。…え、私が原因?ごめんなさいね、怖がらせてしまって。でも、安心してください。見てるだけ。見てるだけですから。ふふっ。ふふふふふふふふっ…あぁ、待って、待って!
第6話・戦闘狂
「改二甲って、装甲を大幅に強化して耐久性が向上してるんでしょ?なら、簡単に壊れないでね?ね?」