追跡鶴   作:EMS-10

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第12話・真実

 

side ?????

 

 

─??年前、某沖合─

 

 

…もう、駄目みたい。

…ごめんね、みんな。

一緒に帰るって、約束したのに。

ごめんね…。

ごめん…。

…。

沈む。

沈む。

沈む。

…だんだん暗くなってきた。

目は開けているのに。

暗い。

暗い。

暗い。

…あ、背中に何か当たった。

…海底、かな?

…寂しい。

 

………。

 

どれだけ時間が過ぎたか分からない。

だんだん、私の身体が朽ちていくのが分かった。

 

………。

 

気が付くと、私の身体は無くなっていた。

それでも、私という存在(意識)は残っていた。

 

………。

 

なんでだろう。無性に苛立ってきた。

これは…憎しみ?

何故…

 

………。

 

何故私がコんな目ニ遭ワナきャなラないの?

何故?

何故ナノ?

 

………。

 

…憎い。

…哀しイ。

…帰りタい。

海ノ上ニ…。

 

………。

 

 

海ノ底ハ…暗クテ…独リハ…

 

 

サミシイイイイイィィィィ!!!!

 

………。

 

 

─18年前、某沖合─

 

 

たすけて…

 

たすけて…

 

ぱぱ…

 

まま…

 

おねーちゃん…

 

…。

 

くらい。

 

しずかだ。

 

こわい。

 

こわい。

 

こわい。

 

くらくて。しずかで。こわい。

 

 

………。

 

 

…アナタ、誰?

…ヘェ、ソウナンダ。

…大変ダッタワネェ。

…イイワ、助ケテアゲル。

…フフッ、気ニシナクテイイワヨ。

…私ノ憎シミト哀シミヲ、地上ニ振リ撒イテヤル。

ダカラ、アナタノ身体ヲ、

 

 

利用シテアゲル

 

 

………。

 

 

─17年と数ヶ月後前。某所─

 

 

誰ダ、コイツハ?

…鬱陶シイナァ。

…煩イ。

…煩イ。

…煩イ!

 

…。

 

何故ダ。

何故離レナイ!?

アレダケ痛メツケタトイウノニ!

何故離レナイ!!?

分カラナイ。

理解デキナイ。

 

 

………。

 

─15年前。某所─

 

私ヲ、見テクレル。

私ヲ、否定シナイ。

…。

暖カイ。

暖カイ。

嗚呼。暖カイ。

 

………。

 

─14年前。某所─

 

アハハッ、楽シイナァ。

楽シイ。

楽シイ!

凄ク楽シイ!!

 

………。

 

─10年前。某所─

 

彼ト一緒ニ居タイ。

コレハ…コノ感情ハ…ナンダ?

…。

アハッ♪

分カッタ。私ハ…彼ノ事ガ…

 

 

好キナンダ

 

 

…アハハハハ♪

付キ合エタ。

告白シタラ、喜ンデ快諾シテクレタ。

コレカラハ、ズット、一緒ヨ?

離レチャ嫌ダヨ?

ウフフッ♪

…アレ?ソウイエバ何デ私、ココニ居ルンダロ?

何カ、目的ガアッテコノ娘ノ肉体ニ宿ッタ筈ダケド…

…。

マ、イッカ。スグニ思イ出セナイナラ、大シタ事ジャナイダロウシ。

ソレヨリ、彼トノ初デート、何処ニ行コウカナ♪

ア、映画館トカイイナァ♪

アト、オ洋服ハドウシヨウ?雑誌読ンデ考エヨウ♪

 

 

…………。

 

 

─8年前。某所─

 

駄目。

駄目。

他ノ女ニナンテ、触レサセナイ。

彼ハ、私ダケノモノダ。

邪魔ダナァ。

排除シナキャ。

アァ。私ヲ放ッテ他ノ女トオ話シテタワネ。

チョット、彼ニオ仕置キシナキャ!

貴方ハ、私ダケノ物ナンダカラ!!

 

 

………。

 

 

─6年前。某所─

 

 

…ナンデ。

…ナンデ。

…ナンデ。

ナンデ、ソンナニ怯エタ顔ヲシテイルノ?

…別レ、ヨウ?

…嘘ヨ。

…嘘ヨ。

…嘘ヨ!

私ハ、貴方ノ為ニ、貴方ヲ護ル為ニ頑張ッタンダヨ!!

ナノニ、ナンデ!!!

 

………。

 

─現在。第8492離島鎮守府、第1医務室─

 

 

貴方の理想の女になれるよう、頑張った。

勉強も。

料理も。

裁縫も。

お洒落も。

沢山頑張った。

そして、貴方は褒めてくれた。

なのに、何で。

…分からないよ、準。

お願い、私を見て。

どうして…。

そして、今日。阿武隈という存在を排除しようとしたら、彼に怒られた。

 

………。

 

あれ?もしかして、貴女を護る為に、暴力で解決したのがマズかったの!?どっ、どうしよう!どうしよう!!土下座して謝るしかない!そうだ、そうしよう!でも、普通の土下座じゃ駄目。焼き土下座…ダメよ!瑞稀の身体が傷付いちゃう!どうすればいいの!?

 

『…んんっ…あれっ?』

 

あれ?身体を、動かせる?それに、変な訛り?みたいなのも無くなってる。何で?

第一次改装までしか受けていないのに。シンクロ率が足りないから、まだ私の意思で自由に動かせない筈なのに。何で?ぎ、艤装とのシンクロ率は…。

予定では第二次改装の限界値である120%まで高める必要があるんだけど、今の私では、せいぜい60%程度…

 

─艤装とのシンクロ率、440%─

 

『ふぁっ!?』

 

頭の中に艤装とのシンクロ率が流れ込んで来たけど、数字を知って思わず変な声出ちゃった。というか、440%って何よ!…頭痛くなって来ちゃった。ちょっと横に…最初から横になってたわね。もう少し眠ろう。

 

………。

 

…んん?誰かに、頭を撫でられてる?誰?薄らと目を開くと、心配そうに私を見つめる彼の姿が見えた

…あんな事しちゃったのに、心配してくれてる。嬉しいなぁ。でも、同時に申し訳なさが込み上げてきた。

 

「…どっちが、本当のお前なんだ?」

 

…彼に、全てを話そう。誠意を見せなきゃ。

…しっかりしろ、私。落ち着いて。取り乱すな。

…よし。

 

『…知りたい?』

 

 

side ????? out

 

───────

────

 

 

side 提督

 

─第8492離島鎮守府、客室─

 

朝。

 

 

「…知らない天井だ」

…よし、いつもの調子だな。大丈夫そうだ。

小嶋提督と貞操をかけた戦いを繰り広げていたら、神通に二水戦ストライクを喰らわされて気絶したんだっけ。いいセンスだ。ウチの由良と是非ともやり合って欲しい。

 

「…瑞稀は大丈夫かな」

勿論、阿武隈の事も心配だが、瑞稀の事を先に心配してしまった。

 

(やっぱり、俺は…)

瑞稀の事が、好き、なんだろうな。

ウチに来たばかりの頃は、いつ暴れ出すか分からなくて怖かった。だが、昔ほど暴れなかった。それどころか日に日に穏やかになっていった。それなのに、昨日は昔みたいに豹変し、阿武隈に暴行を働いた。

 

「…考えたって仕方ない」

医務室に行って様子を見たいが、勝手に出歩くわけにはいかない。それに、ウチの艦娘がここの艦娘に暴行を働いた。どんな目で見られるか。蔑まされる?罵られる?俺は構わない。だが、瑞稀にそれらの視線や感情が向けられるのは我慢出来ない。

 

「…あぁ、クソっ!」

ネガティブな事ばかり浮かんでくる。顔でも洗うか。…ん?

 

『霞よ。起きてる?』

 

昨日俺を案内してくれた艦娘、霞の声だ。起こしに来てくれたのかな?

 

「あぁ、起きてる。今、身だしなみを整えてる」

 

『分かったわ。終わったら呼んで。待ってるから』

 

「分かった」

さて、急いで整えよう。

 

……。

 

「お待たせ」

 

「早いわね」

 

「迅速に行動するよう、教え込まれたからな」

養成所に入ったばかりの頃は着替えが遅い!と怒鳴られたなぁ。

 

「…それにしても、あんたも大変ね」

 

「…」

昨日の事か。何を言われるのやら。

 

「あんたを巡ってのキャットファイトに巻き込まれるなんて」

 

「…はい?」

今、何つった?

 

「だから、キャットファイトに巻き込まれて大変ねって言ったのよ。耳掃除ちゃんとしてるの?」

 

「いや、してるが…」

聴き間違いじゃなかった。キャットファイト?

 

「久々に見たから、皆興奮してたわ」

 

「久々に見た?」

 

「えぇ。2年くらい前、川内さんと神通さんが司令官…小嶋提督を巡ってキャットファイトを繰り広げたのを見たから」

 

おいおいおい。小嶋提督大変だったなぁ。

 

「…んで、どっちを選ぶの?阿武隈さん?瑞鶴さん?」

 

「ん"ん"っ!?」

いきなり何を言い出すの君ィ!?そんなニヤニヤして、まるで面白い玩具を見つけた!みたいな顔して!

 

「皆、盛り上がってるわよ?あの阿武隈さんと瑞鶴さんに想い人が居て、それを巡って争った、って。ちなみに今の所、オッズは2人とも選ぶ、が多いわ」

 

他所の提督とはいえ、賭けの対象にしないでください。

それから、執務室に着くまで霞にからかわれた。この様子なら、大丈夫そう…だな。

 

………。

 

─第8492離島鎮守府、執務室─

 

「私は軽巡艦娘が好きです。私は軽巡艦娘が好きです。私は軽巡艦娘が好きです。私は軽巡艦娘が好きです。私は軽巡艦娘が好きです…」

 

提督です。執務室に入ると虚ろな目で何やら呟いている小嶋提督が居るとです。

提督です。小嶋提督の両隣にめっちゃイイ笑顔でツヤツヤしてる川内と神通が居るとです。

提督です。提督です。提督です…。

 

「あ、大丈夫だから気にしないで。熟成された軽巡(オンナ)の魅力を神通と2人で夜通し教えただけだから」

 

ゆうべはお楽しみでしたね。というか2人ががりとかキツそう。経験無いから分からんが。

 

「渡良瀬提督!」

 

「はい」

あ、復活した。

 

「オッズは阿武隈くんと瑞鶴くんの2人を選ぶ、という結果を予想する娘達が多いですが、私は妹を、涼月を選ぶと信じていますよ!」

 

「嫌です」

爆弾投下しないでください!あぁ、ほら!川内たちが目をキラキラさせてるよ。霞は…おぉう、ニヤニヤしてらぁ。

 

「何故です!」

 

「涼月が怖いからです!」

ついでにあんたも。

 

「具体的には!?」

 

俺は涼月の様子を全て話した。

 

「ふむ、なるほど…」

 

これを聞いたなら、考えを改めてくれるだろう。

 

「最高じゃないかァァァァァ!!!」

 

「何でだよッッッ!!!」

あ、ヤベッ、タメ口で怒鳴っちゃった。

 

「病むほど愛される。最高じゃないですか!さぁ、渡良瀬提督…病んだ妹に愛され続けるのです!!!」

 

「意味がわからないです!」

何故病んだ娘に愛されなきゃならないんですか。病んだ娘怖いんだよ?暴行とか、監禁とか、ストーカーとかしてくるから。

 

「病んだ娘はですねェ…一途な愛を向けてくれる…ふふ。つまり、病んだ娘はいいぞ…川内くんと神通くんも病むほど愛を向けてくれる。…あ、そうそう、涼子…涼月ですが、自分の手に届きそうな物を他人に取られるくらいなら、ありとあらゆる手段を用いて手に届きそうな物を完膚なきまでに壊す、という性格なので気を付けてくださいね」

 

ガ○パンはいいぞ、みたいに言わないでください。あと、両隣の2人、病んでたのね。ウチは2人どころじゃないんですが。そしてサラッととんでもない事言わないでください。ますます涼月が怖くなっちゃった。提督が、て/い/と/くになるんですか?niceboat.じゃなくてniceship.ですね分かります。あ、俺うまい事言った。褒めてくれてもいいのよ?

 

 

───────

 

─第1医務室─

 

「…」

執務室で今後の事を話した後、医務室に来た。ベッドの上では瑞稀が安らかな寝息を立てて寝ていた。

小嶋提督が俺と瑞稀を暫く二人きりにしてくれるらしく、誰かを呼び出さない限り二人きりで居られる。いつものツインテールではなく、髪を下ろしている頭を撫でてやった。

 

「…どっちが、本当のお前なんだ?」

天真爛漫で、時々おっちょこちょいな瑞稀。

突然豹変し、暴力的になる瑞稀。

…いや、どちらも瑞稀である事には変わりない。

思わず天井を仰いでいると。

 

『…知りたい?』

 

「ッッ!?」

突然声が聞こえた。何だ、今の声は?どこからだ?ここには俺と寝ている瑞稀以外居ない。

 

『ここよ、ここ』

 

声は瑞稀から聴こえた。口を動かして喋っている。そして、瑞稀の身体がゆっくりと起き上がった。

 

「な、なんだ!?」

寝たフリをしていたのか?

 

『…フフッ』

 

「ぁ…」

瞳の色が、紅い。先日、瑞稀が発狂した時と同じ目だ。

 

『…嗚呼。やっと、お話出来る』

 

「…誰、だ…」

掠れた声で尋ねたが、瑞稀…なのか?瑞稀は微笑んだ。

 

『…心配しないで。瑞稀は眠っているだけよ?』

 

「…眠っている?」

じゃあ、お前は誰なんだ?言葉が出かかったが、飲み込んだ。

 

『ええ。本当に大丈夫よ?』

 

「…そうか」

色々言いたかったが、今はこいつの事を信じよう。

 

『…やっぱり、貴方は優しい。私の言葉を信じてくれる。普通は否定し疑ってくる物なのに、貴方は最初から決めつけたりしない』

 

「…何を言っているんだ?」

 

『…ずっと見ていた。この娘、瑞稀を通して』

 

「見ていた?」

 

『うん。説明するね』

 

 

………。

 

 

「…そう、だったのか」

目の前の彼女から色々話を聞かされた。

昔、艦娘だった事。

艦種と艦名は忘れてしまった事。

戦いで沈んでしまい、水底で横たわり続けてい事。

やがて肉体が滅び、魂だけの存在になってしまった事。

18年前、そこに幼い頃の瑞稀が沈んできた事。

瑞稀の肉体に己の魂を宿らせ、力を使って海底から浮上させた事。

そして。

 

『…瑞稀の感情を揺さぶり、行動をある程度コントロールした』

 

「…」

とてもじゃないが、信じられない事ばかりだ。でも、今こうして目の前に瑞稀は居る。信じるしかない。

 

「…聞きたい事は山ほどあるが、まず、海底に瑞稀が沈んできたんだよな?」

 

『そうよ?』

 

「なら、何故身体が水圧で潰されていない?俺が瑞稀と出会った時は身体に傷なんて付いてなかったぞ?」

海底に落ちたのなら、水圧の影響で身体が潰される筈だ。それなのに、何故無事だったんだ?

 

『潰されていたわ。だから、私が治した』

 

「治した?」

 

『そう。私の魂を瑞稀の身体に入れて、治したの。骨や内蔵を元通りにした。そして泳いで浮上したの。そこそこ深かったから少し時間がかかったけど』

 

「マジかよ」

艦娘の不思議パワーって奴ですね、わかります。ご都合主義?気にするな。これはギャグ小説だ。現在シリアスだけどギャグ小説だ。大事なことだから2回言った。そのうち小嶋提督が「必要ないのだ!」って決め台詞と共に日本刀でザ○ジバル真っ二つにするだろう。電波受信しちゃったけど気にしない。話を戻すが、どんだけ体力あるんだよ。

 

『艦娘の体力を甘く見ないで♪』

 

あーはいはい、また顔に出てたのね。気を付けよう。

 

『ただ、浮上して近くの島まで泳いだら力をかなり消耗しちゃって、私の意思で身体をコントロールする事が出来なくなった』

 

海底から泳いで浮上し、その後波に打たれながら近くの陸地まで泳ぐ。うん、普通無理だ。艦娘凄い。

 

『それから、暫くは瑞稀を通して見る事しか出来なかった。でも、感情を揺さぶる事は出来た。それで…その…揺さぶって攻撃的な行動を取らせました』

 

…なんてこった。つまり、言い方は悪いが、瑞稀が攻撃的な行動を取った原因はこいつのせいだったのか。

 

『…深く、反省しています』

 

「…そうか」

申し訳なさそうに俯いてるよ。…ん?待てよ、

 

「なぁ、力を使い過ぎて身体をコントロール出来なくなったんだろ?なら、何で今こうして動かせているんだ?」

 

『それはね、艤装とのシンクロ率が高くなって、その影響で瑞稀の肉体と私の魂の同化が再び深まったからよ』

 

「なるほど」

 

『…本当は第二次改装を受け、シンクロ率をもっと上げなければ、動かせない筈だった。なのに、第一次改装の時点で予定していたシンクロ率を大幅に上回ったから、今こうして私の意思で身体を動かし、貴方と会話する事が出来ているの』

 

「艤装って凄い(小並感」

流石、謎の生命体妖精さん作。もう何が起きても突っ込まん考えんぞ。ご都合主義って事で流してやる。…あ、そういえば。

 

「そういや、さっき感情を揺さぶって攻撃的な行動を取らせた、って言ったけど、何でそんな事をしたんだ?」

 

『えっと、その…』

 

「怒らないから話してくれ」

本当に怒らないから安心しろ。

 

『…取られると思ったから』

 

「…はい?」

 

『貴方を…他の女に取られると思ったから』

 

「」

 

『…怖かったのよ。奪われる事が。だから、その…貴方を護りたくて…』

 

「…そうですか」

悲報・ヤンデレの女の子が増えました。

 

『…ねぇ』

 

「なんだ?」

 

『…私、貴方の傍に居ても、良い…かな?』

 

「…それを決めるのは俺じゃない」

それを決めるのは、自分自身だ。誰かの意見を聞く事は大切だ。けど、重要な事を決めるのは自分自身で答えを出すべきだ。少し意地悪をしよう。

 

『なんで、そんな事言うの?』

 

「…」

自分で考えるんだ。

 

『…ねぇ、なんで?』

 

「…」

 

『…うぅっ…』

 

「…」

 

『なにか、言ってよ…』

 

「…」

 

『教えてよ…ねぇ…』

 

「…」

 

『ヒグッ…ウゥッ…』

 

「…」

…ああ、もう!

 

「頭で考えるな!心に思った事を、そのまま言葉にして吐き出せッッッ!!!」

 

『ッ!?』

 

突然怒鳴ったから、驚かせちまった。すまん。

 

『心に…思った事…』

 

「そうだ」

 

『…居たい』

 

「…」

 

『私は、貴方の傍に、居たい!ずっと!』

 

「…」

 

『だから…今まで瑞稀に私の存在を悟られないようにしていたけど、彼女に私の存在を明かす!』

 

「…そうか」

 

『…彼女に否定されるかもしれない。怖い。けど、打ち明けるわ!』

 

「…分かった。最後にひとつ、いいか?」

 

『なあに?何でも答えるわ』

 

「瑞稀が沈んできた際、その…瑞稀は死んでいたんだよな?」

 

『えぇ、死んでいたわ』

 

「それじゃあ、瑞稀の魂は…」

 

『大丈夫だったわ。肉体は死んでいたけど、魂は無傷。今まで貴方が接してきた幼馴染の風見瑞稀は、正真正銘、沈んでくる前と全く同じ彼女自身の魂よ』

 

察しがいいのか、聞きたい事を答えてくれた。でも、

 

「…何で断言出来るんだ?」

 

『魂から記憶の情報を得たから』

 

「なるほど」

はいはい、ご都合主義ご都合主義。こまけぇこたあいいんだよ!

 

『…そろそろ瑞稀が目を覚ますわ。私は一旦、引っ込むね』

 

「…そうか」

 

『…ねぇ、準』

 

「なんだ?」

 

『…ありがとう、信じてくれて』

 

「…どういたしまして」

 

『この事は、私から瑞稀に説明するから、準は何も言わないで。お願い』

 

「あいよ」

 

『それから。瑞稀が意識を失う直前に、貴方の顔を見てショックを受けてるみたい』

 

「ショック?」

もしかして、別れを切り出した時の様な顔してたか、俺?

 

『だから…彼女、目を覚ました時に発狂するかもしれない。だから、その…』

 

「大丈夫だ、任せとけ。心配しなくていい」

 

『…ありがとう…嗚呼、暖かい…嗚呼…』

 

「…」

とても穏やかそうな表情をしている。瑞稀を救った存在はベッドに横になると、目を閉じた。そして、暫くすると、

 

「…ん…あ、れ?」

 

「…おはよう、瑞稀」

瑞稀が目を覚ました。瞳の色は紅くない。

 

「じゅ…ん…?…ッ!!」

 

「どうかした…うおっ!?」

瑞稀が目を覚ましたと同時に、抱き着いてきた。咄嗟に踏ん張ったが、押し倒されちまった。

 

「あ、ああぁぁ…ああああああ!!!」

 

「いっててて…」

固い床に身体と頭を叩き付けたせいで少し頭がクラクラする。

 

「ぁぁぁ…嫌…嫌ぁ…嫌ぁ…お願い…お願い、捨てないで!」

 

「み、瑞稀?」

尋常じゃないくらい怯えている。阿武隈に暴行を働き、俺の顔を見た時の事を思い出して発狂しているみたいだ。

 

「もう二度と悪い事しません!大人しくします!いい女になります!貴方に尽くします!だから!だからっ!私を!私を捨てないで…ぐだざい"っ"!お゙ね゙がい゙じま゙ずっ゙!お゙ね゙がい゙じま゙ずっ゙!お゙ね゙がい゙じま゙ずがら゙あ゙あ゙あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙っ゙っ゙っ゙!!!!」

 

「み"…す"…き"…」

ぐおおおお!首!首ぃ!首絞まってる!首絞めやめてぇ!

 

「ぁ"…がっ…」

くそっ、首絞められてて声出せねぇ。言葉をかけてやれない。

 

「お゙ね゙がい゙じま゙ずがら゙あ゙あ゙あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙っ゙っ゙っ゙!!!ずでな゙い゙でぐだざい゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙ぃ゙ぃ゙ぃ゙ぃ゙!!!!」

 

「ごっ…がぁっ…!」

ちく、しょう!酸素が…どう、すりゃいい!!どうすりゃ言葉を…いや、言葉でなくて行動で示せばいいだろ!それに、言葉だけじゃ信じてもらえないかもしれない。首を絞めている手を外そうとすれば、瑞稀に否定の意と捉われて益々発狂する恐れがある。なら!

 

(俺の、俺が心で思った事を、そのまま行動で示してやる!!)

俺は。俺は。この娘の事が…風見瑞稀の事が…

 

好きだっ!

 

出会いは俺が6歳の時。

隣に引っ越してきた。

最初は俯いてばかりの元気の無い娘だった。

話しかけると、引っ掻かれた。

話しかける度に暴行された。

それでも、話しかけた。

少しずつ、仲良くなった。

それを見た姉の静流に暴行される様になった。

それでも話しかけ、接した。

何度も静流に暴行された。

それでも構わず接した。

どんどん仲良くなった。

そして、14歳の時、告白された。

初デートは、映画館だった。

上映開始まで1時間以上あった。

2人でデパートをうろついて時間を潰した。

2人で同じ高校に行く為、一緒に沢山勉強した。

段々瑞稀が攻撃的になった。

もう、手が付けられない位に攻撃的になった。

我慢出来なくなって、別れを告げた。

逃げる為に提督適性検査を受け、生まれ育った所から離れた。

そして、提督になって数年後。

 

瑞稀と再会した。

 

最初は昔みたいに暴走するんじゃないかとビクビクしていた。

いつ暴行を受けるか怖かった。

だから、冷たく当たってしまった。

何度も突き放した。

けれど、一緒に過ごしていく間に、楽しいと思う様になった。

段々、こいつの事を考えるようになった。

そして、気付いた。

俺は。やっぱり、こいつの事が。瑞稀の事が好きなんだと。

 

「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!!」

 

ぐっ…意識…が…持ち堪えろよ、俺!

俺の両手をゆっくり彼女の頬に伸ばし、触れた。

 

「…ぇ?」

 

少しだけ、首を絞める力が弱まった。

構わず身体を起こし、そのままゆっくりと瑞稀の顔に自分の顔を近付ける。

 

「ぁ…えっ?」

 

…いつ見ても、可愛い顔だな。今は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになってるが。俺が、こうしてしまった。今まで、ごめんな。

 

「な、にを…」

 

目を閉じ、そのまま、瑞稀に顔を近付け。

 

 

彼女の唇に自分の唇を重ねた

 

 

「んっ!?ンンンっっ!!?」

 

薄目を開けてこっそり瑞稀の顔を見ると、驚いたのか大きく目を見開いていた。首を絞めていた手は、いつの間にか離れていた。

 

「…はあっ!」

そして、ゆっくり唇を離し、息を吸う。

あぁ…くそっ、急に酸素が流れ込んで来たからか、意識が…まだ、意識飛ばすわけには…!!

 

「み…ず…き…」

 

「じゅ…ん…」

 

ちくしょう!視界が暗くなってきやがった!まだだろ!まだ意識を飛ばすんじゃねぇ!

 

「お…れは…」

 

「準!!」

 

「お、まえ…」

あぁ、クソッ!駄目…だ…

 

「準ッッッ!!!」

 

「す…き…」

…ああもう、声出せない。ちくしょう…ちくしょう!

 

「準〜ッッッ!!!」

 

(…わりぃな、ちゃんと、言えなくて)

完全に意識を失う前に俺が見たのは、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔で俺の名前を必死に叫ぶ彼女と、彼女の背後から心配そうにこちらを見つめる、瑞稀を救った存在だった。

 

 

side 提督 out

 

───────

────





次回予告


駆逐艦ゲフンゲフン軽巡はいいぞ。さて、そろそろ渡良瀬提督達の様子を見に行きますか。医務室は複数ありますが、流石に長時間1つの医務室を使用禁止には出来ませんからね。…おや、阿武隈くん、もう出歩いても大丈夫…あっ、阿武隈くん、何処へ!?待ちなさい!阿武隈くんっ!川内くん!神通くん!彼女を追ってください!早く!!


第13話・エンジン、全開!


「さぁ、私と一緒に、地獄へ逝きましょう?」
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