追跡鶴   作:EMS-10

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第14話・狂い始める姉鶴

 

 

side 瑞鶴

 

─第8492離島鎮守府、工廠─

 

「艤装の出力を暴走させて自爆なんて、見た事も聞いた事もありません。やる事が過激ですねぇ、瑞鶴さん」

 

「ご、ごめんなさい…」

やっぱり、やり過ぎたかなぁ。

 

《戦場にやり過ぎなんて無いわよ》

 

…そうなの?

 

《御大将がそう言ってた》

 

御大将が言うなら間違いないわね。じゃない、

 

「あの、私の艤装だけど…」

 

「うーん…ハッキリ言います。直すより、新しく作った方が早いですね」

 

「そうなんだ…」

第一次改装を受けて1週間も経たずに完全破損させてしまうなんて。ごめんね。そっと、ボロボロになった艤装を撫でた。

 

《………》

 

「…」

艤装からの応答は無い。ごめんなさい。私のせいで…

 

「あっ、内線。…はい、こちら工廠です。…はい…はい…えっ?はぁ…えぇ、大丈夫ですよ?はははっ、私を誰だと思ってるんですか?大丈夫ですって。お任せ下さい!…はい、了解です。直ちに取り掛かります」

明石が内線で誰かと話している。何だろう?取り掛かる?

 

「さて、瑞鶴さん」

 

「は、はい!」

もしかして、艤装を解体してリンクを外すのかな?私、艦娘で居られなくなるのかな。…嫌だ。彼を追う為に艦娘になって、ようやく彼の元に辿り着けたのに。そんなの、嫌だ!

 

「第二次改装、始めましょうか!」

 

「…ほぇ?」

…え?何?明石はなんて言ったの?ダイニジカイソウヲ、ハジメル?

 

「ですから、第二次改装ですよ、瑞鶴さん」

 

聴き間違いじゃない。第二次改装?私が?でも待って、私、第一次改装を受けて1週間も経ってないから、艤装とのシンクロ率が足りない筈。なのに、何故?

 

「調べた結果、瑞鶴さんと艤装のシンクロ率が予定値を余裕で突破しているので可能です」

 

「そうなの?」

 

「はい。どうやら瑞鶴さんは初期状態のままで稼働させた期間が非常に長く、その影響か肉体に艦娘の力が通常より多く蓄積されていて第一次改装の艤装とすぐに馴染み、第二次改装が可能だと判明しました」

 

「そう、なんだ」

 

「分かりやすく例えるなら、ハ○ロクにレース用エンジンを積んだけど、タコメーターはそのまま。これが瑞鶴さんの無改造・初期状態。そして、高回転対応タコメーターと水温計・油圧計を取り付け、馴染む。これが、第一次改装。後付だったタコメーター等をコンパクトに纏め、効率よく状態を確認出来るようにし、カーボンボンネットに換え足回り等を最適化し更なる速さを得るのが第二次改装、といった感じです。なので、今すぐ第二次改装が可能なんです」

 

「な、なるほど…」

分かりやすい説明、ありがとう。分からなかった人は、一万一千回転までキッチリ回せ、で検索してね。それか、豆腐屋 秋名で調べれば1発よ。多分(小声)

 

「さぁて。やりますか!」

 

「よろしくお願いします!」

第二次改装…確か、静流姉(翔鶴姉)が言ってた。翔鶴型航空母艦の第二次改装は、飛行甲板を装甲甲板に変更し、船体全ての装甲を大幅強化し装甲空母になる、って。それにより、中破しても艦載機を発着艦出来る様になる。

 

《楽しみね?》

 

そうだね。

そして、"私達"は第二次改装を受けた。

 

 

…………。

 

 

「これで、よし!」

 

「これが…第二次改装…」

明石と妖精さん達が作業を始めて数時間後。ついに"私達"の改装が終わった。

迷彩柄だった艤装は、長年使ってきた見慣れた色に。

迷彩柄の飛行甲板は、見るからに頑丈そうな物に。

元々大きかった主機は、更に大きく、しかし洗練されたフォルムに変わった。

 

「…凄い」

それしか言葉に出せなかった。これなら、もっと彼の役に立てる。

 

「最終チェック開始!妖精さん達、各パーツの確認お願い!あぁ、そっちのケーブルはそこじゃなくてあっち!グズグズしない!早く!!」

 

普段は飄々としている明石だけど、整備の事になると人が変わる。今もこうして的確に指示を出している。カッコイイなぁ。

 

「…よし、それじゃあ瑞鶴さん、装束を改二用の物に着替えて艤装を装着してみてください」

 

「分かった!」

更衣室に向かう前に、恐る恐る、様々なケーブルや機械に繋がれた艤装に近付いた。

 

《大丈夫?》

 

(…大丈夫よ)

心配してくれたのか、彼女が声を掛けてくれた。そういえば、彼女の名前、教えて貰ってないな。

 

《ごめんなさい。私の名前は、覚えていないの》

 

私達は1つの存在となっているからか、私の考えている事が伝わりそう答えた。

 

《…長い事、海底に居たせいか、記憶が無くなってしまったみたいなの》

 

そう、なんだ…。とても、辛く、寂しかったんじゃないの?

 

《…うん。海の底は、暗くて…とても…とても、寂しかった》

 

…でも、もう大丈夫。これからは、ずっと私が居てあげるから!

 

《瑞稀…》

 

それに、準も居る!だから、大丈夫よ!

 

《…ありがとう》

 

…そうそう、名前だけど、どうする?

 

《…どうしよっか?》

 

うーん、思い付かない。

 

「瑞鶴さん?」

 

おっと、明石が心配そうにこっちを見てる。とりあえず、名前は後にして、今は私達がやるべき事をしましょう?

 

《そうね。…そうだ!彼に相談して名前を付けて貰いましょう?》

 

それいいわね、名案!そうと決まれば、さっさと着替えて調整を終わらせましょう?

 

《分かったわ》

 

 

………。

 

 

「…ふぅ」

艤装用の装束に着替え、息を吐いて。よしっ!ゆっくりと私は艤装を装着する。

今着ているのは迷彩柄の装束ではなく、見慣れた紅白の装束だ。どうやら初期状態の装束より、肌触りって言うの?素材が違うみたい。上手く言葉に出来ないけど、初期状態の物より高い着物、って感じがする。

…。

艤装、起動。

接続、開始。

 

─接続、開始─

 

「ッッ!?」

艤装と接続したと同時に、私の頭の中に様々な情報が流れ込む。

 

【瑞鶴、万歳!】

【万歳!】【万歳!】【万歳!】

 

大勢の男達が甲板に立って万歳をしていた。それに、傾斜している?

 

《これは、船だった瑞鶴の記憶ね。沈む直前の様子みたい》

 

これが…瑞鶴の最期…?

次の瞬間、様々な感情が一気に流れ込んできた。

 

怒り。

絶望。

憎しみ。

哀しみ。

 

(な…に…これ…)

気持ち悪い。

頭が痛い。

苦しい。

憎い。

憎い。

憎い。

憎イ。

憎イ。

憎イ!

 

《瑞稀ッ!》

 

「瑞鶴さん!?」

 

「…っ!」

彼女と明石に声を掛けられ、我に返った。私は、一体?

 

「しっかりしてください!」

 

「ぁ…ぇ…?」

何だろう、鼻から暖かいものが…あ、血だ。また出血しちゃったのかな?

 

「大丈夫ですか?」

 

「ダイジョーブ、ダイジョーブ」

 

《片言になってるわよ…》

 

…ごめん、嘘ついた。すっごく頭が痛いです。けど、まだ艤装との接続が完全に終わっていないから、今、無理矢理外したらどうなるか分からない。最悪、身体の神経が壊れて一生全身麻痺のまま過ごす恐れがある。

 

《阿○耶識システムみたいな物だからね》

 

外すんじゃねぇぞ!って奴ね。

 

《止まるんじゃねぇぞ、よ》

 

詳しいわね。

 

《貴女を通して全て見てきたから》

 

…全て?

 

《全て》

 

…準の枕カバーをこっそり取り替えて匂い嗅いでた事も?

 

《うん》

 

…万年筆をこっそり新品と取替えて私が使ってる事も?

 

《知ってる》

 

…私の身体を擦り付けたベッドシーツを彼のベッドシーツと取り替えたのも?

 

《…少し、アグレッシブだなぁと思ったわ》

 

…準のボクサーパンツ盗んで穿いて出撃した事も?

 

《…流石にそれは引いた》

 

お守りよお守り!彼に包まれてる安心感と幸福感を感じながら戦えるのよ!いいじゃない!

 

《流石にやりすぎよ!痴女よ痴女!》

 

貴女だってやりたいと思うでしょ!?

 

《思う!》

 

貴女だって痴女じゃない!私は自分の(欲望)に素直に従った!けど貴女は違うみたい。考えるだけで行動に移さない。むっつりスケベね!

 

《誰がむっつりスケベよ!貴女は変態よ!危険物よ!》

 

誰が変態ですって!?それに危険物扱いしないで!危険物は涼月よ!

 

「あの…瑞鶴さん?」

 

「あ"ぁ"ん"?」

 

「ひぃっ!」

 

…ごめん、明石。思いっ切りドスの効いた声出して。

 

「…ごめんなさい」

 

「い、いえ、大丈夫です。それより、瑞鶴さんの方が」

 

「本当に大丈夫よ、心配しないで」

…ごめんなさい、さっきまで変なやり取りしてキレてました。真面目にやります。

 

《心配させてやんの。ざまぁ》

 

シバくわよ?

 

《やれるものならやってみなさい》

 

「やってやろうじゃねぇかよこの野郎おおおおおぉぉぉああああっっっ!!!」

 

「ひぃ!?」

 

…明石、本当にごめんなさい。全てはコイツが悪いんです。

 

《人のせいにしないでよ!自業自得でしょ!》

 

なんですってぇ!?

 

「ず、瑞鶴さん…」

 

「…本当に大丈夫です。心配かけてごめんなさい」

怖い顔をしていたのか、明石が心配そうに声を掛けてきた。

 

《…哀れね》

 

…2回目の挑発?乗らないからね。

 

《…》

 

…。

 

《…ハッ(嘲笑)》

 

「やってやろうじゃねぇかよオオオオオ!!!」

 

「ひぎぃ!?」

 

…もう、本当に、その、ごめん。

 

「ず、瑞鶴さんが…壊れた」

 

「壊れてない!壊れてないから!正常だから!」

 

《頭は冷静ですよ!》

 

黙りなさい。

 

《ヒダリデウテヤッ》

 

「いい加減にしろおおおおおおっっっ!!!」

…あっ、怒鳴っちゃった。あれ、明石が物凄い距離取ってる。ん?内線に手を伸ばして…小嶋提督に連絡しようとしている。

 

「待って、待って!私、正常!正常だからああああああ!!!」

 

─艤装接続、完了。翔鶴型航空母艦二番艦瑞鶴、再び会えて嬉しいです─

 

うん、私も嬉しい。けど、今は喜んでる場合じゃないの。早く接続解除しないと…あれ、ケーブルの数が多いし複雑で…あぁっ、明石、待って、本当に待って!呼ばないで!お願い!待ってぇぇぇぇ!!!

 

 

───────

 

 

「この度はご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ございません」

 

「い、いえ、大丈夫ですよ?大丈夫、あはははは…」

 

あの後、内線で小嶋提督に連絡しようとする明石に空の矢筒を投げつけ、連絡を阻止した。もう、なんて言えばいいか…ごめん。

 

「ふむ。今の所異常は無いみたいですね」

 

端末で私と艤装の状態を確認しながらそう言った。

 

「…よし、全て終わりました!」

 

「ありがとう!」

これが、私の艤装…。これでもっと、彼の役に立てる!

 

「それでは、お疲れ様でした」

 

「お疲れ様!」

 

「先程、小嶋提督に連絡したら、渡良瀬提督と大切な話をしているからもう少し待って欲しいとの事です」

 

「そうなんだ」

大切なお話…なんだろう。気になるけど、私が行っても何も出来ないだろうし、準の邪魔をしちゃうかもしれない。大人しく待とう。…あっ、そういえば、今頃気付いたけどあっちを飛び出して来てたんだ。連絡しなきゃ。

 

 

…………。

 

 

「うん…本当にごめんなさい。…うん…うん。分かったわ。ありがとね」

…ふぅ。どうやら準が連絡をしてくれたのか、そこまで大きな騒ぎになってないみたい。電話に出た摩耶が教えてくれた。それより、

 

「私のせいで静流姉、怪我しちゃったんだよね…」

飛び出した私を見て、慌てて追いかけたけど、途中で深海棲艦と遭遇してしまった。それにより負傷、追跡を断念し鎮守府に戻った。なんで謝ればいいんだろう。

 

「…あれ?」

そういえば、私も途中で遭遇した様な…。

 

《遭遇したわ》

 

やっぱり?でも、戦った覚えがないんだけど…

 

《…どうやら、私達の感情に怯んで逃げていったわ》

 

逃げていった?

 

《うん。その時の私達、奴らが怯む程の怒りと憎しみを身体中から発してたみたいで…》

 

あー…準が取られると思ってたから、かなり怒ってた記憶が…

 

《…私が瑞稀の感情を揺さぶって増幅させてたから、その影響もあったのかもしれない》

 

…今後、そういう事しないでね?

 

《しない!絶対しない!》

 

信じるから。…さて、静流姉に連絡しよう。

 

 

………。

 

 

『とにかく無事で良かったわ』

 

「心配かけてごめんなさい」

 

『もう、こんな事しちゃダメよ?』

 

「はい…」

静流姉には、一部をぼかして全て説明した。最初は物凄く怒られたけど、今はいつもの優しい静流姉だった。

 

『反省しているみたいだから、これ以上は怒らないわ。…そうそう、第二次改装おめでとう、瑞稀』

 

「ありがとねっ、静流姉」

まるで自分の事の様に喜んでくれた。これで姉妹揃って装甲空母だね♪あっ、そうだ、あの事を報告しなきゃ!

 

「あっ、あのね、静流姉」

 

『なぁに、瑞稀?』

 

「実はね…

 

 

 

準が、私の事を好きだって言ってくれたの!」

 

 

side 瑞鶴 out

 

 

───────

────

 

 

side 翔鶴

 

 

『準が、私の事を好きだって言ってくれたの!』

 

嬉しそうにそう言う瑞稀の声が聴こえた瞬間、私の周りから全ての音が消えた。

好きだって?

誰に?

準って言ったわね。

…なんで?

あなた、彼に冷たくされていたじゃない。

いつも鬱陶しそうに扱われていたじゃない。

なんで?

なんで?

なんで?

なんで?

…。

ああ、分かった。

きっと、脅したのよ。

そうでなきゃ、有り得ない。

…。

私は何を考えているの?

祝福しなくちゃ。

 

『…静流姉?』

 

ほら、妹が不審に思っているわよ?

いつもみたいに、優しく声を掛けて祝福してあげなさい。

お姉ちゃんでしょ?

 

「…そう、なの。おめでとう、瑞稀」

 

『うんっ!ありがとね、静流姉♪』

 

…何が、ありがとね、だ。

…違うでしょ、私。

それから、妹と会話したが、どれも覚えていない。

 

『それじゃ、戻る時間が分かったら連絡するね』

 

「…えぇ、分かったわ。気を付けて帰ってくるのよ」

…帰る途中、深海棲艦に襲われて沈んでしまえ。

…なんて事考えてるの、私。

瑞稀は私の大切な妹よ?バカな事を考えるな。

いつの間にか通話は切れていた。

 

「…っ!!!」

 

ガシャン!!

 

「………」

気付けば、スマホを思い切り壁に投げ付けていた。

壁は凹み、スマホは砕けた。

 

「………」

…あの時。

彼と出会った時。

もっと自分に素直になっていれば。

もっと彼に優しく接していれば。

あそこ(彼の隣)に居るのは、私だったのかもしれない。

後悔しても遅い。

私は、彼に暴行を働いた。

何度も。

何度も。

何度も。

 

「…それなのに、彼は反撃してこなかった」

そう。どれだけ私から暴行を受けても、彼は決して反撃してこなかった。

それが私の事をバカにしていると感じ、更に暴行を加えた。

彼の物を沢山壊した。

それなのに、彼は私に対して瑞稀と同じ様に優しく接してくれた。

 

「…何をやってるのよ」

思わず笑ってしまった。

あまりにもバカだ。

彼を追う為に艦娘になる。そう言って瑞稀は適性検査を受けに家を飛び出した。

私も、瑞稀が心配で後を追い適性検査を受けた。

すると、2人とも艦娘の適性があった。

しかも、適性者の少ない翔鶴型航空母艦という物だった。

2人揃ってあそこに配属になった。

そして、地獄が始まった。

小嶋提督は決してブラックな提督ではない。

むしろ、色々気を遣ってくれた。

出撃、遠征、執務。

忙しすぎる日々。

ろくに瑞稀と会話も出来ない。

彼とも会えない。

自分は何故、ここに居るのか分からなくなった。

段々、心が壊れていった。

ある日、瑞稀が異動する噂を聞いた。

そして、それを小嶋提督に確認すると、本当だとわかった。

…彼の所へ、行く。

異動先は、彼の居る小規模な鎮守府だと聞いた。

つまり、彼と接する時間が多くなる。

ふざけるな。

瑞稀に奪われる位なら、彼を殺してしまおうと思った。

私は、彼を憎んでいるフリをして彼に攻撃した。

相変わらず、素直じゃない。

これからは、素直になりましょう。

…さて、どうしましょうか?

 

…奪っちゃおうかしら?

 

「…あはっ♪」

いいわね、それ。略奪愛。よく読む恋愛小説に、そんなのが幾つかあった。

大抵は失敗に終わる。

原因は、急ぎ過ぎ。

なら、

 

「焦らず、じっくり、時間をかけましょう?」

確実に追い詰め、確実に仕留めてみせる。

うふふ。

楽しくなってきちゃった♪

…あ、スマホ。

…ダメね。完全に壊れてしまっている。

…そうだ!

 

「ご褒美、一緒にスマホを買いに行く、にしましょう」

先日、摩耶さんに発破をかける為にワザと嫌われ役をした。その時、彼にご褒美をねだった。

 

「楽しみね?」

うふっ。うふふっ♪

待っててね、準。

ゆっくりと。たっぷりと。何度でも。

オンナ()魅力(カラダ)を教えてあげるから。

 

 

 

 

 

 

貴方の、心に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side 翔鶴 out

 

───────

────

 

 

 

side 提督

 

 

─第8492離島鎮守府、船着場─

 

朝。

 

 

「大変お世話になりました」

 

「ありがとうございました」

 

瑞鶴と2人で深く頭を下げ、見送りに来てくれた小嶋提督と神通に礼を言った。

船着場には、ウチに行く為の船と護衛の艦娘が数名、海上で待機していた。

 

「いえいえ、こちらこそ。むしろお礼を言うのはこちらです。妹を救ってくれた。感謝しても、し足りない位です」

 

「そ、そんな…」

家族を助けたから、にしては大袈裟過ぎないか?

 

「…私の、唯一の、大切な家族ですから…」

 

「…すみません」

小声で、寂しそうな目をしながらそう言った。聞くべきではないな。さて、用意してくれた船に乗ろう。ん?何かが猛スピードてこちらに向かって来るぞ?

 

「ず〜い〜か〜く〜!!」

 

げぇっ、阿武隈ァ!某野菜人みたいに髪を逆立てながらこちらに向かってくるぞ!?

 

「おやおや、阿武隈くんは元気ですねぇ。今まで元気がなかったのに、渡良瀬提督と会えて元気になってくれた様です」

 

冷静に言ってる場合じゃないでしょ!?昨日、阿武隈の事とかどうする?って話したけど「こちらにお任せ下さい」と微笑むだけだった。だから大丈夫だと思ったのに。

 

「…神通くん」

 

「はっ!」

 

「…少し、相手をしてあげてください」

 

「御意」

 

そう言うと同時に、阿武隈の顔目掛けてドロップキックかましたぞオイ!容赦ねぇな。

 

「…さぁ、渡良瀬提督、瑞鶴くん。今のうちです」

 

「で、ですが!」

 

「大丈夫です。だから、早く!」

 

大丈夫だって言うんだ。信じよう。

 

「お帰りはあちらですよ?メェ○ツェエエェェエエエル!!!」

 

一気に信じられなくなった。

瑞鶴と苦笑しながら船に乗り込み、俺達は第603鎮守府へ向かった。船は妖精さん達が操作してくれてる。どうやって?というツッコミは無しだぞ。妖精さんは艦載機からネ○ストまで操れるんだぞ。舐めるなよ?

 

「…色々あったね」

 

「ありすぎて、未だ頭が追い付いてない」

まるで何年も過ぎた様な気がする。

最初は艤装が艦娘に与える影響を知る為にあそこへ行った。しかし、実際は瑞稀に宿った別の魂が原因…原因って言い方はアレだな。影響で瞳の色が変わったのだと知った。

 

「…なぁに?」

 

「…見てただけだ」

瑞稀の顔を見ていたら、俺の視線に気付いてはにかみながらそう言った。

 

「…」

 

「ぁ…んっ…」

 

気が付けば、こいつにキスをしていた。

…今までごめん。これからは、何があろうと傍に居続けてやる。

 

 

 

──────────────

 

 

 

この時の俺は、知らなかった。

今までのは、地獄の始まりに過ぎないのだと。

本当の地獄が、狂気が、これから始まるなんて…。

俺はただ、自分の心で思った事をそのまま言葉に出し、行動に移しただけなのに…。

 

 

 

─追跡鶴 第1章・再会編 完─






次回予告


最近、鎮守府の様子がおかしいのよねぇ。なんつーの?ピリピリしてるって言うか。おまけに、翔鶴さんの様子がおかしいし…。あれかな?大好きな妹を提督に取られたからシスコンモード発動してる、とか。あっははは、提督も大変だねぇ。んじゃ、最後に一言。リア充爆発しろぉ〜。うん、1度言ってみたかったのよねぇ、コレ!秋雲さん大満足!…あれ、涼月、包丁持って何処に…?そっちは提督の部屋…あーまさか、まさかねぇ…嘘でしょ!?冗談キツイって!!


追跡鶴 第2章・覚醒編
第15話・魂は逃走を望む


「こんな所に居られるか!俺は、部屋に戻るぞッッッ!!!」
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