─第8492離島鎮守府、第4演習場─
「がら空きなんですけどぉ!」
「全機爆装、目標、前方の阿武隈!やっちゃって!」
<いいぞー、もっとやれー!
<阿武隈さん、負けないでー!
<今月の間宮券、全部瑞鶴に賭けたからなー!
「…どうしてこうなった」
さて、何故目の前でこんな事が起きているかと言うと、あれは今から数時間くらい前の事だ。
───────
────
─
side 提督
─第8492離島鎮守府、第1医務室─
「ご、ごめんなさい」
「大丈夫だ」
俺が意識を失って数分後、再び意識を取り戻すと瑞稀に謝られた。復活が早いって?提督は艦娘達を取り纏める存在だぞ?提督が貧弱でどうする?
「…ねぇ」
「なんだ?」
未だ涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔で声をかけてきた。このままじゃダメだ。ハンカチを取り出して拭いてやった。汚い?んなわけねぇだろ。好きな女がこんな顔してる方が嫌だよ。
「…さっき、好きって」
「あぁ。好きだ、瑞稀」
「ふえっ?」
「お前の事が好きだ」
何か言おうとしていたが、その前にキスをした。
「んぅ…んくっ…」
頭が追い付いていないのか、身体を強ばらせている。
「…ぷはぁ。ぁ…」
おーおー、顔真っ赤にして惚けてるよ。可愛い。もう一度。
「…んっ…」
今度は力を抜いていた。そのまま舌を入れた。
………。
「…あ、あの」
「どうした?」
「…私、その…迷惑かけてごめんなさい」
「…俺は、気にしていない」
「でもっ!」
「…瑞稀、聞いてくれ」
「えっ?」
「今までお前に冷たく当たった。本当に悪かった。最初は、昔みたいに暴走するんじゃないか、怖かった。けど、お前は昔みたいに暴走しなかった。…多少はっちゃけていたが、その…少し、ほんの少しだけだぞ?鬱陶しいと思ったが…凄く楽しかった」
「…」
「お前と鎮守府で過ごしていくうちに、昔付き合っていた時の事を思い出して、楽しいと思う様になった。そして…少しずつ、お前の事が好きなんだと気づく事が出来た」
「準…」
「…そして、俺は…ハッキリと分かった。やっぱり、お前の事が好きなんだと。でも…」
「でも?」
「…1度とはいえ、お前を裏切った」
「それは…」
「…俺が、弱かったから。そのせいで、お前を…」
「違うっ!」
「違わないっ!」
「違うっ!私が貴方に迷惑をかけたから!」
「違わないっ!俺がもっと強ければ、お前を支え続けてやれた!」
…。
無言。互いに睨み合う。
「…ははっ」
「…ふふっ」
付き合ってた時も、こんな風に言い合ってたなぁ。それを思い出したのか、互いに笑っちまった。
「色々話す事が多いけど、今じゃなくてもいいだろ?」
「そうね。それにここ、医務室でしょ?あんまり長時間使うわけにはいかないわね」
「だな。とりあえず、小嶋提督の所に行くか。動けるか?」
「準の唾液摂取したから大丈夫よ♪」
「なんだそりゃ」
互いに軽口を言い合って笑った。…色々問題や、やるべき事が山積みだが、それを考えるのは今じゃなくてもいい…よな。慌てなくていい。ゆっくり。ゆっくり行こう。焦る必要は無い。
「さて、行くか…っ!?」
突然、医務室のドアが物凄い勢いで開かれた。何だ!?
「…」
「ひと…み?」
ドアを開けたのは仁美…阿武隈だった。その顔は、怒りで満ちていた。
「…あんた」
「な、なによ?」
「よくも…よくも昨日はあああぁぁぁ!!!」
「うおっ!?」
叫んだと思ったら、瑞稀目掛けて走ってきた。そして、その勢いのまま…
「うらァ!」
「オゴォ!?」
ラリアットをぶちかましたあああぁぁ!阿武隈選手、先制ラリアットだァ!
「こんっ…のぉ!」
おおっと、瑞鶴選手、すぐに立ち上がった!そしてェ!
「だらっしゃああああああいっ!!!」
「きゃうんっ!?」
瑞鶴選手の十八番、ノーザンライトボムが炸裂だああああァァ!床が凹んでいる!…おいおい、弁償しなきゃならねぇぞ、これ。
「やったわね!」
なんと、阿武隈選手、ノーザンライトボムを喰らったのにすぐに復帰したぞォ!?
「ん"ん"っ"!」
「ぶべっ!?」
おおっと、阿武隈選手、見事な空手チョップを瑞鶴選手の頬に叩き込んだァ!シンプルだが無駄の無い無駄に洗練された無駄じゃない動きだァ!
「って、オイ!こんな所で暴れるな!!」
解説してる場合じゃないよ俺!やめてくれ、これ以上暴れて医務室の備品壊したら弁償額がとんでもない事になっちゃうよ!やめて!提督の講座のライフはゼロよ!…講座ってなんだよ、授業やるのかよ!ちょっとぉ、女子ィ、授業中にキャットファイトするの、やめてよね?
「ぬおあおおおお!!」
「はああああああ!!」
「やめろォ!」
マジでシャレにならん!どうすれば…
「イヤーー!!」
「「グワーッ!!」」
「!?」
せ、川内が突然現れたかと思ったら、瑞鶴と阿武隈の首に鋭い手刀を浴びせて気絶させた。た、助かった…。
「…間に合いましたか」
「こ、小嶋提督!?」
おおう、走って来たのか少し息を切らしてるよ。
「先程、第2医務室から阿武隈くんが飛び出してここに向かって走っていく姿が見えまして…いやはや、元気がいいですねぇ」
元気がいいってレベルじゃないと思うんですが。
「うーむ。このままここで暴れられると困りますねぇ」
「提督、意見具申致します」
「ぬぅんっ!?」
神通!?いつの間に医務室内に居たの?気付かなかったよ。あと、日本刀に手をかけるの、やめてもらえないでしょうか?瑞稀達を斬らないでね?斬ろうとするなら、俺、全力で盾になるよ?
「なんでしょう、神通くん」
「演習場で、彼女達、瑞鶴さんと阿武隈さんを戦わせるのは、如何でしょう?」
「いいですね。そうしましょう。川内くん」
「オッケー、任せて」
…何も言わん。何も言わんぞ。川内が一瞬で姿を消したなんて。あ、言っちゃったよ。言わないって決めてたのに。あと、小嶋提督達だけで話が進められてるけど、このままじゃ埒が明かないから、演習で決める、か。その方が後腐れなさそうでいいから異議は唱えない。
「さて、そうと決まれば彼女達、阿武隈くんと瑞鶴くんを出撃ドックへ運ばなければなりませんね」
「お任せ下さい」
…ねぇ、人間2人を軽々担いだと思ったら一瞬で姿が消えたんですけど。もう、何も突っ込まないぞ。
「…さて、渡良瀬提督。演習場へ行きましょうか」
俺はもう、何も考えんぞ。
余談だが、瑞鶴の艤装は昨日ここに来る際相当無理をしたのか、轟沈してもおかしくない破損状態だったらしい。しかし、ここの工作艦明石と妖精さん達が昨晩の内に修理してくれた。ウチじゃ部品やら機材やらが不足してるから、こんなに早くは直らない。規模の大きい鎮守府っていいなぁ。
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そして、冒頭に戻ります。
『瑞鶴さんが艦爆隊を発艦させたァ!そして、阿武隈さんに…当たった!これは痛い!…おおっっ、しかし阿武隈さん、爆撃される直前に甲標的を放り投げて直撃を防ぎ、小破に留めました!死角からの爆撃に対し、あの判断と行動は凄い!彼女にはAL○CEシステムでも搭載されているのでしょうか!?』
実況と解説をしているのは、青葉と呼ばれる重巡洋艦の適性を持った艦娘だ。記者を目指していたが、艦娘になったらしい。いい解説だ。AL○CEシステムを知っているとは。後で色々語りたい。EX-Sは作るのに時間がかかりすぎて、秋雲と早霜を巻き込んで作ったっけ。夢中になり過ぎて執務を蔑ろにして足柄に滅茶苦茶怒られたなぁ。
『ああっと!阿武隈さんの放った砲撃が瑞鶴さんの飛行甲板に直撃!中破判定です!発艦出来なくなった航空母艦は格好の的!このまま一気に阿武隈さんが決めるのでしょうか!?』
「…瑞稀」
明らかに劣勢だ。だが、それでも瑞稀は諦めていない。未だ彼女の目から闘志は溢れている。どうする?
side 提督 out
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─
side 瑞鶴
「くっ、このぉ!」
阿武隈から痛い一撃を貰ってしまった。これじゃ発艦出来ない!
「このまま、決めるっ!」
阿武隈は私が中破したのを確認すると、確実に仕留める為か艤装の出力を上げて加速し、一気に接近して来た。負ける!
(嫌…負けるなんて、嫌っ!)
でも、どうすればいい!?艦載機は飛ばせない。殴る?無理よ、火力が足りない。なら、翔鶴姉みたいに彗星ラリアットでもする?無理だ、飛行甲板に砲撃が直撃したせいで、艦載機を載せられない。どうすれば…
《瑞稀》
「ッ!?」
突然声が聴こえた。阿武隈の声じゃない。観衆の声でも無い。誰?
《落ち着いて》
「…」
何処かで聴いた事のある声だ。とても、優しい声…。
《私は、ずっと貴女を見ていた》
何を言ってるの?
《色々酷い事をしてしまった》
酷い事?
《貴女の感情を揺さぶり、貴女を操ってしまった》
「ッ!?」
なに、これ…。様々な記憶が私の中に入り込んできた。
深海棲艦と戦う艦娘。
被弾する艦娘。
やがて、海へと沈む。
海底で長い間横たわり続ける。
肉体が滅びても、魂はそこに存在し続けた。
(なに…これ…)
次に、私が溺れ沈んだ事。
海底へと落ちて行き、水圧で潰れてしまった事。
暗くて、静かで、怖い。
そして…
(私を、助けてくれた?)
水圧で潰れた私の身体に、魂の様な物が入り込み、元通りにしてくれた事。
海底から近くの陸地まで泳いだ事。
そこから沢山の記憶や感情が流れ込んできた。
(…ああ、だからか)
幼い頃、船から海に落ち、2週間以上経っても生きていたのは。
時々、自分の考えと違う行動を取ったのは。
《…本当にごめんなさい》
…。
《…謝って許される事ではないけど、ごめんなさい》
…。
《もう二度と、こんな事しません》
…。
《だから…だから…》
…いいよ。許す。
《…えっ?》
…本音を言えば、許したくない。けど、あなたは自分の罪を認め、深く反省しているのが伝わって来た。だから、許すわ。
《瑞稀…》
…それに、準がいつも言ってた。相手がちゃんと反省しているのなら、それ以上糾弾するな、って。だから、許してあげる。
《…》
やり方はアレだけど、私と準を想ってやったんでしょ?なら、許してあげる。もう二度と、こんな事しないよね?
《しない!絶対に!》
…分かったわ。信じるから。
《…ありがとう》
…さて、和解出来たところ悪いんだけど、この状況、どうすればいいと思う?
《一つだけ、方法があるわ》
どんな方法?
《艤装の出力を暴走させて、自爆して引き分けに持ち込む方法が》
…あー。特攻って奴?
《えぇ…でも、この方法は貴女と艤装に負担が…》
いいわ、やってあげる。
《でっ、でも!》
負けるくらいなら、引き分けに持ち込んだ方がいいわ。さ、やりましょう?
《…分かったわ!》
─艤装、最大出力─
主機が甲高い音と共に出力を上げていくのが分かる。
─艤装出力、限界点に突入─
まだまだ。まだまだ!
─艤装に過剰な負担を確認─
知ってる。構わず出力を上げ続ける。
─警告、これ以上の出力は自爆の危険あり─
だから、知ってるわよ。
─警告!警告!警告!警告!警告!─
…ごめんね、無理させて。でも、お願い。今だけ。今だけでいいから、私の我儘に付き合って!お願い!!
─…翔鶴型航空母艦二番艦瑞鶴、健闘を祈る─
…えっ?
─…………。─
今、艤装が…
《貴女の想いを感じ取って、応援してくれたのよ》
応援…
《艤装にも意思があるわ。忘れないでね》
…うん。
《さあ、行きましょう?》
えぇ、行きましょう。
阿武隈は、油断しているのかこちらに真っ直ぐ進んで来る。
《油断するとどうなるか、分からせてあげましょう?》
そうね。よしっ、覚悟完了!瑞鶴、吶喊よ!
次の瞬間、私の身体は凄まじい勢いで阿武隈目掛けて進んだ。
「うおおおおおおお!!!」
ッッッ!!!凄い勢い!まるでカタパルトから射出されたガ○ダムになった気分だわ。
《それか、富○急のド○ンパね》
あ、分かり易い。
《艦○れ鎮守府第二次瑞雲祭りinよ○うりランド泊地、5/27まで開催中!》
「瑞雲もいいけど、瑞鶴もねっ♪」
「ん"ん"っ!?」
あーあ、そんなに慌てちゃって。油断大敵よっ!勢いを一切殺さず、中破して所々欠けた左手の飛行甲板を、阿武隈の腹に突き刺す!気分はデ○ドロビウムよ!阿武隈はガー○ラ・テトラって所かしら?
「ごぁっ!?」
流石、艤装の加護を受けた艦娘。肉を突き破る事は無いけど、衝撃までは殺せない。艤装の出力を暴走させ莫大な推進力を得た"私達"は、阿武隈を突き刺しても止まる事無く前に進み続けた。もう、持たないわね。
「さぁ、私と一緒に、地獄へ逝きましょう?」
次の瞬間、私の艤装から尋常じゃない量の白煙が吐き出されたのとほぼ同時に、盛大な爆発を起こした。
side 瑞鶴 out
───────
───────
─
side 提督
瑞鶴が中破したかと思ったら、突然凄まじい勢いで阿武隈目掛けて突撃し、飛行甲板を阿武隈の腹に突き刺して、
『さぁ、私と一緒に、地獄へ逝きましょう?』
どこぞの死神のパイロットみたいなことを言った直後、艤装から尋常じゃない量の白煙が上がったとほぼ同時に大爆発を起こした。
「おいィ!?」
何!?何が起きたの!!?瑞鶴はオペレーション・メ○オを任されたパイロットなの?機密情報保持の為に自爆したの!?教えてくれ瑞雲。瑞鶴は俺に何も言ってはくれない。
「おぉ、あれはまさしく、ガー○ラ・テトラを屠ったデン○ロビウムの零距離射撃…いや、違う。自爆したから、VSシリーズのヅ○の格闘チャージ攻撃ですね」
小嶋提督、真面目な顔で何言ってるんですか?あとヅ○って、作者の名前の由来になった機体だぞ。良かったな、作者。自分の名前の元になった機体を小嶋提督に紹介されて。まさか、ヅ○を紹介する為にこの小説を書いたのか?
「作者の人、そこまで考えてないと思いますよ?」
真顔でなんてこと言うの、小嶋提督ちゃん。
『おおっとぉ!?瑞鶴さんが凄まじい勢いで阿武隈さん目掛けて突撃したかと思ったら、自爆したああああああ!!瑞鶴さんの艤装は土星エンジンだった!?現在、審判や救護員たちが2人の元へ駆け寄ります!結果は…ドロー!引き分けです!繰り返します、引き分けです!』
…引き分け、か。あの状況からこの結果に持ち込むなんて。無茶するなぁ。
───────
─第8492離島鎮守府、執務室─
夕方。
「…」
「…」
瑞鶴と阿武隈の演習が終わって数時間後。俺は今、執務室に居る。目の前には執務机に座り、相当険しい目で書類を見る小嶋提督の姿があった。
「…ふむ、少し困りましたね」
「…」
「…予想より、資材の消費が多いですね」
「…」
何故小嶋提督の目付きが険しいかって?先程演習場で瑞鶴と阿武隈の演習を行い、大破した艤装を修理する事になったのだが、2人共壊れ方が半端なく、消費する資材が予想を遥かに上回ってしまったそうだ。特に瑞鶴の艤装の破損状態が酷く、修理するより新しく作った方がいいと言われる程らしい。
「…渡良瀬提督」
「は、はいっ!」
「つかぬ事をお聞きしますが、渡良瀬提督の鎮守府には、試製甲板カタパルトと改装設計図はありますか?」
「い、いえ、ありま…せん…」
声が尻すぼみになったのは許して欲しい。だって小嶋提督の目付き、滅茶苦茶険しいし、圧迫感凄いんだもん。
「…ふむ、そうですか…」
「…」
あ、少し胃が痛くなってきた。
「…仕方ありません。私の鎮守府で、瑞鶴くんに第二次改装を施しましょう」
「…えっ?」
第二次改装?瑞鶴の?嘘やろ?確か翔鶴が言ってたっけ。翔鶴型航空母艦の第二次改装は他の艦娘の第二次改装と違って特殊な装備や設計図が必要で、消費する資材が桁外れだって。それを、行ってくれるのか?いやいやいや、待てよ。ただでさえ小嶋提督に色々融通して貰ってるのに、これ以上の支援は厳しいだろ。
「…ただし、無償で、という訳にはいきませんね」
「はい…」
やっぱりね。仕方ないね。何を要求されるんだろう?
「…他言しないと信用しているので教えます。最近、ここら一帯の深海棲艦の規模が強大になり、更に出没頻度が明らかに増えてきました」
あれ、そうなの?こっちに緊急出動要請来ないから、今までと出没頻度とか変わりないと思ってたんだけど。
「今までなんとか私たちの方で殲滅してきましたが、負担が大きく、艦娘の皆が疲弊し始めています。そこで」
「…」
何を言われるんだろう?
「第603鎮守府の規模を大きくし、鎮守府近海だけでなく外洋でも対応出来るようにしてください」
「…ハイ?」
つまり、ウチに所属する艦娘増やせって事ですか?でも、大本営に頼んでも相手にされないだろうから、かなり難しいぞ?というか、そんな事でいいんですか?
「私から大本営に上申するので、大丈夫ですよ。それに、私の鎮守府の負担を和らげることになります。だから、これでいいんです」
あー、また顔に出てたのか。マジで気を付けよう。それにしても小嶋提督、懐深すぎない?足向けて寝れないよ。
「でも、大本営がそう簡単に許可を与えてくれるでしょうか?」
大本営は俺の事を艦娘を誑かすクズだ!って評価して嫌っているからなぁ。主に養成所での出来事を見て。
「なぁに、深海棲艦に本土を攻撃されてもいいのですか?とでも言えば許可をくれるでしょう」
そらそうだ。そんな事されたら国民の信用が無くなる。承諾せざるを得ないだろう。
「…わかりました」
「うむ、よろしい。…ここだけの話、あなたの所に着任したい!と私に頼んでくる娘が多くて、困っていたんですよ。その娘達は、あなたと養成所で共に過ごしたと言っていました」
「…へ?」
俺の所に着任したい?まさかぁ。ご冗談を。あと、何で小嶋提督の所に頼むのだろう?
「第603鎮守府は第8492離島鎮守府のバックアップの為に作られた鎮守府です。他所の鎮守府から艦娘をそちらに送る際は、一度私の所へ申請しなければならない決まりとなっています。素行や実力等に問題が無いか知る為に」
「な、なるほど」
どうすれば表情だけで的確に考えている事を当てられるんだろう?ユー○ャンで学べるのかな?
「そ、それで、着任したい艦娘は、な、何名、くらい、でしょうか…」
声が裏返っちゃった。せ、せいぜい、3、4人位でしょう?そうでしょう?
「…一先ず、舞鶴、佐世保。2つの鎮守府から」
へいへいへい、ストップだ。何で?舞鶴と佐世保って横須賀程じゃないけど大規模で精鋭揃いな鎮守府だよ?そこからウチに来るなんて、嘘やろ?そっちの方が利便性とかいいから、ウチに来ない方がいいよ?周り山と田んぼばっかだよ?虫多いよ?あとカエルがうるさくて眠れないよ?それと、一先ずってなんですか、まだまだ居るんですか!?
「…合計で」
心臓の音が煩い。頼む、頼むから、少なめに!
「…4人です」
…あぁ、うん。そのくらいで良かった。
「舞鶴からは、初春型駆逐四番艦、初霜くん。阿賀野型軽巡洋艦三番艦、矢矧くんの2名です」
…勝った。勝ったぞおおおお!!!あの2人はマジで大丈夫な奴らだ。やったぜ、やったぜ!!特に初霜!君には何度も癒された。涼月と並ぶ俺の心の清涼剤だった。涼月は危険物になっちゃったけど!でも初霜なら大丈夫。本当に大丈夫。そして矢矧!君は俺に対して厳しかったけど、その厳しさは優しさでもあった。挫けそうになった俺の心を何度も奮い立たせてくれた。ありがとう!本当にありがとう!
「…」
あ、あれ?小嶋提督がめっちゃ可哀想なものを見るような目で見つめてくるぞ?…待てよ?待てよ待てよ?確か、佐世保って、あいつらが行ったところじゃないですか!やだー!…落ち着くんだ、俺。あいつらと決まったわけじゃない。
「…渡良瀬提督」
「…何でしょうか?」
何その、ピックアップ10連回したらサン○ィエゴが4隻出たような哀しみに満ちた目は。
「…強く、生きてください」
「あー…言葉の意味が…」
何だろう。とっても嫌な予感が…。
「…佐世保からは、金剛型戦艦三番艦、榛名くん。扶桑型戦艦二番艦、山城くん。以上2名があなたの鎮守府に異動します」
「…は?」
よりにもよって、その2人とか俺の胃袋を口から吐き出させる気かあああああああああ!!榛名と山城!オメーら2人はマジで洒落にならん!!何があったかって?話したくねぇよ!!!
「…そういえば先程、素行に問題がないか確認する、と仰っていましたが、その2人は明らかに問題がありませんか?」
絶対素行に問題あるよ。…ねぇ、なんで目を逸らすの?
「…数年前から毎日、佐世保の榛名くんと山城くんから申請が届いていまして。あー…段々、呪いの手紙の様な字体になってきて…最近では、縦読みすると…その…恐ろしい事が書かれていまして…」
「…何か、すいません」
御迷惑おかけしました。深く頭を下げて謝罪。
「…渡良瀬提督、今度、一緒に飲みに行きましょう。ご馳走します」
「…逃げたい」
「…あなたが逃げたら、榛名くんと山城くんが日本中の陸地を焦土に変えながら、あなたを捜そうとするので逃げないでください」
「…提督辞めたい」
「辞めたら2人が大本営にカチコミするでしょうから、ダメです」
どうせぇっちゅうねん。
「…ちなみに、今回はこの4名ですが、予定ではあと数名そちらに行く予定なので頑張ってください」
人数増えると指揮や書類仕事が忙しくなるけど、それは俺が頑張ればいい。だが!俺の胃袋を破壊する艦娘の相手はしたくねぇ!嗚呼…瑞稀と2人で静かな所で暮らしたい。
side 提督 out
───────
────
─
次回予告
…瑞稀、おめでとう。
………。
…あの時、素直になっていれば。
…そうすれば、あそこにいるのは私だったのかもしれない。
………。
…いいなぁ。
………。
…奪っちゃおうかしら?うふふっ♪
第14話・狂い始める姉鶴
「お帰りはあちらですよ?メェ○ツェエエェェエエエル!!!」
※GW貰えたので暫く更新続けられそうです(超小声)