追跡鶴   作:EMS-10

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※警告※
暴力的、及び過激な表現が含まれています。
ご覧になる際はご注意ください。



第11話・元カノVS後輩

side 瑞鶴

 

─第603鎮守府、瑞鶴私室─

 

「つまんな~い!」

彼が大本営へ出頭して数時間が経った。私も一緒に行きたかったけど、彼に「俺一人で来るよう言われてるから連れて行けない」って言われたから仕方なくお留守番。大丈夫かな?

 

「早く帰ってきてよぉ~。ふてくされるぞぉ~」

布団の上で足をバタつかせる。パンツが見えちゃってるけど、私以外誰も居ないから気にしない。あっ、これで彼にパンツ見せて情欲誘ってみよう。

 

「…まだやってる」

涼月が大本営へ行かないよう、静流姉と由良が止めてくれてる。あの娘も懲りないわね。

 

「…負けないから」

彼の事が好きだと涼月は公言している。確かに、彼は魅力的な男性だ。それにしても、

 

「…モテすぎよ、バーカ」

養成所でも噂になってたなぁ。しっかり自分を見てくれる。否定してこない、って。ライバル多過ぎて不安になる。

 

「そういえば…」

以前の私なら、彼が私以外の女性と居るだけで嫉妬で怒り狂っていたのに、最近は落ち着いて冷静に判断出来る様になった。ここに来たばかりの頃は気が付くと爆撃したり矢を放ったりして鎮守府の備品を沢山壊していた。

 

「感情をコントロール出来る様になった。大人になった、のかな?」

もしそうなら、彼の目にはどんな風に映っているんだろう?魅力的に見えてるかな?

 

「…まぁ、考えたって仕方ないわ。必ず、彼から私を求めてくれるよう頑張るだけ、よ」

 

…。

 

うーん、暇。それに、静かだ。

 

(…怖い)

静寂は大嫌いだ。…よし、こういう時は!

 

「彼の声を聴くに限るわ!」

彼の服に付けた盗聴器を起動。提督服の襟の紋章に付けたから、気付かれていない。ふふっ、隙だらけよ♪

…おっ、聴こえてきた。

 

『えへへっ、準せんぱ~い♪』

『うおっ!?』

 

…え?

 

『やっぱりあたし達は運命の赤い糸で結ばれているんだよぉ~♪』

 

…は?

…何?

…何?

…何?

…何?

…何?

何?何?何?何?何?何?何?何?何?何?何?

何?何?何?何?何?何?何?何?何?何?何?

何?何?何?何?何?何?何?何?何?何?何?

何?何?何?何?何?何?何?何?何?何?何?

何?何?何?何?何?何?何?何?何?何?何?

何?何?何?何?何?何?何?何?何?何?何?

何?何?何?何?何?何?何?何?何?何?何?

何?何?何?何?何?何?何?何?何?何?何?

 

 

 

 

 

なんなの、今の?

 

 

 

 

女の声だ。

しかも、聞いた事がある。

高校の時、彼にちょっかいかけてきた女だ。

そして、阿武隈になった女だ。

…何でお前が彼と居る。

私の心に、ドス黒い感情が一気に流れ込んできた。

 

 

《マタ、奪ワレル》

 

 

…奪われる。

 

 

《マタ、置イテ行カレル》

 

 

…嫌だ。

 

 

《アノ女ハ、危険ヨ》

 

 

…確かに。

 

 

《彼ヲ狙ッテイル》

 

 

…ふざけるな。

彼は。

準は。

私だけのものだ。

 

 

《ナラ、ドウスル?》

 

 

…決まっている。

 

 

あの女から彼を護る(阿武隈を排除する)

 

 

 

フフッ。ワカッテルジャナイ♪

 

 

…そうと決まれば、彼の所に行かなきゃ。盗聴器にGPSが仕込まれているから、何処に居るかすぐに分かる。

 

「…待っテて、準。今、行くカら」

 

 

………。

 

 

「あら、瑞稀?どうかし…っ!?艤装を纏って何を…ッ!待ちなさいッ!は、速い!?追い付けない!同じ翔鶴型なのに!倍以上出てるなんて!!」

 

 

………。

 

 

「…見エた」

GPSが示した場所は、私の古巣である第8492離島鎮守府だった。途中、深海棲艦と遭遇したけど、私を見た途端、何かに怯えるかの様に逃げて行ってしまった。駆逐級ならまだしも、戦艦級や正規空母級が、だ。何でだろう。それに、いつもより早く海上を航行した気がする。おまけに艤装から尋常じゃない量の煙が出てる。何で?

…いや、そんな事はどうでもいい。大事なのは、彼の事だ。

 

「こコに、準ガ…」

 

(でも、何で?)

彼は大本営に行くと言っていたのに。

 

 

《決マッテルジャナイ》

 

 

…何が。

 

 

《逢イ引キスル為ヨ?》

 

 

…ふざけるな。

 

 

《サァ、行キマショウ?》

 

 

…そうだ。考えるのは後。今は彼の所へ行く事が重要だ。

 

 

………。

 

 

「あれ、瑞鶴…さん?ひぃっ!?」

「瑞鶴じゃん、どうし…なっ!?」

「何だ何だァ?お化けでも出たの…か…ふふふ、怖い…」

 

 

………。

 

「…」

途中、かつての同僚達に声をかけられたけど、皆怯えていた。どうしたのかしら?

 

 

《ソンナノ、ドウデモイイジャナイ》

 

 

…そうね、どうでもいいわ。

 

 

《早クシナイト、彼ヲ奪ワレルワ?》

 

 

…それだけは絶対ダメ。もう、失いたくない。奪われたくない。

 

 

「…居タ!」

私の視界に、彼の姿が映る。隣には金髪の女が。アイツが…私カラ彼ヲ奪オウトスル存在カ。

 

「アブ…ク…マ…」

アイツだ。アイツだ!アイツダ!!!

一気ニ駆け寄り、阿武隈ヲ殴り飛ばス。何か言ッてきたガ、気ニセず殴り続けル。

 

殴る。

殴ル。

殴ル。

殴る。

殴る。

 

阿武隈を押し倒し、矢筒カラ矢を取り出し、阿武隈の目玉ニ鏃を突キ刺ソウと振リ上げ…

 

「瑞稀っ!!」

 

ッ!?彼ガ声ヲカケテクレタ。嬉シイ♪逢イニ来チャッタ♪ネェ、見テクレタ?貴方ニ迫ル女カラ、貴方ヲ護ッタノヨ?褒メテ褒メテ♪

 

「やめるんだ!自分がなにをしているのか、分かっているのか!」

 

…?何デ怒ッテルノ?ネェ、何デ?私ハ貴方ヲ護ッタンダヨ?ネェ、何デ?何デソンナ怯エタ顔ヲシテイルノ?

ネェ?ネェ?ネェ?ネェ?ネェ?ネェ?ネェ?

ネェ?ネェ?ネェ?ネェ?ネェ?ネェ?ネェ?

ネェ?ネェ?ネェ?ネェ?ネェ?ネェ?ネェ?

ネェ?ネェ?ネェ?ネェ?ネェ?ネェ?ネェ?

ネェ?ネェ?ネェ?ネェ?ネェ?ネェ?ネェ?

ネェ?ネェ?ネェ?ネェ?ネェ?ネェ?ネェ?

 

 

 

 

 

 

ネェ、何デ?

 

 

 

 

「み、瑞…稀…お前…」

 

…嫌。

ソンナ、顔…シナイデ。

私ハ、タダ、アナタノ為ニ…。

アァ、嫌…イヤヨ…ソンナ顔シナイデ…。

マルデ、アノ時ノ様ナ。

私ヲ、置イテ行ッタ時ノ様ナ顔ヲシナイデ。

オ願イ。

オ願イデス。

オ願イシマス。

オ願イダカラ。

 

「ソンナ…ソンナ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソンナ顔デ私ヲ見ナイデヨオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(…あ、れ?私、何を…)

少しずつ視界が暗くなる。ふと、私の視界にある物が映り込んできた。それは、あの日、私に別れを告げてきた時と全く同じ顔をした彼だった。

 

《嫌ッ…嫌ヨッ!彼ニ、彼ニ嫌ワレルナンテ!イヤアアアアアァァァァ!!!》

 

完全に意識が途切れる直前、誰かの悲鳴が聴こえた気がした。

 

 

side 瑞鶴 out

 

 

───────

────

 

 

side 提督

 

 

「…」

あれから、数時間が過ぎた。外は既に真っ暗だ。

阿武隈になった高校時代の後輩と会話をし、迫られたので窘めていると瑞稀がやって来た。髪を逆立て、瞳と身体中から赤いオーラを発しながら。 そして突然阿武隈を殴り出し、押し倒して鏃で目を突き刺そうとした。咄嗟にやめるよう声をかけたが、俺の顔を見ると叫び出し気絶してしまった。

 

「そんな顔をしないでよ…か」

俺が別れを告げた時も全く同じ事を叫んでいた。

 

「一体何が何だか…」

瑞稀は意識を失い、今も医務室で眠っている。阿武隈は幸いにも軽傷で済んだが、いじめられていた時のトラウマを思い出したのか、精神的ショックを受け瑞稀とは別の医務室で今も泣き叫んでいる。

…瑞稀が阿武隈を殴っていた時の顔、

 

「まるで、昔の頃と同じだった…」

俺がクラスの女子、例え先生だろうと瑞稀以外の女性と2人で居るとアイツは突然発狂したかのように叫び、暴力を振るい出す。

最近大人しかったのに、また暴走するのか?お前は、そんな娘じゃないだろ…。

とりあえず、ウチには連絡をしておいた。どうやら静流が瑞稀を追おうとした際に深海棲艦と遭遇してしまい、小破してしまったそうだ。瑞稀の事は一部をぼかして説明してやった。

 

『提督…いいえ、準。妹を…瑞稀をお願いします。任せたからね』

 

…任されたんだ。絶対に役割を果たしてやる

 

『失礼します、渡良瀬提督。小嶋提督がお呼びです』

 

「…分かりました」

ドア越しに神通に呼ばれ、来客用の部屋から出る。自分の部下が、他所の鎮守府の艦娘に暴行を働いた。これは大問題だ。

 

(どんな責任を取らされるのやら)

俺はどうなってもいい。瑞鶴を…瑞稀を護ってやる。

必ず。必ずだ!

 

「提督、渡良瀬提督をお連れしました」

 

『分かりました。神通くんは席を外してください』

 

「了解です。…どうぞ」

 

神通がドアを開け、入室するよう促してきた。くそっ、身体が震えてきた。2、3発殴られる覚悟をしておこう。恐る恐る入室すると、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上半身裸の小嶋提督が床に直座りしてグラスにバーボンを注いで飲んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…は?」

思わず声が出ちまった。いやいやいや、なんでだよ。というか小嶋提督、顔中青アザだらけになってますよ?川内たち容赦ねぇな…じゃなくて、えっ?何この状況?

 

「腹を割って話すなら、衣服は邪魔です。本当は産まれたままの姿になって語り合うべきですが、そんな事をしては憲兵さんのお世話になってしまい、駆逐艦娘たちに会えなくなってしまいます。そして、紳士は入浴時と愛する者とドンパチする時以外は決して全裸になってはならない。なのでズボンだけは履かせていただきました。お許しください」

 

オメーハ、ナニヲ言ッテンダ?

…ん?グラスが2つある。もう1つの空のグラスにバーボンを注いで俺に差し出してきた。飲めってか?

 

「素面では言いたい事も言えないでしょう。どうぞ」

 

「…いただきます」

うっへぇ、俺酒苦手なんだよ。結構度数キツいな…あ、うまい。香りが凄くいい。高いんだろうなぁ。

 

「…飲みましたね?」

 

「ッッッ!!!」

しまった、グラスに薬か何か仕込まれてたか!?マズイぞ、俺の考えと違う事を喋らせて罪をでっち上げる気か?クソッタレ!

 

「…さて、あなたには聞きたい事が沢山ありますが、これだけは聞きたい」

 

「な、何でしょうか…」

うげっ、頭がクラクラする。チキショウ!小嶋提督の目付き、尋常じゃないくらいに鋭い。少しの嘘も見逃さない顔だ。

 

「好きな駆逐艦娘は、誰ですか?」

 

「…はい?」

…あぁ、そうか、わざとふざけた態度を取って少しずつ油断させて喋らせる作戦か。その手には乗らんぞ?

 

「私は!私はッ!朝潮型が素晴らしいと思うッ!!」

 

突然立ち上がって演説し始めた。落ち着け、奴の作戦だ。とりあえず、スマホで録音しとくか。

 

「勿論、他の駆逐艦娘も素晴らしい。だ!が!私は!小嶋英雄は!朝潮型駆逐艦を!激推し!するッッッ!!!」

 

…作戦だ。

 

「まず!朝潮くん!彼女は!真面目!真面目過ぎる!だが!そこがいい!!」

 

…作戦だぞ。

 

「真面目故!時折!頓珍漢な!回答を!してしまう!可愛いッッッ!!!」

 

…惑わされるな。というか、すげぇ筋肉だな。俺も一応鍛えているが、ここまでではない。鍛え直すか。

 

「…そして!霞くん!彼女は!彼女はああああああッッッ!!!」

 

…あ、川内が窓の外に居る。

 

「私のママになってくれるかもしれない駆逐艦娘なのだああああああぁぁぁぁッッッ!!!」

 

…腰から魚雷取り出して構えてる。

 

「渡良瀬提督!」

 

…大きく振りかぶって…

 

「駆逐艦はいいぞォ?さぁ、私と一緒に…駆逐艦娘について語ろうじゃないかッッッ!!!」

 

「イヤーーー!!」

 

「グワーーーッ!!!」

 

突入して来た。

 

 

───────

 

「大変失礼致しました」

 

「あの、その…大丈夫ですか?」

 

「鍛えているので大丈夫です」

 

「そ、そうですか」

あの後、川内が窓をぶち破ってダイナミック入室して来た。その際、小嶋提督の腹に酸素魚雷(勿論、信管爆薬を抜いてある)を突き刺し、そのままの勢いで壁に叩き付けた。叩き付けられた瞬間、スイカバーされたシ○ッコ様みたいな顔になったのを俺は見たぞ。頭蓋骨どうなってんだ?

 

『提督には分かるまい…私の身体を通して出る怒りが。提督には分かるまい!』

 

『なんなんだァ?今のはァ?』

 

叩き付けられ壁にめり込んだのにピンピンしてた。小嶋提督、アンタ本当に人間か?

 

「…さて、緊張が解れた様なので、お話をしましょうか。どうぞ、お掛けになって下さい」

 

「…はい」

どうやら俺の緊張を解す為、わざとふざけたらしい。今はキッチリと提督服を纏い、ソファに腰掛けてた。おっと、勧められたから俺も座ろう。

 

「まず、阿武隈くんに対して暴行を働いた、そちらに所属する瑞鶴くんについてですが…」

 

…どうなる?

 

「…不問とします」

 

「…え?」

な、何故!?

 

「何故、という顔をしていますね。良くないですよ、簡単に考えている事が顔に出るのは」

 

「ッ!」

 

「…どうやら、噂通りの人の様ですね」

 

「…噂?」

 

「えぇ。裏表が無く、他人の評価を鵜呑みにしない。決して相手を頭ごなしに否定しない。素晴らしい人間だと」

 

「…」

 

「…それに」

 

「…何でしょう?」

 

「あなたは、私の妹を救ってくれた」

 

「妹?」

 

「はい。妹は養成所で落ちこぼれの烙印を押され、否定されていました」

 

「…続けてください」

 

「艦娘を辞めたいと、何度も泣きながら電話でそう言ってきました。私は、続けろ、とも、辞めてもいい、とも言ってあげる事が出来ませんでした」

 

「…」

 

「そして、ある日いつもの様に妹から電話がかかってきました。今までの様に落ち込んだ声で話しかけてくる。そう思っていました」

 

「あの…」

 

「お願いです、最後まで聞いてください。…その電話の声は、明るく、弾んでいました。聞くと、私を見捨てず、認めてくれる人に出会えた、と」

 

「…」

 

「そして、妹は自信を持ったのか、みるみる実力をつけ、養成所をトップクラスの成績で卒業し、とある提督と共に鎮守府へ着任しました。その鎮守府の名は…第603鎮守府」

 

「ッ!?」

 

「運命の悪戯か、私の鎮守府のバックアップ用に作られた鎮守府に着任する事になりました」

 

「えっ?…あのっ…」

 

「…私は、妹を…涼子…いえ、涼月を救ってくれたあなたに、ずっと恩返しがしたかった」

 

「は、はぁっ!?」

まさか、涼月が小嶋提督の妹だったなんて。

 

「…今回の件ですが、妹の恩人であるあなただから不問にすると決めたのです。もしこれがあなた以外の提督なら、厳罰を与え、提督の資格を剥奪するよう大本営に上申する所でした」

 

ま、マジかよ…。

 

「…話は変わりますが、渡良瀬提督」

 

「な、何でしょう?」

 

「そちらに瑞鶴くんが着任する前、大本営に空母艦娘の着任を何度も要請していたそうですね」

 

「え、えぇ…何故それを…」

 

「当時の私の権限ならば、どの鎮守府がどのような要請をしたか、知る事が出来ましたから」

 

「な、なるほど…ん?まさか!」

瑞鶴がウチに着任出来たのは、

 

「はい、私が瑞鶴くんを第603鎮守府へ異動、着任出来る様、大本営を説得しました」

 

「…は、ははっ…」

笑うしかねぇ。まさか、そんな事が。

 

「大本営は中々首を縦に振ってくれませんでした。それでも、私はあなたの所に瑞鶴くんを着任させてあげたかった」

 

「小嶋提督…」

 

「瑞鶴くんがあなたの所へ行きたいと、いつも呟いていました。彼に逢いたい、と。改装できる練度になっても、最初に改装された姿を見せるのはあなただと決めている、と言って断固として改装を受けませんでした。私は瑞鶴くんの想いを聞いて、何が何でもあなたの所へ彼女を着任させなければ!と使命に駆られました」

 

「…」

 

「そしてついに。数年掛かってしまいましたが、あなたの所へ着任させてあげる事が出来ました。色々無理を言ったせいか大本営に嫌われてしまいましたが、知った事ではありません。あなたに恩を返せない方が、とても辛い…」

 

「その…なんと申しますか…本当にありがとうございます」

 

「謝らないでください。むしろ、この程度の事しか出来ない私を、お許しください」

 

「あ、頭を上げてください!」

准将が少佐に頭下げて謝罪なんて有り得ねぇぞ!というか、俺ってそんな大したことしてないのに何でこうまで感謝されるんだ?

 

「…顔に出ていますよ?大したことをしてないのに、何故こうまで感謝されるんだ、と」

 

「うっ…」

そんなに顔に出やすいのかよ…。

 

「…さて、そろそろ本題と行きましょうか。渡良瀬提督が知りたい事を、お話しましょう」

 

「は、はい」

そうだ。瑞稀が暴行を働いたインパクトが強すぎて忘れていたが、俺は艤装が艦娘に与える影響について教えてもらう為に来てたんだ。

 

「分かっているとは思いますが、この事は他言無用です。もしこの事を大本営が知れば、私とあなたは処刑されるでしょう」

 

「勿論です。他言しません」

 

「うむ、よろしい。では、艤装が艦娘に与える影響についてですが…」

 

それから、俺は小嶋提督に色々教えて貰った。

艦娘になると、かつての船だった頃の記憶、世界大戦の記憶が艦娘になった娘に流れ込み、人格等に影響を与える場合があるそうだ。例えるなら、天真爛漫な娘が寡黙で冷静になったり。

 

「これは、佐世保の瑞鶴くんが該当します。彼女、佐世保の瑞鶴くんは艦娘になる前は、明るく元気でムードメーカーだと言われていました。しかし、艦娘になってから徐々に口数が少なくなり、今の様になってしまいました」

 

「そんな…」

 

「しかし、趣味嗜好は以前と変わりが無い、と聞いています」

 

「艦娘になると、皆変わってしまうのですか?」

 

「いえ、そういうわけでは無い様です。むしろ、稀なケースと言われています。確認した所、現在7人が該当しています。有名所では、横須賀の赤城くんでしょうか」

 

7人。確か、現在活動中の日本の艦娘は約7000人。千分の一の確率か…。横須賀の赤城。別名、殺戮マシーン。普段は食べる事が好きな朗らかな女性だが、戦闘になると人格が変わったと錯覚する程、冷酷になると聞いた事がある。

 

それから俺は、小嶋提督から様々な事を教えて貰った。

 

「…以上が、艤装が艦娘に与える影響です」

 

「…ありがとうございます」

 

「さて、今日はもう遅い。夜の海は大変危険ですから、うちに泊まっていってください」

 

「本当に、何から何まで…恐れ入ります」

至れり尽くせりってレベルじゃねーぞ。申し訳ないと思う以前に何かありそうで怖すぎる。何も起きないでくれよ?フリじゃねーぞ、本当に何も起きるなよ?

 

「お気になさらないでください。私の弟になる人なんですから」

 

「…はい?」

私の弟?どういう事?…あ、もしかして!

 

「妹から時々電話が来るんです。渡良瀬提督と結婚するから式場とかウエディングドレスをどれにすればいい、とか」

 

涼月ァ!君は何て事してくれちゃってんのォ!?

 

「ふむ…少し予定を変更して、ここからは語り合いと行きましょうか?」

 

いやです、寝たいです。

 

「おおっと、今夜は寝かしませんよ?」

 

だから何で考えてる事が…顔に出やすいんだったね、俺。

 

「素面では言いたい事も言えないでしょう。さぁ…飲みましょう」

 

そう言って取り出したのはスピリタス。ちょい待て!

 

「流石に割りますよね?」

スピリタスは世界最強のアルコール度数を誇る。その度数、脅威の98%!ビールが大体5%位だから、どれだけイかれてるか分かるだろう。ちなみにストロングゼロは9%。飲むより見る方が好きです。配信まだかな。…あぁ、スピリタスを飲む際は火気厳禁だ。タバコなんか吸いながら飲むと火事になるぞ。

 

「男ならァ!ガツンと行かんとダメだろオオォォアアアアアァァァァ!!!」

 

服を脱ぐな!上半身裸になるな!そして叫ぶな!!

 

「さっきまでの真面目な小嶋提督は何処に行ったんですか!?」

 

「戦場ではなァ!切り替えが出来ない奴から死んでいくんだよオオオオオオ!!!」

 

「仰る通りです!仰る通りですが切り替わり過ぎです!!」

 

「駆逐艦娘について語ろうじゃあないかアアアアァァァ!!」

 

服を脱がすなァ!一瞬で上半身裸にされちゃったよ!破かずにどうやって脱がせたんだ!?

 

「もうダメだ。憲兵さーん!憲兵さああぁぁぁん!!」

 

「憲兵、憲兵と…そんなに憲兵が好きかアアアアァァァァ!!!」

 

「好きじゃないです!」

俺は治安維持のために呼ぼうとしただけで、憲兵さんが好きだから呼んでるわけじゃないです!ノンケです!って、オイ!担がないでください!何!?シャイニングなフィンガーする気なの?俺、爆発四散するの!?

 

「…」

 

「…」

…あの、無言で俺の身体を見て何を…

 

「…よく鍛えていますねぇ。いい身体だ」

 

「…はい?」

 

「所々、傷跡がありますが、聞かないでおきましょう」

 

あー、昔瑞稀と静流に暴力振るわれた際に付いた傷だな。というか、小嶋提督の目付きが怪しいんですが。まさか…

 

「…あの、小嶋提督?」

 

「何でしょう?」

 

「失礼な事を承知でお聞きしますが…そっちの気が、あったります?」

 

「…」

 

無言。ねぇ、何で目を逸らすんですか?

 

「…昔、まだ私が提督になったばかりの事でした」

 

あ、語り出した。というかいつまで俺を持ち上げてるんだ?俺、大体70kg以上あるんだよ?身長は180cm以上あるし、よく持ち上げ続けられるな。

 

「一度、憲兵さんのお世話になってしまった時期がありまして。その際、特殊な更生プログラムを受けさせられたんです」

 

「は、はぁ…」

小嶋提督の身長は推定185cmオーバー。筋肉の付き方からして90kgは超えてるな。

 

「そのプログラムの内容は…」

 

「な、内容は…」

 

憲兵さんとキャッキャウフフする(同性愛に目覚めさせる)

 

「」

 

「…更生プログラムを受けましたが、辛うじて致命傷で済みました」

 

ダメじゃん。

 

「そのせいで…その…ほんの少し。ほんの少しですよ?その…同性の身体に興味を持つ様になりまして…」

 

「ふんっ!」

 

「ゴハァ!?」

 

小嶋提督の喉に手刀をかまして、離脱。このままじゃ、俺のケツが危険で危ない。急いで逃げなくては!立派な扉を開け…あれ、開かない!?

 

「何処へ行くんだァ!?」

 

「へ、部屋に戻って寝る準備です!」

何で開かないの!?…あ、取っ手部分が針金で雁字搦めにされてる。既視感があるなぁ?あはははは。

 

「私と語り合わずにかァ?」

 

足音のSEがギュピッギュピッって聴こえるんですが…。

こうなったら、抵抗するしか無い!階級なんか関係ねぇ!逃走なんか必要ねぇ!

 

「ヤロオオォォオオオブクラッシャアアアァァァァ!!!!」

 

「ふはははははっ!!来るかァ、弟ォ!!」

 

「倒す!倒しますッ!!」

 

「絶好調でああぁぁ~る~!!」

 

こうして、俺と小嶋提督は肉体言語で語り合った。

ちなみにこの後騒ぎを聞きつけた神通が乱入。2人仲良く二水戦ストライク(水偵ラリアット)喰らって昏倒しました。何で俺まで…。

 

 

side 提督 out

 

───────

────




次回予告


…私ハ…私ハ…彼ニ愛サレタイ…。
…ナノニ…ナンデ?ナンデ怯エルノ?
私ハ、アナタヲ護ッテイルノニ!!!
見テヨ!私ヲ!私ダケヲ、見テヨッッッ!!!


第12話・真実


「頭で考えるな!心に思った事を、そのまま言葉にして吐き出せッッッ!!!」








※お知らせ※

この度は追跡鶴をご覧頂き、ありがとうございます。
軽い気持ちで投稿したら、予想以上の反応を頂く事が出来、歓喜している作者です。
さて、お知らせですが、今回で書き溜めたストックが切れた為、暫く更新が遅くなる事をこの場をお借りしてご報告させていただきます。
一応この後の書き溜めもあるにはあるのですが、文章が滅茶苦茶だったりで修正に時間がかかりそうです。
もし宜しければ、今後も追跡鶴を読んでやってください。

最後に一言。瑞鶴はいいぞ。
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